スライド 1

障がい者の権利を守るために
障がい者の虐待防止を共に考える
厚生労働省 社会・援護局
障害保健福祉部 障害福祉課
地域移行・障害児支援室
虐待防止専門官
障害福祉専門官
曽根 直樹
「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」の経緯
平成12年
児童虐待の防止等に関する法律成立
平成13年
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)成立
平成17年
厚生労働省「障害者虐待防止についての勉強会」
平成17年11月
高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律成立
附則2項
「高齢者〔65歳以下の者〕以外の者であって精神上又は身体上の理由により養護を必要とするも
の」(障害者等)に対する虐待の防止等のための制度については、速やかに検討が加えられ、その
結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする旨が定められた。
障害者虐待防止法の施行
障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律
(障害者虐待防止法)
目的
障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自
立及び社会参加にとって障害者に対する虐待を防止することが極めて重
要であること等に鑑み、障害者に対する虐待の禁止、国等の責務、障害
者虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置、養
護者に対する支援のための措置等を定めることにより、障害者虐待の防
止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって障害者の権利
利益の擁護に資することを目的とする。
平成24 年10 月1 日施行
Ⅰ 障害者虐待防止と対応の基本
マニュアルP.1
(2)「障害者虐待」の定義 (P.2)
障害者
障害者基本法第2 条第1 号に規定する障害者と定義。
「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他心
身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により
継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態に
あるもの」障害者手帳を取得していない場合も含まれる。18歳
未満の者も含まれる。
虐待行為の禁止
「何人も、障害者に対し、虐待をしてはならない。」(第3条)
障害者虐待
(ア)養護者による障害者虐待
(イ)障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
(ウ)使用者による障害者虐待
(第2 条第2 項)
ア 養護者による障害者虐待 (P.2)
養護者
・「障害者を現に養護する者であって障害者福祉施設従事者等
及び使用者以外のもの」と定義。
・身辺の世話や身体介助、金銭の管理などを行っている障害者
の家族、親族、同居人等が該当。
・同居していなくても、現に身辺の世話をしている親族・知人など
が養護者に該当する場合あり。
① 身体的虐待 障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそ
れのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘
束すること。
② 性的虐待 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をし
てわいせつな行為をさせること。
③ 心理的虐待 障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対
応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
④ 放棄・放置 障害者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放
置、養護者以外の同居人による①から③までに掲げる行為と同
様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
⑤ 経済的虐待 養護者又は障害者の親族が当該障害者の財産を
不当に処分することその他当該障害者から不当に財産上の利
益を得ること(障害者の親族による行為が含まれる)。
※18歳未満の障害児に対する養護者虐待の通報の受理や通報
に対する虐待対応は、児童虐待防止法が適用。
イ 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待 (P.3)
障害者福祉施設従事者等
障害者自立支援法等に規定する「障害者福祉施設」又は「障害
福祉サービス事業等」に係る業務に従事する者。
法上の規定
事業名
障害者福祉施設
・障害者支援施設
・のぞみの園
障害福祉サービス事業等
・障害福祉サービス事業
・一般相談支援事業及び特定相談支援事業
・移動支援事業
・地域活動支援センターを経営する事業
・福祉ホームを経営する事業
(厚生労働省令で定める事業)
・障害児通所支援事業
・障害児相談支援事業
(障害者虐待防止法第2条第4項)
具体的内容
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、
行動援護、療養介護、生活介護、短
期入所、重度障害者等包括支援、共
同生活介護、自立訓練、就労移行支
援、就労継続支援及び共同生活援助
① 身体的虐待 障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれ
のある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束す
ること。
② 性的虐待 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をし
てわいせつな行為をさせること。
③ 心理的虐待 障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応
又は不当な差別的な言動その他の障害者に著しい心理的外傷
を与える言動を行うこと。
④ 放棄・放置 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の
放置、他の利用者による①から③までに掲げる行為と同様の行
為の放置その他の障害者を養護すべき職務上の義務を著しく
怠ること。
⑤ 経済的虐待 障害者の財産を不当に処分することその他障害者
から不当に財産上の利益を得ること。
※高齢者関係施設の入所者への虐待→65歳未満の障害者に対するものも含
めて高齢者虐待防止法が適用。児童福祉施設の入所者への虐待→18歳以
上の障害者に対するものも含めて児童福祉法が適用。
ウ 使用者による障害者虐待 (P.4)
使用者
「障害者を雇用する事業主又は事業の経営担当者その他その事
業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする
者」。派遣労働者による役務の提供を受ける事業主など政令で定
める事業主は含まれ、国及び地方公共団体は含まれていない。
① 身体的虐待 障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそ
れのある暴力を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘
束すること。
② 性的虐待 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者を
してわいせつな行為をさせること。
③ 心理的虐待 障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対
応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外
傷を与える言動を行うこと。
④ 放棄・放置 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間
の放置、他の労働者による①から③までに掲げる行為と同様
の行為の放置その他これらに準ずる行為を行うこと。
⑤ 経済的虐待 障害者の財産を不当に処分することその他障害
者から不当に財産上の利益を得ること。
※使用者による障害者虐待については、年齢に関わらず(18歳
未満や65歳以上でも)障害者虐待防止法が適用。
通報義務 (P.115,P.117,P.118)
第七条 第一項
養護者による障害者虐待(十八歳未満の障害者について行われ
るものを除く。以下この章において同じ。)を受けたと思われる障
害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければ
ならない。
第十六条第一項
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われ
る障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなけ
ればならない。
第二十二条第一項
使用者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した
者は、速やかに、これを市町村又は都道府県に通報しなければ
ならない。
障害者虐待における虐待防止法制の対象範囲
福祉施設
所在
場所
年齢
18歳未満
<障害者自立支援法>
在宅
(養護者・
保護者)
児童虐待
防止法
・被虐待者支援
(都道府県)
※被虐待者支
援は、障害者
虐待防止法も
適用
18歳以上
65歳未満
入所系、日中系、
訪問系、GH等含
一般相談支
援
事業所又は
特定相談支
援事業所
障害者虐待
防止法
障害者虐待
防止法
障害福祉
サービス事業所
・適切な権限行使
都道府県
市町村
<介護保険法
>
高齢者
施設等
入所系、通所系、
訪問系、居住系
等含
・適切な権限行使
都道府県
市町村
児童発達支援、
放課後等デイ等
・適切な権限行使
都道府県
市町村
【20歳まで】
障害者虐待
防止法(省
令)
障害者虐待
防止法
障害児入所
施設等(注1)
障害児相談
支援事業所
児童福祉法
障害者虐待
防止法(省令)
・適切な権限行使
(都道府県)
【20歳まで】
児童福祉法
・適切な権限行使
都道府県
市町村
企業
学校
病院
保育所
障害者虐
待防止法
障害者虐
待防止法
・適切な権限
行使
(都道府県
労働局)
・間接的防止
措置
(施設長)
・適切な権限行使
(都道府県)
・適切な権限行使
都道府県
市町村
高齢者虐待
防止法
障害者虐待
防止法
高齢者虐
待 防止法
障害児通所
支援事業所
障害者虐待
防止法(省令)
・被虐待者支援
(市町村)
65歳以上
<児童福祉法>
(注2)
特定疾病40歳以上
の若年高齢者含む。
・適切な権限行使
都道府県
市町村
・被虐待者支援
(市町村)
(注1)里親、乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設
(注2)放課後等デイサービスのみ
障害者虐待防止等のスキーム (P.19)
養護者による障害者虐待
〔市町村の責務〕相談等、居室確保、連携確保
虐
待
発
見
市町村
通報
①事実確認(立入調査等)
②措置(一時保護、後見審判請求)
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
〔設置者等の責務〕虐待防止のための措置の実施
虐
待
発
見
通報
市
町
村
都道府県
①監督権限等の適切な行使
②措置等の公表
報告
使用者による障害者虐待
〔事業主の責務〕虐待防止等のための措置の実施
虐
待
発
見
通報
都
市
道
町
府
通知
村
県
報告
労働局
①監督権限等の適切な行使
②措置等の公表
2 障害者虐待の防止等に向けた基本的視点 (P.8)
(1)障害者虐待防止と対応のポイント
障害者に対する虐待の発生予防から、虐待を受けた障害者
が安定した生活を送れるようになるまで、障害者の権利擁護を
基本に置いた切れ目ない支援体制を構築する必要。
ア 虐待を未然に防ぐための積極的なアプローチ
イ 虐待の早期発見・早期対応
ウ 障害者の安全確保を最優先する
エ 障害者の自己決定の支援と養護者の支援
オ 関係機関の連携・協力による対応と体制
(2)障害者虐待の判断に当たってのポイント (P.10)
虐待であるかどうかの判断に当たっては、以下のようなポイン
トに留意。虐待かどうかの判断が難しい場合は、虐待でないこ
とが確認できるまでは虐待事案として対応。
ア 虐待をしているという「自覚」は問わない
イ 障害者本人の「自覚」は問わない
ウ 親や家族の意向が障害者本人のニーズと異なる場合がある
エ 虐待の判断はチームで行う
3 障害者虐待の防止等に対する各主体の責務等 (P.12)
(1)国及び地方公共団体の責務
障害者虐待防止法では、国及び地方公共団体は、障害者虐
待の防止、障害者虐待を受けた障害者の迅速かつ適切な保護
及び適切な養護者に対する支援等を行うため、以下の責務が
規定されている。
① 関係機関の連携強化、支援などの体制整備(第4 条第1 項)
② 人材の確保と資質向上のための研修等(第4 条第2 項)
③ 通報義務、救済制度に関する広報・啓発(第4 条第3 項)
④ 障害者虐待の防止等に関する調査研究(第42 条)
⑤ 成年後見制度の利用の促進(第44 条)
(2)国民の責務 (P.13)
国民は、障害者虐待の防止等に関する理解を深めるとともに、
国又は地方公共団体が講ずる施策に協力するよう努めなけれ
ばならない(第5 条)。
(3)保健・医療・福祉等関係者の責務 (P.13)
保健・医療・福祉等関係者は、障害者虐待を発見しやすい立
場にあることを自覚し、障害者虐待の早期発見に努めなけれ
ばならない(第6 条第2 項)。
関係者
・ 障害福祉施設、学校、医療機関、保健所、障害者福祉関係団体
・ 障害者福祉施設従事者等、学校の教職員、医師、歯科医師、保
健師、弁護士、使用者 等
これらの関係者は、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力
するよう努めなければならない(第6 条第3 項)。
以下の関係者にそれぞれの責務を規定。
① 障害者福祉施設の設置者等
障害福祉施設従事者等の研修の実施、苦情処理体制の整備など障害者福祉施設
従事者等による虐待の防止等のための措置(第15 条)
② 使用者
労働者の研修の実施、苦情処理の体制の整備などの使用者による障害者虐待防止
等のための措置(第21 条)
③ 学校の長
教職員、児童、生徒、学生その他の関係者に対する研修の実施及び普及啓発、相
談体制の整備、虐待に対処するための措置などの虐待を防止するための措置(第29 条)
④ 保育所等の長
保育所等の職員その他の関係者に対する研修の実施及び普及啓発、相談体制の整
備、虐待に対処するための措置などの虐待を防止するための措置(第30条)
⑤ 医療機関の管理者
医療機関の職員その他の関係者に対する研修の実施及び普及啓発、相談体制の整
備、虐待に対処するための措置などの虐待を防止するための措置(第31条)
4 市町村及び都道府県の役割と責務 (P.15)
(1)市町村の役割と責務
ア 養護者による障害者虐待について
① 通報又は届出を受けた場合の速やかな障害者の安全確認、通報等に係る
事実確認、障害者虐待対応協力者との対応に関する協議(第9 条第1 項)
② 身体障害者福祉法又は知的障害者福祉法の規定による措置及びそのた
めの居室の確保(第9 条第2 項、第10 条)
③ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律又は知的障害者福祉法に規
定する成年後見制度の利用開始に関する審判の請求(第9 条第3 項)
④ 立入調査の実施、立入調査の際の警察署長に対する援助要請(第11 条、
第12 条)
⑤ 身体障害者福祉法又は知的障害者福祉法に規定する措置が採られた障
害者に対する養護者の面会の制限(第13 条)
⑥ 養護者に対する負担軽減のための相談、指導及び助言その他必要な措置
並びに障害者が短期間養護を受ける居室の確保(第14 条第1項・第2 項)
⑦ 関係機関、民間団体等との連携協力体制の整備(第35 条)
イ 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待について
① 通報又は届出を受けた場合の事実確認等
② 通報又は届出を受けた場合の都道府県への報告(第17 条) →省令で定める
③ 障害者福祉施設又は障害福祉サービス事業等の適正な運営の確保に向
けた社会福祉法及び障害者自立支援法等に規定する権限の行使(第19 条)
ウ 使用者による障害者虐待について
通報又は届出を受けた場合の都道府県への通知(第23 条)
エ 市町村障害者虐待防止センターの機能と周知
市町村は、障害者福祉所管部局又は当該市町村が設置する施設において、
市町村障害者虐待防止センターとしての機能を果たすようにすることとされて
いる。(第32 条第1 項)
具体的な業務
① 養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者による障害者虐待に関する通
報又は届出の受理(第32 条第2 項第1 号)
② 養護者による障害者虐待の防止及び養護者による障害者虐待を受けた障
害者の保護のための相談、指導及び助言(第32 条第2 項第2 号)
③ 障害者虐待の防止及び養護者に対する支援に関する広報・啓発(第32 条
第2 項第3 号)
・休日や夜間においても速やかに対応できる体制を確保することが必要。
・市町村障害者虐待防止センターの業務の全部又は一部の委託可(第33 条第1
項)。
・この場合、市町村の担当部局との常時の連絡体制を確保することが必要。
・市町村障害者虐待防止センター、市町村障害者虐待対応協力者の住民や関
係機関への周知(第40 条)。
・市町村障害者虐待防止センターの電話番号等についても周知。
・休日・夜間対応窓口についてもあわせて周知。
市町村障害者虐待防止センター等の周知事項の例
障害者の虐待や養護者の支援に関する相談、通報、お問い合わせは下記まで
【日中(○時~○時)】
○○市役所 □□課 △△係
TEL ○○-○○○○ FAX ○○-○○○○
○○市障害者虐待防止センター TEL △△-△△△△ FAX ○○-○○○○
○○地域基幹相談支援センター TEL ××-×××× FAX ○○-○○○○
【休日夜間(○時~○時)】
○○地域基幹相談支援センター(携帯) TEL ×××-×××-××××
携帯メールアドレス [email protected] FAX ○○-○○○○
(2)都道府県の役割と責務 (P.17)
ア 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待について
① 障害者福祉施設又は障害福祉サービス事業等の適正な運営の確保に向
けた社会福祉法及び障害者自立支援法等に規定する権限の行使(第19条)
② 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の状況やその際に採った措置
等の公表(第20 条)
イ 使用者による障害者虐待について
使用者による障害者虐待に係る事項の都道府県労働局への報告(第24 条)
ウ 都道府県障害者権利擁護センターの機能と周知
都道府県は、障害者福祉所管部局又は当該都道府県が設置する施設にお
いて、当該部局又は施設が都道府県障害者権利擁護センターとしての機能
を果たすようにすること。(第36 条第1 項)
都道府県障害者権利擁護センターの具体的な業務
① 使用者虐待に関する通報又は届出の受理(第36 条第2 項第1 号)
② 市町村が行う措置に関する市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報提
供、助言その他の援助(第36 条第2 項第2 号)
③ 障害者及び養護者支援に関する相談、相談機関の紹介(第36 条第2 項第3号)
④ 障害者及び養護者支援のための情報提供、助言、関係機関との連絡調整等
(第36 条第2 項第4 号)
⑤ 障害者虐待の防止及び養護者支援に関する情報の収集分析、提供
(第36条第2 項第5 号)
⑥ 障害者虐待の防止及び養護者支援に関する広報・啓発(第36 条第2 項第6号)
⑦ その他障害者虐待の防止等のために必要な支援(第36 条第2 項第7 号)
・都道府県障害者権利擁護センターは、休日や夜間における使用者による障害
者虐待についても速やかに対応できる体制を確保することが必要。
・都道府県障害者虐待対応協力者(都道府県社会福祉協議会など)のうち適当
と認められるものに、都道府県障害者権利擁護センターが行う業務(②を除
く。)の全部又は一部を委託することができます(第37 条第1 項)。
・都道府県障害者権利擁護センター、都道府県障害者虐待対応協力者の名称
を明示、住民や関係機関に周知(第40 条)。
・都道府県障害者権利擁護センターが、使用者による障害者虐待の通報窓口で
あることや都道府県の担当部局・都道府県障害者権利擁護センター名、その
電話番号等についても周知。
・休日・夜間対応窓口についてもあわせて周知することが必要。
都道府県障害者権利擁護センター等の周知事項の例
【日中(○時~○時)】
○○県庁 □□課 △△係
TEL ○○-○○○○ FAX ○○-○○○○
○○県障害者権利擁護センター TEL △△-△△△△ FAX ○○-○○○○
【休日夜間(○時~○時)】
○○県障害者権利擁護センター (携帯) TEL ×××-×××-××××
携帯メールアドレス [email protected] FAX ○○-○○○○
Ⅱ 養護者による障害者虐待の防止と対応
マニュアルP.22
1 障害者虐待の防止に向けた取り組み(P.23)
(1)知識・理解の啓発
・障害者虐待はどこの家庭でも起こりうる身近な問題。
・養護者本人には虐待をしているという認識がない場合もある。
・障害者自身も、虐待だと認識できない、被害を訴えられない場合もある。
(2)虐待防止ネットワークの構築
自立支援協議会に権利擁護部会を設置するなど、定期的な情報交換や体制作り
① 虐待の予防、早期発見、見守りネットワーク
地域住民・民生委員・社会福祉協議会・知的障害者相談員・家族会等
② サービス事業者等による虐待発生時の対応ネットワーク
障害福祉サービス事業者・相談支援事業者等
③ 専門機関による介入ネットワーク
警察・弁護士・医療機関・社会福祉士・権利擁護団体等
(3)養護者支援による虐待の防止
・家庭全体の状況から家庭の抱える問題を理解し、支援を行う。
・養護者への支援を行うことで、障害者虐待を未然に防ぐことができる。
2 障害者虐待の早期発見に向けた取り組み(P.24)
(1)通報義務の周知
・広報誌・啓発ポスター・パンフレットによる住民への周知
・養護者・家族・本人への伝達
(2)早期発見に向けて
・ 相談支援専門員や障害福祉サービス事業所の職員による気づき
・ 見守りネットワークによる気づき
・ 障害者虐待発見チェックリストの活用(P.26~28)
3 養護者による障害者虐待が発生した場合の対応(P.29)
養護者による障害者虐待への対応(市町村) (P.72)
養護者による虐待を受けたと
思われる障害者を発見した人
養護者による虐待を受けた
障害者
通報
届出
(1)市町村虐待防止センター(市町村等の障害者虐待対応窓口)受付(受付記録の作成)
(直ちに招集)
(2)対応方針の協議
《コアメンバー》(通報等の内容を詳細に検討)
(3)事実確認・訪問調査(安否確認)
緊
※必要に応じて都道府県に相談・報告
急
性
(4)ケース会議の開催 《コアメンバー・事案対応メンバー・専門家チーム》
市
町
(5)立入調査(安否確認) ※市町村職員が実施
ケース会議の開催
の
※警察署長への援助要請
《コアメンバー・事案対応メンバー・専門家チーム》
村
(9)成年後見制度利
用開始の審判請求
(8)養護者への支援
・相談、指導、助言
・養護負担の軽減
(7)障害者への支援
・相談、指導、助言
※成年後見制度利
用支援事業
(6)障害者の保護
・短期入所
・入院 ・ 施設入所
※やむを得ない
事由による措置
(10) モニタリング
・
虐待対応の終結
判
断
(1)相談、通報及び届出の受付(P.30)
虐待の状況や障害者・養護者等の状況、通報者の情報など可能な限り情報を聴取
① 虐待の状況
・ 虐待の種類や程度
・ 虐待の具体的な状況
・ 虐待の経過
・ 緊急性の有無
② 障害者の状況
・ 障害者本人の氏名、居所、連絡先
・ 障害者本人の心身の状況、意思表示能力
③ 虐待者と家族の状況
・ 虐待者の状況、虐待者と障害者の関係
・ その他の家族関係
④ 障害福祉サービス等の利用状況や関係者の有無
・ 障害福祉サービス等の利用の有無
・ 家族に関わりのある関係者の有無
⑤ 通報者の情報
・ 氏名、連絡先、障害者・養護者との関係等
受付記録の記入後においては、担当部署責任者の確認を受け、受付台帳に編綴し
て適切に保管することが必要。
(2)コアメンバーによる対応方針の協議(P.35)
ア 初動対応の決定
相談・通報・届出を受けたときには、直ちに虐待の疑いがあるかどうか及び緊急対応が
必要な場合であるかどうかを組織的に判断。
コアメンバー
担当市町村職員及び担当部局管理職。委託先の担当職員を含む。
市町村担当部局管理職は必須。
○ 時間外の対応の体制整備
・休日・夜間でも迅速かつ適切に対応できる体制を整備。
・組織的判断や緊急対応などが適切に行える体制とすることも必要。
・関係する組織との連絡会議の開催など、連携に関する日常的な意見交換が重要。
○ 通報者への報告
・ 通報者には守秘義務がないため、通報者への報告は慎重に。
イ 初動対応のための緊急性の判断について
相談等の受付者が担当部局の管理職(又はそれに準ずる者)等に相談し、判断を行う。
① 緊急性の判断の際に留意すべき事項
緊急性の判断に当たっては、以下の点を検討。
・ 過去の通報や支援内容などに関する情報の確認
・ 虐待の状況や障害者の生命や身体への危険性
【参考】 緊急性が高いと判断できる状況(例)
○ 生命が危ぶまれるような状況が確認される、もしくは予測される
・ 骨折、頭蓋内出血、重症のやけどなどの深刻な身体的外傷
・ 極端な栄養不良、脱水症状
・ 「うめき声が聞こえる」などの深刻な状況が予測される情報
・ 器物(刃物、食器等)を使った暴力や脅しがあり、生命の危険性が予測される
○ 障害者本人が保護を求めている
② 緊急性の判断後の対応
○ 緊急性があると判断したとき
・ 措置を含めた保護方法を速やかに検討(※ P55「Ⅱ3(6) 参照)。
○ 緊急性はないと判断したとき
・ 調査方針と担当者を決定。
・ 情報が不足で緊急性がないと確認できない場合は、さらに調査を進める。
○ 共通
・ 決定した内容は会議録に記録し、速やかに責任者の確認を受け保存する。
(3)事実確認、訪問調査
ア 事実確認の必要性
市町村は、障害者虐待に関する相談・通報・届出がなされた場合、速やかにその内
容に関する事実の確認を行う必要がある(第9条)。
※児童虐待防止法では、事実確認を48時間以内に実施することが目安。
イ 事実確認で把握・確認すべき事項
① 虐待の状況
・ 虐待の種類や程度
・ 虐待の具体的な状況
・ 虐待の経過
② 障害者の状況
・ 安全確認・・・関係機関や関係者の協力を得ながら、面会その他の方法で確認する。
・ 身体状況・・・傷害部位及びその状況を具体的に記録する。
・ 精神状態・・・虐待による精神的な影響が表情や行動に表れている可能性。
・ 生活環境・・・障害者が生活している居室等の生活環境を記録する。
③ 障害者と家族の状況
・ 人間関係・・・障害者と養護者・家族等の人間関係を把握(関わり方等)
・ 養護者や同居人に関する情報
④ 障害福祉サービス等の利用状況
※ 所管の警察との情報交換が必要となる場合も。
ウ 関係機関からの情報収集(P.39)
庁内他部局、民生児童委員、医療機関、障害福祉サービス事業所、相談支援専門員な
どから多面的な情報を収集。
関係機関から収集する情報の種類等の例
・家族全員の住民票(同居家族構成の把握)
・戸籍謄本(家族の法的関係や転居歴等)
・生活保護受給の有無(受給の場合、福祉事務所から生活歴を把握、連携を図る。)
・障害福祉サービス事業所や相談支援専門員などからの情報
・医療機関からの情報
・警察からの情報
・民生児童委員からの情報
情報収集する際の留意事項
障害者虐待に関する個人情報については、個人情報保護法の第三者提供の制限(同
法第23条)の例外規定に該当すると解釈できる旨の説明や、相談支援事業者等との契
約において包括的な同意のもとに個人情報の提供が可能な場合には、その旨を説明。
エ 訪問調査(P.40)
虐待の事実を確認するためには、障害者の自宅を訪問して安全確認や心身の状況、
養護者や家族等の状況を把握することが必要。
ただし、調査を拒否するケースもあり、その後の支援も受け入れなくなるおそれもある。
障害者や養護者・家族等と関わりのある機関や親族、知人、近隣住民などの協力を
得ながら情報収集を行う。
(訪問調査を行う際の留意事項)
① 信頼関係の構築を念頭に
② 複数の職員による訪問
③ 医療職の立ち会いが求められる場合も
④ 障害者、養護者等への十分な説明
職務について、調査事項について、障害者の権利について
⑤ 障害者や養護者の権利、プライバシーへの配慮
・ 身体状況の確認(同性職員)
・ 養護者への聞き取り(第三者のない場所で)
・ 訪問調査→措置入所時(養護者不在時の訪問調査や保護は、法的根拠、趣旨、連
絡先等を明記した文書を置いておく)
⑥ 柔軟な調査技法の実施
⑦ 調査の継続性の確保(定期的な訪問と継続的なアセスメントの実施)
事実確認と情報収集のポイント(P.41)
① 原則として自宅を訪問する
・ 一方的に虐待者を悪と決めつけず、先入観を持たないで対応する。
・ 本人と虐待者は別々に対応する。(本人と虐待者の担当者は分け、チームで対応)
・ 事案によっては、健康相談など別の理由による訪問とすることを検討する。
・ 虐待者に虐待を疑っていることがわからないよう対応する。
※ 虐待通報を受けての通報であることを明示する方が良い場合もあります。
・ プライバシー保護について説明する。
② 収集した情報に基づいて確認を行う
・ 介護者の介護負担をねぎらい、問題を一緒に解決することを伝えながら情報収集。
・ 関係者から広く情報を収集する。(家の状況、居室内の状況、本人の様子など)
③ 解決すべきことは何かを本人や虐待者の状況から判断する
・ 緊急分離か見守りか
・ 一時分離かサービス提供、家族支援か。
・ 介護負担軽減を図るプランを提案する。
・ 病院か施設か。
・ 自分の価値観で判断せず、組織的に判断する。
※「障害者虐待防止マニュアル」(NPO法人PandA-J)を参考に作成
オ 介入拒否がある場合の対応(P.42)
障害者の安全確認ができない場合は、立入調査の実施も視野に入れながら、様々な
関係者との連携協力のもとで対処する必要がある。
緊急な介入が必要となる障害者の生命や身体に関する危険性が認められる場合に
は、養護者等の拒否的な態度に関わらず立入調査を含めて積極的な介入が必要。
(ア) 関わりのある機関からのアプローチ
相談支援専門員や障害福祉サービス事業所職員などから養護者に対して介護負担
を軽減するためにショートステイ等の障害福祉サービスが利用できるなどの情報を伝え、
養護者の介護負担に対する理解を示すことで、事実確認調査や援助に対する抵抗感を
減らすことができる。
(イ) 医療機関への一時入院
障害者に外傷や疾病があったり体力の低下などが疑われる場合には、医師や医療
機関に協力を仰いで検査入院等の措置を取り、その後の対応を検討することが必要な
ときもある。
(ウ) 親族、知人、地域の関係者からのアプローチ
養護者と面識のある親族や知人、地域関係者などがいる場合には、それらの人に養
護者の相談にのってもらいながら、障害者や養護者等の状況確認や市町村障害者虐
待防止センター等へのつなぎに協力してもらう。
(4)個別ケース会議の開催による援助方針の決定(P.43)
訪問調査等による事実確認によって障害者本人や養護者の状況を確認した後、市町
村障害者虐待対応協力者と対応について協議することが規定(第9条)。
ア 個別ケース会議の開催
・個別の虐待事案に対する援助方針、援助内容、各機関の役割、主担当者、連絡体制
等について協議を行う、障害者虐待対応の中核。
・市町村は、市町村障害者虐待対応協力者を、コアメンバー、事案対応メンバー及び専
門家チームに分類しておくことが必要。
・事案対応メンバー及び専門家チームについては、「 虐待防止ネットワークの構築」の役
割と対応させて考えることができる。
個別ケース会議のメンバー構成(例) (P.42)
コアメンバー
担当市町村職員及び担当部局管理職。委託先の担当職員を含む。
市町村担当部局管理職は必須。
事案対応メンバー
虐待の事案に対して、必要な支援が提供できる各機関等の実務担当
者。行政、相談支援事業者、障害福祉サービス事業者、医療機関、
労働関係機関等。
専門家チーム
虐待の事案に応じて、警察、弁護士、医療機関等。
イ 支援の必要度の判断(P.44)
・障害者の生命や身体に危険性があるかどうか見極めることが最優先。
・支援の度合い(見守り・予防的支援、相談・調整・社会資源活用支援、保護・分離支援)
の判断を行うことが必要
・状況によっては緊急保護を行うことが必要。
・虐待の事実がないと判断される場合にも、障害者の安全が確認されるまで見守り的な
支援をする必要。
・正確な情報収集に基づき「緊急性」と「重大性」を評価し、組織として判断。
※ 参考・さいたま市「障害者虐待リスクアセスメント・チェックシート」
ウ 個人情報の取扱い(P.45)
・個別ケース会議等では、障害者や養護者・家族の情報を支援者間で共有する必要。
・障害福祉サービス事業所は、秘密保持の義務が課せられており、情報共有の必要性
との間で調整が必要。
・個人情報保護法「本人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であっ
て、本人の同意を得ることが困難であるとき」の例外規定によって守秘義務が解除さ
れると考えられる。
(5) 立入調査(P.52)
ア 立入調査の法的根拠
・障害者虐待により障害者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると
認められるときは、市町村長は、担当部局の職員に、虐待を受けている障害者の住所
や居所に立ち入り、必要な調査や質問をさせることができる(第11条第1項)。
・立入調査は、市町村の障害福祉所管課職員が行う。
・必要に応じて適切に、管轄する警察署長に対し援助を求めなければならない(第12条)。
・正当な理由がなく立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせ
ず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは障害者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさ
せた者は、30万円以下の罰金に処せられる(第46条)。
イ 立入調査の要否の判断
・当事者から情報が取れない場合で、かつ障害者の安否が気遣われるようなときには、
立入調査権の発動を検討する必要。
・決定に当たっては、担当部署の管理職が出席している会議で検討し、決裁を経る必要。
・立入調査が必要と認められる状況は、緊急性や重大性があるとともに、養護者の協力
が得られない場合。
立入調査が必要と判断される状況の例
○ 障害者の姿が長期にわたって確認できず、また養護者が訪問に応じないなど、接
近する手がかりを得ることが困難と判断されたとき。
○ 障害者が居所内において拘束されていると判断されるような事態があるとき。
○ 何らかの団体や組織、あるいは個人が、障害者の福祉に反するような状況下で障
害者を生活させたり、管理していると判断されるとき。
○ 過去に虐待歴や援助の経過があるなど、虐待の蓋然性が高いにもかかわらず、養
護者が訪問者に障害者を会わせないなど非協力的な態度に終始しているとき。
○ 障害者の不自然な姿、けが、栄養不良、うめき声、泣き声などが目撃されたり、確
認されているにもかかわらず、養護者が他者の関わりに拒否的で接触そのものがで
きないとき。
○ 入院や医療的な措置が必要な障害者を養護者が無理やり連れ帰り、屋内に引きこ
もっているようなとき。
○ 入所施設などから無理やり引き取られ、養護者による加害や障害者の安全が懸念
されるようなとき。
○ 養護者の言動や精神状態が不安定で、一緒にいる障害者の安否が懸念されるよう
な事態にあるとき。
○ 家族全体が閉鎖的、孤立的な生活状況にあり、障害者の生活実態の把握が必要と
判断されるようなとき。
○ その他、虐待の蓋然性が高いと判断されたり、障害者の権利や福祉上問題がある
と推定されるにもかかわらず、養護者が拒否的で実態の把握や障害者の保護が困
難であるとき。
ウ 立入調査の実施体制(P.51)
① 立入調査の執行にあたる職員
・ 複数の職員を選任します。
・ 入院等の必要性を的確に判断することのできる医療職の同行も有効。
・ 市町村担当部署の職員が行う。市町村障害者虐待防止センターの職員だけでは不可。
② 警察との連携
・ 警察署長への援助要請等についての規定あり(第12条第2項)。
・ 警察の援助が必要である場合には、所轄の警察署長あてに援助を依頼。
③ その他の関係者との連携
・ 養護者に精神的な疾患が疑われる場合は、精神保健福祉相談員の同行も。
・ 精神保健指定医による診察や入院先の確保などの手配を行っておく必要。
・ 養護者や家族と関わりのある親族等に同行や立会いを求めることも有効。
エ 立入調査の実施方法の検討
・ 立入調査を執行するための綿密な準備が必要。
オ
①
②
③
立入調査の留意事項
身分証明書の携帯(第11条第2項)(P54【参考例】「身分証明書」参照)
立入調査の目的、確認したい事項、立入調査権を発動した理由などの説明
保護の判断と実行
カ 調査記録の作成と関係書類等の整備
(6)積極的な介入の必要性が高い場合の対応
ア 障害者の保護(養護者との分離)
障害者の生命や身体に関わる危険性が高く、放置しておくと重大な結果を招くおそれ
が予測される場合や、他の方法では虐待の軽減が期待できない場合などには、障害者
を保護するため、養護者等から分離する手段を検討。
① 迅速な対応
・事案によっては、休日や夜間に関わりなくできる限り速やかに対応する。
② 保護・分離の要否の判断
・障害者の保護・分離の必要性については、担当者個人ではなく、市町村として決定。
・個別ケース会議等を通じ、関連機関・関係者との協議を行うなど客観的判断が必要。
③ 保護・分離の手段
・契約による障害福祉サービスの利用(短期入所、施設入所等)。
・やむを得ない事由等による措置(施設入所、短期入所等)。
・医療機関への一時入院、市町村独自事業による一時保護など。
イ やむを得ない事由による措置
(ア) やむを得ない事由による措置を行う場合
・「やむを得ない事由」によって契約による障害福祉サービスを利用することが著しく困難な
障害者に対して、市町村長が職権により障害福祉サービスを利用させることができる。
・障害者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる場合には、
障害者に対する養護者による障害者虐待の防止及び当該障害者の保護が図られるよう、
適切に身体障害者福祉法第18条第1項又は第2項(障害福祉サービス、障害者支援施設
等への入所等の措置)、知的障害者福祉法第15条の4又は第16条第1項第2号(障害福
祉サービス、障害者支援施設等への入所等の措置)の措置を講じることを規定。
・当該障害者が身体障害者及び知的障害者以外の障害者である場合は、身体障害者又
は知的障害者とみなして、上記の規定を適用する(第9条第2項)。
(イ) 虐待を受けた障害者の措置のために必要な居室の確保
・市町村は、養護者による虐待を受けた障害者について、身体障害者福祉法又は知的障
害者福祉法の規定による措置を行うために必要な居室を確保するための措置を講ずる
(第10条)。
・障害者虐待防止対策支援事業の一時保護のための居室の確保等の活用など。
(ウ) 面会の制限
・「やむを得ない事由による措置」が採られた場合、市町村長や障害者支援施設等の長は、
虐待の防止や障害者の保護の観点から、養護者と障害者の面会を制限することができる
(第13条)。
(エ) 措置後の対応
・虐待に対する恐怖心や不安、慣れない環境での生活などに対する精神的な支援。
・障害者が安心して生活を送れる居所を確保するための支援。
・年金の搾取などが行われていた場合、口座を変更するなど関係機関との連携。
・養護者に対する、保護した障害者と同様の精神的な支援。
・養護者の抱える経済的問題についての相談機関を紹介するなどの支援。
(オ) 措置の解除
① 自立した生活に移行する場合。
② 家庭へ戻る場合。
③ 障害福祉サービスの申請や契約が可能になり、契約入所になる場合。
措置継続中においても、グループホーム・ケアホームを検討した方がよい場合も。
(7)その他の障害者支援
国及び地方公共団体は、障害者虐待を受けた障害者が地域で自立した生活を営むこ
とができるよう、居住の場所の確保、就業の支援その他の必要な施策を講ずるものとす
る(第41条)。
○ 適切な障害福祉サービス等の導入
・障害者本人に対する支援、養護者の介護負担軽減のためのサービスの導入。
・医療機関への受診が必要な場合、専門医を紹介し、診断・治療につなげる。
・経済的な困窮がある場合には、生活保護を検討。
・就業が必要な場合には、就労関係機関と連携して対応。
(8)養護者(家族等)への支援(P.63)
ア 養護者(家族等)支援の意義
養護者に対する相談、指導及び助言その他必要な措置を講じる(第14条第1項)。
① 養護者との間に信頼関係を確立する
② 家族関係の回復・生活の安定
③ 養護者の介護負担・介護ストレスの軽減を図る、ねぎらう
④ 養護者への専門的な支援
イ 養護者支援のためのショートステイ居室の確保
① 法的根拠
障害者を短期間施設に入所させ、養護者の負担軽減を図るため、必要となる居室を
確保するための措置を講ずる(第14条第2項)。
② 居室の確保策
市町村独自に短期入所するための居室を確保。
障害者虐待防止対策支援事業(国庫補助事業)の活用。
③ 継続的な関わり
障害者本人、養護者等と定期的に関わりを持ち、今後の生活に対する希望などを把
握しながら適切な相談、助言等の支援を行う。
(9)成年後見制度等の活用(P.66)
・適切に市町村長による成年後見制度の利用開始の審判請求を行うこと(第9条第3項)。
・国や地方公共団体が成年後見制度利用の経済的負担軽減措置を図ること(第44条)。
※平成24年4月施行の障害者自立支援法の一部改正により、市町村における成年後
見制度利用支援事業が必須事業化。
※日常生活自立支援事業の活用も検討。(P.66)
市町村長申立てについて
市町村長による申立てを行うに当たっては、市町村は、基本的には2親等内の
親族の意思を確認すれば足りる取扱いになっています(ただし、2親等以内の親
族がいない場合であっても、3親等又は4親等の親族であって申立てをするもの
の存在が明らかである場合には、市町村長による申立ては行われないことが基
本となります)。
なお、虐待等の場合で2親等内の親族が申立てに反対する場合も考えられま
す。そのような場合には、2親等内の親族がいたとしても、本人の保護を図るた
め、市町村長申立てが必要となる場合があります。
※(参考)「地域包括支援センター業務マニュアル」から
(10) モニタリング・虐待対応の終結(P.70)
ア 定期的なモニタリング
市町村の担当職員や相談支援専門員等が定期的な訪問や、関係機関からの聞
き取りなどにより障害者や養護者等の状況を把握し状況を確認・再評価しながら、
必要に応じて新たな支援を検討する。
イ 関係機関との連携による対応
関係機関が相互に協力連携しながら複数の目によってモニタリングを行うことが
重要。関係機関の役割分担や連絡体制等を明確にし、連携して対応し、定期的に情
報交換や意見交換等を行う。
ウ 再アセスメント・対応方針の修正
状況が変化し、十分な対応ができなくなった場合には、個別ケース会議を開催し、
再アセスメント、対応方針の修正を行い、援助内容を変更する。
エ 虐待対応の終結
終結の判断基準は、虐待行為の解消だけでなく、虐待の発生要因が除去され虐
待行為が発生しないと判断されることが必要。
終結したと思われた時点で、組織的に虐待対応の終結を決定。
その後の生活支援は、市町村や相談支援事業所に引き継ぐとともに、虐待再発時
に速やかに把握できるよう、必要な関係機関に情報を提供する。
4 財産上の不当取引による被害の防止(P.71)
(1)被害相談、消費生活関係部署・機関の紹介
市町村は、養護者や障害者の親族、障害者福祉施設従事者等以外の第三者に
よって引き起こされた財産上の不当取引による被害について、相談に応じ、若しくは
消費生活業務の担当部署や関連機関を紹介することを規定(第43条第1項)。
(※市町村障害者虐待対応協力者に委託することが可能)
【相談窓口】
消費生活センター、国民生活センター、弁護士会、日本司法支援センター(法テラス)、
成年後見センター・リーガルサポート
(2)成年後見制度の活用
財産上の不当取引のように、経済的虐待と同様の行為が認められる場合には、日
常生活自立支援事業や成年後見制度の活用も含めた対応が必要。市町村長申立も
活用しながら、障害者の財産が守られるよう、支援を行うことが必要(第43条第2項)。
Ⅲ 障害者福祉施設従事者等による
障害者虐待の防止と対応
(マニュアルP.73)
障害者(児)施設における虐待の防止について
※虐待防止関係の通知より
施設における障害者(児)虐待が生ずる要因は複雑・多様
であり、個々の実情に応じたきめ細かな対策が必要である。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
障害者(児)虐待に共通な構図
・虐待は密室の環境下で行われる。
・障害者(児)の権利を侵害する小さな出来事から心身に傷を負
わせる行為にまでエスカレートしていく。
・職員に行動障害などに対する専門的な知識や技術がない場合
に起こりやすい。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
障害者(児)虐待防止への取組
・利用者への権利侵害をエスカレートさせない等虐待を未然に
防止する。
・虐待を早期に発見して迅速な対応を図る。
・再発防止の観点からその後の支援や指導をきめ細かく行う。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
やむを得ない場合の「身体拘束」について
自傷行為、他害行為、パニックなどの行動障害に対して、
障害者(児)自身、周囲の者等の保護のため、緊急やむを得
ず障害者(児)に強制力を加える行為は認められる場合があ
るが、その個々の利用者への適応の範囲・内容については、
施設内のガイドライン等を作成して共通認識に基づいて対応
を図ること。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
4 身体拘束に対する考え方(P.91)
(1)基本的考え方
「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」は身体的虐待。
身体拘束が日常化することが更に深刻な虐待事案の第一歩となる危険がある。
やむを得ず身体拘束をする場合であっても、その必要性を慎重に判断するとともに、
その範囲は最小限にしなければならない。
判断に当たっては適切な手続きを踏むとともに、身体拘束の解消に向けての道筋を
明確にして、職員全体で取り組む必要がある。
(2)身体拘束とは
身体拘束の具体的な内容としては、以下のような行為が該当すると考えられる。
① 車いすやベッドなどに縛り付ける。
② 手指の機能を制限するために、ミトン型の手袋を付ける。
③ 行動を制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
④ 支援者が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限する。
⑤ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
⑥ 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
身体拘束禁止の対象となる具体的な行為
介護保険指定基準において禁止の対象となっている行為は、「身体的拘束その他入
所者(利用者)の行動を制限する行為」で、具体的には次のような行為。
①徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
②転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
③自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
④点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
⑤点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらな
いように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
⑥車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯
や 腰ベルト、車いすテーブルをつける。
⑦立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
⑧脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
⑨他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
⑩行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
⑪自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
「身体拘束ゼロへの手引き」(平成13年3月 厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」)
ア やむを得ず身体拘束を行う3要件(P.92)
① 切迫性
身体拘束を行うことにより本人の日常生活等に与える悪影響を勘案し、それでもな
お身体拘束を行うことが必要な程度まで利用者本人等の生命又は身体が危険にさ
らされる可能性が高いことを確認する必要。
② 非代替性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないことが要件。利用者
本人の状態像等に応じて最も制限の少ない方法を選択する必要。
③ 一時性
身体拘束その他の行動制限が、必要とされる最も短い拘束時間を想定する必要。
イ やむを得ず身体拘束を行うときの手続き
① 組織による決定と個別支援計画への記載
・組織として慎重に検討・決定する必要。
・個別支援計画に身体拘束の様態及び時間、緊急やむを得ない理由を記載。
・個々人のニーズに応じた個別の支援を検討することが重要。
② 本人・家族への十分な説明
・利用者本人や家族に十分に説明をし、了解を得ることが必要。
③ 必要な事項の記録
・身体拘束を行った場合、その様態及び時間、その際の利用者の心身の状況並び
に緊急やむを得ない理由など必要な事項を記録。
2 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止(P.74)
(1)管理職・職員の研修、資質向上
・障害者の人権の尊重や虐待の問題について、管理職、職員に高い意識が必要。
・職員各人が支援技術を高め、組織としてもノウハウを共有することが不可欠。
・管理者が率先し、職員とともに、風通し良く、働きがいのある職場環境を整える必要。
(2)個別支援の推進
・利用者個々のニーズに応じた個別的な支援を日々実践することが、虐待を防止。
(3)開かれた施設運営の推進
・地域住民やボランティア、実習生など多くの人が施設に関わることや、サービス評
価(自己評価、第三者評価など)の導入も積極的に検討することが大切。
(4)実効性のある苦情処理体制の構築
・障害福祉サービス事業所等に対して、サービス利用者やその家族からの苦情処
理体制を整備すること等により虐待防止等の措置を講ずることを規定(第15条)。
障害者(児)虐待の未然の防止
(1)職員の人権意識の向上
① 職員が自らの行為が虐待などの権利侵害に当たること
を自覚していない場合があることから、別紙のような掲示
物を施設内の見やすい場所に掲示し、職員の自覚・自省
を促す。
なお、掲示物については、職員で話し合って定期的に
新しいものに張り替えるなど、関心が薄れないよう工夫
する。
② 倫理綱領、行動規範等を定め、職員に周知徹底する。
③ 普段から研修などを通して、職員の人権意識を高める。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
障害者(児)を支援する職員の方に
以下のような行為は、障害者(児)への虐待です。
不適切な支援から、傷害罪などに当たる犯罪行為まで様々ですが、
いずれも障害者(児)の人権の重大は侵害であり、絶対に許されるものではありません。
○身体的虐待
・殴る、蹴る、たばこを押しつける。
・熱湯を飲ませる、食べられないものを食べさせる、食事を与えない。
・戸外に閉め出す、部屋に閉じ込める、縄などで縛る。
○性的虐待
・性交、性的暴力、性的行為の強要。
・性器や性交、性的雑誌やビデオを見るように強いる。
○ネグレクト
・自己決定といって、放置する。
・話しかけられても無視する。拒否的態度を示す。
・失禁をしていても衣服を取り替えない。
・職員の不注意によりけがをさせる。
○心理的虐待
・「そんなことすると外出させない」など言葉による脅迫。
・「何度言ったらわかるの」など心を傷つけることを繰り返す。
・成人の障害者を子ども扱いするなど自尊心を傷つける。
・他の障害者(児)と差別的な取り扱いをする。
○その他
・障害者(児)の同意を得ない年金等の流用など財産の不当な処分。
・職員のやるべき仕事を指導の一環として行わせる。
・躾けや指導と称して行われる上記の行為も虐待です。
自分がされたら嫌なことを障害者(児)にしていませんか。
常に相手の立場で、適切な支援を心がけましょう。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
(2)職員の知識や技術の向上
研修などを通して、職員の知識や技術、特に行動障害などの
問題行動を有する利用者が虐待を受けるケースが高いと言わ
れていることから、それぞれの施設において、次のような取組を
行うこと。
① 研修などを通して、職員の知識や技術、特に行動障害など
の特別な支援を必要とする障害者(児)の支援に関する知識
や技術の向上を図る。
② 個々の障害者(児)の状況に応じた個別支援計画を作成す
るなどして、適切な支援を行う。
③ 職員が支援に当たっての悩みや苦労を相談できる体制を整
える他、職員が利用者の権利擁護に取り組める環境を整備
する。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
(3)苦情解決制度の利用
苦情解決制度については、社会福祉法において社会福祉事業
の経営者に対して、利用者等からの苦情の適切な解決に努める
べきこととされており、更に施設運営者と中立的立場にある第三
者委員を積極的に活用することなどにより、障害者(児)虐待を未
然に防止する見地から苦情解決制度の実効性を確保すること。
(4)サービス評価などの利用
「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について」等を参
考にして利用者の権利擁護がなされるよう積極的に取り組むこと。
(5)成年後見制度の利用
自ら権利を擁護することに困難を抱える障害者については、成
年後見制度を活用して権利擁護を行っていくことが重要である。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
権利侵害行為の未然防止のための措置について
厚生労働省令で定める設備及び運営に関する基準には、次の
旨が規定されている。
(1)運営規定として、虐待の防止のための措置に関する事項を
定めておかねばならない。
(2)指定障害福祉サービス事業者及び指定障害者支援施設等
の一般原則として、利用者の人権の擁護、虐待の防止等の
ため、責任者を設置する等必要な体制の整備を行うとともに、
その従事者に対し、研修を実施する等の措置を講ずるよう努
めなければならない。
(平成20年3月31日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
都道府県によるサービス事業者への指導
(1)上記基準に基づき定めた虐待防止のための措置に関する
運営規定を職員に周知徹底すること。
(2)専門機関や関係団体の協力を得て、研修を実施するなど、
職員の知識や技術の向上に努めること。
なお、指導に当たっては、職員が自らの行為を虐待などの権
利侵害に当たると自覚していない場合があることに留意し、サー
ビス事業者等が職員に対し利用者の人権の擁護、虐待の防止
等に関する意識について点検を行う等、職員の人権に関する自
覚・自省を促すよう指導する。
(平成20年3月31日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
障害者(児)虐待の早期発見・対応
障害者(児)やその家族は、支援を受けている施設への遠慮か
ら、直接苦情を言いにくいという指摘や、入所施設においては権
利侵害行為が明るみになりにくいといった指摘があることから、都
道府県及び市町村は、あらゆる機会を通じて、障害者(児)に対す
る権利侵害行為の防止に関する普及・啓発に努めるとともに、権
利侵害行為の早期発見に努めること。
また、通報先として、都道府県、市町村、児童相談所などの行政
窓口における苦情の受付、都道府県社会福祉協議会の運営適正
委員会における苦情解決制度の活用を図ること。
権利侵害行為が発生していることを察知した場合には、権利侵
害行為の拡大に繋がらないよう、関係法令に基づく調査を行い、
関係者に対する報告を求める等により、事実関係を早急に確認す
ること。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
施設内の調査について
都道府県及び市町村は、施設における障害者(児)虐待の情
報を得たときは、虐待の拡大につながらないように、社会福祉法
第70条などの関係法令に基づく調査を速やかに開始すること。
また、調査は利用者の生命保護・人権擁護の立場から行うこと。
調査に当たっては、障害者(児)やその家族、施設関係者等複
数の人々からの聞き取りを行い、その際、本人やその家族が安
心して話せる場所の設定や、やさしく説明する等の配慮を行うこ
と。
また、話の秘密が守られることや、権利が擁護されることを丁
寧に説明すること。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
調査後の対応について
都道府県は、虐待の行われた施設に対し、知的障害者福祉法、
身体障害者福祉法、児童福祉法等に基づく改善命令、業務停
止等、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく業
務の停止等又は社会福祉法に基づく改善命令、業務停止、許
可取消し等の適切な対応を図ること。
また、市町村は、知的障害者福祉法又は身体障害者福祉法に
よる通知を行うなど、都道府県と協力して対応すること。
これらの対応を行うに当たって、都道府県及び市町村は、必要
に応じて警察や法務局・地方法務局と連携すること。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
権利侵害行為を行ったサービス事業者等に対する厳格な対処について
法においては、サービス事業者等が(サービス事業者等の責
務)に違反したと認められるときは、都道府県知事は、サービス
事業者等に係る指定を取消し、又は期間を定めてその指定の全
部若しくは一部の効力を停止することができるなど、都道府県知
事に対して監督権限を付与している。権利侵害行為の事実が確
認された場合には、こうした監督権限の行使を含めて適切な措
置を講ずること。
特に、サービス事業者等において組織的な権利侵害行為の存
在が明らかになった場合には、代替施設を含めたサービス利用
の継続性にも配慮しつつ、当該サービス事業者等に対し、指定
の取消、役員体制の一新の指導など厳正な対処を行うこと。
(平成20年3月31日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
対応後の支援について
(1) 虐待を受けた障害者(児)やその家族については、心のケア
を含め、その後の支援が適切に行われるよう継続的にフォロー
すること。
(2) 虐待が行われた施設については、その後の支援をきめ細かく
行い、再発の防止に努めるとともに、ケースを一つの特異な
ケースとせず、施設に共通な課題として取り組むために、必要
に応じ、情報を都道府県内の施設に提供すること。
施設での再発を防止するためには、改善計画を作成し、それ
に則り迅速な対応を図るよう指導すること。その際、理事会や施
設長など管理者が大きな役割を果たすことから、適切な理事会
組織や管理体制が構築できるよう指導すること。
(3) 虐待防止は、県内全体の課題と受け止め、再発防止のため
のシステム構築や虐待対応マニュアルの作成等を各施設に指
導すること。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
関係者の連携について
施設における障害者(児)の虐待については、都道府県、市町
村、福祉事務所、知的障害者更生相談所、身体障害者更生相
談所、児童相談所、保健所、精神保健福祉センターなどの機関
だけでなく、障害者(児)団体、施設などの関係団体、学校、警察、
法務局・地方法務局、司法関係者、医療関係者、民生委員、人
権擁護委員、ボランティア、オンブズマン、地域の住民などの協
力なしには効果的な対応が図られないことから、これら関係機
関とのネットワークを普段から構築すること。
また、障害者(児)虐待の未然防止については、施設職員のモ
ラルの向上や権利問題を検討できる職場の雰囲気などが重要
であることから、改めてその周知徹底を図ること。そのために、
施設職員等に対する研修の機会を利用すること。
(平成17年10月20日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
障害者施設従事者等よる障害者虐待への対応 (P.83)
従事者等による虐待を受けたと
思われる障害者を発見した人
従事者等による虐待を受けた
障害者
通報
届出
市町村虐待防止センター(市町村等の障害者虐待対応窓口)受付記録の作成
緊急性の判断
市
町
村
(直ちに招集)
見
《コアメンバー》(通報等の内容を詳細に検討)
極
事実確認・訪問調査
※必要に応じて都道府県に相談・報告
め
障害者施設従事者等による虐待が疑われる場合(速やかに招集)
ケース会議の開催 《コアメンバー・事案対応メンバー・専門家チーム》
障害者施設従事者等による虐待が認められた場合
虐待防止・障害者保護を図るための各法規による権限の行使
・施設からの報告徴収・立入検査・事業者の監督 等
従事者等による虐待の状況等の報告
都道府県障害者権利擁護センター
都
道
府
県
安全の確認その他の事実の確認(市町村と連携)
虐待防止・障害者保護を図るため障害者自立支援法、社会福祉法等の規定による権限の適切な行使
〔社会福祉法〕 報告徴収、措置命令、業務制限・停止命令、認可取消
〔障害者自立支援法〕 施設等からの報告徴収、勧告、措置命令、指定取消
従事者等による虐待の状況等の公表(毎年度)
苦情処理窓口
関係機関等へ
(1)通報等の受付
ア 通報等の対象
障害者虐待防止法では、障害者福祉施設従事者等による虐待を受けたと思われる
障害者を発見した者に対し、市町村への通報義務が規定されている(第16条第1項)。
これは、発見者が障害者福祉施設従事者等の場合であっても同様。
また、虐待を受けた障害者は市町村に届け出ることができる(第16条第2項)。
イ 施設等の所在地と支給決定を行った市町村が異なる場合
障害者が入所している障害者支援施設の所在地と当該支給決定を行った市町村が
異なる場合、どちらの市町村にも通報等が行われる可能性。
いずれの場合も、通報者への聞き取りなどの初期対応は通報等を受けた市町村が
行う。その上で、支給決定を行った市町村が異なる場合は、速やかに支給決定を行っ
た市町村に引き継ぐ。
その後の対応等については、障害者福祉施設等の指定や法人の許認可を行った都
道府県(政令市・中核市)と協力して行うことになるため、当該自治体にも速やかに連
絡を入れる。
施設等の所在地と支給決定を行った市町村が異なる場合
C県
連絡
・事実確認
・安全確認
・権限行使
引き継ぎ
A市
支給決定
A
さ
ん
B町
・事実確認
・安全確認
・権限行使
聞き取り等
初期対応
虐待
B施設
通報
発
見
ウ 通報等の受付時の対応(P.77)
・通報等の内容は、サービス内容に対する苦情や、また虚偽による通報や過失による
事故であったりすることも考えられるため、迅速かつ正確な事実確認を行うことが必要。
・通報等の内容が、サービス内容に対する苦情等で他の相談窓口(例・市町村や事
業所の苦情処理窓口等)での対応が適切な場合は適切な相談窓口につなぐ。
・障害者福祉施設従事者が通報者である場合には、通報者に関する情報の取扱いに
は特に注意が必要。施設・事業者には通報者は明かさずに調査を行うなど、通報者
の立場の保護に特に配慮することが必要。
エ 通報等による不利益取扱いの禁止
障害者虐待防止法では、
① 刑法の秘密漏示罪その他の守秘義務に関する法律の規定は、障害者福祉施設従
事者等による障害者虐待の通報を妨げるものと解釈してはならないこと(この旨は、養
護者による障害者虐待についても同様。)(第16条第3項)
② 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の通報等を行った従業者等は、通報
等をしたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いを受けないこと(第16条第4項)。
■公益通報者に対する保護規定
① 解雇の無効
② その他不利益な取扱い(降格、減給、訓告、自宅待機命令、給与上の差別、退職
の強要、専ら雑務に従事させること、退職金の減給・没収等)の禁止
(2)市町村による事実の確認(P.79)
・通報等内容の事実確認や障害者の安全確認を行う
・事実確認の調査は、通報等がなされた従事者等の勤務する障害福祉サービス事業
所等、虐待を受けたと思われる障害者に対して実施。
・ていねいに事実確認を行い、事案の実態や背景を慎重に見極める。
・事実確認等は、障害福祉サービス事業所等の任意の協力の下に行われるもの。
・協力が得られない場合などは、早期に都道府県へ報告し、都道府県と共同で事実
確認を行うことも検討。
・事業所等において第三者性を担保したオンブズマン制度や虐待防止委員会などの
組織が整備されている場合は、市町村の事実確認調査とあわせ、第三者性を担保
した組織が事実確認を行うことにより、運営改善に向けた取組が機能しやすくなる。
ア 調査項目(P.80)
(ア)障害者本人への調査項目例 ①虐待の状況 ②障害者の状況 ③障害福祉
サービス等の利用状況 ④障害者の生活状況 等
(イ) 障害福祉サービス事業所等への調査項目例 ①当該障害者に対するサービ
ス提供状況 ②虐待を行った疑いのある職員の勤務状況等 ③ 通報等の内
容に係る事実確認、状況の説明 ④職員の勤務体制 ⑤ その他必要事項
イ 調査を行う際の留意事項
①複数職員による訪問調査 ②医療職の立ち会い ③障害者、障害福祉サービス
事業所等への十分な説明 ④障害者や障害者福祉施設従事者等の権利、プラ
イバシーへの配慮
(3)市町村から都道府県への報告
・市町村は、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に関する通報等を受けた
場合、虐待に関する事項を都道府県に報告すること(第17条)。
・都道府県に報告する情報は、通報のあった全ての事案ではなく、障害者福祉施設
従事者等による虐待の事実が確認できた事案。
・悪質なケース等で、都道府県による迅速な権限発動が求められる場合には、速や
かに市町村から都道府県に報告する。
都道府県に報告すべき事項(案)
1 障害者福祉施設等の名称、所在地及び種別
2 虐待を受けた又は受けたと思われる障害者の氏名、性別、年齢、障害の種類及び
障害程度区分その他の心身の状況
3 虐待の種別、内容及び発生要因
4 虐待を行った障害者福祉施設従事者等の氏名、生年月日及び職種
5 市町村が行った対応
6 虐待が行われた障害者施設等において改善措置が採られている場合はその内容
(4)都道府県による事実の確認
・市町村からの報告を受けた都道府県は、市町村によって障害者虐待の事実確認
がされていないときなど、報告に係る障害福祉サービス事業所等に対して、事実
確認のための調査を実施。
・調査の際には、当該通報等に係る障害者についての支給決定を行った市町村に
調査への同行を依頼するなど連携して対応。
(5)社会福祉法及び障害者自立支援法の規定による権限の行使
・障害者虐待の防止と虐待を受けた障害者の保護を図るため、市町村長又は都道
府県知事は、社会福祉法及び障害者自立支援法に規定された権限を適切に行使
し、対応を図ることを規定(第19条)。
・障害者福祉施設従事者等による障害者虐待が強く疑われる場合には、当該施設
等から報告徴収を受けて事実を確認し、障害者虐待が認められた場合には、市
町村又は都道府県は、改善を図るよう指導。
・指導に従わない場合には、別表(P.87~89)に掲げる社会福祉法及び障害者自立
支援法に基づく勧告・命令、指定の取消し処分などの権限を適切に行使すること
により、障害者の保護を図る。
【別表】社会福祉法・障害者自立支援法による権限規定 (P.84~86)
都道府県知事
第56条第1項
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
社会福祉法人に対する報告徴収、検査
第56条第2項
指定都市市長
中核市市長
社会福祉法人に対する措置命令
社
会 第56条第3項
福
祉
法
第56条第4項
都道府県知事
指定都市市長
社会福祉法人に対する業務停止命令又は役員の解職勧告
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
社会福祉法人に対する解散命令
中核市市長
都道府県知事
第57条
社会福祉法人に対する事業停止命令
第71条
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
第72条
都道府県知事
社会福祉事業を経営する者に対する事業制限・停止命令、許可取消、認可取消
社会福祉施設に対する改善命令
第10条
市町村
第11条第2項
厚生労働大臣
都道府県知事
第48条第1項
都道府県知事
市町村長
第48条第3項
障 第49条第1項
害
者
自
立 第49条第2項
支
援
法 第49条第3項
第49条第4項
第50条第1項
第50条第3項
都道府県知事
市町村長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
障害福祉サービス、相談支援、自立支援医療、療養介護医療若しくは補装具の販
売若しくは修理を行う者若しくはこれらを使用する者若しくはこれらの者であっ
た者に対する報告徴収、立入検査等
自立支援給付対象サービス等を行った者若しくはこれらを使用した者に対する報
告徴収等
指定障害福祉サービス事業者若しくは指定障害福祉サービス事業であった者若し
くは当該指定に係るサービス事業所の従業者であった者に対する報告徴収、立入
検査等
指定障害者支援施設等の設置者に対する報告徴収、立入調査等
指定障害福祉サービス事業者に対する勧告
指定障害者支援施設等の設置者に対する勧告
勧告に従わなかった指定事業者等の公表
勧告に係る措置をとらなかった指定事業者等に対する措置命令
指定障害者福祉サービス事業者の指定取消、効力停止
指定障害者支援施設の指定取消、効力停止
第51条の3第1項
第51条の4第1項
第51条の4第2項
第51条の4第3項
第51条の27第1項
障
害
者
自 第51条の27第2項
立
支
援
第51条の28第1項
法
第51条の28第2項
第51条の28第3項
第51条の28第4項
厚生労働大臣
都道府県知事
厚生労働大臣
都道府県知事
厚生労働大臣
都道府県知事
厚生労働大臣
都道府県知事
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
市町村長
指定障害福祉サービス事業者、指定障害者支援施設に対する報告徴収、立入検査
等。(業務管理体制)
指定障害福祉サービス事業者、指定障害者支援施設に対する勧告
(業務管理体制)
勧告に従わなかった指定障害福祉サービス事業者、指定障害者支援施設の公表
(業務管理体制)
勧告に係る措置をとらなかった指定障害福祉サービス事業者、指定障害者支援施
設に対する措置命令(業務管理体制)
指定一般相談支援事業者若しくは指定一般相談支援事業者であった者若しくは当
該指定に係る一般相談支援事業所の従業者であった者に対する報告徴収、立入検
査等
市町村長
指定特定相談支援事業者若しくは指定特定相談支援事業者であった者若しくは当
該指定に係る特定相談支援事業所の従業者であった者に対する報告徴収、立入検
査等
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
指定一般相談支援事業者に対する勧告
市町村長
指定特定相談支援事業者に対する勧告
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
市町村長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
市町村長
勧告に従わなかった指定相談支援事業者の公表
勧告に係る措置をとらなかった指定相談支援事業者に対する措置命令
第 51 条の 29 第 1 項
第 51 条の 29 第 2 項
第 51 条の 32 第 1 項
第 51 条の 33 第 1 項
第 51 条の 33 第 2 項
障
害
者 第 51 条の 33 第 3 項
自
立
支 第 81 条第 1 項
援
法 ※
第 82 条第 1 項
※
第 82 条第 2 項
※
第 85 条第 1 項
※
第 86 条第 1 項
※
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
市町村長
厚生労働大臣
都道府県知事
市町村長
厚生労働大臣
都道府県知事
市町村長
厚生労働大臣
都道府県知事
市町村長
厚生労働大臣
都道府県知事
市町村長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
都道府県知事
指定都市市長
中核市市長
※指定都市又は中核市自らが設置する場合は除く
指定一般相談支援事業者に対する指定取消、効力停止
指定特定相談支援事業者に対する指定取消、効力停止
指定相談支援事業者若しくは当該指定相談支援事業者の従業者に対する
報告徴収、立入調査等(業務管理体制)
指定相談支援事業者に対する勧告(業務管理体制)
勧告に従わなかった指定相談支援事業者の公表(業務管理体制)
勧告に係る措置をとらなかった指定相談支援事業者に対する措置命令
(業務管理体制)
障害福祉サービス事業、一般相談支援事業、特定相談支援事業、移動支
援事業、地域活動支援センター、福祉ホームの設置者に対する報告徴収、
立入検査等
障害福祉サービス事業、一般相談支援事業、特定相談支援事業、移動支
援事業を行う者に対する事業制限・停止命令
障害福祉サービス事業を行う者、地域活動支援センター、福祉ホームの
設置者に対する改善、停止・廃止命令
市町村が設置した障害者支援施設の長に対する報告徴収、立入検査等
市町村が設置した障害者支援施設に対する事業停止・廃止命令
(6)障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の状況の公表
都道府県知事は、毎年度、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の状況、障害
者福祉施設従事者等による障害者虐待があった場合にとった措置その他厚生労働省
令で定める事項を公表(年次報告)する(第20条)。
この公表制度を設けた趣旨は、各都道府県における障害者虐待の防止に向けた取
組に反映していくことを目的とするものであり、障害者虐待を行った事業者名を公表し
施設等に対して制裁を与えることを目的とするものではない(ただし、障害者虐待等に
より、障害福祉サービス事業所としての指定取消が行われた場合には、障害者自立
支援法に基づきその旨を公示)。
都道府県知事が公表する項目(案)
一 虐待があった障害者福祉施設等の種別
二 虐待を行った障害者福祉施設従事者等の職種
法に基づく公表事項以外にも、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に対
する指導・措置等を適宜公表することとしている自治体もある。
Ⅳ 使用者による障害者虐待の
防止と対応
(マニュアルP.93)
使用者よる障害者虐待への対応 (P.110)
通報・届出
使用者による虐待を受けたと
思われる障害者を発見した人
使用者による虐待を受けた
障害者
通報
届出
市町村虐待防止センター(市町村等の障害者虐待対応窓口)
(直ちに招集)
市
町
村
都
道
府
県
緊急性の判断
《コアメンバー》(通報等の内容を詳細に検討)
(必要に応じ事実確認、訪問調査)
使用者による虐待が疑われる場合(速やかに招集)
ケース会議の開催 《コアメンバー・事案対応メンバー・専門家チーム》
使用者による障害者虐待が認められた場合
通知
都道府県障害者権利擁護センター
(必要に応じ事実確認、訪問調査)
市町村と同様に緊急性の判断やケース会議の開催等が必要
報告
都道府県労働局 (総務部企画室)
労都
働道
局府
県
公共職業安定所、労働基準監督署、雇用均等室、企画室等
虐待防止・障害者保護を図るため、障害者雇用促進法、労働基準法、雇用均
等法、個別労働紛争解決促進法などの規程による権限の適切な行使
使用者による虐待の状況等の公表(毎年度)
見
極
め
苦情処理窓口
関係機関等へ
(1)通報等の受付
ア 通報等の対象
使用者による虐待を受けたと思われる障害者を発見した者に対し、市町村又は
都道府県への通報義務が規定(第22条第1項)。
使用者による虐待を受けた障害者は、市町村又は都道府県に届け出ることができ
る(第22条第2項)。
就労継続支援A型に関する相談・通報等であって、当該事業所と利用者が雇用契
約を結んでいる場合は、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待と使用者によ
る障害者虐待の両方に該当。市町村、都道府県及び都道府県労働局等が緊密な
連携を取ることが必要。
イ 事業所の所在地と障害者の居住地が異なる場合
① 事業所の所在地の市町村に通報等があった場合
通報等を受けた市町村は、通報者への聞き取りなどの初期対応を行った上で、
厚生労働省令に基づき、事業所の所在地の都道府県に通知。その後は居住地の
市町村が生活上の支援を行うことになるため、速やかに居住地の市町村に連絡。
② 居住地の市町村に通報等があった場合
通報等を受けた市町村は、通報者への聞き取りなどの初期対応を行った上で、
厚生労働省令に基づき、事業所の所在地の都道府県に通知。
事業所への訪問調査等を行う際に、事業所の所在地の市町村の協力が必要な
場合は、事業所の所在地の市町村にも情報提供。
③ 事業所の所在地又は居住地の都道府県に通報等があった場合
通報を受けた都道府県は、速やかに居住地の市町村に連絡する
ウ 通報等の受付時の対応
使用者による虐待に関する通報等の内容は、労働条件に対する苦情であったり、また
虚偽による通報や過失による事故であったりすることも考えられるため、通報等を受け
た場合には、当該通報等について迅速かつ正確な事実確認を行うことが必要。
通報等を受けた市町村・都道府県職員は、まず通報者から発見した状況等について詳
細に説明を受け、それが使用者による障害者虐待に該当するかどうか判断できる材料
となるように情報を整理。
通報等の内容が明らかに使用者による障害者虐待ではなく、以下に例示する労働相
談である場合には、適切な相談窓口につなぐ。
労働相談の例
労働基準監督署:障害者である労働者とその他労働者の区別なく発生している、賃
金不払いや長時間労働等の、労働基準関係法令上問題がある事案
公共職業安定所:離職票、失業手当、求職に関するもの等
都道府県労働局雇用均等室:育児・介護休業、女性問題等
都道府県労働局総務部企画室:労働条件引下げ、配置転換等
(注:相談窓口が不明の場合は、都道府県労働局総務部企画室に相談)
(2)市町村・都道府県による事実確認等(P.99)
・通報等を受けた市町村・都道府県は、通報等内容の事実確認や障害者の安全確認
を行う。
・市町村・都道府県には事業所に対する指導権限がないため、基本的には事業所の
協力の下に行われるもの
・事業所の協力が得られる場合には、以下の事実確認を行う。
・事業所の協力を得られず、障害者の安全確保等の必要がある場合には、速やかに、
市町村は事業所所在地の都道府県を経由して、また都道府県は直接、事業所所在
地の都道府県労働局に報告し、都道府県労働局が行う調査に同行するなど、協力
して対応することを検討する。
(ア) 障害者本人への調査項目
①虐待の状況 ②障害者の状況 ③業務内容、勤務体制、労働環境等 ④障害者の
生活状況 等
(イ) 事業所への調査項目例(※調査が難しい時は都道府県・都道府県労働局に相談)
① 当該障害者の従事する業務内容、勤務体制、労働環境等
② 虐待を行った疑いのある職員の業務内容、勤務状況等
③ 通報等の内容に係る事実確認、状況の説明
④ 職員の勤務体制や給与の支払い状況等必要事項
(3)市町村から都道府県への通知(P.101)
・市町村は、使用者による障害者虐待に関する通報等を受けた場合、虐待に関する
事項を事業所の所在地の都道府県に通知(第23条)
(P.104の「労働相談票(使用者による障害者虐待)」を作成し添付)
・障害者虐待ではないと明確に判断される事案を除いて、通報等があった事案は市
町村から都道府県へ通知。
・悪質なケース等で、都道府県労働局等による迅速な行政指導が求められる場合に
は、速やかに市町村から都道府県を経由して都道府県労働局に報告し協力して対応。
(4)都道府県から都道府県労働局への報告(P.102)
・都道府県は、市町村からの通知を受けた場合や、直接に使用者による障害者虐待に
関する通報等を受けた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、事業所の所在
地を管轄する都道府県労働局総務部企画室に報告(第24条)
・使用者による虐待に該当するか疑義が生じた場合には、都道府県労働局総務部企画
室に照会。
・都道府県が直接通報等を受けた場合には、都道府県から都道府県労働局総務部企
画室への報告に当たり、P104の「労働相談票(使用者による障害者虐待)」を作成し、
添付。
・都道府県は、通報等の内容から緊急性があると判断される場合には、速やかに都道
府県労働局総務部企画室に報告するとともに、障害者の居住地の市町村に情報提供
し連携して対応。
(5)都道府県労働局による対応
・都道府県から報告を受けた都道府県労働局総務部企画室は、報告内容から、公共職
業安定所、労働基準監督署、雇用均等室、企画室などの対応部署を決め対応。
・対応部署は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」、「労働基準法」、「雇用の分野に
おける男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」、「個別労働関係紛争の解
決の促進に関する法律」などの関係法令の規定による権限を適切に行使して適正な労
働条件及び雇用管理を確保する。
・住み込みで働いている場合などは、使用者による障害者虐待であっても、生活支援が
必要な場合があるため、市町村等の関係機関と連携し、迅速な対応を行う。
行政(公共職業安定所、労働基準監督署等)職員が障害者虐待を発見した場合、都道
府県労働局総務部企画室へ速やかに情報提供を行う。
・対応部署による障害者虐待対応が終結した場合には、その結果を都道府県労働局か
ら事業所の所在地の都道府県に情報提供する。情報提供を受けた都道府県は、障害
者の居住地の市町村に情報提供する。
(6)都道府県等による障害者支援
・ 使用者による障害者虐待が発生した場合、労働条件や雇用管理の面からの事業者に
対する指導は都道府県労働局、障害者に対する生活支援などについては市町村や都
道府県が十分に連携して対応。
・都道府県労働局長等が権限を行使する際には、当該報告に係る都道府県と連携を図
ることとされ(第26条)、都道府県に対し適宜情報提供しながら対応する。
・都道府県においては、早い時期に障害者の居住する市町村や障害者就業・生活支援
センターに情報提供等を行い、具体的な相談支援や福祉的な措置等について依頼する。
(7)使用者による障害者虐待の状況の公表
厚生労働大臣は、毎年度、使用者による障害者虐待の状況、使用者による障害者
虐待があった場合にとった措置その他厚生労働省令で定める事項を公表(年次報
告)する(第28条)。
障害者虐待防止対策支援事業
平成24年度予算:420,838千円
障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行う
(1)連携協力体制整備事業
○ 地域における関係機関等の協力体制の整備・充実を図る。
連携協力体制を整備した上で、
(2)から(5)を地域の実情を踏まえ、実施
(3)研修事業
○ 障害福祉
サービス事
業所等の従
事者や管理
者、相談窓
口職員に対
する障害者
虐待防止に
関する研修
を実施する。
(2)家庭訪問等個別支援事業
① 家庭訪問
○ 過去に虐待のあった障害者の家庭
やそのおそれのある障害者の家庭
に対し、相談支援専門員等を訪問さ
せることにより、家族関係の修復や
家族の不安の解消に向けた支援を
行う。
② 相談窓口の強化
○ 障害者虐待に係る24時間・365日の
相談体制を整備する。
③ 一時保護のための居室の確保等
○ 事前に障害者支援施設や短期入
所事業所等に依頼し、居室の確保を
行うとともに、緊急一時保護を要する
虐待が発生した場合に虐待を受けた
障害者の受入れについて支援する。
④ カウンセリング
○ 医師、臨床心理士等が、虐待を受
けた障害者、障害者虐待を目撃した
者、障害者虐待を行った家族等に対
して、カウンセリングを行う。
⑤ その他地域の実情に応じて行う事業
(5)普及啓発事業
※ 障害者虐待防止・権利擁護事業(平成24年度予算:4,004千円)
国において、障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修を実施。
(4)専門性強
化事業
○ 医師や弁
護士等によ
る医学的・法
的な専門的
助言を得る
体制を確保
する。
○ 有識者か
ら構成され
るチームを
設置し、虐
待事例の分
析等を行う。
障害者自立支援法等の改正について
93
基幹相談支援センターの役割のイメージ
基幹相談支援センターは、地域の相談支援の拠点として総合的な相談業務(身体障害・知的障害・精神
障害)及び成年後見制度利用支援事業を実施し、地域の実情に応じて以下の業務を行う。
※ 平成24年度予算案において、地域生活支援事業費補助金により、基幹相談支援センターの機能強化を図るための、①専門的職員の配置、
②地域 移行・地域定着の取組、③地域の相談支援体制の強化の取組に係る事業費について、国庫補助対象とする予定。
また、社会福祉施設等施設整備費補助金等により、施設整備費について国庫補助対象とする予定。
基幹相談支援センター
相談支援
事業者
相談支援
事業者
総合相談・専門相談
障害の種別や各種ニーズに対応する
・ 総合的な相談支援(3障害対応)の実施
・ 専門的な相談支援の実施
権利擁護・虐待防止
地域移行・地域定着
・成年後見制度利用支援事業
相談支援専門員、社会福祉士、
精神保健福祉士、保健師等
・虐待防止
※ 市町村障害者虐待防止センター(通報受理、
相談等)を兼ねることができる。
・入所施設や精神科病院への働きかけ
・地域の体制整備に係るコーディネート
地域の相談支援体制の強化の取組
・相談支援事業者への専門的指導、助言
相談支援
事業者
・相談支援事業者の人材育成
・相談機関との連携強化の取組
運営委託等
自立支援協議会
児童発達
支援センター
(相談支援事業者)
94
成年後見制度利用支援事業の必須事業化
法
対象者は、障害福祉サービスの利用の観点から成年後見制度を利用することが有用であると認められる
障害者で成年後見制度の利用に要する費用について補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難で
あると認められるもの。
→ 助成費用(厚生労働省令で定める費用)は、成年後見制度の申立てに要する経費(登記手数料、鑑定
費用等)及び後見人等の報酬の全部又は一部とする。
※平成24年度予算においては、地域生活支援事業費補助金において、成年後見制度利用支援事業のほか、新たに、成年
後見制度の利用促進のための普及啓発や法人後見を行う事業所の立ち上げの支援に係る国庫補助を盛り込んでいる。
障害者福祉サービスを利用し、又は利用しようとする
知的障害者及び精神障害者
対象者
・成年後見制度を利用することが有用であると認
められる障害者で成年後見制度の利用に要す
る経費について補助を受けなければ成年後見
制度の利用が困難であると認められるもの
市町村
申立費用及び後見人等の報酬を助成
※ 地域生活支援事業の位置付け
後見人
保佐人
補助人
後見等支援
発
見
連絡
審
判
選
任
・
相談支援
事業者等
国
都道府県
助
成
助
成
発
見
財政支援
国 1/2
都道府県・
市町村1/4
市町村
申立て
家庭裁判所
親族・検察官等
95
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/gyakutaiboushi/
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/gyakutaiboushi/tsuuchi.html
■通知
●厚生労働省
○(平成23年6月24日) 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律の公布について(通知)
○(平成24年9月24日) 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律等の施行について(通知)
●警察庁
○(平成24年9月5日) 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律の施行を踏まえた障害者虐待事案への適切
な対応について(通達)
●文部科学省
○(平成24年7月20日) 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律の施行に向けた適切な対応の徹底について
○(平成23年6月24日) 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律について(通知)
■事務連絡
●障害保健福祉部
○(平成22年9月21日) 障害者(児)施設等の利用者の権利擁護について
●医政局
○(平成24年9月28日) 障害者虐待防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律の施行に伴う適切な対応について
●雇用均等・児童家庭局
○(平成24年10月1日) 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律等の施行に伴う同法第30条の保育所等に
おける適切な対応について
■その他
○市町村・都道府県における障害者虐待の防止と対応(自治体向けマニュアル)
○障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き(施設・事業所従事者向けマニュアル)
○使用者による障害者虐待の防止についての概要(リーフレット)
○障害者虐待防止法に係る通報・届出窓口一覧(都道府県分)
■リンク
○政府広報オンライン「お役立ち情報」「平成24年10月1日から『障害者虐待防止法』が始まります」
○政府広報「中山秀征のジャパリズム」(ラジオ番組)「見過ごさない!障害者への虐待」
○政府広報「明日への声」(音声広報CD)「No.3 虐待から障害者を守る「障害者虐待防止法」が平成24年10月1日から施行されます」
○厚生労働省大臣官房地方課(使用者による障害者虐待)