物理学基礎研究

物理学実験Ⅲ
シンチレーション検出器を用いた
放射線計測
理学研究科物理学専攻
中間エネルギー核物理研究室
http://nuclear.phys.tohoku.ac.jp/expphys3/
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
1
中間エネルギー核物理研究室
2
 スタッフ


前田和茂、神田浩樹
大学院生

木村千草、藤井隆穂、山本郁也、金子勇介(TA)、松原正夫
 研究内容
 高エネルギー光子と原子核の相互作用による中間子の生成
 原子核内におけるバリオン・バリオン相互作用の研究
 ストレンジネス核物理
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
研究内容
3
 中間エネルギー核物理グループでは,加速器を用いた中間エ
ネルギー領域(0.5-1 GeV)の核構造,核反応の実験的研究を
行っている。











(1) 電磁相互作用を用いた原子核構造の研究
核内核子間相互作用
高エネルギー電子・光子
原子核内における核子励起状態
と原子核の相互作用による
中間子の生成
中間子生成機構
中性子捕獲反応からの
中間子・原子核相互作用
γ線測定およびその逆反応
原子核内ストレンジネス
(2) 実験装置の開発
液体水素,重水素標的
磁気スペクトロメータ
トリガー検出器,中性子検出器
(NKS2)の開発と改良
バーテックス検出器
光子標識化装置
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
東北大学核理研、CYRIC、SPring-8、J-PARC
光で重水素を探る
4
 最もシンプルな原子核を最もシンプルなプローブで探
る
 H=r(r)f(r) – j(r)A(r)
r(r): 標的の電荷密度
j(r): 標的の電流密度
f(r): プローブによるポテンシャル
A(r): プローブによるベクトルポテンシャル
 j(r) = jC(r)+jS(r)+jMEC(r)+jD(r)
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
5
M=E1
重陽子
1.48fm
nucl-th/9603035
nucl-th/0207085
n
nucl-th/0207013
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
p
p
1 GeV領域の光子の性質
6
h c : 197 MeV ×fm
1
a = e / hc :
137
2
 GeV領域の光反応における意味:

波長は1 fm 程度
→ 核子程度のサイズに敏感

相互作用は比較的小さい
→ 始状態相互作用は無視できる
 重陽子は2核子がゆるく(結合エネルギーは2.3 MeV, 核子間
距離は 1.5 fm)結合した原子核
← インパクト近似(個々の核子のみが反応に参加するという近
似)が十分に成り立つと期待
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
Δ粒子の二重生成
7
●
■
□
△
this work
Asai (TAGX)
Wada (SAPHIR, PANIC’96)
Shinozaki (TAGX, private
communication)
ー Gomez
■ A.Fix (very preliminary)
過去のデータ、理論との
食い違い!
最も簡単な原子核である
重水素はまだまだ研究
対象としての価値を持つ
 (左)陽子と中性子がパイ中間子で接着
された重陽子に高エネルギー光を照射。
 (中)陽子と中性子が「熱い」状態に変化。
 (右)陽子と中性子がそれぞれパイ中間
子を放出して「冷たい」状態に戻る。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
8
東北大学電子光理学研究センター
1.2-GeV STretcher Booster Ring (STB Ring)
 STB Ring
 電子を1.2 GeVまで加速できるシンクロトロン。原子核物理学の研究には、200
MeV 連続電子ビームもしくは 1.2 GeV 標識化光子ビームを供給できる。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
中性K中間子スペクトロメーター2 (NKS2)
 原子核物理学研究室ストレンジネス
グループと共同で開発
 電子光センターの光子ビームを用いた
光中間子生成反応の研究
 荷電粒子の磁場中での飛跡と速度を
計測して光と標的との反応を同定
位置測定
速度測定
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
9
July, 2006
物理学実験Ⅲでの実験の内容
 放射線と放射線測定器
 放射線と物質の相互作用
 放射線検出器
 各種のシンチレーター
 信号の定量化
 元素を変える・元素を作る
 原子核反応
 原子核崩壊
 加速器を用いて放射性元素を作る




サイクロトロンでの陽子の照射
CYRIC930サイクロトロンからの陽子ビームを照射して鉄やチタンを核変換
放射性元素からのγ線による同定
放射線崩壊の測定
陽子と原子核の反応確率から原子核のサイズを測定
 放射線の利用
 放射線源による用途の違い/何がわかるか?
 ポジトロン・ポジトロニウム
 応用例の紹介(PETシミュレータ)
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
10
原子核反応と原子核のサイズ
 原子核のサイズ:r=1.2×10-15×A1/3
11
(m)
 顕微鏡で原子核(~10-15m)は見られる?
光学顕微鏡:NO←可視光の波長(10-6m)が制限
陽子数: N p
 電子顕微鏡:NO←電子の物質波の波長(1MeV電顕で10-12m)が
制限
N t arget s t arget : S = N product : N p
 STM、AFM:NO←プローブの先端が原子(10-10Nm)なので
product S

Þ s t arget =
N N
 より波長の短いプローブ←高い運動量(>100MeV/c)の
p
t arget
粒子(光、電子、陽子、、、)を使用
 跳ね返ったプローブを検出・測定して空間的に再構成:
高運動量の粒子の検出器が大がかりに
 陽子に衝突して原子核反応の結果生成した放射性原子核の
個数を測定:いくらかの仮定を導入することによって、1桁の
精度では測定可能
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
原子核物理学「実験」
12
 素粒子・原子核物理学の実験は加速器を用いた実験と加速器
を用いない実験に大別されます。

非加速器実験(放射性同位元素、宇宙線、原子炉)




素粒子・原子核物理学黎明期の重要な発見に寄与
加速器では到達できない高エネルギー粒子の観測(宇宙線)
コンパクトな実験(放射性同位元素)
加速器実験



放射線(X線、陰極線)の発見に寄与
素粒子・原子核物理学の爆発的な発展
大規模な実験
 この実験ではCYRICのサイクロトロンで加速した陽子ビームを
使用し、実験を自分たちの手でコントロールする基礎的な加速
器実験を行ないます。
 その後は放射性同位元素の測定を地道に行ないます。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
13
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
実験の進行・レポート・発表
14
 実験の進行


基本的にCYRICで実験を行ないますが、毎回一旦は607号室もしくは
501号室に集合します。
実験は2ないし3グループに分かれて行ないます。
 レポート


グループ毎に1部のレポートをまとめます。
グループ内での分担方法はお任せします。
 レポート提出(発表)




第9回目にレポートを提出してもらいます。
その際に、レポートについての簡単な説明をプレゼンテーションしてもらい
ます。
プレゼンテーションにパワーポイントを用いる必要はありません。
プレゼンテーションの内容やレポートの内容に対して簡単な質疑応答を
行ないます。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
実験スケジュール
 第1回
 第5回
15
全体ガイダンス・組分け
 陽子と鉄原子核の反応と反応
実験内容の説明(607号室に移動し
断面積
て行う)
 γ線スペクトルよりRIとRIを生成
レポートの書き方・実験ノートの
書き方
した原子核反応の同定
 放射線と物質との相互作用
 RIのγ線強度測定(2回目)
 放射線検出器の仕組み
 第6回
 シンチレーションカウンタの自作
 RIのγ線強度測定(3回目)
 第2回
 CYRICでのRI製造実験
 陽子と鉄の反応断面積の測定
 第3回
 反応断面積と原子核のサイズ
γ線と物質の相互作用
 第7回
 シンチレーションカウンタの信号
 RI のγ線強度測定(4回目)
処理と計数率計測
 SCAの操作
 同時計数回路
 第4回
 第8回
 製造したRIのγ線エネルギー
 粒子と反粒子
スペクトルの測定
 RI のγ線強度測定(5回目)
 RI のγ線強度測定(1回目)
 第9回
 レポート提出、質疑応答


2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
放射線を計測する
16
 原子核・素粒子物理学実験における基礎的な技術。
原子核や素粒子の反応の測定のために、反応によっ
て生成した各種の高エネルギー粒子(=電離放射線)
を検出し、その性質を測定する。
 目では見えない放射線を(効率良く・精度良く)検出す
るためのさまざまな工夫がなされている。
 検出した信号を電気的(最終的には数値的)に取り扱
う各種の装置を利用している。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
原子核物理学の実験的研究
17
 原子核の性質(構造・状態・反応)を実験的に調べる物理学の
一分野。原子核の自身の崩壊によって、あるいは、他の原子核
や粒子を衝突させることによって、放出された原子核や粒子を
検出してその情報から元の原子核の構造や反応を調べる。
 顕微鏡観察にたとえると、原子核という試料に、他の原子核や
素粒子を光として照射し、その透過、反射、あるいは発光した光
をレンズで集光していることに当たる。顕微鏡のレンズや顕微
鏡を覗く目に相当するのが、放射線検出器である。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
シンチレーション検出器
18
 シンチレーションという現象を利用して放射線を検出する装置。放射線と反
応して発光するシンチレーターと呼ばれる物質と光を電気信号に変換する検
出部を組み合わせて作る。
 シンチレーターには、有機物あるいは無機物のいろいろな種類のものがあり、
それぞれの性質を生かして各種の用途に用いられる。
 検出部としては、光電子増倍管や光ダイオードなどが用いられている。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
放射性元素・放射線源
19
 放射線を出す物質には天然に存在するものと人工的
に製造するものがある。
 原子核に他の原子核を衝突させて反応を起こし、別の
種類の原子核を生成することができる。
 この実験では、CYRIC のサイクロトロンという加速装
置を用いて陽子(水素原子核)を光速の20%という速
度まで加速して、鉄やバナジウムの原子核に衝突させ
ることで、別種の原子核を生成する。
 これらの新しく生成した原子核から放出される放射線
の性質から、種類を同定することができる。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
放射線(計測)の応用
 高い透過力(主に高エネルギー光子)
 非破壊検査
 人体の断層撮影
 高い電離力(主に荷電粒子)
 腫瘍の治療
 物質の構造の強化
 滅菌
 RIの一定の半減期
 年代測定
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
20
放射線の光と影
21
 放射線の利用はもちろん良いことずくめではない。
透過力が高い+高エネルギー⇒人体内部に深刻な損
傷をもたらす
 放射線発見初期の物理学者には白血病など放射線に
よる障害で死んだ人が多い。
 この実験で扱う放射線の量は、人体にほとんど影響が
無い程度なので気にする必要はないが、キケンなもの
を扱っているという認識は持っていてもらいたい。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
研究内容
 光子・電子による原子核の研究
光子は電流に応答する性質を持っている。この性質
を利用し,原子核内の電流(陽子が運動することによ
る電流や,スピンによる磁化電流など)の空間分布を
精密に調べることができる。さらに、電流の空間分布
は原子核の構造を反映するので,原子核,及びその
内部を詳細に調べることができる。電子も同様に,仮
想光子を原子核との間で交換する。仮想光子は,原子
核の電流だけではなく電荷の空間分布を調べることが
できる特徴がある。中間エネルギー研究室では,この
光子や電子の優れた特徴を生かし,いろいろな波長の
光子(仮想光子も含めて)を使いながら原子核研究を
進めている。光子の波長を変えることで,違った空間
分解能で原子核に迫ることができる。 現在の主な研
究課題は,電子線加速器を用いた中間子,核子共鳴
生成の研究である。
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
22
Cyclotron
[email protected]
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
23
56Co
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
24
56Co beta decay
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
25
48V
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
26
48V beta decay
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
27
28
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
pn reaction
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス
29
反粒子の性質
30
 反粒子は、「粒子」と電荷が反対でスピンや質量などの性質の
全く同じ粒子である。例:陽電子-電子、反陽子-陽子
 粒子と反粒子が衝突すると、対消滅してエネルギーの塊となる。
エネルギーの塊からは、各種の保存則を満足させながら粒子
(反粒子も含む)へと転換する。
 この実験では最も手軽に利用できる反粒子である陽電子(ポジ
トロニウム)を用いて性質を調べる。
反物質の消滅
QuickTimeý Dz
YUV420 ÉRÅ[Éf ÉbÉN êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ­ Ç•
ÅB
2015/9/30
物理学実験Ⅲ ガイダンス