KEKBアップグレードに向けてのビームバックグラウンド

KEKBアップグレードに向けての
ビームバックグラウンドについて
東北大学 修士1年
中野浩至
目次
KEKBアップグレード
ビームバックグラウンド
研究内容
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
1/20
KEKBアップグレード
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
2/20
KEKB
B中間子を作り、CP対称性の破れを検証。
昨年12月積分ルミノシティ
達成!
(Since 1999)
8GeV
3.5GeV
1周3016m
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
3/20
Super KEKBへのアップグレード
標準理論を超える物理に迫るため
積分ルミノシティ
を目指す!
の50倍!
ビームを絞る!
量を増やす!
衝突点ビームサイズ
バンチ数
1500個/周
2500個/周
衝突頻度が上がり、ルミノシティが
現在の約40倍に!
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
4/20
アップグレード計画の予定
2010
2011
2012
2013
IPビームパイプ IPビームパイプ
の設計
組み立て
2014
First beam
検出器
Physics run
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
5/20
ビームバックグラウンド
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
6/20
ビームバックグラウンド
ビームが原因のバックグラウンド。
主な原因は3つ、
シンクロトロン放射で出てくるガンマ線
ビームパイプの残留ガスに散乱されたビーム粒子(ガス散乱)
「おしくらまんじゅう」してはじかれたビーム粒子(Touschek)
これらのバックグラウンドによる
検出器への影響をシミュレーションで見積もる。
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
7/20
ビームパイプの残留ガスに散乱されたビーム粒子(ガス散乱)
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
8/20
「おしくらまんじゅう」してはじかれたビーム粒子(Touschek)
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
9/20
アップグレードによるBG量の変化
IP付近の真空が悪くなる
ビームを細く絞る
ガス散乱のBG量が増加。
TouschekのBG量が増加。
アップグレードすると散乱が数十倍に !?
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
10/20
散乱された粒子の行方
これらの軌道から外れてしまった粒子は、
ビームパイプに衝突し、シャワーを生成する。
もし、検出器の近くでシャワーが起きると、
ノイズになってしまう。
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
11/20
研究内容
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
12/20
ビームパイプの設計
アップグレード
散乱が数十倍になると予想される。
できるだけバックグラウンドを抑えるような、
検出器付近のビームパイプを設計
設計
シミュレーション
理想的なビームパイプ
担当
東大、東北大
手順
KEKBのシミュレーション
現在はこの段階
実物と比較
Super KEKBのシミュレーション
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
13/20
シミュレーションの方法
散乱された粒子を乱数を用いて生成する
ビームラインに沿って運ぶ (TURTLE)
検出器周辺をシミュレーションする (GEANT3 or 4)
拡大、断面図
4m
2cm
Belle検出器
1層目のSVDに落とす
エネルギーを調べる。
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
14/20
シミュレーションの内容
ガス散乱の Bremsstrahlung を例に、
KEKBのLERのシミュレーション結果
をいくつか紹介。
散乱された粒子がどこに当たるのか
Bremsstrahlung
エネルギーを失う
E
シャワーの発生位置とSVDへの影響
マスクによる防御の効果
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
磁石で「曲げられすぎ」てしまう
軌道を外れる
15/20
散乱された粒子が当たる位置
検出器付近で、散乱された粒子がどこに当たるのかを調べた
hit数
hit位置[cm]
衝突地点
「衝突点直前」と「衝突点後の磁石の後」の位置にhitしている。
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
16/20
シャワーの位置とSVDへの影響
どの位置にビームが当たることでSVDが影響を受けるかを調べた
落としたエネルギー
hit位置[cm]
衝突地点
衝突点直前で生じたシャワーがSVDに当たっている事がわかる
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
17/20
マスクの効果
散乱された粒子を止める為のマスクの働きを確かめた
0
beam
3016m(1周)
1800
2800
マスク、2カ所
SVDに落ちたエネルギー量
マスクなし
散乱された位置
マスク
SVDに落ちたエネルギー量
マスクあり
散乱された位置
可動マスク以前で散乱されたビームはSVDに影響しない
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
18/20
まとめと今後の課題
KEKBはさらにビームを多く、細くし、ルミノシティを上げる。
ビームバックグラウンドの増加を抑える必要あり。
ビームパイプの形状を最適化
ビームバックグラウンドを見積もるため、
シミュレーションを行っている。
デバッグのため、現行KEKBのシミュレーションを行っている。
今後、
Super KEKBで生じるビームバックグラウンド
の量を見積もり、ビームパイプの設計を進めていく。
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
19/20
ありがとうございました
第16回ICEPPシンポジウム 東北大学 中野浩至
20/20
予備
加速器について
ビームの不安定性
アップグレードにおけるその他の課題
加速器について(1)
主に、2種類の磁石が使われている。
2極磁石 : 軌道を曲げる
4極磁石 : 収束させる
軌道と垂直な方向の振動を、
ベータトロン振動という。
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
x発散、y収束
x収束、y発散
加速器について
加速管内の電場は振動しているため、通過すべきタイミング
が決まっている。
ここで通過(「バケット」という)
加速
t
減速
皿
寿司
米
バケット
バンチ
電子/陽電子
KEKでは、3〜4皿おきに
ビームを乗せている。
ビームの不安定性
Wake field
バンチが通過したあとに残る
電磁場の乱れを wake field
という。
後続のバンチに影響。
電子雲、イオン化された残留ガス
ビームの通り道に集まってきて、
邪魔をする。
Wake
(航跡)
アップグレードにおけるその他の課題
検出器
シグナル、バックグラウンドともに増加。
「まぶしすぎて見えない」状態になる。
ピクセル検出器を用いる。
放射線損傷についても配慮する。
冷却
ナノサイズまでビームを絞る技術
などなど・・・
Back up
KEKB
ビーム粒子(電子/陽電子)
は群れ(バンチ)を成して
加速される。
1バンチあたりの電子/陽電子
1周あたりのバンチ数
交差回数
衝突数
B中間子生成
バンチ
結果
Coulomb scattering
SVDへの放射量.vs.
散乱された位置
のグラフ
[m]
上:マスクなし
下:マスクあり
マスクより前で散乱された
ビーム粒子はほとんど
カットされている。
[m]
それぞれの散乱断面積
シミュレーション範囲
散乱され具合がゼロのとき、
断面積は発散する。
→範囲を指定する必要あり!
これより散乱が小さければ、
悪さしないだろう。
Coulomb散乱
で 104 (barn)
Bremsstrahlung
で 3.3 (barn)
散乱の頻度
1 nTorr を仮定(10^-12 気圧)。
1)ビーム粒子が1周する間に散乱される回数
→ σ * 10^-11 (回)
※ σ(barn) は Coul 104, brem 3.3
2)1秒あたり、いくつのビーム粒子がまわってるか
→ 10^19 (個)
つまり、1秒あたり
10^10 回のCoulomb散乱
10^8 回のbremsstrahlung
(注)散乱の範囲によって断面積は大きく変わる。
残留ガスによる散乱
2種類ある
Coulomb 散乱
Bremsstrahlung
向きが変わる
エネルギーを失う
E
残留ガス
エネルギーを失うと磁石で
「曲げられすぎ」てしまう
軌道を外れる
おしくらまんじゅうによる散乱
Touschek さんが見つけた。
Touschek
エネルギーが増えるものと減るもの
対で生じる
バンチ
E
E
エネルギーが余計にあるものは、磁石で曲げられにくい
エネルギーが足りないものは、磁石で曲げられすぎる
軌道を外れる