第??回 星・惑星系の誕生の現場

第7回
星間物質その1
東京大学教養学部前期課程
2015年冬学期 宇宙科学II
松原英雄(JAXA宇宙研)
1
太陽系の元素組成
• 太陽光球のスペクトル、太陽風、(始源的な)隕石の化学
分析より
Data from: Katharina Lodders (2003). "SOLAR SYSTEM ABUNDANCES AND CONDENSATION
TEMPERATURES OF THE ELEMENTS". The Astrophysical Journal 591: 1220–1247.
2
中性水素(HI)ガス
• 銀河系円盤の主要部分を占めるHIガス雲の分
布は、水素原子自身の放つ波長21cmの電波輝
線の観測によって調べられました。
• HI 21cm線の起源:
– 陽子と電子のスピンの向きが並行か、
反並行か、でほんのわずかに束縛エネ
ルギーに差が出ます(反並行の方がエ
ネルギーが低い)
– HIガスの柱密度[ 1cm2あたりの水素原子の数] がHI 21cm
線の観測で得られる輝度温度TBから求められます:
v2
32n 02 k v2
18
[cm-2] (7.15)
N ( HI ) 
T
d
v

1
.
823

10
T
d
v
B
v1 B
3c3hAul v1
– TB=TStn , TS (スピン温度)はほぼガスの温度と一致、場所に依らず一
定とした。
–
l
tn   n ds
0
3
:光学的厚み
我々の銀河系のHIガスの分布
• 銀河円盤の回転
則を使って各速度
成分の太陽から
の距離を割り出し、
2次元的な分布図
を作ることができ
ます。
4
分子雲
• 低温高密度の星間ガスは分
子状態。
• 水素分子は電気双極子モー
メントをもたないので、電磁波
を出しにくい。
• 一方一酸化炭素分子は、大
きな電気双極子モーメントを
持つ直線状分子。
• 回転エネルギー準位:
EJ  hBJ( J  1)
• 従ってJ+1  Jへの遷移に
伴って
n J 1 J  ( EJ 1  EJ ) / h
 B( J  1)(J  2)  BJ ( J  1)  2 B( J  1)
5
小暮智一「星間物理学」(ごとう書房)
6
HII領域
• 若い大質量星(や白
色矮星)の紫外線に
よって、水素原子が
電離したような領域。
• ガスの加熱は、電離
した光電子の余剰運
動エネルギー。一方、
冷却は、金属イオン
からの禁制線(光学
的に薄いのでガスを
効率的に冷やすこと
ができます)。
7
禁制線の例
8
Spinoglio and Malkan 1992
9
代表的な赤外禁制線
ライン
波長 (μm)
何のプローブか?
HI Brα
4.05
金属度測定 (H) / ダスト減光
HI Pfα
7.46
金属度測定 (H) / ダスト減光
ArII
7.0
励起度
ArIII
9.0, 21.8
励起度
NeII
12.8
星形成率 / 励起度 / 金属度
NeIII
15.6, 36.0
SFR / excitation / metallicity
NeV
14.3, 24.3
AGN (活動的銀河核)の指標
SIV
10.5
励起度
SIII
18.7, 34
励起度
SiII
34.8
光解離領域の指標
OIV
25.9
AGN の指標
OIII
51.8, 88.3
ガス密度 / 金属度
OI
63.1, 145
光解離領域の指標
NII
122, 205
金属度
NIII
57.3
金属度
CI
370
分子雲ガス
CII
157.7
光解離領域の指標。遠赤外波長域で最強。
10
HII領域における加熱・冷却率
小暮智一「星間物理
学」(ごとう書房)
11
OrionNebula
12
オリオン分子雲
左: 近赤外線(2MASS),生まれた星の分布、HII領域
右: 野辺山45m電波望遠鏡によって取得された一酸化炭素分子のイメージ。
(国立天文台)
13
光解離領域
Photodissociation Region
14
電離源
Orion Bar
赤:CO J=1-0
黄:H2 1-0 S(1)
青: 3.3um PAH
15
第7回の問題
• 問7-1. HI 21cm電波輝線の輝度温度から、HIの柱
密度を求める式(7.15)の定数に数値を入れて、右辺
v
18
1.82310 ( TB dv / K  km s1 ) になることを示せ。
v
• 問7-2. HI 21cm電波輝線の速度分布に関する平均
的な光学的厚みを t0 とした時、(7.15)は
2
1
N ( HI )  1.82310
18

v2
v1
TStn dv  1.8231018 TSt 0 Dv
のように書ける(Dv: 速度幅、kms-1)。今TS=100K、
Dv =100kms-1とした場合、光学的厚みが1となるHI
柱密度 N(HI)を求めよ。その柱密度を超えるような
HIガス雲からの21cm電波輝線の強さ(輝度温度)
はどうなると考えられるか?
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