ディジタル回路 第5回 ダイオードとBJTを使った ディジタル回路 テキスト第3章 情報工学科 天野英晴 ダイオード • もっとも単純な素子 • I=Is{exp(qV/kT)-1} A K Is: 逆方向飽和電圧(非常に小さい値) I q:電子の電荷 k:ボルツマン定数 T:絶対温度 kT/q≒ 26(1/mV) 0.6 0.7 V 順方向と逆方向 A K p + 正孔 n - 電子 エネルギー障壁(0.65Vくらい) 順方向 + 電流 逆方向 エネルギー障壁を 越える + ダイオードのスイッチングモデル I I モデル化 0.6 V 0.7 0.6 ON OFF 電流 電流は流れない A K OFF:AとKは切れている V 0.7 0.6V A K ON:AとK間にはON電圧が生じる BJT(Binary Junction Transistor) いわゆる普通のトランジスタ スイッチングモデル: BE間はダイオードと考えて良い VBE<0.6V BEのダイオードがOFF: トランジスタがOFF CEは切れたのと同じ C L B VBE>0.6V BEのダイオードがON: トランジスタがON CEはくっついたのと同じ C H H 切れたのと 同じ E B E L BJTのON/OFF H L VCC + B n + p n B n R IB p n C C IC E エネルギー障壁が 越えられない OFF:BE間はオープン CE間もオープン ON:BE間のダイオードがON エネルギー障壁が突破され 多くの電子がC領域に突入 IC=hFE×IB:不飽和 IC=VCC/R:飽和→VC=0 ダイオードAND Vcc OFF ON Y= Vcc A=H B=H ON Y A=L Y A=L 0.6V B=H 0.6V B=L OFF OFF ON A B Y L L 0.6V L H 0.6V H L 0.6V H H Vcc 両方ONでも 0.6Vなことに 注意! AND?っぽい ダイオードOR OFF A=L ON Y=0 ON A=H Y A Y B=L B=L B OFF OFF ON A B Y L L 0V L H Vcc-0.6V H L Vcc-0.6V H H Vcc-0.6V 両方ONでも Vcc-0.6Vなことに 注意! OR?っぽい 例題3.2 (p.64) H H H L Vcc=5V I OFF 0.6V ON 2KΩ H Y は? VY=I・R=(5-0.6)/2R×R =2.2V H L OFF 2.2V OFF 2KΩ ダイオードだけではディジタルレベルが維持できない! 演習1 • 下の回路をダイオードANDとダイオードORで 構成した。出力は何Vか? L L Vcc=5V H I Vcc=5V H 2KΩ L H L 2KΩ BJTで増幅する L 完全にONになりきらない 0.6V Diode-Transistor Logic(DTL) NAND L ここが1.8Vにならないと ONにならない→スレッショルドは1.2V DTLの問題点 H→Lを 高速にする には大電流 =過飽和 H H 逆方向 なのでこっちには 行けない L H L→Hが極めて遅い 蓄積した 電荷が流れ 出る まではON TTL(Transistor-Transistor Logic) H H マルチエミッタ トランジスタで電荷を 急速放電 2段接続 (ダーリントン) でパワーアップ トランジスタの 負荷で高速に 電荷を充電 TTLがL→Hが高速な理由 トランジスタがONに なって低抵抗で出力電圧を Hレベルに引き上げる OFF →ON H→L マルチエミッタトランジスタが トランジスタとして動作 ONになって電荷を放出 ON →OFF TTLの入出力特性 Vout 5V CMOS TTL 1.2V 0V 2.5V Vin 5V TTLの特性 • 静特性:p.81の7400の規格表より – Hレベルノイズマージン:VOH-VIH 2.4-2=0.4V – Lレベルノイズマージン:VIL-VOL 0.8-0.4=0.4V • 同じ電源電圧ならばCMOSよりも低い • しかしノイズに弱いとは限らない – Hレベルファンアウト:IOH/IIH:400μA/40μA=10 – Lレベルファンアウト:IIOL/IIL:16mA/1.6mA=10 • Lレベルの出力時には常に電流が流れる • Hレベルは漏れだが、出力もあまり強くない • マイナスは方向なんで気にしない • 動特性:p.86 – 高速版(F,AS)などはCMOSのACよりも高速 TTLの世代 • 第一世代:74シリーズ、H、Lシリーズ – 70年代鮮烈なデビューを飾る – 当時のM-DTLよりも圧倒的に高速 – H(高速版)、L(ローパワー版)が登場 • 第二世代:Sシリーズ、LSシリーズ – ショットキーバリアダイオードの登場 – マルチエミッタトランジスタの欠点解消 • 第三世代:F,AS、ALSシリーズ – CMOSを迎撃するため、ローパワー化を進める – 回路の複雑化(p80の回路を見よ!) TTLの衰退 • うまく作ればスピードはCMOSに負けない • 消費電力、実装密度で不利 • プロセス技術の進展が、トランジスタの性能 向上に直接結びつかない • 80年代後半から本格的な衰退が始まる • 現在は、歴史的、あるいは実験室でのみ使 われるデバイスとなっている – CMOSよりタフ 演習2 81ページの規格表から74AS00 のH,Lレベルノイズ マージン、H,Lレベルファンアウトを計算せよ
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