口腔細菌学 2006

サブユニット2;
口腔微生物学各論
Ⅱ 口腔微生物学各論 1 球菌
B 口腔に常在するグラム陰性球菌
学習目標
①
②
Neisseriaの特徴を説明できる。
Veillonellaの特徴を説明できる。
口腔に常在するグラム陰性球菌
● Neisseria
● Veillonella
Neisseria科
好気性のグラム陰性球菌
●
●
Neisseria属
Moraxella属
重要なのはNeisseria属
病原性のあるNeisseriaは?
●淋菌 N. gonorrhoeae
性行為感染症(STD)
病原因子;線毛、外膜タンパク、
莢膜、IgAプロテアーゼ
●髄膜炎菌 N. meningitidis
流行性脳脊髄膜炎
病原因子は淋菌と同じ
口腔に常在するNeisseria
好気性/微好気性形状、
病原性のNeisseriaと一部の性状は似るが、
栄養要求性が厳しくない。
N. sicca
N. subflava
N. Mucaosa など
スクロースからアミノペクチン型多糖形成
↑
初期歯垢形成に関係
Veillonella科
嫌気性のグラム陰性球菌
●
Veillonella属;偏性嫌気性
● Acidominicoccus属
●
Megasphaera属
重要なのはVeillonella属
Veillonella
●口腔内で最も多い菌種、歯垢、舌、唾液中に多い。
●他の細菌と凝集し、歯垢の成熟化に関係している。
● Veillonella parvulaが混合感染の一員として日和見感染的
に病原性を示す。
●糖を分解できない
→他の細菌が糖を分解して産生する乳酸、ピルビン酸、
リンゴ酸、フマール酸などの中間代謝産物を
エネルギー源として利用
→結果、最終代謝産物としてプロピオン酸、CO2、酢酸、
H2を産生
サブユニット2;
口腔微生物学各論
Ⅱ 口腔微生物学各論 2 桿菌
B 口腔に常在するグラム陽性桿菌
口腔に常在するグラム陽性桿菌
桿菌の分裂様式
2分裂
分枝型分裂
口腔に常在するグラム陽性桿菌
●分岐しないグラム陽性桿菌
●分岐するグラム陽性桿菌
分岐しないグラム陽性桿菌
Lactobacillus;
乳酸桿菌
自然界に広く分布,ヒトや
動物の腸管,口腔,生殖器など
に常在する
Lactobacillusの形態
と特徴
●形の整った桿菌
●乳酸発酵する
→ホモ型;主に乳酸のみ
→ヘテロ型;他の酸、CO2なども産生
●増殖時の至適pHが低いpH5.5-5.8
→これを利用してRogosaのSL培地のよ
うなpHの低い選択培地が用いられる.
口腔に常在する
Lactobacillus
●ホモ型
L. salivarius
L. acidophilus
L. delbrueckii
●ヘテロ型
L. buchneri
L. brevis
L. casei
L. fermentum
乳酸桿菌とヒトとの関わり
--その1--
●腟の自浄作用;
デーデルラインの桿菌
L. acidophilus
L. casei
L. fermentum
→粘膜上皮のグリコーゲンを分解
→多量の乳酸産生
→腟内のpHを低下させる
乳酸桿菌とヒトとの関わり
--その2-●う蝕との関係;
古くは初期のエナメル質う蝕の原因菌と考えら
れていた
・歯垢中での数が少ないこと、付着性がないこと→
関係は否定
・象牙質う蝕やセメント質う蝕から多く分離
→これらの発症や進展と関係がある
乳酸桿菌とヒトとの関わり
--その3-●腸内常在菌として整腸作用がある
●発酵乳製品の生産に重要な役割を
持つ
→プロバイオティクス
プロバイオティクス
腸内細菌叢を改善することによって宿主
に有益に働く生菌添加物
→乳酸菌、納豆菌など
乳酸菌;乳酸桿菌、ビフィズス菌、
レンサ球菌、腸球菌
プレバイオティクス
腸内の有用菌の増殖を促進したり、
活性化することによって宿主に
有益に働く物質
オリゴ糖、難消化性デンプン、食物繊維など
分岐するグラム陽性桿菌
放線菌に代表される
グラム陽性不定形桿菌
グラム陽性で分枝分裂する
ため形態が多形性のもの.
口腔にはこれに属する細菌
が多い.
放線菌に代表される
グラム陽性不定形桿菌
●Corynebacterium属
● Rothia属
● Propionibacterium属
● Eubacterium属
● Actinomyces属;放線菌
● Bifidobacterium属
(a) Corynebacterium
●通性嫌気性
●幅1.0μm長さ10~20μm
●多形性で棍棒状
●菌体内に異染小体を持つ
●分枝分裂
→柵状,V字,Y字状配列
Corynebacteriumの異染小体
異染小体
口腔に常在するCorynebacterium
●Corynebacterium matrushotii
● C. pseudotuberculosis
● C. xerocis
● C. renale
● C. pseudodiphtheriticum
歯石形成と
Corynebacterium
matrushotii
●本菌は歯垢や歯石中に多い
→成熟歯垢形成;コーンコブ(corn-cob)の芯
になる。
●歯垢石灰化の核
→菌体内石灰化現象
(b) Rothia
● Rothia dentocariosa
● 好気の方が発育が良い。
●スクロースからフルクタンを産生
●象牙質う蝕病巣から分離されるが
う蝕病原性はない。
(c) Propionibacterium
●嫌気性
●幅0.5~0.8μm長さ1~5μm
●プロピオン酸発酵
●多形性で分枝分裂
→柵状,V字,Y字状配列
口腔に常在する
Propionibacterium
● Propionibacterium acnes
● P. granulosum
● P. propionicus
Propionibacteriumの
病原性
●化膿性感染症の原因:P. acnes
→もともとニキビの原因菌
●放線菌症: P. propionicus
→原因となることがある。
Actinomyces israeliiについで高頻度
に分離される。
(d) Eubacterium
●偏性嫌気性
● Propionibacterium, Lactobacillus,
Actinomyces, Bifidobacteriumなどに
分類されないものが この属の中に入れら
れている。
●現在は新しい菌名が次々に提案されてい
る。
口腔に常在する
Eubacterium
● E. limosum
● E. saburreum
● Eubacterium alactolyticum(Pseudoamilbacter
alactolyticus)
● E. aerofaciens (Collinsella aerofaciens)
● E. lentum(Eggerthella lenta)
●う蝕病巣から分離
●歯周病との関連もあり?
(e) Actinomyces
;放線菌
●通性嫌気性、嫌気性
●多形性(棍棒状ー糸状ー桿菌状)
●グラム染色不安定
●Y,V字状配列
●ラフ型のコロニーを形成
Actinomycesのグラム染色像
Actinomycesのコロニー
ラフ(rough)型
Actinomyces
Aggregatibacter
Porphyromonas
特徴と病原性
●成熟歯垢に多い
●線毛構造(fibril)を持つ
→A.viscosus, A.naeslundii
●放線菌症→A. israelii
成熟歯垢に多い
とくにA. naeslundii
はほぼ全てのヒトの口腔から分離
●歯垢の成熟化に関係
●歯肉炎の発生に関係
↓
●可逆性・単純性歯肉炎
→A. naeslundii
線毛構造(fibril)を持つ
●歯質側(ペリクル)に付着
する線毛; Type I線毛
●歯肉側に付着する線毛;
Type II線毛
→A. naeslundii
放線菌症
●最も放線菌症を起こすことに関して病原性が高い
のは→A. israelii
しかし、A. viscosus,
A. naeslundii
P. propionicusも病原性あり
● Aggregatibacer actinomycetemcomitansは
混合感染で病状を悪化させる
放線菌症
病変部→
放線菌症の特徴
●慢性・難治性・再発性感染症
●おもにActinomyces属の細菌によって起こる
●顎・顔面領域に好発→とくに下顎臼歯部、下顎
角部
●う蝕、根尖性歯周炎、歯周炎、歯肉炎、抜 歯窩、
外傷、外科手術後の創傷から発症
●臨床的特徴として、板状硬結、膿瘍中の菌塊、
開口障害
Actinomycesの病原性を
整理すると
●歯肉炎
●放線菌症
●う蝕;象牙質う蝕
(歯)根面う蝕との関連
(f) Bifidobacterium
●ヒトや動物の腸管/口腔、発酵食品に存在
●きわめて著しい多形性;V字型、Y字型
●偏性嫌気性;耐酸素性あり
●グルコースから酢酸と乳酸を3:2の割合で産
生するヘテロ発酵
口腔に常在する
Bifidobacterium
● B. bifidum
● B. longum
● B. breve
● B. adolescentis
● B. dentium
Bifidobacteriumとヒトとの
関わり/病原性
● B. dentiumはヒトのう蝕病巣から初めて分
離された。
● B. bifidumは母乳栄養児に優勢に存在する。
免疫活性を上昇させる。
→プロバイオティクス
腸管内でのBifidobacterium
の働き
●整腸作用
●病原菌の定着を抑制
口腔内でのBifidobacteriumの働き
不明だが、象牙質う蝕から分離され
るため象牙質う蝕と関連??
プレ・ポストテスト
10/23/12
正しいのはa、誤っているのはbにマークして下さい。
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13
口腔に常在するNeisseriaは嫌気性である。
Veillonellaは歯垢中に数が少ない菌種である。
乳酸桿菌は分枝型分裂をする。
乳酸桿菌は口腔内で、もっとも数が多い菌種である。
乳酸桿菌はエナメル質う蝕の原因菌である。
乳酸桿菌は象牙質う蝕から分離されない。
プロバイオティクスとは宿主に有益に働く生菌添加物である。
オリゴ糖はプレバオティクスとしての働きがある。
歯垢中で石灰化するのはCorynebaterium matrushotiiだけである。
Propionibacterium属の中に放線菌症の原因になる菌種も存在する。
Actinomyces属は成熟歯垢よりも初期歯垢に多い。
Actinomyces naeslundiiは歯肉炎の発症と関係が深い。
もっとも放線菌症を起こす事に関して病原性が高いのはActinomyces
israeliiである。
14 放線菌症は発症頻度の高い疾患である。
15 板状硬結は放線菌症の臨床的特徴の一つである。