プライマリ・ケアに役立つICPCとICF 藤田 伸輔(千葉大学医学部附属病院)、山岡 雅顕(洲本市 応急診療所)、大西 弘高(東京大学医学教育国際協力研 究センター)、大野 毎子(唐津市民病院きたはた)、佐藤 健 一(ヘルスウェイクリニック)、佐藤 幹也(河北総合病院)、 三瀬 順一(自治医科大学総合診療部)、山田 隆司(台東病 院)、和座 一弘(わざクリニック) WHO-FIC:WHO関連分類 プライマリケア用 外傷分類 処方用 ICPCとは • WHOの国際疾病分類は1900年パリで誕生 – 主たる死因で分類し、死亡率を下げる • 感染症の克服 • 疾病の自然史(病態推移)から疾病概念を確立 • 疾病の原因を探索 → 病理学・細菌学の発達 ⇒詳細化 • 専門家によるコード付与(分類)が前提:診療情報管理士 • プライマリ・ケア専用の分類がほしい – – – – – 1次予防:健康教育・予防接種・流行性疾患調査 2次予防:検診・初期治療 3次予防:慢性疾患管理 4次予防:薬剤の効果判定、副作用モニタリング ICDとの連携 • ICD-9と同時リリース:ICPC-1 • ICD-10と同時リリース:ICPC-2 A B D F H K L N P R S T U W X Y Z 全 血 消 眼 耳 循 骨 神 心 呼 皮 代 泌 妊 女 男 社 身 液 化 環 格 経 理 吸 膚 謝 尿 娠 性 性 会 1 愁訴 診断 2 予防 行為 投薬 3 治療 行為 4 検査 結果 5 書類 作成 6 紹介 7 診断 ICFの構造 • • ICIDH国際障害分類(1980)としてスタート 障害=個人として解決すべきもの • 社会の中で解決すべきもの – 活動と参加の評価 – 環境の評価 • • • b:心身機能(114項目505因子) s:身体構造(56項目302因子) d:活動と参加(118項目402因子) – a:活動 – p:参加 • • • e:環境因子(74項目253因子) 個人因子(記号なし・項目設定なし) 各分野が階層構造になっている(どこのレベルまでで使っても良い) – – – – – • • 第1分類:文字+数字1桁(章) 第2分類:文字+数字2桁(名称未定:やや扱いにくい) 第3分類:文字+数字3桁(名称未定:常用の分類:ここでは項目と表現) 第4分類:文字+数字4桁(名称未定:bdeの最詳細分類) 第5分類:文字+数字5桁(名称未定:bsで使用:ここでは因子と表現) 活動と参加を区別しなければ362項目全1462因子 それぞれを5段階評価(小数1桁目) – 各項目についてカットオフを決定する必要がある ICF:b 心身機能 精神b110-b199 1. 1. 2. • 感覚と痛みb210-b289 2. 1. 2. 3. 4. 視覚(ICPC:F) 聴覚と前庭(ICPC:E) その他の感覚(ICPC:D,R,&S) 痛み(ICPC:S) 1. 2. 3. 4. 心血管系(ICPC:K) 血液と免疫系(ICPC:B) 呼吸器系(ICPC:R) 心血管・呼吸器系の付加的機能・感覚 (ICPC:B,K,&R) 消化器・代謝・内分泌系b510-b559 5. 1. 2. 消化器系(ICPC:D) 代謝と内分泌系(ICPC:T) 尿路・性・生殖b610-b679 6. 1. 2. 尿路機能(ICPC:U,X,&Y) 性と生殖の機能(ICPC:W,X,&Y) 神経筋骨格と運動b710-b789 7. 1. 2. 3. 関節と骨(ICPC:L) 筋(ICPC:L) 運動機能(ICPC:N,L) 皮膚・関連構造b810-b869 8. 1. 2. 皮膚(ICPC:S) 毛(ICPC:S) .0 :機能障害なし (0-4%) .1 :軽度の障害 (5-24%) .2 :中等度の障害(25-49%) .3 :重度の障害 (50-95%) .4 :完全な障害 (96-100%) .8 :詳細不明 .9 :非該当 正常なら評価として0をつける FIMとは数字が逆になっている 音声と発話b310-b399 (ICPC:D&N) 心血管・血液・免疫・呼吸器系b410-b469 3. 4. 評価方法 – – – – – – – 全般的精神機能(ICPC:N&P) 個別精神機能(ICPC:N&P) • 具体的には使用目的に応じて基準の作成が必要 ICF:s 身体構造 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. • 3軸で評価 神経系 目・耳・関連部位 音声と発話 心血管・免疫・呼吸器系 消化器・代謝・内分泌系 尿路性器・生殖系 運動関連部位 皮膚および関連部位 第1評価点(障害の程度) – 構造障害の程度 – 構造障害の性質 – 構造障害の部位(日本の試案) • 障害の程度は機能と同じスケー ルを使用 • 障害の性質ではスケール順が程 度のそれと逆行している • 程度と性質には混乱がある 第2評価点(障害の性質) 第3評価点(障害の部位) 0 障害なし 0 構造に変化なし 0 2部位以上 1 軽度の障害 1 全欠損 1 右 2 中等度の障害 2 部分的欠損 2 左 3 重度の障害 3 付加的な部分 3 両側 4 完全な障害 4 異常な大きさ 4 前面 5 不連続 5 後面 6 位置の変異 6 近位 7 質的変化(液貯留を含む) 7 遠位 8 詳細不明 8 詳細不明 8 詳細不明 9 非該当 9 非該当 9 非該当 ICF:d 活動と参加 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. • 4分野で評価 学習と知識の応用 一般的な課題と要求 コミュニケーション 運動・移動 セルフケア 家庭生活 対人関係 主要な生活領域 コミュニティ・社会・市民生活 実行状況 非支援の能力 – – – – 実行状況の評価 支援(物・人)がない場合の能力評価 支援ありでの能力評価(任意) 支援なしでの実行評価(任意) • a 活動と、p参加を区別 • 実行状況は現在の環境で本人が 活用できている状況を基に評価す る 支援時の能力 支援なしの実行 0 困難なし 0 困難なし 0 困難なし 0 困難なし 1 軽度の困難 1 軽度の困難 1 軽度の困難 1 軽度の困難 2 中等度の困難 2 中等度の困難 2 中等度の困難 2 中等度の困難 3 重度の困難 3 重度の困難 3 重度の困難 3 重度の困難 4 完全な困難 4 完全な困難 4 完全な困難 4 完全な困難 8 詳細不明 8 詳細不明 8 詳細不明 8 詳細不明 9 非該当 9 非該当 9 非該当 9 非該当 ICF:e 環境因子 1. 2. 3. 4. 5. 生産品と用具 自然環境と人的環境 支援と関係 態度 サービス・制度・政策 阻害因子(.で表現) • 阻害因子と促進因子を考える – 阻害因子は . で表現 – 促進因子は + で表現 • 第2評価点はない • 評価スケールは他と同様 促進因子(+で表現) .0 阻害因子なし +0 促進因子なし .1 軽度の阻害因子 +1 軽度の促進因子 .2 中等度の阻害因子 +2 中等度の促進因子 .3 重度の阻害因子 +3 重度の促進因子 .4 完全な阻害因子 +4 完全な促進因子 .8 詳細不明の阻害因子 +8 詳細不明の促進因子 .9 非該当 ICF: 個人因子 • 記号は設定されていない • 評価項目も設定されていない • テキスト記載項目 – – – – 生年月日・年齢 性別 人種 その他の健康状態 • • • • • • • • • • 運動 生活様式 趣味 社会的背景 学歴 仕事 職歴 人生の価値観・考え方 宗教 その他 症例:67歳。女性。 • 既往症:糖尿病 • 現病歴: – 7月10日脳梗塞発症のため救 急車にて来院。 – 入院時は意識100 – 右片麻痺を残して回復: • b7302右側筋力低下 • b7352右側筋緊張亢進 • • • • • →b16711書字能力低下 d170書くこと d410-d499移動 d510-d599セルフケア d630-d649家事 • 家庭: 義母(88歳)認知症、介護中d660 夫(68歳)高血圧、肺がん術後2年目 娘(44歳)既婚、札幌 息子(42歳)独身、同居:食事の準備・ 洗濯d660? 娘(37歳)既婚、東京 実母(90歳)独居、生活が心配・少し 認知症 • 生活: 自宅:一軒家・2階建て・広い・段差多 い・買い物遠い(自転車10分) 自室は2階、トイレ・風呂は1階 • 収入:年金 • 支援: 介護保険申請中 e5700 身体障害申請予定 e5700 • 楽しみ:畑・生け花 エコマップ 67歳。女性。 身体状況b&s&d 役割 E115 2型糖尿病性動脈硬化症 家事 I693 脳梗塞後の片麻痺(右) 90歳 b7302.2 身体の片側筋力(右) 義母の介護 FIM-A.6 d550.2 食べること FIM-B.6 d520.2 身体各部の手入れ FIM-C.6 d510.2 身体を洗うこと FIM-D.6 FIM-E.6 d540.2 更衣 FIM-M.4 d4551.3 階段昇降 88歳 68歳 肺がん 術後2年 d630.2 調理 d640.3 調理以外の家事 暮らしe 介護 生活環境e 自宅 67歳 心配 段差多い 食事・洗濯 自室は2階 42歳 44歳 37歳 札幌 東京 e5700 年金生活 e5700 介護保険申請中 e5700 身体障害申請予定 一軒家2階建 浴室・トイレ1階 趣味・生き甲斐 畑仕事 認知症 生け花 個人因子 39歳(受傷時30歳)。男性。頸部損傷 • 発症 – 平成15年4月当直明けに帰宅中、睡魔に 襲われ高速道路の路肩で仮眠。 – トラックに追突されて救急病院に搬送され た。 – 事故後7日目に意識が戻った時には手も 足も固定されており動かせず。 – 第5頸椎骨折。 – 1か月後 • • • • • • • 四肢筋力低下。 右手はキーボードを操作可能。 左手は細やかな運動は困難。 握力は左右とも5kg。 下肢筋力低下でかろうじて膝を立てられる。 座位での姿勢保持は困難。 バックグラウンド – – – – – – 平成10年卒大学勤務の外科医。 年収1000万円。 独身。マンションで一人暮らし。 両親は兵庫。 兄弟無し。 性格は外交的。 エコマップ 30歳。受傷時。男性。 身体状況 <受傷直後> 意識無し: b110.4 b110意識状態 完全な障害 .4 第5頸椎骨折___ ______ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ 暮らし 兵庫 60歳 54歳 外科医 年収1,000万円 独身 社交的 30歳 生活環境 マンション(千葉市) 一人暮らし 両親は兵庫県在住 兄弟無し 第2評価点(障害の性質) 39歳男性。頸部損傷 • 病状 – 平成15年4月当直明けに帰宅中、 睡魔に襲われ高速道路の路肩で仮 眠。トラックに追突されて救急病院 に搬送された。 – 事故後7日目に意識が戻った時には 手も足も固定されており動かせず。 – 第5頸椎骨折。四肢麻痺 B730 筋力の機能 – 1か月後:四肢筋力低下。 b7301.20 右上肢 • • • • 右手はキーボードを操作可能。 左手は細やかな運動は困難。 握力は左右とも5kg。 下肢筋力低下 かろうじて膝を立てられる。 • 座位での姿勢保持は困難。 • バックグラウンド – – – – 平成10年卒大学勤務の外科医。 年収1000万円。 独身。マンションで一人暮らし。 性格は外交的。 0 構造に変化なし 1 全欠損 2 部分的欠損 3 付加的な部分 4 異常な大きさ 5 不連続 6 位置の変異 7 質的変化(液貯留を含む) 8 詳細不明 9 非該当 b7301.30 左上肢 b7303.30 両下肢 b7305.30 体幹 第3評価点(障害の部位) 第1評価点(障害の程度) 0 2部位以上 1 右 2 左 0 障害なし 3 両側 1 軽度の障害 4 前面 2 中等度の障害 5 後面 3 重度の障害 6 近位 4 完全な障害 7 遠位 8 詳細不明 8 詳細不明 9 非該当 9 非該当 39歳男性。頸部損傷 • 病状 • 経過 – 平成15年4月当直明けに帰宅中、睡 魔に襲われ高速道路の路肩で仮眠。 トラックに追突されて救急病院に搬 送された。 – 事故後7日目に意識が戻った時には 手も足も固定されており動かせず。 – 第5頸椎骨折。四肢麻痺 – 1か月後:四肢筋力低下。 • • • • 右手はキーボードを操作可能。 左手は細やかな運動は困難。 握力は左右とも5kg。 下肢筋力低下 かろうじて膝を立てられる。 • 座位での姿勢保持は困難。 • バックグラウンド – – – – 平成10年卒大学勤務の外科医。 年収1000万円。 独身。マンションで一人暮らし。 性格は外交的。 – 5か月後にリハビリを退院 • • • • • • • 電動車椅子での移動が可能 移乗には介助が必要 通勤は不可能 自宅でパソコンを使用 友人とパソコン・電話で交流 母親が同居し介護 障害認定 – 8か月後に復職 • • • • • • • • • • • 母親が運転して通勤 時間短縮で復職 公共交通機関は使用できず 外科医から病理医に転職 握力は左7kg、右15kg 両下肢は膝立てのみ 座位にはパッドが必要 電動車椅子には6時間ほど座れる 排泄はおむつを使用 食事は自分で食べられる 体温調節は困難 エコマップをICFで記載してみましょう(時間10分) エコマップ 30歳。8か月後。男性。 身体状況 _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ 暮らし 兵庫 60歳 54歳 30歳 達成目標 ________ ________ ________ ________ ________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ _________ 生活環境 _________ _________ _________ _________ _________ _________ 介入する項目とその達成目標を考えてみましょう(時間10分) 39歳男性。頸部損傷 受傷前 受傷1W 1M 2M 6M 1Y B7301 右上肢筋力 0 4 3 3 2 2 B7301 左上肢筋力 0 4 3 3 3 3 B7303 両下肢筋力 0 4 4 4 4 4 B7305 体幹筋力 0 4 3 3 2 2 学習と知識 0 3 0 0 0 0 D4153 座位の保持 0 4 3 2 2 2 D465 電動車椅子 9 9 4 4 2 1 D510 セルフケア 0 4 4 3 3 3 D530 排泄 0 4 4 4 4 4 D770 親密な関係 0 4 0 0 0 0 D845 仕事 0 4 4 4 3 3 E310 家族 0 4 0 0 0 0 E320 友人 0 4 0 0 0 0 E540 交通サービス 0 9 9 9 4 3 D1 経過評価にICFを導入すると • 経過:個々の患者の経過評価表を作成できます。 – 各項目の変化がよく解ります。 – 原則5段階評価なので信頼性が高くなります。 – 欠損データが発生しにくくなります。 • 統計 – 個々の患者の経過評価表を比較検討できます。 – 経過のスピードを比較可能です。 • 標準経過とのずれを測定 • 経過の中で遅れている項目を抽出 – 患者格差・施設格差・地域格差を比較できます。 • 疾患やその重症度による健康格差を抽出 • 施設間での経過の格差を抽出 • 地域間での経過の格差を抽出 ICPCとICFの連携 詳しくは電子書籍パブー (http://p.booklog.jp/book/62324) 「ICF入門」を参照 家族Aさんの気持ち 主治医の気持ち 患者さんの気持ち 患者さんの目標 家族Bさんの気持ち 友人の気持ち Let’s enjoy ICPC. 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