情報化と地域振興 城西国際大学 情報科学研究センター 人文学部 メディア文化学科 袁 福之 14:10-14:30 今日の要旨 • 少子高齢化の衝撃 • 競争ルールの変化 – 知識の経済 – ネットワークの経済 – スピードの経済 IT能力 • 社会の3つの原理(公的原理・非営利的原理・市場原理) • 地域の再生のシナリオ – 歴史、風土、文化、産業など地域に内在する条件に立脚 – 生活機能の再生+地域情報化 – 広域連携・産官学民連携(産業クラスター) 知的集積 日本の将来推計人口( 2001年~2050年) 国立社会保障・人口問題研究所、平成14年推計 少子・高齢社会の到来 • 少子化 → 国内市場の縮小、労働年齢人口の減少(→労働力 の減少)、若年労働力の激減(→技術革新への対応の 遅れ)、内需の伸び悩み、経済成長の停滞、地方は過 疎地で若年層の流出しもっと深刻 • 高齢化 → 貯蓄率の低下、投資余力の減少、社会負担の増大、 保健医療福祉への要求増大 持続可能(sustainable)な社会 生活・文化・福祉、産業・経済、自然・環境の 全体的に調和した新たな経済社会システム 新しい地域振興策の必要性 • 職・住・憩・遊・学の複合空間としての地域社会の機能 の著しく低下 → 帰属意識、アイデンティティ、連帯の喪失 • 従来の地域振興策 – 道路・港湾投資に偏重した社会資本整備 – 工場・企業誘致を目指した外来型開発主義 – 中央集権的な手法による地域開発 → 過疎化・少子高齢化に対して有効ではない • 歴史、風土、文化など地域に内在する条件に立脚した 地域振興が問われている 世界的な大戦争は再発、疫病の大流行、大隕石との衝突など の大事変がないかぎり、こらから二〇年の世界を左右する支配 的な要因は、経済でもなければ技術でもない。 それは、人口構造の変化である。とはいえ、企業にとっての問 題は、四〇年ほど前から警告されてきた地球規模の人口爆発 ではない。それは日米欧の先進国における人口減である。 (中略) 日本も、その公式推計によれば、現在一億二五〇〇万から、 二一世紀中に五五〇〇万人へと五六%減る。 (中略) 経済成長は、(中略)今日先進国だけが持ち、今後数十年に わたって持ち続けるであろう唯一の競争力要因としての、知識 労働の生産性の伸びによってのみもたされる。 Peter F. Drucker「すでに起こった未来」への準備、『DHR』 1998、Dec-Jan 競争原理の変化 規模の経済・範囲の経済 知識 の経済 ネットワーク (連結)の経済 スピード の経済 IT能力 • service pull product、知識製造業、サービス化を志向した製 造業 • 製品に知識が埋め込まれている。知識によって製品がサービ ス化されている。 • 価値を生み出すのは必ずしも工場やハードでなくなり、製品を 媒介した問題解決(ソリューション)、サービス、情報提供など に移行しています。 • アジリティ(俊敏性,agility)を身につけた米国企業は、ハード依 存でなく、サービスと融合した製品を提供し、競争相手の手さ え借りて顧客機会を迅速に具現化する体制を整えていました。 • こうしたサービス化への移行こそが、実は知識へのフォーカス なのである。顧客向けのコンサルティング・サービス、特定専 門分野のソリューション、顧客ごとのシステムのカスタマイズに はそれぞれの専門的知識や専門的知識ワーカーが不可欠 野中郁次郎・紺野昇『知識経営のすすめ』ちくま新書 スマイル曲線 利 益 部品 製造 保守・サービス みまもりほっとライン • 象印のiポット 年寄りをそっと見守る電気ポット http://www.mimamori.net/ 遠くのご家族、そっとみまもります 利用状況お知らせサービス(みまも~ る) 東京ガス モノからサービスへ • 農産物、水産物 → 独自な食文化(特産、自然、伝統文化、安全・安心) → 農業体験、漁業体験 • ホテル、旅館、飲食店 → ホスピタリティ(もてなしの心) • 観光 → グリーンツーリズム、エコツーリズム (地球環境の素晴らしさを体感するだけではなく、これ を守り育てる役割も担う) 規模の経済 • 規模が大きくなることによって効率性・有効性が高まる • 市場不確実性の増大、顧客から個客へ、価値観・ライ フスタイルの多様化 – 大量生産・大量販売 → 多品種少量生産、受注生産、build to order – 見込み生産 → 仮説検証型経営 – ベルトコンベア → セル(屋台)生産方式 – 大量の中間在庫 → サプライチェーン、リーン生産(カンバン方式) 俊敏性な競争の4つの特質 • 顧客を豊かにする • 競争力強化のために協力する • 機能横断的チーム、権限委譲、ビジネス・プロセス・リエンジ ニアリング • 変化と不確実性を自在に操るための組織を創る 俊敏な企業は、変化と不確実性によって繁栄するために組織化される。 • 人と情報の影響を最大限に活用する 俊敏な企業においては、経営が起業家的企業文化を養成し、そのことによって、人と情 報が事業に与える影響力を高められる。 人々 -彼らが知っていること、所有する専門技能、彼らが発揮するイニシアティブ- と 情報は、俊敏な競争環境においては企業間の差異を生み出す随一の要素となる。 S・L・ゴールドマン、R・N・ネーゲル、K・プライス(1996) 『アジル・コンペティション-「速い経営」が企業を変える』日本経済新聞社 範囲の経済・ネットワーク経済 範囲の経済性 組織形態 企業(系列)内のネットワーク ネットワークの経済性 企業間のネットワーク 資 源 外部資源の内部化・囲い込み 市場原理の活用、内部資源の外部化、 外部資源の内部化 構 造 集権的・階層的構造 自律分散・分権・開放的構造 意思決定 合議制・事前調整・予定調和型 自律・事後調整・市場機構型 系列、多角化、内製化、ガバナン スの強化 アウトソーシング、コアコンピタンス、サプライチェーンマ ネジメント、インターネット調達、ファブレス 取 引 閉鎖的・固定的・特殊性 開放・柔軟・機動的・標準化 メリット 効率・伝承・総合力・内部扶助、 安定・市場の不確実性の回避 コアコンピタンス・創造性の結合、ス ピードの経済、選択可能性、変化対応 力 経営手法 デメリット スピード・選択可能性・創造性・変 内部扶助機能の欠如、市場の不確実 化対応力の欠如 性・リスク・取引コストを伴う 村田ら『社会基盤としてのインターネット』岩波新書、袁加筆 • ボランティアとはネットワークを作る人、ネットワーカである。 • ボランティアとは、情報に織り込まれている自発性を頼りにし て、自ら情報を動かし、それとともに、自分の行動の翼を広げ る人であるといえよう。 • ネットワークとは… 動的情報を発生させるプロセス 相互作用の中での意味形成のプロセス 自発性を基礎にする関係生成のプロセス 関係変化のプロセス • 情報とは相互作用のプロセスの中から「生まれてくるもの」と するのが、動的情報の考え方である。 金子郁容『ボランティア-もうひとつの情報社会』岩波新書 3つの原理が重層・複合する社会システム 利 点 公的原理 (公助) 弱者救済、公平性、平等性、画一性。セーフティ ネット(最低生活保障システム)、予測可能性(計 画・安定・長期) 欠 点 租税負担、官僚 的、硬直的、政 府の失敗 理想・社会的使命・奉仕の精神、参加・協働。地域 非営利の原理 と住民で支えあう。柔軟性、創造性、即時・即応性、 地域格差、責任 (共助) 自発性、自主性、NPO、ボランティア、対等・平等の の曖昧さ 関係、 •社会的資源の効率的・効果的・機動的な配分 •自己選択・自己決定・自己責任 市場の原理 (自助) •透明で公正なルールに基づく自由競争、情報開示 利潤最大化 (情報の非対称性の防止) 市場の失敗 •新結合(創造的破壊)、創意工夫に基づく先駆的・ 実験的課題への挑戦 →多様性、選択可能性、革新性の確保 インターネットの特徴 • グロバール 全世界、数十億人 • マルチメディア情報 文字,データ,音声,静止画,動画 • 水平分散・自律協調型ネットワーク • シームレス(継ぎ目なし)、双方向性(interactive) • 地球規模の情報・ソフトウェア資源・ハードウェア資源の共 有の社会的基盤 • 地球規模の人的コミュニケーション、協働(コラボレーショ ン)・協創・創発の社会的基盤 インターネットの役割 • 時空・組織の制約を超越した情報の共有とコミュニケー ションの場(Human to Human) → 情報空間(情場) • ハードウェア資源・ソフトウェア資源の実時間(リアルタイム、 real time)の共有の場 • 協働(コラボレーション)・協創・創発の場 • 仮想経済空間(経済活動の電子化) 、サイバースペース (cyberspace) (農場→工場→情場) • あらゆる情報機器・家電・情報システムをつなぐ(Machine to Machine、Web Service) → Webベースで情報システムを統合 • netizen(NETwork+citiZEN) エレクトロニック・デモクラシー(電子的民主主義) 生活機能の再生 • 情報産業や知識産業を機軸とした「知識社会 (knowledge society)」では、生活機能が生産 機能の「磁場」となる。情報や知識を発信する 人材の集積が重要だからである。 • 都市ごとに伝統や文化に根差した多様な「都市 の再生」 神野直彦『地域再生の経済学-豊かさを問い 直す』中央新書 産業クラスター • ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が 『国の競争優位』の中で提唱したもの。 • バイオやITなどの特定分野において、相互に関連性を持っ た様々な組織や個人からなる地理的な集まり。それらが網 目状の人的ネットワークを生成している状況 • 地域の比較優位性のある産業を核とし、その核から派生す る関連産業間の技術・ノウハウ・人材などの交流連携・ネッ トワーク化を強め、集積させ、イノベーション(革新)を連鎖 的・相乗的に生み出し続けようとする – 産学官民の広域的な人的ネットワークの形成 – 地域の特性を活かした技術開発の推進 – ビジネスインキュベーションの整備 産業クラスターのネットワーク 中堅・ 中小企業 起業家 支援施設 中堅・ 中小企業 大企業 公的試験 研究機関 大学 商社 国などの 行政機関 中堅・ 中小企業 出所:経済産業省 インターネット:第4の流通チャネル • 店舗販売、訪問販売、カタログなどによる通信販売 に次ぐ。B to C, B to B • Amazon.com(1997年新規公開)株式時価総額171 億ドル、小売大手シアーズ・ローバックの159億ドル を抜く。 • Dellの販売管理費/売上高9.7%、Compaqは11.9% • 24時間いつでもオープン、無制限の商品陳列スペー ス。build to order(受注生産) インターネット:第4のメディア • 印刷媒体、ラジオ、テレビ、インターネット • American Online(AOL):3320万の会員(2001年)、1人1日 の平均利用時間は50分(二年前は十数分)、ピーク時の視 聴数はCNNを抜く。 • 2001年AOLとタイム・ワーナー(TW)合併 → 世界最大のメディア企業 – 映画: ワーナー・ブラザーズ、ニューラインシネマ – 音楽: ワーナー。ミュージック – 放送: CNN、HBO – CATV: ターム・ワーナー・ケーブル – インターネット:AOL、コンピューサーブ リエンジニアリング (reengineering、業務の根本的革新) • IT(情報通信技術)や職能横断的チームなどの経営手法を用 いて、仕事のプロセスそのものを根本的に変えることによって、 業績の劇的な向上を図る • 旧来のビジネスプロセス、管理の仕方、組織構造、業務のや り方が、新しいダイナミックでグローバルな、しかも競争の激し いビジネス環境にそぐわなくない。 • 生産性向上のプログラムの焦点 コスト削減から組織の生産性や効率性へ • 部門間の垣根を乗り越えてアイディア・知識・情報・ビジョンの 共有をはかり、柔軟で機動的な組織運営を行い、迅速な意思 決定、問題解決、価値・知識の創造を実現する。 コンカレント・エンジニアリング (Concurrent Engineering、同時並行開発) • 情報ネットワークを利用してマーケティング、研究 開発、製造、保守などに細分化された分業組織を ビジョンと情報の共有に基づく自律・分散的なネッ トワーク型組織の下で規格、設計、生産などの各 工程を同時並行的に行う。 • ネットワークを介して各部門のデータベースに蓄 えられた情報を互いに参照し共有化する。 コンカレント・エンジニアリング (concurrent engineering、同時並行開発) 商品 企画 予備 研究 開発 設計 製造 販売 保守 廃棄 時間軸 商品企画 予備研究 開発設計 製造 コンカレント・エンジニアリング 時間短縮 販売 保守 廃棄 IPのuniversal connectivity (すべてをつなげる) • テキスト・音声・静止画・動画などあらゆる形態 のデジタル情報の伝送 • Web、電子メール、ftp、ストリーミングなど、 webサービスなど、あらゆる情報処理を提供す る。あらゆる目的に使える。 • PC、携帯、サーバ、プリンタ、冷蔵庫、カーナビ、 電子レンジなど、あらゆる情報システムをつな げる
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