渦電流探傷技術による高密度プリント基板の_x000b_配

A-5
渦電流探傷技術による高密度プリント基板の
配線形状変化部を対象とした欠陥検出法の研究
金沢大学大学院 自然科学研究科
電子情報工学専攻
宇野彰吾
目次
1.研究背景と研究目的
2.渦電流探傷法によるプリント基板検査原理
3.配線形状変化部の測定
4.微分処理によるオフセット除去
5.配線形状変化部を対象とした欠陥検出法
6.まとめ、今後の課題
研究背景、目的
研究背景
現在、電子製品の小型化・高機能化により、
プリント基板(PCB)配線の高密度化が進んでおり
基板検査への要求が高まっている
プリント基板は電子機器に組み込まれて出荷されるまでに
様々な検査を受ける
プリント基板
配線単体検査
プリント回路板
検査
プリント基板
実装後の検査
(断線、短絡検査)
(機能検査)
(性能検査)
本研究室検討分野
検査の初期段階で不良品を見つけることが重要
プリント基板検査法
パターン欠陥検査
電気的導通検査
(非接触・非導電性検査)
(接触・導電性検査)
•形状検査が可能
•導電性検査が可能
•高速での検査が可能
•接触するため対象に傷の可能性
•導電性の検査はできない
•設計図によりプリント基板の配線及び位置
情報は予め分かっている
•設計図と照らし合わせて傷の発見を行う
PCB pattern sheet
2種類の検査方法を併用してプリント基板検査が行われている
渦電流探傷法
ECT:Eddy-Current Testing
励磁コイルで対象に渦電流を発生させ、
センサで渦電流の変化部分を検出する
方法
非破壊、非接触で導電性、形状などの
検査ができる
金属棒や配管の自動探傷に
広く用いられている
ECT原理
プリント基板検査法の比較
パターン欠陥検査
電気的導通検査 渦電流探傷検査
形状
○
×
○
導電性
×
◎
○
非接触
◎
×
○
高速性
◎
×
△
プリント基板検査に対して渦電流探傷法は効果的
研究目的
渦電流探傷法によるプリント基板検査システムの構築
→プリント基板の欠陥の有無を自動判別する探傷装置
現在、配線幅70 mmまでの直線部分の断線傷が探傷可能
プリント基板は複数の配線パターンから構成される
配線形状が変化する箇所の傷の検出が必要
曲部では直線部と違い、検出信号が変わる
傷の有無によって検出信号がどのように
違うか分からない
プリント基板の配線形状変化部の欠陥検出に関して検討を行った
渦電流探傷法による
プリント基板検査原理
渦電流探傷プローブの構成
励磁部(ミアンダコイル)
•励磁電流:I=200 mA
•励磁周波数:f=5 MHz
細長い導体に対して方向性
を持った渦電流を励磁可能
ECTプローブ
検出部
(SV-GMR:スピンバルブ形巨大
磁気抵抗効果素子)
•サイズ:50 mm× 49.5 mm
•印加電流:I=5 mA
•高分解能で検査可能
•磁束の変化に伴い抵抗値が変化
する
一定方向の磁束に対して
高感度検出が可能
渦電流探傷法によるプリント基板検査原理
y
x
z
Exciting current (AC)
y
z
x
磁束密度Bzをセンサが感知し、端子電圧を測定することで配線の
傷、形状を検出する
断線傷及び配線形状変化部の検出信号の変化
傷信号として誤認
される可能性
Bx
By
Bz
生信号
Defect
Exciting current
Meander coil
SV-GMR
Disconnection
Bz
Exciting current
Meander coil
Eddy currents
Bz
直線状配線の配線信号及び傷信号
検出画像(傷無し)
検出信号(傷無し)
検出画像(断線傷)
検出信号(断線傷)
プリント基板の
配線形状変化部の測定
測定モデル
IC変換基板
→配線幅が一定で小さい
→高密度だが配線パターンが
限定的である
・配線に一定の渦電流を流すこと
ができる
・検出する信号の種類が少なくな
り、検査が容易となる
エルボータイプ
オープンエルボータイプ
2種類の配線曲部について
局所的に測定する
測定モデル
Partial
defect(50%)
Defect 100 mm
Width 200 mm
傷無し
Width 200 mm
断線傷:100 mm
測定間隔:1 step=0.05 mm
欠け傷:断線傷の50%
Partial
defect(50%)
Defect 100 mm
Width 200 mm
Width 200 mm
Width 200 mm
Width 200 mm
合計6種類の配線を測定し、信号を取得する
測定結果
不必要な信号を含む
検出画像に微分処理を施す
検出画像(傷無し)
検出画像(断線傷)
検出画像(傷無し)
検出画像(断線傷)
オフセット電圧を除去できる
配線信号と傷信号のみの
画像にできる
微分処理によるオフセット除去
検出信号の微分処理
オフセット電圧が生じているため信号を
二次元表示した場合、認識し難い
→走査中の振動によるリフトオフ高さの変化
(配線とセンサの距離)
→配線に対して完全に平行走査できていない
微分処理を施す
検出信号
Vout( xn  x)  Vout( xn )
x
V (n  1)  Vout(n)
 out
n
 Vout(n  1)  Vout(n)
Vgrad( xn ) 
Vgrad : 出力電圧の微分値,Vout : 出力電圧,
x:測定座標,n : n番目の走査点
オフセット除去信号
オフセット電圧が除去できる
微分処理結果(エルボータイプ)
配線信号が検出
オフセット除去画像
(傷無し)
オフセットを除去することで
画像が鮮明になる
オフセット除去画像
(断線傷)
傷信号が検出
オフセット除去画像
(欠け傷)
微分処理結果(オープンエルボータイプ)
配線信号が検出
オフセット除去画像
(傷無し)
オフセットを除去することで
画像が鮮明になる
オフセット除去画像
(断線傷)
傷信号が検出
オフセット除去画像
(欠け傷)
配線形状変化部での検出信号の振幅相対関係
配線領域
曲部領域
基板領域
配線領域
曲部領域
基板領域
エルボータイプの
傷及び配線のオフセット除去信号
オープンエルボータイプの
傷及び配線のオフセット除去信号
配線信号: 約-6~12 mV/step
断線傷信号:約-7~5 mV/step
欠け傷信号:約-3~3 mV/step
配線信号: 約-11~10 mV/step
断線傷信号:約-5~5 mV/step
欠け傷信号:約-4~3 mV/step
信号極大値において
傷信号の振幅値は配線信号の約半分
信号処理により極大値を抽出し、比較をすること
で傷信号のみを抽出する欠陥検出法を検討した
配線形状変化部を対象とした
欠陥検出法
微分により極値を抽出し、極大値で比較する欠陥検出法
微分する
エルボータイプの
傷及び配線のオフセット除去信号
傷及び配線の極値抽出信号
①オフセット除去信号を微分する
y  F (x)
y '  F ' ( x)
エルボータイプの
オフセット除去信号を微分した信号
③傷信号の極大値を閾値として決定する
0  F ( x)  a
1
f ( x)  
0 F ( x)  0, a  F ( x)
②オフセット除去信号の極値を取り出す
F ' ( x) ≒0
F (x) の信号の極値を抽出
・傷有りの場合信号抽出
・傷無しの場合信号除去
欠陥検出法による極値抽出(エルボータイプ)
オフセット除去画像(傷無し)
極値抽出画像(傷無し)
オフセット除去画像(断線傷)
極値抽出画像(断線傷)
欠陥検出法の適用結果
2値画像(傷無し) 配線信号除去
2値画像(断線傷)
2値画像(傷無し)
2値画像(断線傷)
傷信号抽出
2値画像(欠け傷)
2値画像(欠け傷)
高密度配線の場合の欠陥抽出
傷信号抽出
オフセット除去画像
2値画像
ほぼすべての配線信号
を除去でき、傷信号を
抽出した
オフセット除去画像
2値画像
まとめ
プリント基板の配線形状変化部の欠陥検出に関して検討を行った
配線曲部の測定
 配線曲部を測定したオフセット除去画像から傷信号を確認できる
 配線曲部の傷信号の振幅値は配線信号の約半分
欠陥検出法
 オフセット除去信号を微分することで極値を抽出
 傷信号を閾値として決定し、極値同士で比較することで信号が大きい配線信号
を除去
欠陥検出法の適用
 欠陥検出法を適用することで配線曲部の欠け傷を含む傷信号を抽出し、配線
信号を除去できる
 高密度配線において欠陥検出法を適用した結果、傷信号を抽出し、ほぼすべ
ての配線信号を除去できる
今回検討した欠陥検出法により配線形状変化部の欠陥を検出できる
今後の課題
1.高密度配線においても単一配線と同じ信号を得る
• リフトオフ高さをより低く、一定にすることでセンサの感度を
上げる
• より高い分解能で測定を行う
2.その他の配線形状変化部での欠陥検出の検討
• プリント基板には今回検討した配線曲部の他にはんだ部、
終端部が存在するためそれらの対応が必要である
ご静聴ありがとうございました
配線幅の変化における配線信号の振幅特性
測定間隔:1 step=0.05 mm
1.00E-03
Amplitude variation (V)
1.00E-04
1.00E-05
1.00E-06
1.00E-07
0
100
200
300
400
500
600
PCB conductor width (mm)
直線状配線の配線信号(オフセット除去信号)
配線幅の変化に対する配線信号の振幅特性
配線信号の振幅値は配線幅に依存する
断線傷の変化における傷信号の振幅特性
配線幅:100~500 mm
測定間隔:1 step=0.05 mm
1.00E-03
100 µm
200 µm
300 µm
500 µm
PCB conductor
width
Amplitude variation (V)
1.00E-04
1.00E-05
1.00E-06
1.00E-07
0
100
200
300
400
500
600
Conductor defect length (mm)
直線状配線の傷信号(オフセット除去信号)
断線傷の変化に対する傷信号の振幅特性
傷信号の振幅値は断線幅に依存しない
検出可能な傷の大きさ
70 mm
PCB conductor
Defect
70 mm
70 mm
渦電流探傷プローブ断面図
ECTプローブ
ECTプローブ断面図
スピンバルブ形巨大磁気抵抗素子
(SV-GMR : Spin-valve Giant Magneto-Resistance)
SV-GMRセンサ
抵抗:R=420 Ω(B=0)
駆動電流:I=4 mA
励磁周波数:f=100 kHz
高感度方向:Bz
150mV/mT
Bx,By方向
15mV/mT以下
•SV-GMRセンサの特徴
•低磁界で大きな抵抗変化
高感度探傷が可能
• 感度の指向性特性
傷により発生する磁界のみを検出
• 素子サイズが極めて小さい
(数十 mm平方)
高空間分解能,マルチ化が可能
対象の極表面の計測が可能
• 2端子の抵抗素子
プローブ構成が簡易
磁界‐抵抗変化率特性
渦電流探傷法による
プリント基板検査システム
欠陥の識別
ECT probe
ベアボード
①プローブ走査
データ検出
ECTによるデータ取得
ベアボード:部品を搭載する前のプリント配線板
Teaching image
教師イメージ
② 不安成分の特定