共生2連絡会議 12月20日 地球温暖化に対する国際的取り組み ‐モントリオール出張報告‐ 地球環境モデリングプログラム 近藤洋輝 1 2 3 4 地球環境問題、地球温暖化問題の発端 気候変動枠組み条約とIPCCの意義 京都議定書採択と国際情勢 IPCC/AR4への寄与を目指す共生プロ ジェクト 3 モントリオール会議出張報告 地球環境問題の国際的取り組み *19世紀:自然保護(Conservation):自然と人の調和 自然保存(Preservation): 野生生物最優先 *1957~58年: 国際地球観測年(IGY): 全球規模の観測 *1962年:「沈黙の春」(Rachel Carson):農薬被害に警笛 *1968年: 生物圏会議:人間活動による生態系への影響 を懸念 *1972年:「成長の限界」(ローマクラブ):地球の許容力 *1972年: 人間環境会議(ストックホルム会議):自然環 境と人工的環境 の両立を前提とした環境保護 *1987年: モントリオール議定書:オゾン層破壊物質 の (製造・使用)規制 <京都議定書の10年前> 代替え物質 オゾン層破壊物質 オゾン層破壊物質 と 代替え物質(IPCC/TEAP、2005年) 対流圏CFC-11の対流圏CFC-11の存在量(IPCC/TAR) 低・中緯度(60N~60S)におけるオゾン全量 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の成立経緯 *気候モデルによる二酸化炭素増加実験 → 温暖化を示唆 *1979年第1回世界気候会議 → WCRPなどの立上げ *1985年フィラハ会議 → 温暖化の警告、対応策の勧告 *1988年6月北米の干ばつ・熱波のもとで、米上院でハン センが「99%発言」→社会的反響 *1988年6月G7後に、トロント会議 → トロント目標: 「2005年には1988年レベルから20%削減させる」 *1988年11月 IPCC設立 世界気象機関(WMO)・国連環境計画(UNEP)の協力 気候変動に関する国連枠組み条約 (UNFCCC) の採択 * 1990年8月、IPCC第1次評価報告書(FAR)公表 → 科学的知見(WG1)、影響評価(WG2)、対応戦略(WG3) *1990年11月、第2回世界気候会議 → 閣僚宣言: - 「国際的枠組みにより、温暖化防止に取り組むべきである」 *1990年12月、国連が政府間交渉会議の開始を決議 *1992年2月、FARの補遺公表 → 「IS92排出シナリオ」(6通り)が想定。 * 1992年5月、国連がUNFCCCを採択 - 「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすことにならない水準において、 大気中の温室効果気体の濃度を安定化させることを究極の目的とする」 (第2条) 気候変動枠組み条約(UNFCCC) (1) 第1条: 定義 - Climate change, Climate system などの用語の定義 第2条:目的 ‐Ultimate objective: to achieve・・・stabilization of greenhouse gas concentrations in the atmosphere at a level that could prevent dangerous anthropogenic interference with the climate system 第5条: 研究と組織的観測(Research and systematic observation) 気候変動枠組み条約(UNFCCC) (2) 締約国会議(Conference of Parties、COP) *原則として、年末に会合を開く 分科会(2つ) *原則として、年末のCOP会期中及び、年半ばに開催 科学上及び技術上の助言に関する補助機関会合 (SBSTA) 実施に関す補助機関会合(SBI) 科学・技術上の助言に関する補助機関(SBSTA) 評価報告書 UNFCCC/COP IPCC 要請 SBSTA SBI* 技術報告書 特別報告書 作成・提出 *注: SBI = 実施に関する補助機関、 SBSTAとSBIを合わせてSBと称する UNFCCCに関連した活動 *1992年6月、国連環境開発会議(リオサミット): - UNFCCCへの署名:日本を含む155カ国 - 持続可能な開発を目指す - アジェンダ21:温暖化防止、オゾン層保護、廃棄物再利用 などの行動計画 *1994年2月、IPCC:放射強制力に関する特別報告書 *1994年3月、UNFCCC発効 *1995年3月、第1回締約国会議(COP1、ベルリン、) → 「ベルリンマンデート」を採択: COP3までに、 - 温暖化防止のための政策措置 - 温室効果気体排出抑制および削減目標の設定に関し、法的 拘束力を持った議定書策定交渉開始を決める IPCCの活動経緯 第1次評価報告書(1990) * 過去100年間に地上気温は、0.3~0.6℃上昇した * 21世紀末までに、地上気温は排出シナリオにより、1~3℃上昇 * 海面水位は、シナリオA(規制なし)では、65cm上昇 第2次評価報告書(1995) * これまでに、識別可能な人為的影響が全球の気候に現れている。 * 21世紀末までに、エーロゾルの影響も考慮し、排出シナリにより、 ー 地上気温は、約2℃(1.0~3.5℃)上昇 ー 海面水位は、約50cm(15~95cm)上昇 京都議定書(1):対象と達成目標 *1997年、COP3(京都会議)で採択: - 温暖化予測の不確実性低減の必要性を確認 - 具体的数値による達成目標や排出権取引を含む *排出削減対象の温室効果気体(ガス)(GHG): - CO2 , CH4 , N2O・・・1990年を基準 - HFCs , PFCs , SF6・・・1995年を基準 *主要先進国の目標率(2008~2012年に達成、合計-5.2%) ‐ 日本: -6 % , 米国: -7 % , EU: -8 % , カナダ: -6 % ‐ ロシアおよびニュージーランド: 0 % ‐ オーストラリア: +8 % , ノルウェー: +1 % * 吸収源の扱い: - 1990年以降の土地利用・土地利用変化・林業によるもの算入。 京都議定書(2):京都メカニズム *先進国間の排出権取引: - COPで定めるガイドラインにより、数値目標の取引を認める *クリーン開発メカニズム(CDM): - 先進国・途上国間で、GHG削減のプロジェクトを行った場合 それによる削減量に関し、認証手続きにより、やり取り可能 *共同達成(joint fulfillment ) - 温室効果ガス削減の数値目標を数カ国で共同で達成すること。 共同を組むことを「バブル」と呼ぶ。例:「EUバブル」 * 共同実施(Joint Implementation <JI>) - 先進国間で共同で温室効果ガスの排出量の削減を行うことで、 排出削減単位(ERU)を、関係国間で移転(又は獲得)可能。 京都議定書をめぐる経緯 * COP6 再開会合(ボン、2001年7月) - 京都議定書批准・運用に向けた合意(米国を除く) 第3次評価報告書(2001年9月) *COP7 (モロッコ・マラケッシュ、2001年11月) ‐ 京都議定書の実施手続きを決める *持続可能な開発に関するサミット(「リオ+10」、 ヨハネスブルグ、2002年8/9月): ‐ 京都議定書の発効にむけ、未批准国への呼びかけ *COP8(インド・ニューデリー、2002年10/11月) - デリー宣言:京都議定書の早期締結要請 地球温暖化を巡る新たな情勢 IPCCは,第4次評価報告書を2007年完成予定で活動開始 今後研究成果を集約 2004年小泉・プーチン会談で、京都議定書に対しロシアが批 准の検討を示唆→11月批准 地球観測サミットによる、地球観測体制の重点化 - 地球観測衛星:TRMM(’97), TERRA(’99)にくわえ, 昨年には,ENVISAT, AQUA, ADEOS-Ⅱが打ち上げ。 - 海洋には,2000年よりアルゴ計画(3000個の中層フロ -ト投入による高度海洋監視システム)が進展。 - GEOによる、GEOSS十年実施計画策定へ 地球シミュレータの運用開始(2002年3月)による成果 総合科学技術会議による地球温暖化イニシャティブの推進 AR4へ向けたIPCC構成図 国連環境計画 (UNEP) 世界気象機関 世界気象機関 (WMO) (WMO) IPCC総会 議長 副議長(3) (物理科学的評価) (影響・適応・脆弱性) (緩和策) インベントリー・ タスクフォース 共同議長(2) 副議長(6) 共同議長(2) 副議長(6) 共同議長(2) 副議長(6) 共同議長(2) メンバー(12) 技術支援室 技術支援室 (英国) 技術支援室 (オランダ) 技術支援室 (日本) 第1作業部会 技術支援室 (米国) 第2作業部会 第3作業部会 新ビューロー体制 IPCC第19回総会(2002年4月)より始動 IPCC新ビューロー(30人体制維持) - 議長:Rajendra K. Pachauri(インド) - 副議長(3)、 - 各作業部会:共同議長(2)、副議長(6) - 国別温室効果ガスインベントリーに関するタスクフォース (TFI): 共同議長(2) 第1作業部会新体制 ‐共同議長:Susan Solomon(米)、Dahe Qin(中国) - 技術支援室(TSU): 米国 スケジュール:経緯と予定 第4次評価報告書(AR4)完成予定: - 第1作業部会(WG1):2007年1~3月までに - 第2、第3作業部会:2007年7月中旬までに - 統合報告書(作成する場合):2007年末までに AR4の内容構成及び、作業計画: - 第1回(モロッコ・マラケッシュ、2003年4月)、第2回スコーピング会合(ベルリン、 2003年9月)などの討論を経て、案の検討 - 各作業部会全体会合および第21回総会(ウイーン、2003年11月): 章・節立て案の審議・承認、但し統合報告書は継続審議 - 統合報告書に関するスコーピング会合(ジュネーブ、2004年7月)で、作成する 場合の案の検討 - WG1第1回LA会議(伊・トリエステ、04年9月)、第2回LA会議(北京、05年5月) - 第22回総会(ニューデリー、2004年11月):統合報告書の作成決定 執筆編集体制: - IPCCビューロー会議(ジュネーブ、2000年4月):各作業部会ビューローからの 選出に基づき、統括執筆者(CLA)、責任執筆者(LA)、査読編集者(RE) 選定 総合科学技術会議(CSTP) CSTP: 2001年に内閣府の下に設置 - 総理大臣(議長) , 6 関係大臣、 8専門家により構成 科学技術重点4分野: 第二期科学技術基本計画(2001~ 2005年度) ライフサイエンス、情報通信、環境、 及びナノテクノロ ジー・材料 環境分野における研究イニシャティブ(5課題): 地球温暖化;ゴミゼロ型・資源循環型技術;自然共生型 流域圏・都市再生技術;化学物質リスク総合管理技術, 全 球規模水循環変動 総合科学技術会議(CSTP) : 総理大臣(議長)、 関係大臣 (6) 、および 専門家議員(8) 重点分野推進戦略専門調査会 環境研究開発プロジェクトチーム 他のプロジェクトチーム CSTP専門家議員 (議長), CSTP専門家議員(3), および各イニシャティブ座長(6) 地球温暖化研究イニシャティブ 気候変動分野 (4 Programs) 他の環境分野の研 究イニシャティブ(4) 対策技術分野 (2 Programs) 地球温暖化研究イニシャティブの推進体制 予測モデル開発・気候変化研究プログラム 気候変化予測のためのモデル開発 - 進行中の各省庁における独自のモデル開発の間の連携 - EUや米国の先進研究センターとの国際協力 環境省予算による プロジェクト 国土交通省(気象庁)予 算によるプロジェクト 主眼点 文部科学省予算によ るプロジェクト 主眼点 主眼点 - アジア地域への影響 - 地球シミュレータの活用 - 数値予報モデルとの相互作用 - 社会経済モデル - 全球気候変化 - 全球及び地域(日本周辺)の気候 - 人間活動への影響評価 - 基礎・学術的知見 - 気象・海洋の現象 モデル開発における共通部分の協力 文部科学省 古気候の復元による検証 深海掘削計画 IPCCへの貢献 三位一体の研究開発推進 シミュレーション プロセス研究 地球フロンティア (モデル研究) (平成9年10月発足) 観測システム 地球シミュレータ 地球観測フロンティア (平成14年3月運用) (平成11年8月発足) 「地球変動予測の実現に向けて」 (旧科学技術庁航空・電子等技術審議会地球科学技術部会報告:平成8年7月) 地球観測強化に向けた取り組み 2002年: 持続可能な開発に関する世界サミット - 調整された地球観測の差し迫った必要性 2003年7月: 第1回地球観測サミット(ワシントンDC) - 包括的な、調整された、持続的な地球観測を目指す宣言文採択 - 地球観測作業部会(GEO)を設置→ 10年実施計画の策定開始 2004年4月: 第2回地球観測サミット(東京) - 枠組み文書採択→全球地球観測システム(GEOSS)の範囲と意 図を定義 2005年2月: 第3回地球観測サミット(ブリュッセル) - GEOSS確立のための10年実施計画の採択 文部科学省RR2002環境分野 人・自然・地球共生プロジェクト 温暖化予測「日本モデル」ミッション: * 高分解能大気海洋結合モデルを用いた地球温暖化予測に関する研究(東大 CCSRほか) * 大気海洋結合モデルの高解像度化(電力中央研究所ほか) * 地球環境変化予測のための地球システム統合モデルの開発(地 球フロンティアほか) * 諸物理過程のパラメタリゼーションの高度化(大気・海洋分野)(東大ほか) * 陸域生態系モデル作成のためのパラメタリゼーションに関する研究(東大生研) * 高精度・高分解能気候モデルの開発(気象研究所 ほか) 水循環変動予測ミッション: * 広域水循環予測及び対策技術の高度化(京大防災研) * アジアモンスーン地域における人工・自然改変に伴う水資源変化予測モデルの開発 共通基盤技術: * 先端的四次元大気・海洋・陸域結合データ同化システム その他環境関連分野の研究 京都議定書の発効と課題 発効の必要条件: * 55カ国以上の批准、 批准した付属書Ⅰ国の90年におけるCO2排出 量が付属書Ⅰ国全体でみて55%以上、 これらが満たされてから90日後 2004年11月、ロシアの批准 → 2005年2月発効 京都以降の枠組みの課題: - 米国の未批准 → 実効性のある枠組みと参加可能な枠組み - 中国、インドなどの急速な排出増大 → 途上国の持続可能な開発をどうするか 京都以後をめぐる情勢 COP10 (アルゼンチン・ブエノスアイレス、04年12月) * 京都議定書発効を歓迎 * 京都以後に関する政府専門家セミナー開催(05年5月)決定 * 文科省主催のサイドイベントで共生プロジェクトなどの成果 発表 → 共生課題4に対する高い関心 SBSTA22 (独・ボン、05年5月) * 直前に政府専門家セミナー * 研究界と政策決定者とのコミュニケーションの強化 COP11及び、京都議定書第1回締約国会合(COP/MOP1#) * 2005年11~12月に加・モントリオールで開催予定 ***************************************************************************************************************** #:注)COP/MOP1 = the First session of the Conference of the Parties serving as the Meeting of the Parties to the Kyoto Protocol モントリオール出張報告 会議: -気候変動枠組み条約(UNFCCC)締約国 会議第11回会議(COP11) * SBSTA23、及び SBI23 -京都議定書締約国第1回会合(COP/MOP1, 1st Meeting of the Parties serving as the Conference Parties to the Kyoto Protocol) サイドイベント 展示 COP11&COP/MOP1 参加国・機関: UNFCCCの181締約国、2オ ブザーバー国(ローマ法王庁、イラク)、 23国連関連国際機関、25政府間機関、365非 政府機関(NGO) 参加者数: 9474人 COP締約国: 157カ国 プレート2種類:COP/MOP1に切り替えるため (批准国:黒字に白、未批准国:白地に黒) 会議の主要な意義 京都議定書(KP)が発効して始めての会合 マラケシュ合意文書がCOP/MOPとして改めて正式に採択さ れ、KP実施運用体制が確立 全ての国の参加による「気候変動に対応するための行動に 関する対話の開始 KPの第3条9項(… The COP/MOP shall initiate the consideration of such commitments at least seven years before the end of the first commitment period…)により、2012年の7年前である2005年 の今回から、先進国の更なる削減約束に関する審議開始。 2007年11月開催を予定していたCOP13の開催時期を4週間 遅らせることにより、同年秋発表予定のIPCC統合報告書の 内容がCOP13の前に政策決定者に伝わる時間的余裕確保
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