社会資本・住宅ストックに起因した 多種環境負荷の LCAに基づいた評価手法 名古屋大学大学院工学研究科 地圏環境工学専攻 日本技術開発(株) 玉野総合コンサルタント(株) 林良嗣 加藤博和 ○喜代永さち子 大浦雅幸 北野恭央 Life Cycle Assessmentとは ある製品に着目 原料採取 生産 流通 使用 維持管理 廃棄 ・ライフサイクルにわたる環境影響を総合評価 ・より環境影響の少ない材料・生産プロセスを検討 するための手法 ・主に工業製品の環境性能評価の分野で発展 ・ISO14000シリーズによる国際標準化 近年、土木計画学の分野においても適用事例あり 土木構造物を対象とした既往LCA研究 道路: 岩渕ら(1996), 加藤 (1998) トンネル: 鉄道: 井村(1997) , 蜷川ら(1998) 港湾: 前川(1997) 仲嶋ら(1997) 都市システム: 盛岡ら(1998) 問題点1:同一性能代替案の比較が前提 社会資本・建築物等の計画代替案は扱えない 問題点2:CO2のみの評価 局地環境負荷・廃棄物・自然改変といった問題を扱っていない ISOで規定されたLCAの枠組みで解決可能 目的 LCAの基本的枠組みに立ち返り、 社会資本整備・住宅ストックに伴う、 各種環境負荷をLCAの枠組みでに推計 推計した各種環境負荷を統合評価 する手法を提案 ISO-LCAの手順 1.Scoping 適用目的と範囲の明確化 2.Inventory Analysis 環境負荷発生の定量的把握 問題点1:同一性能代替案 の比較 →システム境界の拡張 (ELCEL)による 異性能代替案比較へ の拡張 3.Impact Assessment 環境へのインパクトの評価 4.Interpretation 評価結果の解釈 問題点2:CO2のみの評価 →多種の環境負荷 評価への拡張 Inventory Analysis 問題点1:同一性能代替案の比較に対して、 システム境界の拡張 -ELCEL(Extended Life Cycle Environmental Load )概念- 相互影響 対象施設 活動(交通など) 施設自体から生じる環境負荷 + 間接的・波及的に生じる環境負荷 性能が異なる代替案の比較が可能 問題点2: CO2のみの評価に対して、 多種環境負荷推計 -組み合せ法- 負荷量=Σ((内包環境負荷原単位×投入物質量・活動量)) 靏巻ら(1997)による10種類の環境負荷に関する算定結果を使用 多種環境負荷の発生量を推計 Impact Assessmentの段階で統合評価 Impact Assessment 各種環境負荷物質の Impact Category 内への位置付け -(1)Classification- 1.Scoping 適用目的と範囲の明確化 2.Inventory Analysis 環境負荷発生の定量的把握 Impact Category内環境負荷 物質間の重み付け -(2)Characterization- 3.Impact Assessment 環境へのインパクトの評価 Impact Category間重み付け –(3)Weighting- 4.Interpretation 評価結果の解釈 (1)Classification Impact Categoryと関連環境負荷物質 Impact Category 関連環境負荷物質 エネルギー消費 エネルギー全体 地球温暖化 CO2 , N2O , CH4 酸性雨 NO2 , SO2 , NO オゾン層破壊 CFC-11 , CCl4 廃棄物処理 産業廃棄物 水質汚濁 COD , T-N , T-P 大気汚染 NO2 , SO2 (2) Characterization Impact Category内統合指標算出 Impact Category内 各環境負荷発生量 環境影響 ポテンシャル量 重み付け = Category End-Point Category内統合指標の一例 Impact 環境負荷 重み付け設定機関 物質 Category CO2 IPCC 地球温暖化 N2O CH4 NO2 酸性雨 SO2 NO Category End-Point GWP (Intergovernmental Panel on Climate Change) (Grobal Warming Potential) CML AP (Center of Environmetal Science University of the Leiden) (Acidification Potential) (3) Weighting Impact Category間の重要度決定 -Weightingの手法- パネル決定法 専門家が構成するパネルより決定 経済価値(金額)換算 Distance to target ターゲットとする値と現実の排出量を比較 松野ら(1998)の重み付け手法(Distance to target)を適用 ⇒最も科学的客観性が高い 松野ら(1998)の重み付け手法 (Distance to target) Impact Category重要度の決定 基準化 資源消費: 汚染物質排出: 低減係数 資源の消費量 × 国内年間消費量 物質の排出量 国内年間排出量 × 1 残存年数/100 国内最悪値 環境基準値 ※この段階で属地性の考慮も可能 Impact Category 低減係数 資 エネルギ 源 ー消費 消 費 廃棄物 地球温暖化 汚 染 酸性雨 物 質 排 水質汚濁 出 大気汚染 2.0 20.0 2.2 1.0 4.5 2.6 EFP =Σ(カテゴリ重要度×Category End-point) EFP: Environmental Friendliness Point (環境への優しさ指数) EFP適用例① : 新規地下鉄整備 道路距離 8km 道路のみ 区間総需要 10万人/日 A地点 1.5万人/日 転換 B地点 地下鉄を新規整備 •複線電化 •勾配なし •乗客数は全断面で一定 結果 自動車走行 車両維持 鉄道運行 建設段階 ELC-EFP 5.5%削減 ELC-EFP(10^-3EFP) 車両製造 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0.9447 0.9002 波及効果である 自動車走行に 伴う負荷が圧倒 的に大 整備無し 地下鉄 EFP適用例②:住宅ストック 対象地域:名古屋市 対象期間:1991~2040年 (5年単位) *住宅ストックの建設量・存在量・解体量は住宅コーホートモデルより推計 0歳 ・ ・ ・ ・ 1歳 r0 ・ ・ 2歳 r1 ・ ・ ・・ ・ 3歳 r2 総戸数 ・ ・ ・ ・ C1,y C2,y C3,y Σ Ct,y y+1年 C0,y+1 C1,y+1 C2,y+1 C3,y+1 Σ Ct,y+1 y+2年 C0,y+2 C1,y+2 C2,y+2 C3,y+2 Σ Ct,y+2 y年 C0,y ・ ・ ・ rt :t歳の住宅の残存率(1-解体率) Ct、y :年次yでt歳の住宅戸数 ・ ・ ・ 住宅コーホートモデル 結果 ELC-EFP/5年 廃棄 維持管理 運用(直接) 建設 運用(間接) 0.25 0.25 ELC-EFP ↓ 年々増加傾向 0.2 0.2 0.15 0.15 廃棄段階での負 荷が圧倒的に大 0.1 0.1 0.05 0.05 00 90 3035 35 40 40 95 95 0000 0505101015152020252530 年 EFPの妥当性に関する考察 適用例① : 新規地下鉄整備 -自動車走行によるEFP値が大 -新規地下鉄整備効果⇒自動車走行による負荷削減 整備による間接的・波及的な環境負荷削減効果を表現 適用例②:住宅ストック -廃棄段階のEFP値が高い 今後大量建設時代の建築物の更新期到来⇒廃棄物量増加 廃棄物処分場に関する状況が逼迫⇒廃棄物の重み付け大 反 映 ケーススタディにおけるEFPによる評価は妥当 成果 社会資本整備・住宅ストックに伴う、 各種環境負荷をLCAの枠組みで推計 環境負荷統合評価指標 EFP(Environmental Friendliness Point) を開発 ケーススタディでEFP指標の妥当性を確認 今後の課題 重み付け係数の再検討 統合評価方法論の適用範囲の拡大 各種社会資本整備 更新 〃 各種施策 環境面からの評価
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