内部監査員教育 ~「超」内部監査~ ◎有効な内部監査の考え方 ◎自己評価の必要性 1 内部監査の基本的認識① 1.監査とは「監督し検査すること」 1)監督とは「監視し、必要とするときには指揮・命令などを加えること 」 2)検査とは、「ある基準に照らして適・不適、異常や不正の有無など を調べること」 2.監査とは「聴くこと」 1)監査の英語は、「audit」であり、「audience」の語源と同じである 。 2)「audience」とは、「聴く」、あるいは「意見や訴えなどの聴聞の機 会、話を聴いてもらう会」である。 3.監査は「毎日無意識に行っている」 監査はマネジメントシステムを効果的に運用し、よくしていくため の「社内検討会」の場と考えるのが適切である。 2 内部監査の基本的認識② 3.「過程」より「結果」重視 1)過程を追求するだけの監査は意味が無い。 2)「結果」 ⇒ 「過程」の改善。 3)「その決め方がよいか」という着眼点でマネジメントシステム改 善のきっかけ(問題発見)と改善を促進する。 4.「検事と被告」の雰囲気を作らない。 特に上位職が監査する場合はうまく対応しないと査定につながる ような心境にもなり、このような複雑な心境から照れ隠しでも「本日 は被告ですからよろしく」という切り出しをすることがよくある。 また、監査をする側も先輩・上位職であることを態度に出して監査 するとしたら絶対にうまくいかない。 3 内部監査の基本的認識③ 5.「日常」より「非日常」を監査する 1)日常業務で気が付く問題は、業務の中で指摘(注意・指導)し、 正していく。(「指摘」→「原因究明」→「記録」→「報告」を求める ことが有効かどうか。) 2)日常業務では気が付きにくい問題について、監査を利用する。 日常 の問題 ●環境目標を決めていない ●点検記録にハンコを押していない ●ゴミの分別を守っていない 日々の仕事の 中で 顕在化する 監査を使うのは もったいない! 非日常 の問題 ●類似の問題が繰り返し発生している ●実施している教育に中身が無い ●「もっと、こうすべき」 日々の仕事の 中では 潜在化する 監査が頼り! 4 内部監査の優位性① ~監査種別ごとの比較~ 項目 第三者監査 第二者監査 内部監査 ①監査対象に対する知識 × △ ○ ②監査のための情報収集力 × △ ○ ③監査の柔軟性 × △ ○ ④監査のタイミング × △ ○ ⑤パフォーマンスの評価 △ ○ △ ⑥監査の客観性 ○ △ × ⑦監査の強制力 ○ ○ × 5 内部監査の優位性② 1.上手な監査を実施するための重要項目 1)監査対象についてよく知っている。 2)形式的にならない。 3)パフォーマンスの向上に結びつける。 2.第三者監査(審査)との差別化 第三者監査(審査)は、客観的証拠に基づき、「問題点を指摘し、 実行を確認する」役割であるが、内部監査ではそれだけにとどまら ず、「改善意見を述べる」ところまで実施すべきである。 ほとんどの組織の場合、 「監査員」 = 「運用責任者、当事者」 だから、当事者同士の話が可能になる。 6 内部監査の優位性③ 3.「IS09004」「ISO14004」の活用 第三者監査(審査)では、「ISO9004」「ISO14004」の規格は使 用しないが、この規格は、マネジメントシステムの事例集に近く、要 求事項ではないが、監査の参考になる。 7 内部監査の優位性③ 監査の種別 JISQ19011 内部監査の要点 ~JISQ19011を踏まえた上で~ ◎社内協議(相談)の場 第一者監査 (内部監査) ◎客観性、公平性が重要 ◎そのために、監査組織の独立 性が必要 第二者監査 (外部利害関係者による 監査) 第三者監査 (審査) ◎監査基準と実際を照らして適 合/不適合の判断をする(○× をつけるだけ) ◎監査員は「運用時の責任者」としての 意識も持って ◎問題発見⇒是正要求⇒是正の方向 性(アドバイス) ◎被監査部門からの意見、提案、悩み 等を聞くことが大事 ◎自己評価の機会 ◎審査においては、指導(コン サルティング)を行うことは厳禁 {JISQ9004} ~組織は自己評価のしくみを確立し、実施す ると良い。内部監査プロセスは、客観的証拠 を得るための独立した監査であるのに対し、 自己評価はパフォーマンス向上の手助けに もなる。~ 8 マネジメントシステムの要素の関連性① マネジメントシステムの各要素は強い関連性があることが多い。 状況によっては、その関連先に本質的な問題が潜んでいることがある。 内部監査では、できる限り「関連先に潜んでいる(かもしれない)問題」 を顕在化させることが重要 本来、内部監査後の是正処置で行うことを内部監査の場面で行う。 9 マネジメントシステムの要素の関連性② ルールを決めるため の情報 ルールの決定 ルールの指示 ルールの実行だけに 問題が潜んでいるわけではない!! ルールの理解 結果の確認 ルールの実行 道具の管理 10 マネジメントシステムの要素の関連性③ できる限りの掘下げ 決 め を ら と れ った て 設 い 備 な 点 い 検 。記 録 記録様式が使いにくいから。 設備を知らない人が承認したから。 点検項目、頻度が非現実的だから。 設備を知らない人が承認したから。 指示が曖昧だったから。 文書(様式)制定時の伝達ルールが無 いから。 点検結果を活用していないから。 異常の基準が厳しすぎるから。 11 マネジメントシステムの要素の関連性④ できる限りの掘下げ 繰再 り発 返不 さ適 れ合 ての い発 る生 。が 真の原因究明がされていないから。 原因究明する人の力量が無いから。 原因究明時の手順が決まっていない から。 処置効果の確認方法が甘いから。 処置効果の確認方法を予め決めてお かないから。 当該作業従事者に是正処置を遂行す る力量が無いから。 教育訓練の仕方が甘いから。 12 監査の要領①(監査資源の配分) 監査の 視点 質問のイメージ 計画 (P) これ作っていますか。 これ理解していますか。 実施 (D) これやっていますか。 これを見せてください。 確認 (C) 結果どうですか。 効果が出てますか。 改善 (A) どう対応しましたか。 ルールを変えましたか。 資源 配分 0 「目標」を例にした事例 年度目標を設定しているか。 20 目標達成のための改善活動を 行っているか。 40 月次、年次の達成状況を把握 し、分析しているか。 40 次年度への反映、途中の変更 などの対応をとっているか。 13 監査の要領②(能動的なプログラム) 監査プログラムの項目 プログラムを決定する要素 日程 ・日時 ・場所 ・業務上の都合 ・都合のよい場所 チーム編成 ・監査員選出 ・被監査部門の対応者 ・適切な監査員の力量 ・MSの責任権限者 被監査部門の責任範囲 ・MS上の責任範囲 ・監査対象期間 ・MSの責任権限の規定 ・前回の監査以降の期間 監査対象 ・監査を行う責任範囲 ・監査を行う深さ ・責任権限の重要度合い ・前回の監査の結果 ・日常の運用状況 ・MSの変化点 14 監査の要領③(プログラムの切り口) 1.監査形式の大別 1)機能部門を切り口とした監査プログラム 2)製品を切り口とした監査プログラム 2.機能部門を切り口とした監査プログラム 一般にほとんどがこの切り口で行われている。マネジメントシステ ムの責任権限単位で監査を行う。運用初期段階はこの切り口で行 う方が有効である。(いわゆる部門ごとに監査を行っていく方法) 3.製品を切り口とした監査プログラム 一つの「製品」「サービス」をサンプリングし、それに対し「契約~受 注~設計~購買~製造~出荷」のようにプロセスの流れに追従し、 監査を行う。(関連する部門が暫時対応していく方法) 15 監査の要領④(まとめ) 1.機械的( 事務的) 確認にな らな いこと。 × 「これやっていますか。」「この記録はありますか。」 ⇒ 「はい。OKです。」 ○ 「この点検記録でNGとありますが、NG時には誰がどんな対応をとりま したか。」 「このNG事象に関連する問題は発生していませんか。」 2.限られた時間内で 「 深さ」 を優先する。 × 毎回の監査で責任範囲について全てを監査する。(時間が制約される と表面だけの確認になる。) ○ その部門の「重要な責務」「弱い点」「抱えている問題」から事前の計 画で絞る。 責任範囲であっても全く監査しないことはありえること。 16 監査の要領⑤(まとめ) 3.被監査部門の協力が不可欠。( 自己評価) × 被監査部門が聞かれたことだけ応える。 自部門で抱えている「問題」「疑問」「悩み」などは聞かれないから顕在 化しない。 ○ しゃべる量は半々。 今のルールと実際に業務上で「不整合」「非効率」「過剰品質」などを 抱えていませんか。 4.「 指摘事項」 という 言葉に惑わされな い。 × 指摘事項に挙がると面倒なので「深い指摘をしない」「問題を感じてい ても言わない」 ○ 必要最低限に簡素化された事務処理。(記録類) 監査の目的は問題の「顕在化~改善」で、「記録をうまくまとめる」こと ではない。 監査で問題が顕在化されたが、原因究明~是正処置を検討する段階 で「やっぱり今のままで良い」となることはありえること。 17 監査の要領⑥(まとめ) 監査側 識問 の題 重発 な見 り意 被監査側 「自己評価」が不可欠!! 18 自己評価の概要① 自己要求事項 到達点 ・CSR ・経営効果 ・安全衛生 ・環境 ・品質改善 自己評価の世界 (レベル評価) 外部要求事項 到達点 ・顧客満足 ・規格要求 適合性評価の世界 19 自己評価の概要② 外部要求事項と自己要求事項のレベル区分 レベル MSの成熟度の内容 「力量、教育訓練」の事例 1 外部要求事項が満たされていない。 仕事に必要な力量が明確になっていない。 従って、教育訓練の必要性、計画もない。 2 外部要求事項を満たす手順に不備があ る。 必要な力量の決定に不備があり、形骸化した教育訓練を 行っている。 3 外部要求事項を満たしている。 必要な力量に対し、確実に教育訓練を行っている。 4 外部要求事項を超える活動を行ってい る。 力量評価などの方法を工夫し、より明確な評価をしている。 教育訓練の結果に対する適切なフォロー体制がある。 5 自己要求事項が明確になっており、実 施されている。 教育訓練を行った結果、手順に対する見直し行為を行う手順 が決まっている。そして、手順が改良されている。 6 自己要求事項に対する達成評価が行 われている。(現場レベル) 力量向上した結果、現場レベルでどのような効果が得られた かの評価を行っている。(ミス低減、歩留まり向上・・・) 7 自己要求事項に対する達成評価が行 われている。(経営レベル) 力量向上 ⇒ 人的資源費への波及、その他経営的効果の 評価を行っている。 20
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