フォーカス・グループ・ディスカッション

言語教育研究法研究部会 活動報告
言語教育方法論としての
グループ・ディスカッション
発表者:東京外国語大学
大学院博士後期課程2年
曲 明
2006年12月6日
フォーカス・グループ・ディスカッション
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FGDの歴史的背景
FGDの概念と特徴
インタビューと比べて、FGDの利点、欠点
研究への応用
FGDの分析方法
FGDの手順と分析 (ケース研究)
FGDを実施する際の問題点
1.FGDの歴史的背景
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FGDは、第二次世界大戦後にキャンペーンの評価方法として
コロンビア大学のロバート・マートンによって開発された。
1950年代にその手軽さと効率性の良さからマーケティングや
広告業界において、広く使われるようになった。
1980年代から、社会学、心理学、教育学、人口学など幅広い
学術分野でも、量的調査方法を補完する質的調査手法の一
つとしてFGDが用いられるようになった。
2.FGDの概念と特徴
2.1概念
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「あらかじめ選定された研究関心のテーマについて焦点が定
まった議論をしてもらう目的のために、 明確に定義された母
集団から少人数の対象者を集めて行うディスカッションである」
(Knodel et al,1990)
「ある1つのテーマに向けて、焦点を絞り込まれた非常に組織
化された集団討論である」( Krueger,1986)
「FGDとは、具体的な状況に即したある特定のトピックについ
て選ばれた複数の個人によって行われる形式ばらない議論
のことである」( Beck、 他1986)
2. FGDの概念と特徴
2.2特徴
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グループは、ある特定の話題に対して見解を出すことを
要請された、ターゲットとなる人たちの形式ばらない集
まりである。
グループの人数は少数で、通常6人から12人からなる比
較的に同質的な人々である。
よくトレーニングされた司会者が、仮説と質問を準備し
て、参加者の反応を引きだす。
FGDの目標は特定の話題について参加者の理解、感情、
受け止め方、考えを引きだすことにある。
非常に多数の人々に対して応用できるような量的な情報
を生み出すものではない。(Vaughn et al、 1996)
3.FGDの利点、欠点
3.1利点
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集団インタビューより現実に近いデータが取れる
日常生活に近いものである。
Mangold(1973 )
グループ・ダイナミクスの効果
相乗効果性、雪だるま性、刺激性、安心感、自発性
Hess(1968)
3.FGDの利点、欠点
3.2 欠点
FGDの利点は裏返せば、 欠点は以下のようにある。
 発言力の弱い参加者の意見や、 多数と異なる意見があら
われにくいという欠点にもなる。
 また、 集団力学が強く働く時は、 参加者が個別面接の
場合に比べてより強い意見を言う可能性もある。
(Kruger、 1998)
4.研究への応用
FGDを量的調査方法と組み合わせるアプローチとし
ては、次の3つがある。
 探索的なアプローチ
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臨床的なアプローチ

現象的アプローチ
5.FGDの分析方法
5.1データの分析に先立って考慮すること
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参加者とグループの特性記述
FGD中のメモとメンバーの照合
発言データの記録作成のための手続き
5.FGDの分析方法
5.2分析の方法
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ディスカッションは、テープレコーダー、ビデオ、
カメラ等に記録する。
分析のためにはそれをテキストにおこす作業が必要
である。
コーディングする。
ガイドラインに含まれてはいない発言には別のコー
ドを付けておく。
グループ別FGDとコードから成る表を作成する。
グループ内のパターンや、 支配的な考え方を探る。
5.FGDの分析方法
5.3分析する際注意すべき点
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1人の分析者の主観によるバイアスを回避するために、分析
は2人以上の分析者が別々に行い、整合性を確かめながら
行うことが望ましい。
FGDの分析の際には、 発言に基づいた事実と分析者の考
察を明確に分離するように注意する必要がある。
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
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研究目的の記述
司会者の選定と訓練
参加者の選定
FGDのグループ数の決定
FGDを行う施設の手配
ディスカッション手引きの作成
実施
データの分析
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
6.1研究目的
この研究は、 「スピーキングテストの形式」、具体的にイ
ンタビュー形式のスピーキングテストとグループ・ディス
カッション形式のスピーキングテストが被験者のパフォー
マンスにどのような影響を与えるかについて探ることが目
的とする。今後行う予定である本調査では、 質問票を配
布し統計的な分析を行う予定であり、 FGDはその本調
査の準備段階という位置づけで行われた。
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
6.2司会者の選定と訓練
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司会者はインタビュー技術・集団課程の運営技術、研
究目標についての知識を持っていなければならない。
司会者の性別・年齢・人種が参加者の反応に影響する
ということを心に留めておかなければならない。
司会者はトピックに関して偏見や先入観を持たないよ
うにして参加しなければならない。
司会者は以下のようなトレニングを受けること。①実
際に熟練の司会者によって行われたFGD、またはビデオ
を見ること。②行われたFGDの録音テープを聴くこと。
③実際のFGDの発言記録を読むこと。④ベテランの人の
FGDの手引きを読むこと。
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
6.3参加者の選定①
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研究の目的上、日本人中国語学習者を対象とした。
FGDでは、 ディスカッションのテーマをより絞り込
むために参加者をさらに細かい属性に従って分類する
ことがしばしば行われる。今回のFGDでは、研究目
的に従って、性別と親密度により分類を行った。
具体的に同性グループ、大学生(男性)、 大学生(女性)、
知り合い(男女混合)、初対面(男女混合)の4つのグ
ループに分けた。
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
6.4 FGDのグループ数の決定
グループの
属性
人数
1
大学生(男性)
6
2
大学生(女性)
14
3
知り合い(男
女)
5
4
初対面(男女)
4
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
6.5FGDを行う施設の手配
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FGDの会場を考える時、その施設が参加者に快適さを
もたらすことが大切である。
FGDを行う施設はそれぞれの参加者にとって位置的に
公平な場所であることが重要である。
以上のことを配慮に入れて、今回のFGDは東京都内に
ある某大学の教室で行われた。
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
6.6 FGD手引きの作成
①上述二つ異なるテスト形式への態度(不安を感じやすい、感
じにくい、楽しい、楽しくない、自分にあっていて、すき、自分に
あっていない、好きではない。及びその理由)を示す、書き込み
作業を行うためのコードを作成した。
②難易度(よくできたと思う、よくできなかったと思う、やさしかっ
たと思う、難しかったと思う)を示す、書き込み作業を行うための
コードを作成した。
③具体的に自分のテストパフォーマンス(発音、文法、語彙、流
暢性、複雑性、正確性、発話量)に与える影響を示す、書き込
み作業を行うためのコードを作成した。
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
6.8結論①
◆ FGDから研究の方向性を左右するような情報を得る
ことが可能であるということである。
*「話の内容」について
*対談者の要素である年齢と地位の影響について
*テストへの「態度」について
6.FGDの手順と分析 (ケース研究)
6.8結論②
日本でFGDを行う際に配慮する必要がある課題に
気づいたことである。海外のマニュアル通りにFG
Dを行っても、日本においてはその手順の前提条件
となっている集団力学や個人の発言に対する期待が
異なっているため、理想通りには運ばないのが現状
である。
*グループの選定について
*グループの人数について