1968年十勝沖地震 00T3058B 清水 崇史 【地震の概況】 震度分布図 [東北各地の震度] 震度5 青森、八戸、むつ、盛岡 震度4 秋田、酒田、宮古、大船渡、水沢観測所、石巻、福島 震度3 深浦、新庄、山形、仙台 震度2 若松 震央 三陸沖 北緯 40.7度 東経 143.6度 深さ マグニチュード 0km 7.9 【地震の概況】 1968年(昭和43年)5月16日09時48分、 三陸沖でM7.9の地震(深さ0km)が発 生し、東北各地の震度は下図のとおり となったほか、北海道から中部地方に かけて有感となった。 被害概況 • 建築物の被害は、青森県東部を中心として北海道南部・岩手県に分布 している。同県別及び市町村別被害の概要については青森県東部の被 害が大きく、八戸市153戸、三沢市213戸、十和田市205戸、むつ市99戸、 五戸町87戸の全壊家屋を出している。北海道では全壊家屋は、室蘭市 44戸、函館市31戸が主なものでそのほか家屋被害は南東部の苫小牧か ら襟裳岬に至る太平洋岸で出ている。 • これら住家被害のほかに鉄筋コンクリート造建築物の被害が、八戸市 をはじめ、三沢市、十和田市、むつ市、函館市などに出ており、今回 の地震による建築物被害の大きな特色となっている。鉄骨造の被害と しては学校の体育館などで筋交いの座屈、切断したものがかなりある が軸部に大被害の生じたものはほとんどない。そのほかコンクリート ブロック造・レンガ造・石造などの被害があったが、その多くは施工 不良のものや古い建物であった。また煙突(主として屋上に突出した もの)、ブロック塀の倒壊、窓ガラスや仕上げモルタル類の破損・落 下がところどころに見られた。 鉄筋コンクリート構造の被害 概要 • 今回の地震では、RC建物の3~4階以下の比較的低層の建物に かなりの被害を生じた。被害の有無が調査された建物数は、青 森県下で200棟、このうち中破が24棟、大破以上が13棟、また北 海道南地区では調査72棟、このうち中破が6棟、大破以上が2棟 である。八戸市中心部ではRC建物はほぼもれなく調査されたが 調査建物68棟のうち中破5棟、大破以上4棟となっており、こ れらより地盤沈下の激しかった地区では中破以上の被害率は 10%をやや越す程度となる。この1968年十勝沖地震で課題とし て浮かび上がってきたのは、他の地域でのより大きな地震の際、 大破や倒壊はあってはならないだろうし、一方、中破程度はそ の程度によっては経済設計の立場からはあってもよいとも考え られるが、その被害程度と被害率をどの程度に考えなければな らないかという点である。 a. 不同沈下による被害 • 今回の被害にこの種のものは少ない。 多くの建物は良質の地盤の上に建てら れており、被害の多くは振動によるも のである。 a. 上部構造の振動的被害 • 上部構造の振動による被害は様々な形で現れ た。八戸市など特に大きな被害をこうむった 地域では地動最大加速度200ガル程度にもな り、0.2ないし1秒にわたる周期の波が連続し て卓越した。また、初期の卓越振動の後に周 期0.2ないし0.4秒の短周期の波のかなり大き いものが長時間繰り返した。この地振動によ る応答によれば短周期の建物は地動の3から4 倍の加速度を受けることになる。これらの結 果から短周期の建物である低層のRC構造がか なりの力を受け、またかなりの変形を強いら れたと考えられる。 RC建物を大まかに3種類に分 類する。 • ⅰ. 非 常 に 剛 性 の 高 • ⅱ. 壁 の あ る ラ ー メ い建物 ン構造 • ⅲ.純ラーメン構造 RC建物の被害を材料、施工面 から見る コンクリートの強度不足 • 大部分の建物のコンクリート強度は設 計基準強度を確保していたようである が、一部の建物ではコンクリート強度 の平均値が設計基準強度をかなり下 回っていたものがあり、しかもその建 物では大破壊を示した場合が多い。 コンクリート打ち継ぎ部分の 強度不足 • 柱脚部あるいは壁下端のコンクリート 打ち継ぎ部分の施工が不備でコンク リートを弱くし、この部分に圧潰を生 じた例も多く見られた。 鉄筋の加工、組み立て、配 筋の不良 • 一部の大被害を受けた建物では、はり 主筋の定着長さの不足、丸鋼でのフッ クの欠如、配筋位置の著しい不正確さ が目立った。また、柱のフープの端部 折り曲げが不十分であることは、被害 建物のほとんど全部について指摘でき ることである。 • 参考文献 • 1968年十勝沖地震災害調査報告 日本建築学会
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