ユーザーの認識による 感染の抑制を考慮した コンピュータウイルス拡散モデル 木下研究室 200902717 石野雄也 研究の背景 • スマートフォンを狙ったウイルスが急増している。 • スマートフォン端末とコンピュータ端末の接触 (USBケーブルなど)によるウイルス感染も報告さ れている。 • ユーザーの認識がコンピュータウイルスの拡散 を制御するために非常に重要だと考えられる。 研究の目的 異種端末間のウイルス拡散をSIRモデルでモデ ル化する。そのモデルにユーザーの認識を導 入し、それがウイルスの拡散を抑制する結果に なることが目的である。 変換! ユーザーの 認識・ふるまい SIR モデル 導入 SIR感染モデル • SIR感染モデルとは、感染症の流行過程を記 述するモデル方程式である。 • 感染において、以下の3つの状態に分類する。 感染可能 S S:感染可能端末 I :感染端末 R:完治端末 感染 感染 I (Susceptible) (Infected) (Recovered) 完治 回復 R ユーザーの認識とは 【前提】 • コンピュータがウイルスに感染した場合、多く のユーザーはアンチウイルスプログラムをイ ンストールする。 • それが完治したコンピュータ(状態R)になるこ とが前提である。 完治端末(R) 感染端末(I) アンチウイルスソフト導入 ユーザーの認識とは • コンピュータが未感染の場合でも、ユーザー はアンチウイルスプログラムをインストールし、 完治端末にする可能性がある。 • その可能性を、「ユーザーの認識」と呼ぶ。 未感染端末(S) 完治端末(R) ダ メ ! 絶 対 ! アンチウイルスソフト導入 感染端末(I) 感染させろよー ユーザーの認識とは 先ほどのSIRモデルにユーザーの認識を加え ることは、下記の赤線を加えることだと考える。 事前にウイルス対策 S 感染 I 回復 R 異種端末間でのウイルス拡散モデル • ウイルスの潜伏期間は考えない。 • 完治端末:アンチウイルスプログラムを持ち、同じウイルスの感染は起き ない。 事前にウイルス対策 𝑆1 感染 𝐼1 回復 𝑅1 回復 𝑅2 感 染 𝑆2 感染 𝐼2 事前にウイルス対策 微分方程式を立式して エンデミック(流行)が起こる条件について解析 【仮定】 • 端末は、感染端末との接触のみにより感染 • 感染端末の発生=S と I の積に比例 • 感染端末はγで回復 微分方程式 β:感染率 γ:回復率 𝜸𝟏𝟐 𝜸𝟏𝟏 𝜷𝟏𝟏 𝜷𝟏𝟐 𝜷𝟐𝟏 𝜸𝟐𝟏 𝜷𝟐𝟐 𝜸𝟐𝟐 エンデミック(流行)が起こる条件 • エンデミック(流行)にならないためには? ・r(K)<1となれば流行しない。 ・r(K)→行列Kの最大固有値→基本再生 産数𝑅0 :1人の感染者が、全感染 期間において、再生産する2次感 染者の期待数。 基本再生産数𝑅0 の導出 基本再生産数は、次世代行列より求めることが できる。 • 次世代行列とは、疫学において基本再生産 数を求めるために使用するものである。新規 の感染者人口ベクトルを次の世代の2次感染 者の感染ベクトルに変換するような行列であ る。 次世代行列K Z N:総数 1次感染者ベクトルである𝐼1𝑡 および𝐼2𝑡 が次世代行列Kに よって𝐼1𝑡+1 および𝐼2𝑡+1 の2次 感染者ベクトルに変換されて いる。 次世代行列より 基本再生産数𝑅0 を求める 𝑅0 = r(K) 感染齢(感染からの経過時間)に依存しないパ ラメータを持つ場合の基本再生産数𝑅0 は、次 世代行列Kの最大固有値であるので、計算より 下記のように導出できる。 グラフの導出 • 微分方程式よりグラフを作る • グラフを作り、ユーザー認識があるものと、な いもので比較するにあたって基本再生産数 𝑅0 は1より大きい場合で流行が起こっている ものとする。 グラフ作成時のパラメータ β:感染率 γ:回復率 𝜸𝟏𝟐 ユーザーの認識がない場合 𝛽11 = 0.05 , 𝛽21 = 0.3 𝛽12 = 0.1 , 𝛽22 = 0.05 , 𝛾11 = 𝛾21 = 0.06 , 𝛾12 = 𝛾22 = 0 𝜸𝟏𝟏 𝜷𝟏𝟏 ユーザーの認識がある場合(𝑅0 >1) 𝜷𝟏𝟐 𝜷𝟐𝟏 𝜸𝟐𝟏 𝜷𝟐𝟐 𝜸𝟐𝟐 𝛽11 = 0.05 , 𝛽21 = 0.3 𝛽12 = 0.1 , 𝛽22 = 0.05 , 𝛾11 = 𝛾21 = 0.06 , 𝛾12 = 𝛾22 = 0.03 ユーザーの認識がある場合(𝑅0 <1) 𝛽11 = 0.05 , 𝛽21 = 0.3 𝛽12 = 0.1 , 𝛽22 = 0.05 , 𝛾11 = 𝛾21 = 0.2 , 𝛾12 = 𝛾22 = 0.03 1<𝑅0 ,および𝑅0 <1の場合の比較 ユーザーの認識がある場合において1<𝑅0 ,および𝑅0 <1の場合のグラフの比較を行う。 左が𝑅0 ≒1.68>1の場合で、感染の増加が起こっているので流行は起こっている。 右が𝑅0 ≒0.55<1の場合で、感染はほぼ起こらず、ユーザーの認識によりほとんどの未感 染端末が完治端末に変化していく状況が見られる。 ユーザーの認識がある場合と、ない場合のグラフ比較 左がユーザー認識がない場合のグラフになり、右がユーザー認識を加えた場合のグ ラフである。基本再生産数𝑅0 は共に約1.68の値である。 結果・考察 ユーザーの認識を考慮していないモデルよりも、 認識を加えたモデルの方が感染を抑える結果に なった。 また未感染端末の減少率および回復端末の増加 率が上がり、未感染端末および感染端末は全て回 復端末へと推移した。これはユーザー認識のある モデルの微分方程式の場合、未感染端末から回 復端末へ推移する式を加えたことにより起こった 結果だと考える。 今後の課題 今回のモデルでは新規端末の追加および隔離 した場合について、またウイルスの潜伏期間が 存在する場合を考慮していないので、今後はそ れらについて考慮した場合のモデル評価を行 いたい。
© Copyright 2024 ExpyDoc