水利環境学研究室 渋谷あゆみ 1 1.背景・目的 オオクチバス(Micropterus salmoides) 特定外来生物 ブルーギル(Lepomis macrochirus) 日本各地で分布を拡大 →在来魚の生息密度の低下・種多様性の低下 →駆除等の対策(既知の生態から講じる) 効果的な 方法が無い 視覚に頼った採餌 目的 新たな視点からの生態解明が必要 仮説 透視度が高い場所に生息 透視度とオオクチバス・ブルーギルの 分布場所に関連があるかを検討 2 2.調査地 調査地 岐阜県安八郡 輪之内町 大榑川(5地点) 中江川(5地点) 中江川 5 4 3 5 2 4 3 1 1 2 大榑川 出典:Yahoo!地図 輪之内町 出典:フリー百科事典「ウィキペディア」 輪之内町位置図 3 ○大榑川 •植生が豊富 •河床:泥・礫 •「ブラックバス釣り」に訪れる人が多い 地点1 地点2 地点3 地点4 地点5 地点2 地点3 地点4 地点5 ○中江川 •植生が少ない •河床:泥 •透視度が低い 地点1 4 4.調査方法 ○魚捕獲調査方法 • 胴網 期間 頻度 調査時間 調査回数 5/13~10/23 月に3回 夕方~翌朝 16回 ※補助的にカゴ網を使用 • 釣り(6/9) • 追い込み(10/27) ○調査項目 •環境調査・・・透視度・水温・pH・DO・水深 •生物調査・・・魚種・体長・個体数 0.5m 2m 胴網 定置網設置の様子 5 5.調査結果<魚類調査> 個体数(匹) ○大榑川 •オオクチバス・ブルーギルを多数捕獲 •在来魚の捕獲数は少ない •地点5のオオクチバス・ブルーギル捕獲数が少ない •地点3においてオオクチバスの成魚を目視 40 40 30 30 20 20 10 10 0 0 地点1 地点2 地点3 地点4 地点5 調査地点 オオクチバス ブルーギル 図1 オオクチバス・ブルーギル捕獲数 地点1 地点2 地点3 地点4 地点5 調査地点 ゲンゴロウブナ ウナギ コウライモロコ ナマズ ギンブナ 図2 在来魚捕獲数 6 個体数(匹) 15 40 30 20 10 0 10 5 0 体長(mm) 図3 オオクチバス体長分布 0-15 15-30 30-45 45-60 60-75 75-90 90-105 105-120 120-135 135-150 150-165 ○大榑川で捕獲したオオクチバス・ブルーギルの体長分布 •オオクチバス 全て1歳未満の稚魚 体長10~29mmを多数捕獲 •ブルーギル 体長45~59mmを多数捕獲 体長(mm) 図4 ブルーギル体長分布 7 ○中江川 •ブルーギルは捕獲され,オオクチバスは捕獲無し •在来魚は多くの種が多数捕獲された 70 50 15 10 40 10 5 30 5 20 0 個体数(匹) 15 0 地点1 地点2 地点3 地点4 地点5 10 調査地点 0 図5 ブルーギル捕獲数 0-15 15-30 30-45 45-60 60-75 75-90 90-105 105-120 120-135 135-150 150-165 60 地点1 地点2 地点3 地点4 体長(mm) 調査地点 図6 ブルーギル体長分布 コウライモロコ ナマズ コイ モツゴ ギンブナ タモロコ オイカワ ウナギ 地点5 ゲンゴロウブナ ニゴイ ドジョウ カワバタモロコ 図7 在来魚捕獲数 8 ○魚類調査結果のまとめ ①生息数 オオクチバス・ブルーギル 大榑川>中江川 在来魚 大榑川<中江川 表5-1 2河川の魚捕獲総数 大榑川 中江川 オオクチバス 30 0 ブルーギル 122 41 個体数 23 150 在来魚 種数 5 12 ②大榑川地点5 オオクチバス・ブルーギル生息数が少ない 中江川にオオクチバス・ブルーギルの生息数が 少ないのはなぜ? 大榑川の中で、地点5におけるオオクチバス・ブルーギルの 生息数が少ないのはなぜ? 9 5.調査結果<環境調査> ○水深の変化 水深(cm) •大榑川 平均:106.2cm 最大:219cm(地点1) 最小:43.5cm(地点5) •中江川 平均:81.8cm 最大:118cm(地点3) 最小:43.5cm(地点5) 250 250 200 200 150 150 100 100 50 50 0 0 図8 大榑川の水深 図9 中江川の水深 中江川の方が大榑川よりも水深が小さい傾向にある 地点1 地点2 地点3 地点4 地点5 ※透視度計は2cm未満、 100cmより上が測定範囲 外となるため、2cm未満は 「0cm」、100cm以上のとき は「100cm」として示した。 最高:61.1cm(地点4) 最低:6.6cm(地点5) 5/13 5/21 5/28 6/4 6/11 6/18 7/3 7/15 7/24 8/6 8/21 8/28 9/7 10/2 10/11 図10 大榑川の透視度 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 平均:14.4cm 最高:51.7cm(地点4) 最低:0cm(地点1・2・4) 100cm未満 (地点1~3) 5/13 5/21 5/28 6/4 6/11 6/18 7/3 7/15 7/24 8/6 8/21 8/28 9/7 10/2 10/11 •8月末~ 透視度が高い時期 10 平均:21.5cm 透視度(cm) •5月~8月中旬 透視度が低い時期 透視度(cm) ○透視度の変化 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 中江川の方が大榑川よりも透視度が低い傾向にある 図11 中江川の透視度 11 ○環境調査の結果 ① 水深 大榑川>中江川 透視度 大榑川>中江川 表5-2 2河川の各地点における平均水深(cm) 地点1 地点2 地点3 地点4 地点5 大榑川 155.6 89.7 94.5 99.1 91.1 中江川 80.0 91.5 100.9 76.1 56.9 表5-3 2河川の各地点における平均透視度(cm) 地点1 地点2 地点3 地点4 地点5 大榑川 40.9 42.1 43.7 39.1 39.7 中江川 29.8 31.2 35.0 42.7 44.7 水田が多い ②大榑川地点5 最小水深・最低透視度 平均水深・平均透視度が低い 最大値 最小値 他地点より水深は小さく、 透視度は低い傾向にある 12 6.考察 在来魚の種数・生息数 大榑川<中江川 オオクチバス・ブルーギルが 影響している 中江川・大榑川地点5 オオクチバス・ブルーギル の生息数が少ない 透視度・水深が低い しかし・・・ •各調査地点の透視度 に違いが無い •透視度の他に考慮すべき 要因がある 今後 大榑川と中江川で生じる2種 の生息数の違いには、 透視度・水深が影響 河川内でなく、河川間で の比較に留まる 透視度のみを要因として 検討することはできない 2種と透視度の関係を明確にする→実験的手法 胴網では捕獲魚種が偏る→調査方法の再検討
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