スクリーニング神経診察は可能か? 我々は何処にいて,何を求めているのか? 診察の意義 • コミュニケーションの手段 – 患者さんの体に触る:physical contact • 儀式の一環 • 診断をする なぜ診察スクリーニングが欲しいか? • • • • 診断するためには診察しなければ 何を診察したらいいかわからない 感度の高い診察所見があればやりたい 身体診察だってミニマムがあるのだから, 神経診察だってあるだろう • 神経診察ができるとかっこいい スクリーニング神経診察と聞いて 神経内科医の気持ち • • • • 自分達でもどうやっているかわからないのに 行き当たりばったりでやっているのに 何年もかかって築き上げてきた職人芸なんだ 病歴あっての診察だから スクリーニング診察への疑問 • • • • スクリーニングの主役は病歴では? 診察は常に病歴の後では? 病歴によるカスタマイズが必須では? 病歴より感度の高い神経症候って? 神経診察がスクリーニングに向かないわけ • 神経学的所見はやることがたくさんありすぎる→ スクリーニングには向かない • 訴えのある局所と病変部位の一致,不一致 – 腹痛と頭痛の診察の違い – 足先のしびれの原因が首にあることも • 同じ訴えでも,病歴で診察のポイントが違ってくる – 嚥下障害:急性と慢性,複視のあるなし 決め打ちの正に病歴の裏づけがないと 診察がどうなるか・・・・ 嚥下障害を訴えた26歳男性の例 ある日の夕方医局で:内科部長と •来週の外来に一人,紹介しといたからね.26歳のにいちゃん •(嫌だな) •紹介元:部長からの紹介じゃ難しいケースだろうな •20代の男性は最も神経内科外来に来ない客層 •経験に乏しい •きっと器質的な病気がある •よくある病気の希な症状か,希な病気のどちらか •いずれにしても診断は苦戦しそうだ 主訴を聞いても絞り込めない •どんな訴えですか? •飲み込みにくいっていうんだよな •(くそっ,やっぱり難物だな,これが振戦なんかだったら楽勝なんだが) •脳幹部を障害する病気の可能性 •鑑別診断が多い訴えで.診断を絞り込めない •腫瘍 •脱髄 •感染 •変性 •中毒・代謝・栄養障害 •血管障害 •筋疾患 病歴で絞込みを試みる •いつ頃から飲み込みにくいんでしょうか? •半年ぐらい前からって言ってたな •慢性緩徐進行性の経過ですね. •そうだね. •(脱髄,感染,血管障害の可能性は低いかな) •他に症状は?構語障害とか,複視とか,耳鳴りとか・・・ •全部聞いたわけじゃないが,本人は飲み込みにくいだけだと (えーっ,それだけかよー.それが本当だとすると腫瘍の可能性 は低いなあ.でもまだ絞り込めないなあ.変性,中毒・代謝・栄 養障害,筋疾患・・・結構残ってるなあ・・・) 筋疾患の除外を試みる •筋疾患 •(この年齢ならば筋ジストロフィーの類か,重症筋無力症に絞り込む) •ちょっと見て,筋萎縮とか筋力低下とかはありそうですか •それが細身だけど,背が高くて,色が黒くて,普通にすたすた歩いて,診 察室に入ってきたし,着替えも素早く出来るし,飲み込み以外は日常生活 は何の不自由もないって言うんだな. •(筋ジスじゃねえな).前頭部は禿げていませんでした? (陰性の確認) •髪は普通に生えていたと思うが •症状の日内変動は? •聞かなかった •複視は訴えていなかったんですよね?(陰性の確認) •うん. 部長の問診での鑑別診断 1. 中毒・栄養・代謝障害 2. 変性疾患 3. 筋緊張性ジストロフィー 4. 重症筋無力症 全然絞込みになっていない・・・・ (もしもこれが60歳男性だったら・・・・) 私の問診での鑑別診断 1. 中毒・栄養・代謝障害 2. 変性疾患 3. 筋緊張性ジストロフィー 4. 重症筋無力症 診断名が出てこない・・・・ どこに焦点を絞って診察したらいいのか・・・ General Practiceの中の神経診察の位置付け • 初級:神経疾患以外の病歴,診察が先 – 穴,外堀を埋める(例:意識障害の診断) • 中級:プライマリケアで押さえるべき疾患・病態 – 病歴で押さえられるように – 診察は病歴によって組み立てる • 上級:その他の神経疾患の – 病歴 – 診察は病歴によって組み立てる
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