慶應義塾大学 管理工学科 講義 プロジェクトマネジメント 実践的入門 2007年11月6日 日揮(株) 佐藤 知一 © Tomoichi Sato, 2007 経営工学出身は社会でどう処遇されるか • 日本経営工学会「特別委員 会」の2005年調査結果より 生産管理・品質管理 研究開発・設計 生産技術 経営企画 販売 経理 購買 業務改革 労務 その他(IT等) 中途半端な便利屋になってはいけない © Tomoichi Sato, 2007 じゃあ、何を めざすの? 講義内容 はじめに 1. プロジェクトって何? 2. マネジメントって何? 3. エンジニアリング会社って何? 4. プロマネって誰? ーープロジェクト組織と役割の設計 5. パーソナル・スケジューリング 6. プロジェクト計画とスケジューリング 7. プロジェクトの進捗と予実管理 おわりに--プロジェクト・マネージャーをめざそう © Tomoichi Sato, 2007 最初に自己紹介--日揮とは ●名称 日揮株式会社 (JGC CORPORATION) ●所在地 [本社] 横浜市西区みなとみらい2-3-1 [海外事務所] 10ヶ所(北京、上海、ロンドン、パリ、ヒューストン、 シンガポール、アブダビ、ハノイ 他) ●主たるビジネス エンジニアリング (工場の設計・調達・建設) ●創立 1928年10月25日 ●資本金 235 億円 (2007年4月現在) ●売上高 6,100億円 (2006年度・連結) ●従業員 6,000 名 (2007年4月現在) 日揮: 2,000 国内関連会社: 2,000 海外関連会社: 2,000 © Tomoichi Sato, 2007 横浜本社 1 プロジェクトって、何? プロジェクトは熱気球レースに似ている・・・? © Tomoichi Sato, 2007 「プロジェクト」とは何か • 「プロジェクト」の定義 – 「特定の製品やサービスを創出するための時限的営為」 – “A project is a temporary endeavor undertaken to create a unique product or service” (米国プロジェクト・マネジメント協会 = PMI による定義) • 言いかえると: – 達成すべきアウトプットが決まっている (完了条件) – 複数の人間が協力して行なう (協力条件) – 失敗のリスクを伴う (リスク条件) – プロジェクトは役務(タスク)を組み合わせて遂行する © Tomoichi Sato, 2007 例題:これは「プロジェクト」と呼 べるか? • 「本日の始発電車の運行」 – たしかにある意味では一度限りの営為だが、失敗のリスクはまず無い – 同一の作業を毎日繰り返している。プロジェクトというよりも日常業務。 • 「はじめてのおつかい」 • 「慶応大学合格プロジェクト」 – 複数の人間が協力するものをプロジェクトという • 「意識改革プロジェクト」 – 完了の条件が決まっていない仕事は「プロジェクト」とは呼べない → プロジェクト・マネジメントの技術・手法は活用できない © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクト・マネジメントの技 術・手法 • PMBOK® Guideの定義する9つの領域 – プロジェクト統合管理 – スケジュール管理・コスト管理・品質管理・スコープ管理(QCD+S) – コミュニケーション管理・リスク管理・要員管理・調達管理 • 講義で紹介する技術・手法 – – – – パーソナル・スケジューリング PERT/CPMによるスケジューリング プロジェクト組織論 PMソフトウェアと進捗管理 “PMBOK Guide” A Guide to Project Management Body of Knowledge (The 3rd Edition) Project Management Institute (PMI)制定の標準 © Tomoichi Sato, 2007 今、なぜプロジェクト・マネジメントが 注目されるのか 5つの背景 1. 2. 3. 4. 5. 製品開発のスピード競争化 縦割り組織の限界と「横串し」機能の必要性 クロス・ファンクショナル・チーム(日産の成功例) ホワイトカラーの効率向上(競争力世界第23位…) “PMBOK Guide”の普及(デファクト国際標準) プロジェクト・マネージャー制を取り入れた業界 1. 2. 3. 4. 5. 6. 医薬品業界(新製品開発) 自動車業界(新製品開発) 航空宇宙業界(ロケット打ち上げ) IT業界(システム開発) エンジニアリング業界(設計・調達・建設) ゼネコン業界(建設) © Tomoichi Sato, 2007 製造販売の「プロセス」 購買部 資材調達 製造部 製品(見込生産品)製造販売の 典型的なプロセス 部品加工 製造部 品質管理部 =縦割り組織内を物品/情報が 流れる 組立製造 物流部 物流 営業部 販売活動 営業部 経理部 売掛請求 定常業務をくり返し遂行する従来型のビジネスでは、縦割り組織による分業が 効率性を保証した。マネジメントは部門内の仕事のプロセスが適正に行われる ことを見守れば良かった(ISO9000→QMS) © Tomoichi Sato, 2007 新製品開発の「プロセス」 開発 企画部 製品企画 設計部 新製品(見込生産品)開発の 典型的なプロセス 基本設計 =縦割り組織内を案件が流れる 設計部 詳細設計 試験部 はたして、 こんなバケツ リレー方式で 良いのか? 試作 購買部 購買手配 生産技術部 量産準備 仕事の「正しさ」は、プロセスの確立により保証できる(QMS) しかし、全体スケジュールと開発工数を、誰が責任を持って保証するのか? 結果として、つねに特定部門にしわ寄せが来る © Tomoichi Sato, 2007 プロセス(過程)管理から プロジェクト(開発案件)マネジメント へ 「プロセスは線路で、プロジェクトはそこを走る個別の電車であ る」 • • • • • • • 普通の電車の運転手は終点まで変わらないが、縦割り組織は区間ごとに運 転手が交替する鉄道に似ている 製品開発は、複数の機能部門が関わり合う、クロス・ファンクショナルな活動 である 製品上市の早さ(納期)をとるか、製品コストを取るか。製品開発は常にト レード・オフに直面する 決断には責任がともなう。誰がそのリスクをとるのか? 複数の開発案件が並行して進むとき、ボトルネックの作業負荷を誰が調整 するのか? QMS( ISO9000 )の弱点=意志決定権限の問題 スムーズな製品開発にとって、プロセスは必要条件だが十分条件ではない。 最後まで決定に責任を持つ「運転手」=プロジェクト・マネージャーが望まれ る © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクトマネジメントの歴史と潮流 源流:人類の歴史 有史以来の大規模建造物 ピラミッド、万里の長城等 プロジェクト事業=政治の時代 テネシー河開発(TVA)プロジェクト 1930年代 マンハッタンプロジェクト 1940年代 防衛プロジェクト時代(ポラリスミサイル計画) 1950年代 近代的プロジェクトマネジメント の発生 1960年代 宇宙開発プロジェクト時代(アポロ計画) 1970年代 エネルギー開発プロジェクト時代 1980年代 製品開発プロジェクト時代 PMBOK 1990年代 ISO10006 P2M PMBOK 3版 © Tomoichi Sato, 2007 企業間統合 プロジェクト時代 2000年代 マネジメントバイ プロジェクトの時代へ 2 マネジメントって、何? 寄せ木細工としての縦割り組織で・・・ © Tomoichi Sato, 2007 マネジメントは管理ではない • 『管理』に対応する3つの英語 Management Administration Control 生産管理の教科書となった小説「ザ・ゴール」(E・ゴールドラット著) には、「工場長」(主人公)と、「工場コントローラ」が登場する・・・ I can manage. と I can control. の違い 在庫管理はInventory control - 単なる記録と手配はmanagementで はない Managementには、組織化と先読みとリスクテークが含まれる © Tomoichi Sato, 2007 マネジメントはリーダーシップでは ない • リーダーの号令でプロジェクト・チームを動かすことか? – ある野球ファンの名案 • 「ホームランを打て」というサインを出せばいい – 実行可能でない命令を出す事はマネジメントではない • マネジメントは地位ではない – 富豪の叔母の遺産を受け継いで、ある日突然、オーナー社長に なった君は・・・ – ビジネスを何一つ知らない君はマネジメントができるか? • まして、プロジェクト・マネージャーは「上司」ではない • あなたはジャンボの機長に「リーダーシップ」を求めるか © Tomoichi Sato, 2007 では、・・・マネジメントって、 何? • 「マネジメントは必要悪である」という見方 – マネジメントは雑用であり、実作業の時間を奪うブレーキである – 法律や規則があるから、しかたなくやっている(会計報告等) • 「マネジメントは権力と栄誉の象徴である」という見方 – マネジメントはマネージャーになった結果として行う名誉職である – 銅像になって立っている方が実害がなさそうだ • 上記の二つの意見に共通するのは、「マネジメントはなくても、仕事 は動く」という想念である • 「マネジメントは動物の脳中枢系である」 – 「認識」と「先読み」と「指令」とを行う機能 – 高等動物は環境に動的に適応するために脳神経系を発明した – つまり、マネジメントはサポーターである © Tomoichi Sato, 2007 マネジメントとは マネジメントとは、 • たえず変化する環境において、 • 様々な制約条件のもと、 • 目標とゴールを定めた上で、 • 複数の人々が協同して働くよう、しむける事である そのために、以下の作業が必要になる: • • • • • 目標展開=目標をより具体的で詳細な成果ならびにプロセスに展開する 機能展開=それぞれのアクティビティ完遂に必要な機能を定義する 構造展開=機能を実現するために必要な諸資源と駆動力(ドライバー)の構 成を実現する コントロール=上記の仕組みが、計画からの逸脱や環境変動や異常に対応 できるようリアルタイムに統御する 進化(メタマネジメント機能)=上記の仕組みとマネジメントの働きが、より矛 盾や無駄を含まないよう、自己修復・改革していく機能。 © Tomoichi Sato, 2007 チーフ・デザイナーとプロジェクト・マ ネージャー • 「映画監督」はチーフ・デザイナー、「プロデューサー」はプロマネ 製品の質や価値は、あきらかに監督がその大半を左右する → しかし、プロデューサーは、監督の首を切れる • 「固有技術」と「管理技術」は車の両輪 – チーフ・デザイナーは固有技術のトップ – プロジェクト・マネージャーは管理技術の責任者 – 固有技術者から見ると、管理技術は“雑用の集合”に見える (分業した方が効率が良い) – 固有技術をある程度知らないと、プロマネは力を発揮できない • 固有技術には「天才」がありうるが、管理技術に天才はない(経験知 の集積) © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクト・エンジニアという職 種 • プロジェクト専門職はなぜ必要か – 「プロジェクト・エンジニア」はプロマネになるための主要なキャリアパス である • 「固有技術」と「管理技術」 – プロジェクト・スケジューリングとPERT/CPM – 進捗コントロール – WBS – コミュニケーション・コントロール・・・ • マネジメント=プランニング+コントロール+コーディネー ション エンジニアリング会社には「PMのリーダーシップ」論はない © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクトマネジメントは簡単で ある(1) 「ワリイ、お前にアリスのプロジェク トを手伝うよう頼んだのに、お前さ んがやったことといえば、彼女に ”もっとよく働けよ”と 言っただけじゃないか。」 © Scott Adams, 2005, All rights reserved © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクトマネジメントは簡単であ る(2) 「他人に ”もっと頑張れ” と言うだ けで、それが実現すると思ってるの か!」 © Scott Adams, 2005, All rights reserved © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクトマネジメントは簡単であ る(3) 「それって部長がいつもやられ ていることじゃないですか。」 「やかましい。とっとと席に戻っ て、もっと働け。」 © Scott Adams, 2005, All rights reserved © Tomoichi Sato, 2007 3 エンジニアリングって、何? プロジェクト・マネジメントは要塞づくり (エンジニアリングと軍事)から育った © Tomoichi Sato, 2007 エンジニアリング業界とは 工場作りのプロフェッショナル集団 顧客(製造業)のために、工場の設 計・機械資材の調達・建設工事を請 負う 自らは工場も持たず、建設労働者も 抱えないーー 純粋なプロジェクト・マネジメント業 日揮が設計・建設したHawiyah Gas Project Project Management Institute(PMI)の 「プロジェクト・オブ・ザ・イヤー」受賞(2002年) © Tomoichi Sato, 2007 工場という名のシステム エンジニアリング会社は 「システム・インテグレーター」 • 工場とは 機械・設備・建築などさまざまな 要素が有機的に働いて、生産と いう機能を実現するシステム • 客先指定の仕様(個別受注) • 日本には専業3社-欧米 企業が多い • 75%が海外の仕事 航空機エンジン 整備工場(日本) 食品工場(日本) エチレン工場 (シンガポール) 工場や物流センターの管理システムを 作るのが仕事 →エンジ業界とIT業界の二足の草鞋 © Tomoichi Sato, 2007 エンジニアリングとは 広義のエンジニアリング 構想・計画能力 設計能力 (フィージビリティスタディを含む) 調達能力 工事遂行 試運転 能力 能力 狭義のエンジニアリング 基本 構想 基本 計画 基本 設計 操業 詳細 設計 機材 調達 工事 プロジェクト初期の段階から完成まで 一貫したプロジェクトマネージメント技術にて管理 © Tomoichi Sato, 2007 試運転 欧米におけるエンジニアリングの歴史 エンジニアリングが初めて国力の柱として認められたのは 英国ヴィクトリア朝(大英帝国の絶頂期、産業革命・産業資 本主義の確立期) 大ロンドンの完成、アフリカ、中東、インド等 植民地経営に伴う 多数のプロジェクト。この膨大な需要に対応してエンジニアリング が確立された。 その結果として AGRICULTURE、COMMERCE、MANUFACTURESと並ん でENGINEERINGが国力を支える四つの柱の一つとされた。 © Tomoichi Sato, 2007 アルバートメモリアル (ロイヤルアルバートホール前) © Tomoichi Sato, 2007 ヨーロッパ EUROPE インド INDIA エジプト EGYPT アメリカ AMERICA © Tomoichi Sato, 2007 AGRICULTURE ENGINEERING MANUFACTURES COMMERCE © Tomoichi Sato, 2007 世界のエンジニアリング産業:その業容 世界のエンジニアリング企業 その他 WORLEY PERSONS, LG INTERNATIONAL, DAELIH © Tomoichi Sato, 2007 Ⅰ エンジニアリング産業 エンジニアリング・プロジェクトの例(1) Crude Oil Gathering Station & Pipelines (Algeria) © Tomoichi Sato, 2007 Ⅰ エンジニアリング産業 エンジニアリング・プロジェクトの例(2) LNG Plant (Malaysia) © Tomoichi Sato, 2007 エンジニアリング・プロジェクトの例 (3) • London Underground Modernization (Bechtel) • Lyon Airport Saint-Exupéry extension (Technip) © Tomoichi Sato, 2007 エンジニアリング・プロジェクトの 例(4) • イタリアのLNG受入基地 – MW Kellogg (日揮の英国子会社) © Tomoichi Sato, 2007 我が国のエンジニアリング産業:その業容 日本のエンジニアリング企業 専 業 : 日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング 重工業系 : MHI、IHI、日立プラントテクノロジーズ、 川崎重工業(川崎プラントシステムズ)、三井造船、 日立造船 製鉄業系 : 新日鉄エンジ、JFEエンジ、神戸製鋼所 石油化学 : 三菱化学エンジ、住友ケミカルエンジ、三井化学エンジ、 ユーザー系 東レエンジ、三菱レイヨンエンジ ゼネコン系 : 大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店等 © Tomoichi Sato, 2007 英米流プロジェクト思考 - なぜ PMBOK Guide は生まれたか • 米国はプロジェクト・マネジメント思考の発祥の地 – PERT、クリティカル・パス、アーンドバリュー分析、プロジェク ト・ポートフォリオ・・・ • 英米の仕事では、計画と予実対比を重視する • 日本企業は、現場でのやりくりを信頼しすぎる →英米の顧客にとっては、プロセスが見えず不安 (「おまかせ」型の寿司屋) • プロセスの可視化手法を共有できるよう、標準制定の動 きにつながった 米国PMIによる”PMBOK Guide”編纂 © Tomoichi Sato, 2007 4 プロジェクト組織と役割の設計 © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクト遂行に向いた社内体制 とは • 「社長直轄チーム」だからプロジェクト? • プロジェクト・マネージャーの指名 (権限と責任) • プロジェクト番号制 • プロジェクト予算体系の確立 • 日報による社内人件費把握 • 外部費用のプロジェクト別把握 • タスクフォース(「工務店」型) 組織か、 マトリクス(「置屋」型)組織か © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクト組織(1) 機能型(ファンクショナル)組織 機能型組織 企業において必要な機能(技術)をベースとし、各機能の最大効率を目指 した分業型組織。各グループでは経験年数により序列がつくられ、秩序を もって運営されていく。 開発事業部長 商品企画部長 ハードウェア 開発部長 ソフトウェア 開発部長 ×××××× ×××××× ×××××× 組織の特徴 長所 ① 技術蓄積・継承が容易 ② 部内のコミュニケーションが良い ③ 技術プロセスの改善が行いやすい 短所 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ プロジェクトに対する責任者がいない 部門間のコミュニケーションが悪い プロジェクトへのモチベーションが低い 柔軟性に欠ける プロジェクトへの理解に欠ける プロジェクトの実施スピードが遅い プロジェクトの全体像がみえない すべての権限が部門長に集中。 部門横断的にプロジェクトを遂行す るプロジェクトマネージャーは通常存在しない。 もし任命してもよほど 能力があるか 特別な権限を持たせるかでないと勤まらない。 © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクト組織(2) タスクフォース型組織 タスクフォース組織 機能型組織の対極にある。機能的な役割はプロジェクトに配属された 各担当がそれぞれ担う。各担当者は常にプロジェクトマネージャーの 部下としてプロジェクト組織に組み込まれて動いている。 長所 ① プロジェクトに対するモチベーション が高い ② プロジェクマネージャーが権限を持 ちプロジェクトへの即応性が高い ③ プロジェクト専属リソースなのでリ ソース間の取り合いが少ない ④ マネジメントが単純で実行しやすい 短所 ① リソースの無駄が多い(特に間接 機能) ② 技術力の蓄積が図りにくい ③ 組織としての技術プロセスの改善 がはかりにくい ④ プロジェクト間の融通性がきかな い 開発事業部長 商品企画 ハードウェア 開発 ソフトウェア 開発 プロジェクト ① ×× マネージャー ×× プロジェクト ② ×× マネージャー × × プロジェクト ③ ×× マネージャー ×× ××× ×× © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクト組織(3) マトリクス型組織 機能的な役割はプロジェクトに配属された各担当者が担う。彼らは専 門性を持った組織に帰属しているが、プロジェクトマネージャーの下に 派遣され、プロジェクト組織に組み込まれて動く。 マトリクス型組織 長所 ① 開発事業部長 ② 商品企画 部長 ハードウェア 開発部長 ソフトウェア 開発部長 ×× ×× プロジェクト ① マネージャー ×× プロジェクト ② マネージャー ×× × × プロジェクト ③ マネージャー ×× ×× ××× 原籍 原籍 原籍 ③ ④ 短所 © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクマネージャーが権限を 持ちプロジェクトへの即応性が高 い プロジェクトに対するモチベーショ ンが高い 技術力の蓄積が計れる プロジェクト間での融通性がある ① 担当者はプロマネと上司の二人のボ スを持つことになり、複雑 ② プロジェクト間でのリソースの取り合い が生じやすい コミュニケーション・ルートの原則 情報を伝達・共有し、アイデアを創発し、認識のギャップを埋めることが目的 • 正確に素早く情報を流すことがコミュニケーションのポイント • コミュニケーションでは「トレーサビリティ」が重要 PM PM サークル・会議方式 ルートの数はn2に比例する 少人数で創発的な議論に向く 副 ヒエラルキー伝達方式 ルートの数はnに比例する 指示・報告を確実に行える © Tomoichi Sato, 2007 主 プロジェクト・マネージャーの仕事 1. 企画・提案: プロジェクトの目標設定、要求事項の確認 2. 見積・計画: 予算・要員・スケジュールの立案 3. 組織編成: 技術・リソース等、プロジェクト組織のフォーメーション チーム・ビルディング 4. 進捗管理: プロジェクトが計画通り遂行されているかチェック 5. コーディネーション: 組織内部およびステークホルダーに対する 報告・折衝・調整 6. 終結処理: プロジェクト終了時の各種整理や折衝、手続き プロジェクトマネージャーの持つ権限は一般的にはプロジェクト予算の執行権である。 プロジェクトマネージャーが強い予算執行権を持ってはじめてラインとのパワーバラン スが持てるようになりラインマネージャーと対等に話ができるようになる。 (国内企業、特に製造業ではライン制がまだまだ色濃く残っている。ラインマネー ジャーの権限が強すぎると、時としてプロジェクト遂行上の最大の弊害となる) © Tomoichi Sato, 2007 プロジェクト・マネージャーの資質 • プロジェクト・マネージャー(PM)は管理技術と固有技術の両方を見 ることができる、ジェネラリストである • プロジェクト・マネジメントのハード・スキルを身につけている • プロジェクトには予期せぬリスクと問題がつきもの。慎重さと果断さを 兼ねそなえる必要あり • PMは人を動かして目標を達成する仕事である。構想力とコミュニ ケーション能力(交渉力)が望まれる • ヘリコプター・ビュー。大局観を持って問題解決にとりくむ • マネジメントとはサポートであり、雑用の集合である。頭が良くても時 間管理能力の低い人は、PMには向かない • プロジェクトに対する情熱と責任感。これがなければ人はついてこな い © Tomoichi Sato, 2007 • 学んで思わざれば、すなわち暗し。 思うて学ばされば、すなわち危うし。 © Tomoichi Sato, 2007 参考図書・文献 • “PMBOK Guide” A Guide to Project Management Body of Knowledge, The 3rd Edition. Project Management Institute (2004) 邦訳 「プロジェクトマネジメント基礎知識体系ガイド 第3版」(PMI東京支部監 訳、2005) • 「時間管理術」 佐藤知一 (日経文庫、近刊) • 「革新的生産スケジューリング入門」 佐藤知一著 (日本能率協会マ ネジメントセンター、2000) • 「産業界が期待する経営工学会と経営工学卒業者像」 後藤康浩・田 村隆善 経営システム Vol.15, No.1(2005) • 「日本におけるプロジェクト&プログラムマネジメントの定着と現下の 動向」 田中弘、経営システム Vol.17, No.5 (2007) • 講師ホームページ 「革新的生産スケジューリング入門」 http://www2.odn.ne.jp/scheduling/ © Tomoichi Sato, 2007
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