オレイン酸への水素溶解度の 一般化 状態式による推算

オレイン酸への水素溶解度の
一般化状態式による推算
(法政大環境応化)○(正)西海英雄
(法政大学サス研)(正)吾郷健一
(日大生産工) (正)辻 智也
化学工学会 第78年会 大阪大学豊中キャンパス
2013年3月19日
オレイン酸へのH2の溶解
目的: オレイン酸へのH2の溶解度を対応状態原理に基
づいた状態方程式を用いて推算することを考える。
1. オレイン酸のように大きな極性分子の臨界値の推算が
可能か?
2. 異種分子間相互作用パラメータmij をどのように推算す
るか。
• 純物質の臨界値等の基本物性の値は対応状態
原理のパラメータとして不可欠である。しかし,
分子が大きくなると熱分解などのため得られな
いこともある。
• それを補うための推算法としてJobackのグルー
プ寄与法は有効であると言われている。
• しかし,Tcを知るためには Tbが必要であるが,そ
の推算法はあまり精度が良くないことも知られて
いる。
• Joback法はグループ寄与法によっているが,組
成ファミリー法(CFM)を使えるのではないかと考
えた。
オレイン酸
CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH
CH31個
CH2< 14
グループ寄与法の適用
=CH2- 2
Joback法
-COOH 1
(寄与分の線形和)
Joback による推算法
• 𝑇𝑐 = 𝑇𝑏 0.584 + 0.965
∆𝑇𝑐,𝑖 −
∆𝑇𝑐,𝑖
• 𝑃𝑐 = (0.113 + 0.0032 ∗ 𝑁atoms −
2
𝑃𝑐,𝑖 )
• 𝑉𝑐 = 17.5 + 𝑉𝑐,𝑖
ここで
• 𝑇𝑏 = 198 + 𝑇𝑏,𝑖
Tbの推算精度は高くない
→ Tc, ωに与える誤差をもたらす。
2 −1
Tc
Group
寄与分
Non-ring groups
-CH3
-CH2>CH>C<
=CH2<
=CH=C<
=C=
≡CH
≡CRing groups
-CH2>CH>C<
=CH=C<
Halogen groups
-F
-Cl
-Br
-I
Oxygen groups
-OH (alcohol)
-OH (phenol)
-O- (nonring)
-O- (ring)
>C=O (nonring)
>C=O (ring)
O=CH- (aldehyde)
-COOH (acid)
-COO- (ester)
=O (other than above)
Nitrogen groups
0
>NH (non-ring)
>NH (ring)
>N-(nonring)
-N= (nonring)
-N= (ring)
=NH
-CN
0
Sulfur groups
-SH
-S- (nonring)
-S- (ring)
Pc
Vc
Tb
Tm
Temperatures
of Phase Transitions
Critical State Data
0.0141
0.0189
0.0164
0.0067
0.0113
0.0129
0.0117
0.0026
0.0027
0.002
−0.0012
0
0.002
0.0043
−0.0028
−0.0006
0.0011
0.0028
−0.0008
0.0016
65
56
41
27
56
46
38
36
46
37
23.58
22.88
21.74
18.25
18.18
24.96
24.14
26.15
9.2
27.38
−5.10
11.27
12.64
46.43
−4.32
8.73
11.14
17.78
−11.18
64.32
0.01
0.0122
0.0042
0.0082
0.0143
0.0025
0.0004
0.0061
0.0011
0.0008
48
38
27
41
32
27.15
21.78
21.32
26.73
31.01
7.75
19.88
60.15
8.13
37.02
0.0111
0.0105
0.0133
0.0068
−0.0057
−0.0049
0.0057
−0.0034
27
58
71
97
−0.03
38.13
66.86
93.84
−15.78
13.55
43.43
41.69
0.0741
0.024
0.0168
0.0098
0.038
0.0284
0.0379
0.0791
0.0481
0.0143
0.0112
0.0184
0.0015
0.0048
0.0031
0.0028
0.003
0.0077
0.0005
0.0101
28
−25
18
13
62
55
82
89
82
36
92.88
76.34
22.42
31.22
76.75
94.97
72.24
169.09
81.1
−10.50
44.45
82.83
22.23
23.05
61.2
75.97
36.9
155.5
53.6
2.08
0.0243
0.0295
0.013
0.0169
0.0255
0.0085
n. a.
0.0496
0.0437
0.0109
0.0077
0.0114
0.0074
-0.0099
0.0076
n. a.
−0.0101
0.0064
38
35
29
9
n. a.
34
n. a.
91
91
73.23
50.17
52.82
11.74
74.6
57.55
83.08
125.66
152.54
66.89
52.66
101.51
48.84
n. a.
68.4
68.91
59.89
127.24
0.0031
0.0119
0.0019
0.0084
0.0049
0.0051
63
54
38
63.56
68.78
52.1
20.09
34.4
79.93
∑ΔT
∑ΔTb
Jobackの方法では
オレイン酸
Tb=913 K
Tc=1129 K
と大きな値が得られ
る。
→ 実測データで
チェック
0.85
0.8
0.75
直鎖HC・エーテル
Tb/Tc [-]
0.7
カルボン酸
直鎖アルコール
0.65
カルボン酸+直鎖アルコール
Poly. (カルボン酸)
Poly. (直鎖アルコール)
0.6
0.55
0.5
200
300
400
500
Tc [K]
600
700
800
オレイン酸では,
Joback式より
0.584+ 0.965 ∑ΔT-( ∑ΔT )2 = 0.8056
したがって Tb/Tc = 0.8056
①
カルボン酸の相関式は
Tb/Tc= 0.920 -0.972x10-4 Tc + 1.021x10-06 Tc2 ②
①,②より2次方程式の根としてTcが求められる
Tc = 819.2 K
以下Joback式により
Tb = 662.4 K
Pc=13.00 MPa
Vc= 1.00 L/mol
Tc, Tb → Clausius Clapeyron式より
ω=1.018
b.p. (文献値)
T
[K]
[mmHg]
Clausis-Clapeyron calc.
[MPa]
偏倚 [%]
[MPa]
BWR calc.
偏倚 [%]
[MPa]
273.15
100
0.0133289
0.0085089
-36.2
0.008248
-38.1
273.15
5
0.0006664
0.0005544
-16.8
0.000350
-47.5
273.15
2
0.0002666
0.000152
-43.0
0.000069
-74.1
沸点の計算値は実験データより低い.
諸パラメータを用いてBWR式で密度(液)を計算したとこ
ろ,文献値より大きな密度が得られた。
密度(20℃, 1atm)
文献値 [g/cm3]
0.898
計算値
1.045
H2を含む系の気液平衡の推算
異種分子間相互作用パラメータ
mij
mij =a Tc2 (1- Tr)2 +b for Tr<1
= b
>
Tc: 対物質の臨界温度
a, b: 対物質(マレイン酸)のVc関
数として相関
すなわち
H2と対の成分のTc とVc がわか
ればmijを推算できる
H.Nishiumi, M.Fukushima, J. Chem. Eng. Japan, 22, 205-207 (1989)
H.Nishiumi, H.Gotoh, Fluid Phase Equilibria, 56, 81-88 (1990)
相関値による溶解度推算
1.5
1.0
0.5
0.0
mij [-]
200
400
600
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
T [K]
800
1000
相関値による溶解度計算
14
12
P [MPa]
10
353.2K_exp
8
413.2 Kexp
473.18 K_exp
6
353.2K_相関値
413.2K_相関値
4
473.18K_相関値
2
0
0.0
0.1
0.2
xH2 [-]
0.3
0.4
mijは引力に関
係するパラメー
タなので値を減
ずる必要がある
mijの推算とfitting
1.5
1.0
0.5
mij [-]
0.0
200
400
600
800
1000
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
T [K]
Tc of Oleic acid
約0.5相関値より減ずる( )と最適値となる
H2のオレイン酸への溶解度計算
14
12
10
P [MPa]
353.2K_exp
413.2 Kexp
8
473.18 K_exp
353.2K_opt
6
413K_opt
473.2K_opt
4
353.2K_相関値
413.2K_相関値
2
473.18K_相関値
0
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
xH2 [-]
mijの感度は低温の方が高い
結 論
1. 純物質の臨界値等の基本物性の値は対応状態原理のパラメータとして
不可欠であるが,得られないこともある。その推算法としてJobackのグ
ループ寄与法は有効であるが,標準沸点 Tbの計算に問題がある。これを
改良する方法として化学成分ファミリー法(CCF)が有力な方法であり,オレ
イン酸の推算に用いた。実測データ少なく,物性値との整合性は明らかで
ないが,パラメータとしては用いることができると考えられる。
2. H2の溶解度推算には,異種分子間相互作用パラメータmijの推算が必要
である。mijを温度関数としてあらわした発表者らの方法に基づき推算値
から0.5ほど小さな値により3温度での溶解度を表すことができた。本推算
の原法は,主として無極性物質-H2系のmij と考えられるので, 本研究で
の違いは極性によるものと考えられるが,推算可能性を示唆するもので
ある。
H.Nishiumi, M.Fukushima, J. Chem. Eng. Japan, 22, 205-207 (1989)
H.Nishiumi, H.Gotoh, Fluid Phase Equilibria, 56, 81-88 (1990)
0.5
0
0.001
0.0012 0.0014 0.0016 0.0018
0.002
0.0022 0.0024
-0.5
llog10(Ps)
-1 y = -3859.1x + 4.8316
-1.5
蒸気圧式(C-C式)
Linear (蒸気圧式(C-C式))
-2
-2.5
-3
-3.5
-4
1/T [1/K]