ケーススタディ2

ケーススタディー2
第2班・・・浅野利彰 池田未緒 大賀英治 熊木隆之 坂口健人 高梨悠 田所碧 斗澤昇平
藤原純平 山内佑允 鎌田恭平 宮村周人
ケーススタディ2
【症例】 65歳 女性
【主訴】 右下腿部痛
【現病歴】歩行中に低速で走行していた自動車に
ひかれ受傷した。右下腿部に開放創を認め歩行困
難となり、当院救急部を受診した。脚部において足
背動脈および後脛骨動脈は触知した。足趾の屈
曲は可能だったが、伸展は不可能で、第1、2趾間
部周囲の知覚低下を認めた。即日緊急手術を行っ
たが、開放創は完全には閉鎖することができな
かった。
初診時単純X線
骨折の分類
原因
程度
部位
作用方向
骨折線
交通
骨折の分類
原因
程度
外傷性骨折
完全骨折
病的骨折
不完全骨折
疲労骨折
不顕性骨折
脆弱性骨折
骨折部位
外力の作用方向
骨折線の走行
骨折部と外界の交通による分類
• 皮下骨折
骨折部に皮膚軟部の創がなく、外界との交通
がないもの。
• 開放骨折
皮膚や軟部組織に創が存在し、骨折部と外界
が直接交通するもの。感染の危険性が高い。
Gustiloの分類を用いる。
現病歴
歩行中に低速で走行していた自動車にひかれ
受傷した。右下腿部に開放創を認め歩行困難
となり、当院救急部を受診した。脚部において
足背動脈および後脛骨動脈は触知した。足趾
の屈曲は可能だったが、伸展は不可能で、第1、
2趾間部周囲の知覚低下を認めた。即日緊急
手術を行ったが、開放創は完全には閉鎖する
ことができなかった。
神経の走行
屈曲・伸展に対する末梢神経の支配
足の母趾
機能
動作筋
神経
MP関節の屈曲
短母趾屈筋
内側足底神経
MP関節の伸展
短母趾伸筋
深腓骨神経
DIP関節の屈曲
長母趾屈筋
脛骨神経
DIP関節の伸展
長母趾伸筋
深腓骨神経
屈曲・伸展に対する末梢神経の支配
足の第2,3,4,5趾
機能
動作筋
神経
MP関節の屈曲
第1虫様筋
内側足底神経
外側足底神経
深腓骨神経
内側足底神経
脛骨神経
深腓骨神経
第2,3,4虫様筋
MP関節の伸展
PIP関節の屈曲
DIP関節の屈曲
伸展
短趾伸筋
短趾屈筋
長趾屈筋
長趾伸筋
足部の神経支配
伏在神経
腓腹神経
浅腓骨神経
深腓骨神経
Gustiloの分類
Gustiloの分類
typeⅠ
開放創が1cm以下で汚染の少ない
開放骨折
typeⅡ
開放創が1cm以上ではあるが、広範な軟
部組織損傷や弁状創を伴わない開放骨折
typeⅢ-A
広範な軟部組織の剥離や弁状創を伴うが、
軟部組織で骨折部を被覆可能な開放骨折
骨膜の剥離を伴う広範な軟部組織の
typeⅢ-B 損傷と、著しい汚染を伴う開放骨折
修復を要する動脈損傷を伴う開放骨
typeⅢ-C 折
治療法
図3、4の治療法(初期治療)
図より…
創外固定
と考えられる!!
開放骨折における初期治療
まず…
開放骨折:骨折部と外界が交通している!
↓ ↓ ↓
感染の危険が高い
治療においては特別の配慮が必要!
治療の手順~その1~
①開放創の周囲、創内の清浄化
ⅰ)ガーゼで創を覆う
ⅱ)大量の生理的食塩水を使って汚染された創の周囲
を洗浄⇒患肢全体を消毒
ⅲ)ガーゼを外し、創内を同様に洗浄、汚染物質を除去
(cleaning and brushing)
【洗浄方法】
低圧洗浄:バルブシリンジなどを用いる
高圧洗浄:パルス洗浄器を用いる
汚染がひどい場合には…高圧洗浄!
治療の手順~その2~
②挫滅組織の切除
挫滅された軟部組織
⇒細菌増殖の温床となるので、これらを切除する
必要がある!
◎遊離した小骨片は原則として除去した方が良い。
◎血管や神経などの重要な組織を除いて、壊死に
陥りそうな血流の悪い組織は徹底して切除する。
※①、②の操作を合わせてデブリドマンという。
治療の手順~その3~
③骨折の処置
原則的には内固定は避ける。
理由:局所が細菌に汚染されているという
前提のもと、内固定具が異物として
感染を助長するから
しかし、、、
しかし…
a)GustiloのtypeⅠからⅢ-Aまでの開放骨折
b)汚染部が小範囲
c)受傷6時間以内(golden period)に徹底したデ
創外固定とは?
ブリドマンができた
場合には、内固定をしても感染は起こりにくいと
されている。そうでない場合には、創外固定を
行う方が安全である。
創外固定について
骨折した骨の近位と遠位とにKirschner鋼線やスクリューピ
ンを刺入し、体外で連結器を用いて固定する方法。
《種類》
unilateral型:骨の一側からハーフピンを刺入する
bilateral型:貫通ピンを用いる
circular型:円形のフレームを用いる
などがある。
本症例ではunilateral型を用いている。
利点: ①簡便 ②骨折部を展開しなくてよい
③感染の併発 が 危惧される場合に有利
欠点:①安定性が不十分な場合がある
②ピン刺入部の感染リスク ③審美性
治療の手順~その4~
④十分な量の抗菌薬の投与
初診時⇒抗菌薬を静脈内に投与
以後、手術終了まで3~4時間ごとに追加投与
通常、ターゲットは黄色ブドウ球菌であるので第2世代セフェム
を選択する。ただし、GustiloⅢ-Bの開放骨折においては、グラ
ム陰性菌をカバーするためアミノグルコシドを併用する。
また、破傷風の発生予防のため、破傷風トキソイドの追加免疫
に加えて抗破傷風ヒト免疫グロブリン250IUを筋注する。
治療の手順~その5~
⑤創の閉鎖
golden period以内に十分な創の処置が完了す
れば、一次的に創を閉鎖してもよい。
しかし!
GustiloⅢ-Bの開放骨折の場合感染の危険が大
きいため、創の一次的閉鎖を行ってはならない。
治療の手順~その6~
⑥皮膚欠損部の処置
開放骨折に伴い皮膚が欠損したり、広範に挫滅した皮膚が壊死に陥った場合
⇒早急に皮膚欠損を補填する必要!(骨折部や重要組織を被覆するため)
○欠損した皮膚の下に、骨折部を覆うに十分な筋肉などの軟部組織がある
⇒これで骨折部を被覆し、皮膚は遊離植皮で修復可能。
○骨・関節、腱、大きな血管、神経が露出している
⇒まず筋弁でこれを覆い、その上に遊離植皮を行うか、筋皮弁によって
皮膚欠損部を覆う必要がある。
※腫脹のため創縁が寄らず縫合できない場合⇒皮膚減張切開を加える
ことも。
最近では遊離血管柄付き皮弁移植、あるいは筋肉や骨を含めた遊離複合組織移植
も可能になっている。
加えて…
本症例では深腓骨神経の損傷があると考えら
れるため、その修復も必要となる。
↓ ↓ ↓
《神経損傷の治療》
神経損傷の治療
◎開放性の神経断裂
⇒直ちに神経修復を行うことが原則
○十分なデブリドマンと骨、筋などの合併損傷に対する
処置のみを行い、神経に対する処置は手術の条件を整
え、二次的に行うことも。(しかしやはり、早期に行うこと
が望ましい←神経変性と再生、機能回復の面から)
◎閉鎖性の神経損傷
⇒保存療法を用いながら筋力の回復状況をみて手術適
応を決定
※一般に3ヶ月経過をみて回復が認められない場合に
は手術を選択。
神経損傷の治療法~その1~
①保存療法
関節の良肢位の保持と関節可動域の維持に努める。
(神経の自然回復を期待して)
もし総腓骨神経麻痺による下垂足を放置してしまったら
→底屈筋腱の短縮
足関節は底屈位のまま拘縮して尖足変形
○尖足変形防止のため良肢位での装具を装着し、他動
的関節可動域訓練を行う。
○また、筋萎縮が進むと神経再支配が起こっても筋の
機能回復が困難なため、低周波治療で電気的に麻痺筋
を収縮させ、筋萎縮を予防。
神経損傷の治療法~その2~
②手術療法
a)神経剥離術→肉眼的に連続性のある神経損傷に対
して行う
b)神経縫合術→完全に断裂した神経幹や、神経剥離
の結果断裂が認められた神経束に対
して行う
c)神経移植術→大きな神経欠損があり、無緊張下の
神経縫合術が不可能な場合…自家神
経移植
d)神経移行術→神経縫合や移植が不可能な場合
神経損傷の治療法~その3~
③機能再建術
神経に対する手術を行っても運動機能の回復
が期待できない、あるいは回復に時間がかか
る場合
→→→
麻痺筋のかわりに近接の健常筋あるいは腱の走
行を変えて、麻痺筋の機能の代償を行わせる。
今後生じうる問題点
(1) 皮膚および軟部組織の損傷
(2) 骨癒合不全
皮膚および軟部組織の損傷
開放骨折に伴って皮膚が欠損したり、広範に座
滅した皮膚が壊死に陥った場合、骨折部や重要
組織を被覆するために早急に皮膚欠損を充填す
る必要がある。
皮膚および軟部組織の損傷
欠損した皮膚の下に、骨折部を覆うのに十分な筋
肉などの軟部組織がある場合・・・
これで骨折部を被覆し、皮膚は遊離植皮で修復
することができる。
皮膚および軟部組織の損傷
骨折部を覆うのに十分な筋肉などの軟部組織がない
場合・・・
いったんこれを筋弁で覆い、その上に遊離植皮を行
うか、筋皮弁によって皮膚欠損部を覆う必要がある。
皮膚および軟部組織の損傷
腫脹のため創縁がよらず縫合できないときは、皮
膚減切開を加えることもある。
最近では、微小血管外科の手技が発達し、遊離
血管柄付き皮弁移植、あるいは筋肉や骨を含めた
遊離複合組織移植も可能になっている。
下腿開放骨折では皮下組織が少ないため広範
囲の皮膚欠損を伴いやすく、これらの修復法を用
いる機会が多い。
骨折治癒の異常経過
(1)変形癒合
(2)遷延癒合
(3)骨癒合不全
変形癒合
解剖学的な形態と異なった、異常な形態で癒
合が完成した状態。整復位不良のまま固定が
行われた場合や、整復位が保持できなかった
場合などに起こることがある。
遷延癒合
骨折治癒に必要と予測される期間を過ぎても
骨癒合がみられない状態で、骨折部の癒合過
程は緩慢ではあるが残存しているもの。した
がって、骨癒合を妨げている因子があれば、こ
れを解決することによって再び骨癒合は進行す
る。不十分な固定が原因であることが最も多い。
骨癒合不全
骨折部の癒合過程が止まってしまった状態。
骨折端は丸みを帯びたり、筆の穂先状に委縮
し、骨髄腔は硬化した骨で閉鎖される。骨折間
隙は線維性の瘢痕組織で充満され、異常可動
性を認める。
骨癒合不全
骨癒合不全のうち骨折間隙に関節液様の粘
液性組織液がみられるものを偽関節という。骨
癒合不全の原因は不十分な固定、感染、骨欠
損などである。
遷延癒合と骨癒合不全
遷延癒合と骨癒合不全は、通常受傷後の期
間とX線像によって判定される。一般的に、骨折
後3~4ヶ月たっても癒合しない場合を遷延癒
合、6~8ヶ月たっても癒合しない場合を骨癒合
不全と呼ぶ。
またX線像で骨折端に骨硬化、骨委縮などが
明らかであれば骨融合不全とする。
治療
一般的な治療としては硬化あるいは委縮した
骨折端を切除し、骨髄腔を開通させ、十分量の
自家骨を移植するとともに安定した固定を施す。