競争力の源泉としてのブランド − Giorgio Armani

「グローバル競争優位と優位性の源泉」
- ジョルジオ アルマーニ社の事例-
2015/9/30
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アパレル業界は魅力度低い産業?
アパレル業界は
◆ 今後の大幅な市場規模拡大は望めない。
◆ 競合多数で供給過多。顧客は大量な選択肢を持つ。
◆ 顧客は非常に移り気。
◆ 技術(=デザイン)はすぐコピーされ代替製品はあっという間に出回る。
M.ポーター理論の視点からは魅力度の低い産業
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低魅力度業界で企業は競争優位性をいかに確立、維持するか?
ジョルジオ アルマーニ社はどうしているのか?
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ジョルジオ アルマーニ社
設立
設立者
事業内容
取扱商品
1975年
ジョルジオ・アルマーニとセルジオ・ガレオッティ
ファッション商品のデザイン、生産、流通、小売
アパレル、アイウェア、時計、ホーム・ウェア、フレグランス、コス
メティック、等
売上高
25.2億ユーロ
収益:16.2億ユーロ(2008年)
営業利益:3.0億ユーロ(19%)
専門小売店 39か国、300店以上、13の工場を保有
本社所在地 イタリア、ミラノ(勤務者約300名:2003年):
全世界:5,344名(2008年末)(本国:3040,海外:2,300名)
Management(2%);Corporate(76%);Manufacturing(22%)
CEO
ジョルジオ・アルマーニ
株式
非公開(主な株主はジョルジオ・アルマーニ本人)
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http://www.giorgioarmani.com/
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パリの高級ファッション
オートクチュール
(=デザイナーブランドによる高級注文服)
1950年代(一部の特権階級)
イタリアファッションの再興
プレタポルテ
(=デザイナーブランドによる高級既製服)
1950年代に中産階級の台頭
G・アルマーニ:1970年代ヨーロッパファッション界に
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革命をもたらす
① Giorgio
Giorgio Armaniの
Armaniの
①
ファッションの哲学
ファッションの哲学
 キーワード:シンプル、エレガント、男らしいがやさしい男性 、
女らしいが強い女性
私にとって、ファッションとは、人々に夢を見させるもの
ではなく、人々の生活を支えるものでなければならないの
です。私のファッションは、人々が活用し、自分のものと
し、自分流に解釈さえするためにあるのです。
私の愛する創造
性とは、信頼で
きるファッショ
を買った男性や
ンや、その服
女性がより良く
見え、快適にな
してシーズン毎
るような服,そ
にがらりと変わ
っ
て
しまうのではな
いものの流れを
く、新し
えつつ、文明が
発展するように
進
化していく
服を作り出す力
なのです。
まず、上着を自分なりにデザインしようと思いました。
インフォーマルで、かつ肩苦しくない上着で、体を隠す
どころか体の官能性を強調する上着を創造しました。
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ARMANI革命とは?
従来のヨーロッパファッション界を支配していた
オートクチュールは特権階級の人々に
権力とStatusを誇示するもの
• 1970年代ヨーロッパファッション界に革命をもたらす。
• G.ARMANIは紳士用ジャケットの脱神聖化を図る
(1) シンプルにするために肩パット、裏地を除去
(2) 軽くて柔らかい婦人生地を使用
(3) 黒・グレー・ベージュなど落ち着いた上品な色の無地を採用
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アルマーニ革命の核心
アルマーニの服作りの基本コンセプト
•
•
(1) 魅力的で官能的な美しいもの
(2) 人間の自然な動きにマッチした着やすいもの
ルネッサンス時代のモーダの原点に帰る事
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G.ARMANIの戦略
(イタリア式ビジネス)
×
Commodity Goods
(汎用品=個性を持たない、無機質なもの)
○
Speciality Goods
(個性を持ち、その個性を理解する特定の層の
消費者に向けた限定品=生産量は限定)
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明確な差別化(Differentiation)
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ファッションをUpper から
Upper Middleへ拡大
単なる既存市場内での差別化
or
Blue Ocean(新たな市場)
Upper
+
Upper Middle
Middle
Lower
集中
(Focus)
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ラグジャリーブランドを維持し、
コモディティ化を避ける
「アルマーニ」というブランドはない。
「アルマーニは高級ブランド」というのが一般的な認識であるが、
ところが実は「アルマーニ」というブランドは、存在しない。
広く一般に「アルマーニ」と認知されている製品のほとんどは、
ジョルジオ アルマーニ社が取り扱う3つのブランドのいずれかである。
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ジョルジオ アルマーニ社の3ブランド
◆GIORGIO ARMANI
ファーストライン。最も高価格でターゲットが絞り込まれているライン。平均的なスーツ
は30万円前後、300万円の女性用ドレスは衣料品というより美術品に近い。日常から
逸脱した世界ではあるがキーワードは「シンプル、モダン、エレガント」。
◆ARMANI COLLEZIONI
ディフュージョンライン。ファーストラインのデザインモチーフを使いながら商品的にも価
格的にもより日常感。最も店舗数が多いので物理的に一番手に入れやすい「アルマー
ニ」。百貨店でのインショップ展開がメイン。ビジネスパーソンがターゲット・イメージ。平
均的なスーツは12万円前後。
◆EMPORIO ARMANI
ライフスタイル型ブランド。よって商品の幅が最も広く(スーツ、ジーンズ、時計等のアク
セサリーまで)雰囲気を重視するので路面店展開のみ。ターゲットは”young at
heart”な人(実際の顧客年令は必ずしも若くはない)。平均的なスーツは12万円前後
であるが、5,500円のTシャツもあるので経済的に一番手に入れやすい「アルマーニ」。
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3ブランド戦略
「アルマーニ」という共通ワードを背景に、少しずつ異なるキャラクターを持たせた3ブラン
ドを使い分けることによってより幅広いターゲットにアプローチし、共通ワード「アルマーニ」
の広範囲での認知を狙う、というメカニズム。
ジョルジオ アルマーニ
価格
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アルマーニ コレツィオーニ
エンポリオ アルマーニ
ファッション性
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G.ARMANIの戦略
○
自らのライフスタイル・生き方
いかに美しく・楽しく生きるかを
ブランドを通じてUpper Middle以上に提案
×
売り上げと利益の最大化を至上命題にして企業
価値を増大させるビジネス・モデルとは異なる。
アングロ・サクソン型モデルの否定
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「アルマーニ」を創るもの
「アルマーニ」というブランドの製品はない。
実体がないのに広く認知されている「アルマーニ」とは何モノか?
3ブランドの背景にあるイメージ
イメージが製品に衣類の価値を超えた意味付けをするシステム
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「ブランド・イメージ」が競争優位性の源泉
「我々の唯一、最高の資産は”イメージ”だ。」
(ジュゼッペ・プルゾーネ G.アルマーニ社元ジェネラル・マネージャー)
プラダはナイロン・バッグ、ルイ・ヴィトンはモノグラム・バッグ、エルメスはケリ−バッグ
と他の多くのブランドがアイコンとなる「ヒット・アイテム」を抱える中、そのような象徴的
アイテムを持たないジョルジオ アルマーニ社の最大のヒット・アイテムは「イメージ」で
あると考えられる。
「アルマーニ」というイメージがジョルジオ アルマーニ社にとっての主
力商品であり、競争優位性の源泉である。
イメージを資源として生産され、3つのブランド・ラベルをつけられた
製品の売上高は年間20億7,200万ユーロになる。
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ブランド・イメージの維持=優位性の確保
イメージを競争優位性の源泉とするジョルジオ アルマーニ社にとって、
ブランド・イメージの維持が企業競争優位性の確保につながる。
「創業以来、イメージの重要性ということを第一に考えて仕事をして
きた。だから我々らしさを十分に発揮できるところでしか仕事はしな
い。売れるから、儲かるからという理由だけでは妥協はしない。」
(ジュゼッペ・プルゾーネ ジョルジオ アルマーニ社元ジェネラル・マネージャー)
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優位性構築のための必要要因
ジョルジオ アルマーニ社がブランド・イメージ構築に成功した
主な要因として、以下の3つの主な要因が考えられる。
① 明確で一貫性のあるイメージ表現
② 協力他社(者)との関係強化・維持
③ 従業員が自社製品の熱烈なファン
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① 明確で一貫性のあるイメージ表現
(表現媒体)
イメージ
商品
店鋪
接客
広告宣伝
イメージ伝達
顧客
共感、ファンになる
一貫性
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② 協力社(者)との関係強化・維持
的確なイメージ表現は外部スタッフとのアライアンス(提携)に支えられている。
◆製作工場との関係
製品はその特徴となる部分においてコンピタンスを有する工場で生産されている。
革素材の衣料品:ベルフェ社(イタリア)、スーツ:ベスティメンタ社(イタリア)、
腕時計:フォッシル社(アメリカ)
◆店鋪設計スタッフとの関係
建築家:クラウディオ・シルベストリン(イタリア人)
◆広告制作スタッフとの関係
カメラマン:ピーター・リンドバーグ(パリ在住)
◆セレブリティ=シンボリックな「スーパー顧客」としてイメージ訴求に一役
ジョディ・フォスター、その他ハリウッドスター、エリック・クラプトン、他
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The Italian Leather, Footwear and
Fashion Cluster
Leather
Clothing
Design
Services
Textile
Fashion Cluster
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M.Porter, HBR, Nov-Dec,199820
② 統合化・内部化:
Vertical Integration
製造の社内化の例 :
流通の社内化の例 :
2000年に長期的な協力会社
である Vestimentaと新しい
Joint-Ventureを開始した。
60%を Giorgio Armani社が所
有している。
以前は、香港の店舗を流通会社
が管理していたが、2001年から
Giorgio Armani社が 100%所有し、
自立的に管理することにした 。
2001年にSimintという製造
会社を 100%買収。株は非公
開。
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Giorgio Armani Japan社は伊藤忠
商事とのJoint-Ventureであるが、
Giorgio Armani社が徐々に85%所有
へと高めた 。
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③ 従業員が自社製品の熱烈なファン
ほとんどのスタッフは「アルマーニらしさが好き」
自社の競争優位性の源泉、戦略を理解している。
社内モチベーションの維持が比較的容易。
人材が流出しにくい。
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まとめ(1)
ポーターはアパレル業界を魅力の低い業界と考えるだろう。供給過多で競争は激しく
流行のデザインは模倣されるのが常である。こうした環境のなかで競争優位性の持
続は可能なのであろうか?
答えはYESであると考える。ジョルジオ アルマーニ社は「ブランド・イメージ」を使った
戦略(差別化と集中化)で35年間にわたり事業を拡大してきた。デザインの模倣は簡
単であるが、実体のないイメージの模倣は簡単ではない。
競争優位の源泉をブランド・イメージに求めた場合、イメージを具現化する表現力は必
須だ。表現力とはつまり、ブランドという付加価値を明確に、一貫性をもって顧客に伝
達する「ノウハウ」である。このノウハウはイメージそのものよりもさらに模倣が難しくな
る。ジョルジオ アルマーニ社のイメージ表現力は、自社の経験で培われたものだけで
はなく、協力他社との積極的な連携によって構成されている。
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まとめ(2)
他社との強力な連携は同時に、ジョルジオ アルマーニ社が「イメージの構築(=商品
企画、デザイン)とコントロール」というコア・タスクに専念できる体制を可能にするもので
もある。

また、ジョルジオ アルマーニ社独特の強みは、従業員との感情的な強い繋がりであ
る。スタッフたちは会社の競争力の源泉であり企業戦略そのものである「アルマーニらし
さ」というイメージに共感を抱いている。こうした関係は組織内での戦略の浸透を容易くし
ている。

このように、産業として魅力の低いアパレル業界でも、自社内外のコアコンピタンスを
活用して、創造性豊かな差別化・集中化戦略を用いることによって、グローバルな競争
優位性を維持することが可能になっている。

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ジョルジョ・アルマーニの
「持続的国際競争優位の源泉」について、
講義内容を踏まえたうえで、
あなたの見解を述べてください
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