ブラックホール磁気圏

ブラックホール周辺の
磁場構造について
大阪市立大学
孝森 洋介
共同研究者
石原秀樹,木村匡志,中尾憲一(阪市大),柳哲文(京大基研)
高橋真聡(愛教大)
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
1
・導入
・活動銀河中心核とブラックホール
・Blandford-Znajek機構
・ブラックホール磁気圏
・真空磁気圏
・force-free磁気圏
・force-free磁気圏の数値的な解析
・Blandford-Znajekモノポール解
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
2
導入
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
3
活動銀河中心核とブラックホール
中心に巨大なブラックホール
(BH)があり、BHが活動
銀河中心核(AGN)の
活動性の起源だと考え
られている。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
4
BHがAGNの活動性の起源?
:放出されたエネルギー
:エネルギーを放出した物質の質量
:光速
AGNの場合・・・
光度×年齢
質量×光速の2乗
→ 0.01のエネルギー解放効率
光度:
質量:
年齢:
erg/s
year
一方、核融合のエネルギー解放効率は0.007。
核融合ではAGNの光度を説明するのは難しそう。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
5
BHでエネルギーを生成する機構
降着流の重力ポテンシャルエネルギー
BH
AGNのエネルギー効率は0.01。
ポテンシャルエネルギーの解放効率は0.1。
回転エネルギー
BH
2008 5/30
回転エネルギーを引き抜く方法
1億年分はある。 ・Penrose機構
・Super-radiance
・Blandford-Znajek機構
大阪市立大学コロキウム
6
今のところ・・・
・AGNの光度
重力ポテンシャルエネルギーがエネルギー源。
電磁放射へのエネルギー変換機構はまだ分かっていない。
・ジェット
定説はない。磁場、輻射圧、など。
Blandford-Znajek機構
:磁場でBHの回転エネルギーを引き抜く機構。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
7
Blandford-Znajek(B-Z)機構
BHの角速度
Kerr BHのHorizon上で評価した
Poynting流束
BH
のとき,BHから回転エネルギーが
磁場によって引き抜かれる。
磁場の角速度
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
8
B-Z機構でどれだけ引き抜ける?
Poynting流束は
:磁場の動径成分
Poynting流束は磁場の形状に大きく依存している。
→BHまわりの磁場構造が重要!
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
9
ブラックホール磁気圏
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
10
真空磁気圏
BHの外部にプラズマがない。
・Einstein-Maxwellでフルに解く。
帯電BH(Reisnerr, Nordstrom)
回転している帯電BH(Newman et al.)
Schwarzschild時空中の一様磁場(Ernst)
・BH時空を背景時空としてMaxwell方程式を解く。
Kerr時空中の定常軸対称電磁場(Pertterson, Wald・・・)
Schwarzschild時空中の電磁場(Ginzbrug et al, Ghosh)
BH外部の赤道面上に円電流を置く。(Tomimatsu&Takahashi)
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
11
BHの外にはきっとプラズマがあるだろう・・・
プラズマを取り入れる方法。
・force-freeプラズマ(プラズマの慣性ムシ)
・理想磁気流体プラズマ(電気伝導度∞)
・2流体プラズマ
→ まずは一番簡単なforce-freeを考えてみる。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
12
force-free 磁気圏
・Kerr時空(回転BH)を背景時空とする。
・電磁場は定常で軸対称。
・force-free
プラズマの慣性を無視する近似。
磁場のエネルギー>>プラズマの運動エネルギー
であるようなときに成り立つ。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
13
磁力線
電流は磁力線に沿う。
イメージ図
回転軸
light surface
磁場の角速度が光速
になるところ。
BH
赤道面
ホライズン
2008 5/30
エルゴ領域
大阪市立大学コロキウム
14
force-free 磁気圏は・・・
だけで電場も磁場も決まる。
解くべき式
・楕円型の準線形偏微分方程式。
・light surfaceとホライズンが特異面。
解析的にできたらいいが難しいので、数値的に解くことを
考えてみる。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
15
force-freeブラックホール
磁気圏の数値的な解析
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
16
基礎方程式
Maxwell方程式
仮定
・背景時空はKerr時空
・電磁場は定常かつ軸対称。
・force-free。
Grad-Shafranov方程式(楕円型の準線形偏微分方程式)
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
17
Grad-Shafranov(G-S)方程式
:ベクトルポテンシャル
:電流分布
:磁場の角速度
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
18
G-S方程式の特異面
・G-S方程式には2種類の特異な面がある.
event horizon:
light surface:
2008 5/30
「磁場の回転速度=光速」
大阪市立大学コロキウム
19
を与えて解く
given
・light Surfaceでの正則条件
「ノイマン境界条件」
light surfaceの両側を別々に解くことになる.
一般的に,得られた解はlight surface
で不連続になる.
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
20
light surfaceで連続滑らかな解を
得るための数値的手法
G-S方程式を解く代わりに
を解く。
時間が十分たてば、
となることが期待できるので
G-S方程式の数値解が得られると考えられる。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
21
light surfaceの取り扱い
①light surface上の正則条件
この式は
を決める式として扱う。 (Contopoulos et al, 1999)
②light surface上のG-S方程式
ロピタルの定理
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
22
数値計算の手順
①初期
②
と境界条件を与える。
で
から電流分布を決める。
③LS以外では
が数値的に
無視できる
まで続ける。
LS上で
は
から
④
2008 5/30
を求める。
から新しい電流分布を決める。
大阪市立大学コロキウム
23
・light Surfaceでの正則条件
・light Surface上ではロピタルの定理から
light surface上で連続滑らかな数値解
が得られる。
は最後に決まる。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
24
テスト計算
対称軸
計算領域
数値境界
テスト計算として,Blandford-Znajekモノポール解
を再現した.
BH
赤道面
inner light surface
2008 5/30
outer light surface
大阪市立大学コロキウム
25
Blandford-Znajekモノポール解
Slow-rotating BH近似でのG-S方程式の近似解。
OLS
磁場は剛体回転
で
B-Zモノポール解は
を記述している.
の磁場
BH
ILS
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
26
設定
磁場の角速度
に関してG-S方程式を
数値的に解いた.
BH
outer light surfaceの正則条件から
を決める.
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
27
結果
0.00025
"pr01.dat"
"bz01.dat"
0.0002
OLS
数値解:
0.00015
B-Zモノポール解:
0.0001
5e-005
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
:B-Zモノポール解
:数値解
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
28
の変化と数値解とB-Z解の関係
0.014
"m atest.dat"
0.012
0.01
0.008
0.006
0.004
0.002
0
0
2008 5/30
0.005
0.01
0.015
0.02
0.025
大阪市立大学コロキウム
0.03
0.035
0.04
29
B-Zモノポール解とのずれ
0.3
"psa01_3.dat"
OLS
0.25
0.2
0.15
0.1
0.05
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
Slow-rotation近似はOLS近傍およびその外側で適用できない.
(Tanabe&Nagataki 2008).
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
30
B-Zモノポール解とのずれ
0.3
"psa005_3.dat"
"psa01_3.dat"
0.25
OLS
OLS
0.2
0.15
0.1
0.05
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
を変えてもOLS付近のB-Zモノポール解と数値解とのずれは
かわらない。
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
31
まとめ
・Kerr BH まわりのforce-free磁気圏を数値的に数値的
に求める方法を考えた。
outer Light Surfaceを含むような領域でコードを作成し
テスト計算として,B-Zモノポール解を再現した。
今後の課題
・ホライズンを境界にしてInner Light Surfaceで
決めるコードの作成。
を
・BHの回転速度と定常磁場の配位の関係を明らかにする。
・B-Zモノポール解はinner light surfaceを超えられる?
2008 5/30
大阪市立大学コロキウム
32