X線CCD素子のプロトン照射実験 2002 年 2月7日 鎌塚 友幸 • X線CCDの放射線損傷 • プロトン照射実験 –損傷のプロトンエネルギー依存性 –放射線耐性を高めたCCDの評価 • 照射後CCDの回復法 我々の研究室では、衛星搭載用X線CCDの 研究開発を行っている。 CCDの構造 MOS構造の半導体検出器 画素を2次元に配列した構造 X線が入射し、各画素で発生した 信号電荷を順次転送し読み出すこと によって撮像を行う。 画素数:1024×1024 画素サイズ:24μm CCDの電荷転送(模式図) 転送方向 CCDの画素 X線光子 宇宙には様々な放射線が存在する 放射線と半導体との相互作用 バルク損傷(格子欠陥の生成) バンドギャップにエネルギー準位 (トラップ)を生成 伝導帯 電荷転送効率の劣化 トラップ 1.15eV 電子 エネルギー分解能の劣化 荷電子帯 トラップがある時の電荷転送 トラップ 放射線照射前後のCCDの性能 CTI(電荷転送非効率)=電荷を一画素転送する毎に失う電荷の割合 照射後 照射前 MnKβ(6.4keV) 照射前 MnKα(5.9keV) CTI=1.1×10-4 CTI=1.7×10-6 0 0 5 250 250 6 500 7 500 転送回数 エネルギー(keV) 転送回数 5 5 6 6 7 7 エネルギー(keV) 放射線照射後は、転送回数が増えるに伴い信号波高値が 55FeからのX線(5.9keV,6.4keV)を使用 CCDの性能評価には 低くなっている プロトン照射実験 衛星に搭載されたCCDの放射線損傷には プロトンが大きく寄与している事が知られている 宇宙空間でのCCDの放射線耐性を調べるため プロトン照射を行い、以下の項目について測定した • 電荷転送効率劣化のプロトンエネルギー 依存性 – 171keV,292keV,391keV,522keV,2.0MeV, 3.9MeVの6種を照射 • 放射線耐性を高めたCCDの評価 プロトン照射には、大阪大学理学部のバンデグラフ型加速器 を使用した。 転送効率劣化のプロトンエネルギー依存性 CTI •171keVは劣化への寄与は 小さい。 •292keVにエネルギーが上が ると、CTIが一桁以上増加する。 391keVでも同程度の増加で ある。 •522keVまでエネルギーを上 げると、CTIが有意に低くなって いる。 •2.0MeV,3.9MeVは、劣化へ の寄与は小さい 300~400keVのプロトンが 転送効率を最も劣化させる。 照射量によるCCD性能の変化 ΔE=294eV ΔE=146eV CTI増加への寄与が 最も大きい292keVの プロトン照射時の変化 照射前 0 3 250 5 転送回数 エネルギー(ke V) 1.0×107 p/cm2 500 7 0 3.3×107 p/cm2 3 2505 転送回数 エネルギー(ke 250 5 エネルギー(ke 転送回数 V) 5007 照射量が増すに伴い エネルギー分解能が 劣化する ΔE=1480eV ΔE=778eV 0 3 1.1×108 p/cm2 500 7 0 3 250 5 転送回数 エネルギー(keV) 500 7 プロトンのエネルギー損失の シミュレーション Si中でのプロトンのブラッグ曲線 300~400keVのプロトンが 転送効率劣化に大きく寄与 CCD表面から深さ2~4μmでのエ ネルギー損失が大きい 電荷転送経路での損傷が 転送効率劣化に最も寄与 放射線耐性を高めたCCD •ノッチありCCD ノッチ無し ノッチあり 1 画 素 画素の一部に電荷転送経路を 制限し、転送電荷がトラップに 捕獲される確率をへらしたCCD 電荷転送効率の劣化を 抑える効果が期待できる 信号電荷 トラップ ノッチの有無の比較 292keVプロトン を照射 黒:ノッチなし 赤:ノッチあり CTIが~10-4以上になると有意にノッチの効果が 発揮される 性能回復法 •アニーリング 電荷注入時のCCDのイメージ •電荷注入 100ライン 注入電荷でトラップを 埋める。 電荷転送効率の回復 が期待できる。 縦 転 送 100ライン 横転送 電荷注入有無の比較 •黒:電荷注入なし 391keVプロトン を照射 •赤:電荷注入あり 電荷注入によりCTIが半減する 電荷注入の効果 照射後 照射前 3 5 7 エネルギー(keV) 照射前 照射後 電荷注入 3 5 電荷注入あり 7 エネルギー(keV) CTI 1.7×10-6 5.7×10-4 6.7×10-5 3 5 7 エネルギー(keV) ΔE(@5.9keV) 149keV 1461keV 364keV まとめ • 各種プロトン照射に対するCCDの評価 – 300~400keVのプロトンが転送効率を大きく劣化 させた。 – 電荷転送経路(CCDの表面下2~4μm)での 損 傷が転送効率の劣化に寄与する事が判った。 • 放射線耐性を高めたCCDの評価 – ノッチありCCDにおいてCTIが1×10-4以上では 転送効率の劣化を軽減する効果を確認した。 • 性能回復方法の確立 – 電荷注入法により転送効率を一桁回復させた。 – 5.9keVのX線に対するエネルギー分解能で、 1460eVから360eVまで回復させた。 トラップを埋めた時の電荷転送 注入電荷 信 号 電 荷
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