The 2000 Pension Reform in Germany: An Overview ドイツにおける2000年年金改革の 現状と課題 Dr. Harald Conrad P.: 1 / 2015/9/30 厚生年金基金連合会 April 26, 2002 © Dr. Harald Conrad, DIJ Topics P.: 2 / 2015/9/30 1. 改革の重要な背景となる要素 2. 改革の主要構成要素 3. 公的年金改革の年金財政安定性 への影響 4. 世代間再分配への影響 5. 公的年金に残された諸問題 © Dr. Harald Conrad, DIJ 背景 (1) 高齢化 65歳以上の人口割合 35 30 Japan Germany France England Sweden USA 25 % 20 15 10 5 P.: 3 / 2015/9/30 2050 2040 2030 2020 2010 2000 1995 1990 1980 1970 1960 1950 0 © Dr. Harald Conrad, DIJ 背景 (2) ドイツの社会保障給付費 年金 100万 マルク 医療 P.: 4 / 2015/9/30 生活保護など © Dr. Harald Conrad, DIJ 背景 (2) 将来の保険率 P.: 5 / 2015/9/30 将来の保険料率推移への評価: 改革がなければ ・・・26%~30%(2035年時) © Dr. Harald Conrad, DIJ 背景(3) 老齢者の主たる収入源としての公的年金 高齢者の所得5分位階級別所得源の大きさ; 可処分所得 (1993年)各階級別の所得構成要素 100% 80% 公的年金 企業・個人年金 臨時所得 不動産所得 利子・配当 稼働所得 60% 40% 20% 1 2 3 4 P.: 6 / 2015/9/30 0% 5 © Dr. Harald Conrad, DIJ 背景 (4) 背景1~4からわかるとおり,改革は必要であるが,年金 生活者が将来窮乏するような状況に陥らないために,給付 削減を埋め合わせるための戦略確立が不可欠。 © Dr. Harald Conrad, DIJ P.: 7 / 2015/9/30 主要反対意見 現在でも例えば平均賃金の3分の2の労働者が生活保護と 同程度の年金を受給するのに必要な労働期間は40年の拠 出が必要 ⇒給付水準の低下は更なる長期間に渡る労働期間が必要 ⇒45年加入の標準年金水準が64%に低下した場合, 62歳からの受給は57.1%に,さらに加入年数が40 年の場合には51%に低下し,生活保護の水準(40%) にますます近づく 。 2000年年金改革 この改革の中心は2つの法律 1.2001年1月施行の法律 Supplementary Law on Retirement Savings Act (Altersvermoegensergaenzungsgesetz, AvmEG) ⇒公的年金改革を取り扱う この2つの法律を一くくりにして2000年金改革とよばれる。 © Dr. Harald Conrad, DIJ P.: 8 / 2015/9/30 2.2001年5月に承認され,2002年1月施行 Law on Retirement Savings Act (Altersvermoegensgesetz, AvmG) ⇒個人および職業従事者である老齢貯蓄を主に扱う 改革の基本的方針 この改革の基本的方針⇒ 公的年金の保険料率を2020年までに20%, 2030年までに22%以下に維持すること P.: 9 / 2015/9/30 この改革の結果⇒ 保険料率は2020年まで19.7%,2030年まで に21.9%を維持することが可能に © Dr. Harald Conrad, DIJ 改革の主な要点 1.職業不能者に対する定期金(保険)の改革 2.女性年金の改革 児童扶養期間も年金に参入する期間とする。その結果 この種の年金は殖えることとなる。 若いカップルの年金付与の権利を分割可能に。 遺族年金は死亡した配偶者の年金の60%から55% へと引き下げ P.: 10 / 2015/9/30 3.手取り賃金に対する年金受給額=代替率を削減(後述) 4. ⇒ 任意加入の拠出型年金の奨励(後述) 5. 企業年金について © Dr. Harald Conrad, DIJ 代替率の引き下げ 年金受給者にとってのモデル年金レベルは低下 ⇒現在の45年間の平均所得賃金のおおよそ70 %(net値)支給から,2030年にむけて段階 的に64%に削減 P.: 11 / 2015/9/30 この代替率の引き下げは以下の方式により達成 © Dr. Harald Conrad, DIJ ドイツの年金計算式 公的老齢年金 EP APW APW= Actual Pension Value (= ドイツ年金 計算式の動的要素) 2001年-2010年 APV (Tt ) APV (T 1) L EP= Earnings Points = (毎年ごとの個人総収入) / (全雇用者の平均 総収入) (T 1) 1 b (T 1) v (T 1) a) L (T 2) 1 b (T 2) v (T 2) 2011年から L = 全雇用者の平均総収入 b = 公的年金の保険料率 v = 改革で導入された個人年金 の保険料率 0.9 b (T 1) v ( 2009 ) APV (Tt ) APV (T 1) L (T 1) P.: 12 / 2015/9/30 b) L (T 2) 0.9 b (T 2) v ( 2009 ) © Dr. Harald Conrad, DIJ 年金の算定法(a) (a)賃金スライド制度の一部変更 ・個人年金の保険料率⇒2002年に1%から2008 年には4%程度に段階的に引き上げられる。 © Dr. Harald Conrad, DIJ P.: 13 / 2015/9/30 ・ 賃金の一部を積立方式の個人老齢保障制度(任意加入, 企業又は個人年金)に ⇒v(改革で導入された個人年金の保険料率)の拡大に したがってAPWは縮小する。 ⇒年金の減少傾向は維持される。 年金の算定法(b) (b)アドホックファクターの導入 (Bruttolohnanpassungsfaktor) 2011年から導入される予定の年金計算式に用いられる 変数を調整(1→0.9)することにより,保険料率をコ ントロール。 P.: 14 / 2015/9/30 (a)と(b)により代替率は64%に削減, 保険率22%を超えない水準に維持される。 © Dr. Harald Conrad, DIJ 個人年金プランの奨励 公的給付削減の穴を埋めるため,個人年金プランが奨励された。 ・助成金支給か税控除のどちらかが選択される ・高所得者層は税控除 ・低・中所得者層は代わりに直接貯蓄助成金を選択する可能性も。 ・総収入の以下のpercentageを退職プランに入れた人は,有利な助成率 (含税控除) (2002年から1%,2004年から2%,2006年から3%、2008年から4%) 年 2002年および2003年 2004年および2005年 2006年および2007年 2008年以降 一般助成金 38EURO 76EURO 114EURO 154EURO 児童助成金 46EURO 92EURO 138EURO 185EURO 税控除額 525EURO 1050EURO 1575EURO 2100EURO © Dr. Harald Conrad, DIJ P.: 15 / 2015/9/30 退職貯蓄法2001の規定による国の助成 個人年金商品の要件 国からの優遇措置をえるために必要な諸条件: P.: 16 / 2015/9/30 (1) 年金払い出しを開始する年齢は一般的には60歳。 それ以前の清算は不可 (2) 年金給付開始時点で負担金の元本は保証されなければならない (3) 商品は担保の対象にして、譲渡してはならない (4) 終身年金として毎月支給しなければならない (5) 透明性を保証するため,アニュアルレポートに以下の情報を 明記しなければならない (a) 負担金のアロケーションの明記 (b) 積み立て資産の明記 (c) 負担金のうち管理コストに費やされる割合 (d) 投資リターン (e) 投資決定の際の社会的,倫理的,環境的観点の考慮 © Dr. Harald Conrad, DIJ 助成金を受けられる商品 •個人および企業年金区分の両者はともに国の助成を受けられる。 •助成金を呼び込む区分に厳格な制限が適用される。 •以下の点で投資を行う場合に限り,個人は国の助成を見込める。 a) private annuity(個人年金) b) fund plan(基金プラン) c) bank savings plan(銀行貯蓄プラン) 企業年金区分は以下のとおり a) direct insurance (直接保険方式) P.: 17 / 2015/9/30 b) pension schemes (年金基金方式) c) pension funds (ペンション・ファンド) © Dr. Harald Conrad, DIJ 財務的安定性 160 140 120 100 80 60 40 20 0 87.8 純年金負債 Net Pension Debt 66.6 36.6 54.8 60.3 60.3 60.3 60.3 1 2 3 4 明白になって いる政府負債 P.: 18 / 2015/9/30 GDP比(%) 年金シュミレーションの4つの結果 出所:Borgman 2001 © Dr. Harald Conrad, DIJ 世代間再分配の影響 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 20 1 % ポ イ ン ト 国の助成 保険料率の軽減 個人年金の負担 純効果(国の助成あり) 1 純効果(国の助成なし) ←1 P.: 19 / 2015/9/30 ←2 出生年度 © Dr. Harald Conrad, DIJ 公的年金に残された諸問題 (1) 1. この制度は国の助成があるものの任意加入である点から, 給付の不十分性が指摘される。この制度を支える税の役割の 拡大に伴う税収確保が新たな課題。 2.税控除制度にかかわり,年金と公務員恩給との扱いに大きな差 があるため,公正さに問題が残る。 4.被保険者の実際の負担は総収入の19.3%でなく,国家助成 を考慮すれば政府による一般的理解よりも高くおおよそ収入の 約28.8%。 © Dr. Harald Conrad, DIJ P.: 20 / 2015/9/30 3.今回の改革により中高所得者層が比較的低所得者層よりも優 遇される。税制により税控除あるいは助成金による優遇措置 は,高所得者層に向けられる 公的年金に残された諸問題 (2) 5.早期退職制度における年金額の計算式が保険数理上の 公 正さを欠いてているため,このような制度(早期退職による年金 受給制度)により,平均的な退職年齢は2.5~3.5年早まった 6.合衆国のように,金融の安定に対して監督する独立した評 議委員会が必要という声も。 P.: 21 / 2015/9/30 7.上記の他,個人年金に対する国家助成の多種多様な条件が 存在するため,資本市場における年金マーケットのイノヴェーショ ンを阻害している点が散見される。 © Dr. Harald Conrad, DIJ
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