ガイダンス

中立命題(等価定理)
財政学(財政学B)
第10回
畑農鋭矢
1
常識的見解
• 財政赤字の負担に関する常識的見解
財政赤字による財源調達
⇒将来の借金返済義務
⇒後世代への負担の先送り
• 財政赤字により役に立つ社会資本を整備
⇒財政赤字の負担を社会資本の便益で相殺
⇒後世代の役に立つ支出を行うためなら
負担にならない
常識的見解への反論(正統派の議論)
• 財政赤字は負担か?
• 財政赤字が負担ではない根拠
①国債は国民にとって借金であると同時に資産
②民間の可処分資金に変化なし
税 :可処分資金=所得-貯蓄-税
=所得-投資-税
赤字:可処分資金=所得-貯蓄
(この場合貯蓄の一部は財政赤字にまわる)
=所得-(投資+赤字)
=所得-投資-赤字
財政赤字の影響を考える準備
• 政府支出は所与(変更しない)
政府支出の影響を除くため
• 海外との取引はなし(貯蓄=投資)
• 比較の対象は税による財源調達
一定の政府支出を賄うための財源
⇒税か? 財政赤字(公債発行)か?
• 単純な税制を考える
必要な金額を一括に課税(一括固定税)
累進課税などは考慮しない
公債を発行しない場合当初の所得は110
時点
家計A
家計B
政府
1
2
3
所得
110
0
-
税
10
0
-
可処分所得
100
0
-
消費
50
50
-
貯蓄
50
-50
-
所得
-
110
0
税
-
10
0
可処分所得
-
100
0
消費
-
50
50
貯蓄
-
50
-50
支出
10
10
10
税収
10
10
10
公債
0
0
0
中立命題の考え方
時点
家計A
家計B
政府
1
2
3
所得
110
0
-
税
0
10
-
可処分所得
110
-10
-
消費
50
50
-
貯蓄
60
-60
-
所得
-
110
0
税
-
10
0
可処分所得
-
100
0
消費
-
50
50
貯蓄
-
50
-50
支出
10
10
10
税収
0
20
10
公債
10
-10
0
世代間移転
時点
家計A
家計B
政府
1
2
3
所得
110
0
-
税
0
0
-
可処分所得
110
0
-
消費
55
55
-
貯蓄
55
-55
-
所得
-
110
0
税
-
20
0
可処分所得
-
90
0
消費
-
45
45
貯蓄
-
45
-45
支出
10
10
10
税収
0
20
10
公債
10
-10
0
リカード=バローの中立命題
家計A
家計B
政府
時点1
時点2
時点3
所得
110
0
-
税
0
0
-
可処分所得
110
0
-
消費
50
50
-
貯蓄
60
-50
-
遺産
0
-
相続
-
10
10
所得
-
110
0
税
-
20
0
可処分所得
-
100
0
消費
-
50
50
貯蓄
-
50
-50
支出
10
10
10
税収
0
20
10
公債
10
-10
0
0
中立命題と遺産動機
• 利他的遺産動機
中立命題成立の必要条件
• 戦略的遺産動機
介護などとの交換動機
• 偶発的(意図せざる)遺産
不確実性に備えた貯蓄が死亡によって
残存してしまうケース
中立命題成立の諸条件
• 流動性制約
• 歪みのある課税
課税平準化仮説
• 不確実性