たつ りゅう 辰(竜)にまつわる民話 竜とニワトリ(沖縄県) むかしむかし、山と海とはさまれた、小さな 村がありました。 村人は山の木を切ってまきをつくり、船で 遠く那覇(なは)の町まで売りに行って暮らし ていました。 この村には貧乏だけど、名医と評判のお 医者さんがいます。 竜とニワトリ(沖縄県) 1 ある日のタぐれ、お医者さんのところへ金 持ちの娘が一人でたずねてきました。 お医者さんは一目で娘が何かの化け物で ある事を見破りましたが、何も言わずに娘が 痛いとうったえるところをみてあげました。 「どれどれ。・・・これは!」 なんと化け物の耳の中で、一匹のムカデ があばれているのです。 「これは大変だ。だがその前に、あんたの正 体を現しなさい!」 竜とニワトリ(沖縄県) 2 娘はコクリとうなずいたかと思うと、口から 白い霧(きり)を吹き出して一匹の大青竜(だ いせいりゅう)になりました。 そして目に涙をいっぱいためて、お医者さ んを見つめています。 「おお、よしよし。今に楽にしてあげよう」 お医者さんはそう言いながら、竜の耳の中 にニワトリを入れてやりました。さあ、それか ら青竜の耳の中で、ムカデとニワトリのたた かいがはじまりました。 竜とニワトリ(沖縄県) 3 ムカデとニワトリは竜の耳の中で大暴れし ましたが、竜はジッとガマンしました。それか ら間もなく、竜の耳からニワトリがムカデをく わえて出てきました。 「よかった、よかった。これで大丈夫だ」 すっかり元気を取りもどした竜は、お医者 さんに竜胆(りゅうたん→リンドウの根を乾燥 した胃薬)を差し出して、ニワトリには大きな 頭を何度も下げて天にのぼっていきました。 竜とニワトリ(沖縄県) 4 その後、竜はいくら地上に大雨を降らせて いても、そこにニワトリの姿を見つけるとニワ トリにケガをさせてはいけないと思い、すぐ におとなしくなったという事です。 福娘童話集許可転載<http://hukumusume.com/douwa/> おしまい 5 竜とニワトリ(沖縄県)
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