持続可能社会実現のための エコ指標づくり ~飛騨美濃に千年持続型社会を創る会~ (平成14年度岐阜県職員自主研究グループ) 2003年3月3日 1 研究の動機 地球環境問題への危機感が強まる中、省エネ、 リサイクル、自然保護、グリーンコンシューマー 等様々な活動が広がっているが、バラバラにな されている。 持続可能社会実現という目標に向かって諸活動 (教育、福祉、産業、まちづくり、文化等をも含む) を統合しない限り解決は不可能ではないか。 そのために、持続可能社会にどれだけ近いか (あるいは、遠いか)を評価する指標(=「エコ指 標」)が必要であろう。 2.研究の進め方 「持続可能社会」に関心のある人々のネットワー クを基盤にして研究を進めた。 ・岐阜を中心に総勢200人~300人ぐらい ・研究者/学生、行政職員、NPO関係者が三等分ぐらいの割合 ・様々な活動においてリーダーを務めている人も多い ①研究者、現場の実践者や生活者としての素人が 議論して、課題を共有し、対応策を見いだす。 ②仮説や対応策の有効性を実証するために、NPO 等の協力を得て事業化する。 3.調査したもの 参考になりそうなものとして次の5つ について調査した。 (1)四つのシステム条件(by Natural Step) (2)補完性の原理 (3)GRI(Global Reporting Initiative) (4)ISO14000 (5)LCA(Life Cycle Assessment) 3-(1)四つのシステム条件 (by Natural Step) スウェーデンのNGO「Natural Step」が提唱 人類が地球上で持続するための四つの条件を明示し、 先ずこの条件に同意し、その達成を目指して努力するよ うに促す。 (四つの条件) 地球上の生物圏において、 ①地殻から掘り出した物質の濃度を上げてはならない。 ②人類が新たに造り出した物質の濃度を上げてはならない。 ③地表等の物理的条件を変化させてはならない。 ④資源の利用効率を高めると共に富を偏在させてはならない。 ★評価:持続可能社会の方向を示す羅針盤であり、 広く普及を図るべき理念である。 (概念図)人類の営みと四つのシステム条件 ④ 生産 ④ ① 地下資源 消費 ④ ③ ③ ② 生態系 ③ ② 汚染蓄積 3-(2)補完性の原理 地方自治の原理(EU憲章にも明記) 先ずは家庭で処理 処理不能 地域の小コミュニティーで処理 処理不能 市町村で処理 処理不能 県(道州)で処理 処理不能 ★評価:日本を持続可能にするための必須の理念である。 下部が上部を補完 上部が下部を補完 霞ヶ関主導 から 地域の自立 へ 3-(3)GRI (Global Reporting Initiative) 持続可能性報告書(Sustainability Report)の国際的 フォーマットを提供する組織 (日本でも「GRIフォーラム・ジャパン」が2002年11月に発足) GRIの「持続可能性報告書作成ガイドライン」(2002年6 月版)は、 財務指標、環境指標及び社会指標から成り、 あらゆる組織の現状把握に用いることが出来る。 現在のところ、グローバル企業の間で注目されており、 「環境報告書」から「持続可能性報告書」へ進化中。 ★評価:このフォーマットは、全ての行動主体の現状把握に 準用出来る。小規模事業者向けや業種別のフォーマットを 開発することが望ましい。 3-(4)ISO14000 組織の環境負荷を管理し、その低減を目的とする、内部 管理システム。「計画」→「実施」→「評価」のサイクルを循 環させることを柱とした、体系的なシステムである。 外部機関の審査に基づく認証制度がある。 環境影響評価や目標設定については組織の任意にまか されており、実効性有る取り組みがなされるかどうかは保 証されていない。 ★評価:外部評価の仕組みがあることは評価できるが、明確 な目標を組織外部から与えないと有効に機能しない。(有効 な目標を創り出すセンスを持つ組織は殆ど無いので) ①現状把握の方法としてGRIのガイドラインに準拠すること と、②外部において組織に対する要求が明確にされること (つまりは、「エコ指標」による評価)が望まれる。 3-(5)LCA (Life Cycle Assessment) 製品等を生産・消費・廃棄するまでの一生(ライフサイク ル)を通してのコスト(環境負荷等)を評価する手法。 数値化して示すため、分かりやすく説得力がある。 (技術的限界)全てを把握できるわけではない。 ・環境負荷情報の全てが正確に得られるとは限らない。 ・調べる項目によっては費用が多額になる。 (社会的限界)誰がどうやって決めたら良いの? ・評価対象となる項目の選定 ・複数の異なる項目を総合化する方法 ★評価:ツールとして非常に有用だが、使う側が目的を明確 に持ち、限界を見極めて使わなければ意味はない。 4.「エコ指標」と「青写真」 理念 青写真 行動計画 実践 理念を行動計画にいきなりブレ イクダウンするのには無理があ る。間に、社会の具体的な将来 像(青写真)が必要である。 現状をGRIガイドライン等に準拠 して把握した上で、青写真と現 状のギャップを埋める行動計画 を策定する。 Plan-Do-Seeのサイクルは、 すでに常識とされているが、そ れだけでは機能しない。 4-(1)青写真が必要だ! (仮説1)「青写真」(=地域の具体的な将来 ビジョン)があれば、諸活動を統合できる。 個別分野にとどまらない、総合的なものでなくて は、諸活動を統合できない。 個人や組織が行動を起こすには、地域レベルの 目標が必要 ・意思決定に参加可能であること、目標を具体的 に設定可能であること、結果が目に見えて自分 自身に降りかかってくることが重要 4-(2)「青写真」はどんなもの? (仮説2)青写真は、四つのシステム条件と補完性の 原理に基づいたものであるべきである。 ⇒地域内で、出来る限り多くのもの(食料・エネ ルギー・マンパワー・資金・公的サービス・問題 解決等)を、「地産地消」する地域社会の像 四つのシステム条件は地球規模で達成すれば 良いが、個々の地域レベルでも最大限達成しな ければ、全体での達成はおぼつかない。 「持続可能な地域」の集積が「持続可能な日本」 となり、「持続可能な国家」群が人類を持続可能 にする。 4-(3)「青写真」をつくるには 青写真シミュレーションシステムの開発 ・地域情報を入力すれば、どのような地域の実現が可能 であるかを分かりやすくプレゼンするツール 地域の情報を収集/集約する仕組みづくり ・GIS(地理情報システム)を活用 ・行政、大学、企業、NPO、住民が情報を共有 地域住民の合意形成の仕組みづくり ・既存のまちづくり活動と連携 ・前述の情報収集活動等を通じて、より多くの住民のまち づくりへの関心を高める。 ★いずれも2003年度にモデル事業として実施 4-(4)「エコ指標」をつくるには 「青写真」以外に、「エコ指標」づくりに必要なものは・・・ 現状評価のツールとしての「GRIガイドライン」の 普及活動 ・市町村レベルでのGRI準拠「持続可能性報告書」の試作 ・地方自治体、中小企業、NPO向けのフォーマットの試作 →2003年度に実施予定 「エコ指標」のガイドライン?づくり ・青写真のモデルと、GRIとの項目を摺り合わせて、 青 写真と現状のギャップを指標化するためのガイドライン →2003年度に着手? をつくる。 「エコ指標」づくりの概念図 Natural Step 補完性の原理 理念 青写真と現状の ギャップをエコ 指標で測定 青写真 (地域情報の集約) +(住民参加のシ ミュレーション)によ り青写真を作成 GRIガイドライン を参考に把握 現状 行動計画 実践 ギャップを埋め るための行動 計画と実践 4-(5)県の役割 GISのような高額な投資や高度技術が必要な 社会基盤の整備 河川や山林や交通システム等広域に渡る施策 の担当能力の強化 全ての分野において、専門的知識を住民に対し て分かりやすく説明できる人材の確保が必要 この内特に交通システム等の、県や市町村に専 門家が全くいない分野での人材確保が必須
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