現代の金融入門 第6章 3.証券化の光と影

2010年5月21日
08BC101 Z 高橋幸弓
機能分解と資産流動化(p.208~211)
情報生産機能(オリジネーション機能)
与信を行って新たに債権を創出する機能。これを行う者
をオリジネーター(原債権者)と呼び、資産金融型証券に
近年
おいて、貸出債権を第三者から買い集める、又、第三者
従来
に貸し出して最初に財産を創り、証券発行体である特別
資産提供とそれぞ
資産提供と一体化
目的会社や信託会社に移す業務を行う。
された形で提供
れ別の主体によっ
て遂行
○今までの銀行
貸出で資産運用を行い、オリジネーター兼サービ
同時に
サーとして活動してきた。
貸出はその満期まで保有されるのが通常で、銀
行は自分の勘定に資金の提供を合わせておこ
なってきた。
審査
貸出
監視
銀行による情報生産活動とそのB/S上の資金額の
オリジネーター
サービサー
間には強い正の相関は当たり前であった。
このように情報生産機能を遂行してきた
○近年の米国の大手銀行
審査
貸出
貸出債権の
監視
譲渡
譲渡先
中小銀行、米国から見た外国銀行、
こうした動きを
生命保険会社や年金基金等の機関
投資家など
貸出債権譲渡(ローン・セール)と呼ぶ。
○その他の動き
複数の銀行がシンジケート団を結成し、同一条件の契約に基づいて
協調融資を行う。
幹事銀行(=アレンジャー)が借入
先とシ団との間での契約条件の
決定のための交渉やその後の履
行確保の役割を果たす。
シ・ローンの場合には、契約条
件が同一なため、シ団に参加す
る銀行の間で貸出債権の譲渡
が行いやすい。
○その他の動き
完全には貸出債権の譲渡を行わない貸出債権譲渡方法
ローン契約
債務者
金融機関A
金融機関B
ローン・パーティシペーション契約
貸出債権を、債権者と債務者間の権利義務関係を移転・
変更せずに、原貸出債権に係る経済的利益とリスクを原債
権者から参加者(ローンの購入者/金融機関)に移転
原債権者は買戻し条件がないこと、原契約と同一の条件
を参加者に引き継がせることなど、一定の要件を満たせ
ば、債務者に通知することなく貸出債権のうちの参加割
合に相当する部分をオフバランス化することができる。
金融機関の貸出債権流動化における主要な手法として利
用される。また、債務不履行が生じたときには、売却側
は契約に沿った義務を履行しているかぎり、支払保証義
務を負わない。
こうした分業化によってより効率的な情
報生産機能の提供が可能になる。
証券化の仕組み(P.212~215)
住宅ローン債権(モーゲージ・ローン)の場合
個々に異質的だが、大量にプールされると、
個々の異質性が相殺され合い、プール全体の
特性は統計的に安定したものになると想定で
きる。
個々の住宅ローン債権の質を評価することは
困難だが、MBSの質は一般の投資家にも比較
的評価しやすいものになると期待できる!!
倒産隔離
原債権者がもし倒産しても、SPVに譲渡済みの債
証券化のために設立されたペーパー・カンパニー。発行
権には、原債権者に債権を持つ者(リスク移転先)
する証券の信用度は、発行体の信用によってではなく、
からの請求が及ばないようにする。
あくまでも担保となっている債権の内容によって決まる。
外部の保証会社(モノライン)による
信用補完の措置をつける場合もある
優先劣後構造
トランシェ分けをし、請求順位の高いもの
多くの主体が分業体制を組んで、証券化が実現!
(AAAなど)を投資家に、劣後するものはオリジ
→分業化の発達!!!
ネーターが保有するといった措置がとられた
りもする。
サブプライム・ローン問題(p.216~219)
当初は
政府支援企業(GSE)
ファニーメイ、フレディマック
住宅ローン債権
証券化
住宅ローン債権
住宅ローン債権 住宅ローン債権
民間の銀行
徐々に
政府支援企業(GSE)
民間主体
ファニーメイ、
フレディマック
大手の投資銀行
プライム・ローン
一定の基準を満たす
サブプライム・ローン
基準に達さず、信用度がプライム
ローンよりも低い
プライム
プライム
民間の銀行
民間の銀行
サブプライム
サブプライム
モーゲージ・バンク
民間主体
サブプライム
サブプライム
サブプライム
大手の投資銀行
シニア
メザニン
エクイティ
優先劣後構造
実際はAAA~Cまで17段階
AAAの格付けが取得できるように設計。
近年の資金運用の状況にあっては機関投資家が購入。
メザニンに投資する投資
家は相対的に少なかった。
ハイリスク・ハイリターン商品を好むヘッジファンド
等が購入。
第二次証券化商品
CDO
この過程が何度も繰り返
シニア
メザニン
し行われていた!!!
エクイティ
メザニン
メザニン
メザニン
メザニン
メザニン
プール
その結果
証券化の担保となっている債権と蘇生された証券化
商品の間の関係がきわめて複雑なものとなった。
証券化商品のリスク特性
の評価が困難に!!!
多くの投資家は、格付会社が証券化商品に付与した
格付けだけを目安に投資を行っていた。
しかし
アレンジャー
一定量の原材料であるサブプ
ライム・ローンで、出来るだ
け大量のAAA資産を創りたい
証券化商品の
実際の質は低下
格付け会社
利益相反
格付け手数料を得たい
発行体の要望を受け入れ
るかたちで安易にAAAの
格付けを付与!!!
格付に対する信認が崩壊
投資家:複雑な内容の証券化商品の品質を自分では
評価できないために、買わない
金融危機へ
ヘッジファンドや投資専門会社:
保有している証券化商品を売却できない!!
ヘッジファンド等に投資していた投資家:
それらの経営不振を懸念して一斉に解約を求めた
り、継続的な資金提供に応じなくなった