地域包括ケア情報連携への取り組み

地域包括ケア情報連携への
取り組み
地域包括ケア情報連携プロジェクト
リーダ
畝田 透
20040702
H16年度JAHIS業務報告会
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1.はじめに
地域における医療の効率化、包括的な観点からの医
療・介護サービス適正化のために地域包括ケア情報連
携への期待は大きい。
また情報システム利用面で先進的な病院や診療所では、
実用に耐える電子カルテシステムの導入が本格化する
動向にある。
そこで、患者を診療所から病院へ、病院から診療所へ紹
介する場合に電子カルテシステムを用いて「紹介状(診
療情報提供書)」を作成することにより、患者紹介の有効
化・効率化を支援することが期待されている。
このような課題に対して情報システムをどのように活用
するかを検討するため、平成14年11月に地域包括ケア
情報連携プロジェクトは誕生した。
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地域包括ケア情報連携の概観
標準化済み
電子化情報の動き
(代表的なもののみ)
情報共有
健診センター
企業
紹介
B保健センター
リハビリ
専門病院
急性期病院
認証局
健診データ伝送
HPKI
紹介状
A保健センター
紹介状
応答
健診データ
問い合わせ
診療所
処方
情報等
療養型病院
紹介
調剤薬局
居宅
看護指示
(標準化要)
訪問看護
ステーション
地域保健医療福祉
情報センター
メディカルフィットネス
情報
スポーツセンター
老人保健施設等
ヘルスケア
情報
ホームヘルスケア
サービス事業者
サービス提供情報
(介護データ交換規約)
居宅介護
サービス事業者
介護支援事業者
サービス提供依頼
(介護データ交換規約)
メッセージ仕様標準化済み
2.これまでの活動概要(1/6)
(取組み方針)
①地域包括ケア情報連携の動向把握、普及促進、
課題抽出。
②電子カルテシステムモデル特別PJほかで推進
されているRM-ODPに基づく開発フレーム
ワークを本プロジェクトにも適応。
・地域包括ケアを行うための情報連携の実態予備調査
実施。
・保健・医療・福祉領域それぞれの境界について法制度
などの差が散見。
・患者さんがその境界を通過する際の課題把握。
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2.これまでの活動概要(2/6)
(作業項目)
■①制度フレームワーク
地域包括ケア情報連携の標準化作業を行うに
あたって参考にする制度的枠組みを整理する。
 ②業務フローモデル:(栗原サブリーダ)
地域医療(介護を含む)における各医療施設間
の患者紹介・医療連携を行う際の連携手順や制
約事項を整理し、システム化の参考にする。
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2.これまでの活動概要(3/6)
(作業項目)
③情報モデル:(藤咲サブリーダ)
■
患者紹介状の標準的メッセージおよびその授
受をするシステムの実装情報モデルの基準とす
る。( HL7RIM準拠の方向)
 ④データ交換規約:(萩尾サブリーダ)
患者の診療情報を医療・介護施設間で電子的
に交換するためのメッセージ様式と運用規則を
定める。(メッセージはHL7に準拠)
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2.これまでの活動概要(4/6)
(作業経緯)
 H14年度には「地域包括ケア情報連携の制度フレーム
ワーク」(技術報告書)としてまとめ登録。
 「患者紹介状による病診連携」「院外処方箋」「地域によ
る診療情報共有」に関して業務分析を行うため、シナリオ
を書き、UMLアクティビティ図を用いて業務フローとして
整理。
H14年度に「地域医療・介護連携のエンタプライズモデ
ルV-1」技報として、H15年度には臨床評価や補強など
を行い、「地域包括ケア情報連携の業務フローモデル」
技術文書として登録。
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2.これまでの活動概要(5/6)
(作業経緯)
 患者紹介のための情報項目をHL7V3で用意し
ている情報モデル(RIM,D-MIM,R-MIM)
と対応付け、HL7V3に準拠した情報モデルの開
発を行う方向で作業を開始。(H15年度)
 情報項目を、当初、Merit-9やMML紹介状形
式といった既存の国内規約で表された情報項目
などを参考に整理しようとしたが項目が非常に膨
大となるため、注目する具体的ユースケースを
決めて、その範囲で整理をすることが効率的で
あると判断。(H15年度)
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2.これまでの活動概要(6/6)
(作業経緯)
 地域包括ケア情報連携の制度フレームワーク、
更にインターネットや文献などによる紹介状実例
の情報を集め、ユースケースと使用する情報項
目の整理。
 HL7V3の患者紹介に関する取り決め状況をBa
llot6パッケージを元に調査。
HL7国際会議のEHR関連検討作業の調査を行
い、HL7V3としてどのような患者紹介に関する
検討状況かを把握し今後の標準化の参考にした。
(H15年度)
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3.これまでの成果(報告書類)
(1/3)
1)地域包括ケア情報連携の制度フレームワーク
(技術報告書)
 保健・医療・福祉・介護を包含する地域包括ケア分野の
中で、医療施設間および医療・介護施設間で連携する手
続き、および提供し合う情報を調査研究の対象とした。
 医療制度・介護制度の理解を共有するため、主たる法令
(医療法)(介護保険法)の概要、各種施設の体系、医療
施設の連携を推進するための施策、医療・介護施設間の
連携の状況をまとめた。
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診療情報提供書による施設間連携の全体概念
様式6(明記していないところは全て)
・市町村・保健所・精神保健福祉センター・指定
居宅介護支援事業者
・保険薬局
様式7使用時もある
B
特定機能病院
(全国で約80施設)
・老人性痴呆疾患センター(鑑別診断等のため)
B。病院から退院し入所等の時はC
・精神障害者社会復帰施設等
様式8
地域医療支援病院
介護老人保健施設
入所している患者にはB。病院から退
院し入所等の時はC。他はA
(全国で約60施設)
退所し、かかりつけ医に戻る時はK
様式1
200床未満はD
200床未満はD
病院
B
一般病床
D
療養病床
地域の基幹病院
地域の基幹病院
B
D
介護療養型医療施
設
(慢性期医療やリハビリ医療
を提供)
(急性期医療や高度先進医療な
どを提供)
左図の病院・診療所の
各々の扱い
療養病床
(慢性期・回復期医療)
一般病床
(急性期医療)
介護療養型医療施設
表記した
B
診療所
診療所
・・点線枠外に
退院時はC
診療所
(専門医療を提供)
療養病床
介護療養型医療施設
表記した
退所し、かかりつけ医に
戻る時はK
・・点線枠外に
診療所
(検査主体)
記号の説明 ① 様式n は診療情報提供書の様式名を表す。
②→は診療情報提供書の流れを表す。A,B,C,D,Kは診療情報提供料を表す。
無記号とA:220点。B:290点(200床以上230点加算)。C:500点(200床以上20点加算)。D:520点。
在宅医療
訪問看護指示書
(参考)
訪問看護ステーショ
ン
訪問看護指示書
K:介護報酬で500単位。
3.これまでの成果(報告書類)
(2/3)
2)地域医療・介護連携のエンタプライズモデルV-1
(技術報告書)
3)地域包括ケア情報連携の業務フローモデル
(技術文書)
 連携手順や制約事項を整理、 UMLアクティビティ図で表現。
①医療機関や介護機関への患者紹介における連携
②要介護認定や居宅介護サービスにおける医療と介護の連携
③院外処方における医療機関と院外薬局の連携
④地域医療情報共有における情報の管理・閲覧
 病診連携、医療機関・介護機関相互連携、病院・診療所と院外薬局
との連携など、地域医療・介護連携の一連の総合的モデル化。
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UMLアクティビティ図による医療機関
への紹介プロセス例
《 Pol i cy》
・ 紹介元が医療機関の場合
患者が別の医療機関での診療が必要な状態にある 。
ま たは、 紹介元の医療機関において対象患者の診療が終了し ている
《
・
・
・
・ 紹介元が介護施設の場合
介護サービ ス利用者の容態が急変し 、 介護施設では扱えない場合
介護サービ ス利用者が医療機関で外来受診する 場合
Ar t i f act 》
紹介状
診療情報提供書
診療( 入院) 予約情報
紹介状・・・紹介元から 紹介先へ患者の症状、 紹介理由を 通知する 目的
診療情報提供書・・・紹介元で行っ た診療の情報を 紹介先へ提供する 目的
紹介元
紹介先
紹介先一覧から 医療機関の
設備、 診療科、 専門分野等が確認可能
[ 紹介元が介護施設]
[ 紹介元が医療機関]
入院する 場合は病棟に連絡し 、
患者と 相談し 、 紹介先の医療機関を 決定する
受け入れ可能か判断する
紹介先へ連絡し 、 受け入れ可能な状況か確認する
紹介元が介護施設の場合
協力病院、 ま たはかかり つけ医への紹介
受け入れ可能か判断し 、 回答する
[ 受け入れ可能]
[ 受け入れ不可能]
紹介先へ診療予約・ 入院予約を 依頼する
《 Pol i cy》
介護施設は介護サービ ス利用者が
急変し た際に対応し ても ら う ための
協力病院を 準備する Obl i gat i onがある
診療予約・ 入院予約を 行う
予約内容を 紹介元へ連絡する
診療( 入院) 予約票
予約内容を 患者・ 介護サービ ス利用者へ伝える
紹介状を 作成する
[ シ ステ ムから 診療情報を 取り 込めない場合]
[ シ ステ ムから 診療情報を 取り 込める 場合]
シ ステ ムから 診療情報を 取り 込む
シ ステ ムから 診療情報を
取り 込むこ と で効率的に
診療情報提供書を 作成可能
診療情報提供書を 作成する
[ 紹介状を 電子的に送付し ない場合]
メ ッ セージ と し て
電子的に送付
[ 紹介状を 電子的に送付する 場合]
紹介状・ 診療情報提供書を 紹介先へ送付する
《 Pol i cy》
紹介状・ 診療情報提供書を
電子的に取り 扱う 際は
電子保存3 原則と 個人情報保護
に対し て配慮する Obl i gat i onがある
事前にカ ルテ を 準備し ない場合
紹介患者が来院し た際に準備する
[ 事前にカ ルテ を 作成し ない場合]
紹介状・ 診療情報提供書
紹介患者である こ と を
カ ルテ に明記する
[ 事前にカ ルテ を 作成する 場合]
新患なら 患者登録を 行い、 カ ルテ を 準備する
紹介内容を 事前通知する
[ 紹介内容を シ ステ ムに取り 込ま ない場合]
Web・ メ ール、 FAX
など によ る 事前通知
紹介状は紙、 ま たは電子メ ディ ア で
患者に渡し 、 紹介先へ搬送さ せる
患者・ 介護サービ ス利用者に紹介状・ 診療情報提供書を 渡す
[ 紹介内容を シ ステ ムに取り 込む場合]
紹介内容を シ ステ ムに取り 込む
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紹介先へ持参する 書類があれば患者・ 介護サービ ス利用者に渡す
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3.これまでの成果(報告書類)
(3/3)
4)紹介状のユースケースと具体的情報項目の
調査報告書(中間作業報告書)
・連携手順、ユースケース、規定様式、記載例、情報項目整理。
5)紹介状情報のHL7的情報モデル・データモデル
検討報告書(中間作業報告書)
・日本の紹介状の情報項目をHL7V3の患者ケア提供モデルとのマッ
ピングを試行。
・付属書1:HL7V3 patient care Domain DMIM詳細
・付属書2:HL7 CDA 診療要約サンプル
・付属書3:HL7最新技術動向
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◇患者の情報◇
■紹介元医療機関の患者ID
■患者氏名
□患者カナ氏名
■患者電話番号
□患者電話番号2つ目
■患者FAX番号
■患者電子メールアドレス
■患者緊急連絡先
■患者生年月日
◇紹介先の情報◇
■医療機関名称
■医療機関住所
■医療機関郵便番号
■診療科名称
■医師氏名
■電話番号
■FAX番号
■患者年齢
■電子メールアドレス
■患者性別
■依頼内容
情報項目の
HL7モデル
(DMIM)へ
のマッピン
グ結果
■検査実施のための確認項目
□追加検査の扱い
□検査結果の報告のしかた
■患者住所
■患者郵便番号
◇検査依頼◇
◇ヘッダー◇
■紹介先の情報
■紹介元の情報
■患者の情報
■患者関係者情報
◇紹介元の情報◇
■紹介元連携窓口
■医療機関住所
■紹介先連携窓口
■医療機関郵便番号
□紹介先医療機関の受診情報
■診療科名称
□予約希望
■医師氏名
□返信方法
■電話番号
■受診または検査予定日
■FAX番号
■電子メールアドレス
■署名情報
□患者職業
◇紹介手続きに必要な情報◇
■医療機関名称
□患者保険情報
□医療保険
□介護保険
◇検査依頼◇
■依頼内容
■検査実施のための確認項目
□追加検査の扱い
□検査結果の報告のしかた
◇傷病名、疾患名、病名、診断名、症状◇
■現疾患.診断.名称
■現疾患.診断.コート
■現疾患.診断.コード体系コード
■現疾患.診断日
■現疾患.罹患.開始日時
■現疾患.罹患.終了日時
■現疾患.診療.開始日時
■現疾患.診療.終了日時
■現疾患.合併症区分
◇診療要約◇
□挨拶文
■傷病名、疾患名、病名、診断名、症状
■主訴
■紹介目的の具体的記述 <新設>
■既往歴、既往症、病歴
□家族歴
■現病歴
■症状経過
■検査結果
■治療経過
■身体所見
■検査所見
■現在の処方
■紹介先での紹介目的終了後の診療方針
□介助の必要度
■アレルギー
■感染症
■手術の既往
□上記の他に確認する重要事項
□留意事項
□備考
□添付資料
4.これからの取り組みについて
(1/2)
1)適応範囲の広い標準を目指して
 当初「地域包括ケア情報連携の業務フローモデル」 「患
者紹介状データ交換規約」「患者紹介状情報モデル」を
独立した技術文書として計画。
 本来、融合してひとつの「患者紹介状交換」のための総
合的な技術文書であった方が実用上利用しやすい。
 「患者紹介状情報交換仕様」を策定することとした。(正
式には名称を「診療情報提供書交換仕様(暫定版)」とし
て現在作業中。)
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4.これからの取り組みについて
(2/2)
2)標準化作業対象の拡大を目指して
 地域包括ケアの視点では、「患者紹介状」の他、業務フ
ローモデルで検討したように「院外処方箋」、「地域での
診療データ共有」が検討しやすく、かつ有用である。
 厚生労働省「医療情報ネットワーク基盤検討会」の中で
も、診断書や各種届け出のための書類の電子化が検討
されているが、それらの動向にあわせて本プロジェクトも
即効性のあるテーマを決めて活動を継続してゆきたい。
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