A-35 針状磁気プローブによるプリント 基板配線の電流信号の非接触計測 環日本海域環境研究センター 磁気応用工学研究室 B4 新元 渉 1.1研究背景 電子機器の高性能化・小型化に伴い,高密度のプリント基板や 電子部品が用いられている 部品からの電流信号を検出する方法として 抵抗を用いる電流検出方法 測定箇所に抵抗を直列に挿 入し,両端の電圧を測る 安価で使いやすいが,配線回路 を切断するため,信号に影響を及 ぼす可能性がある 磁界を介して電流検出する方法 ホール素子型電流センサ フラックスゲートセンサ 信号に影響を及ぼすことなく, 非接触で電流検出ができる 1.2研究目的 プリント基板のように高密度な配線一本当たりの配線に流れ る微小電流(1mA以下)を検出するには不向きである 磁界発生源に近接可能で高感度な磁気センサが必要 磁界発生源に接近するほど, 磁界の検出が有利 超小型・高感度な針状磁気プローブを用いる 本研究では プリント基板配線から発生する磁界を介して,非接触・非破壊 的に電流信号を測定することを目的とする 2.2針状磁気プローブ 針状磁気プローブの先端に大きさ(75µm×40µm) のSV-GMRセンサ(スピンバルブ形巨大磁気抵抗) 付き 抵抗値の変化を電圧に変換し、電流信号を検出 GMR2,3,4 SV-GMRセンサ 超小型の針状プローブのため、測定対象物と数十 µmという近距離で測定可能 センシング方向 センサ感度は12.5µV/µT y x GMR1 測定範囲 (75×40µm) z I 指向性 配線 B 高感度 非接触 針状磁気プローブの概略図 2.3スピンバルブ形巨大磁気抵抗(SV-GMR) 磁場をかけると電気抵抗率が増加する現象が磁気抵抗効果 一般の物質は数%、しかし巨大磁気抵抗効果は数10%に増加 強磁性体層の磁化の方向がそろっている場合、電子は散乱 スピンバルブ磁気抵抗素子の構造は,非磁性体層を磁化 されること無く移動することができ、電気抵抗は小さくなる 固定層とフリー層で挟んだ構造 強磁性体層の磁化の向きを交互に変える場合、電子は散乱 フリー層の磁化方向を変化させ,抵抗変化が生じる されやすく、電気抵抗は大きくなる スピンバルブ磁気抵抗素子の概略図 2.4.1理論値の計算 磁束密度Bzの理論値の計算にビオ・サバールの法則を使用 dB:被測定点の磁束密度 i dl r dB 4 r 3 B1 y B1Z z r:測定距離 i ・ dl :電流素 B2 B2Y B1Y SV-GMRセンサ B2 Z リフトオフ高さ x 3 4 1 2 I1 I2 無限長角形コイルの磁界の理論値計算 y 0 I1 B1Z (1 2 ) 4a 0 I 2 B2 Z ( 3 4 ) 4a リフトオフを小さくすることが重要 リフトオフは,センサから測定対象 物までの距離 2.4.2磁束密度Bzの理論値 Density of magnetic flux Bz (µT) 0.14 配線1 配線2 0.12 リフトオフ高さ:y=40,80µm 入力電流:100µA 0.10 0.08 B1z B2z 0.06 z軸方向に移動させた場 合の磁束密度Bzの変化 0.04 0.02 0.00 -200 0 200 400 600 Distance z (µm) 800 1000 1200 クロストークとは他の配線 からの信号による影響 z方向の磁束密度Bzの変化 プローブの位置は配線の直上(z=100µm)の場合,クロストークが小さくなり, 配線の信号をより顕著に検出することが可能 配線の直上(z=100µm)で,リフトオフ高さy=80µmのクロストークは約5.9% リフトオフ高さy=40µmのクロストークは約2.4% 他の配線からの影響を少なくすることが可能 3.1計測システム 内部に100倍のプリアンプ内蔵 正弦波入力信号 を印加 Function Generator プリント基板配線 から磁界が発生 PCB 基準信号と同位相の信号出力 SV-GMR probe DC power supply 計測システムのブロック図 Oscilloscope or lock-in amplifier 3.2針状磁気プローブを用いた非接触計測 プローブを配線1の直上(z=100µm)に設置 センサとプリント基板のリフトオフ高さyは20µm,40µmに設定 配線1 配線2 ステップ① 入力(I1in=0~2mA) 入力なし 磁気プローブの位置を固定し,測定対象 とのy方向の距離を一定に保ち,配線に 発生した磁界から電流値を測定 ステップ② 入力(I1in=0~2mA) 入力(I2in=1mA)(一定) プリント基板における2本の 平行角形配線を使用 配線幅:200μm 配線間隔:200μm 4.1出力信号の変化 0.8 配線1+配線2 (y=20μm) Output voltage (mV) 0.7 0.6 配線1 (y=20μm) 0.5 0.4 0.3 0.2 配線1+配線2 (y=40μm) 配線1 (y=40μm) 0.1 0 0 0.5 1 1.5 2 Current of wire1 (mA) 配線1の直上での出力信号の変化(y=20,40µm,f=1kHz) 配線1の入力電流に比例⇒磁界を介して電流値を検出可能 配線2に入力を印加した時、入力なしと比較するとグラフが上にシフトし 配線2からの信号も検出 リフトオフ高さ20µmと40µmの場合、出力に1.5~1.7倍程の差 4.2クロストークの変化 60 Crosstalk (%) 50 40 y=40μm 30 20 10 y=20μm 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 Current of wire1 (mA) 配線1の直上でのクロストークの変化(y=20,40µm,f=1kHz) リフトオフ高さyを20µmの時,入力電流I1in=1mA以上でクロストークは最大 約6~9%以内となった 理論値とは異なるが,周波数を上げると表皮効果により,電流分布が変 化し,計測点の磁界分布が変わり,出力が増加したためと考えられる 5.まとめ・今後の課題 針状磁気プローブを用いて,磁界を介して電流値を計測で きた リフトオフ高さyを40µmから20µmに変化させると,出力が 1.5~1.7倍程変わる リフトオフ高さyを20µmにした場合,入力電流I1in=1mA以上 でクロストークは約6~9%以内となった 将来の実用化に向けて,リフトオフ高さやセンシングを自動 で設定・動作するシステムを導入する必要がある
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