第9章 焼結炉と雰囲気 - 小山工業高等専門学校

第9章
焼結炉と雰囲気
焼結方法:
焼結を完成するため:
圧粉体が壊れやすい→予備
① 焼結の雰囲気
焼結(presintering)
② 加熱速度 収縮の調 節
予備燒結の必要性
(有機減摩剤)
圧力に耐えるため
③ 最高焼結温度
硬質合金:機械加工
④ 加熱時間
容積の変化は殆どない
⑤ 冷却速度
圧粉体の放置→破損、酸
化、吸湿
9.1 焼結炉
上記の条件を細かく調節できることが必要である。
9.1.1加熱法:
ガス式:経済的だが、制御しにくい
電気式:一般的に利用されている
*加熱方法より耐火物の性質から制限を受ける:
*理想的なマッフル材料:気密でなおかつ温度の急
変に耐えるもの。
陶器材料:
◆アランダム容器:最も耐熱性に富んでいるが、多孔質
であるため、密閉する必要がある。
◆シリマナイト(sillimanite):1600˚Cの温度に耐えるが温
度の急変に耐えられない。
◆シリカ:温度変化に対応できるが、1400˚C以上では結
晶化→脆化→長期使用に×。
金属容器:
ニクロム、インコーネル耐熱合金:1000˚C以下OK。
焼結炉の発熱体の種類:
(1)Ni-Cr合金:線、リボン状、1100˚Cまで
(2)炭化ケイ素発熱体:酸化と還元雰囲気OK、
1000〜1400˚C。高温で抵抗が変化する。
(3)高融点金属:W、Mo、Taの線、リボン
雰囲気:保護雰囲気(H2など)。Mo:1600˚C
(4)Stratit element:W、Moの線条が耐火性の気密容器に 密閉さ
れ、容器はシリマイトあるいはその内壁にアル
ミナ、酸化ベリ
リウムで内張りされているもの。1600˚C
その他:圧粉体に直接電流を通じて焼結する方法
黒鉛を抵抗としての加熱
高周波電流による加熱(硬質合金)
9.1.2箱型およびベル型炉
箱型炉:比較的生産量の少ない場合に適する。1000˚C以下:ニク
ロム
高温度用のものの構造は複雑になる。抵抗体:SiC、Mo棒
用途:鉄および鉄合金、W系接点材料(図5.1)
ベル型炉:600〜1100˚C
レトルト(retort)
気体の循環:均一な加熱
発熱体:ニクロム
用途:銅合金、鉄合金の焼結
両方の欠点:量産に合わない。効率が悪い。経済的ではない。→
連続式
9.1.3連続式焼結炉
多量生産に適している。
1.ベルトコンベアー式(図5.3)
ボードあるいはベルトの上に置かれて炉内を通過する。
構造上高温用に不向き
用途:オイルレスベアリング等の銅合金の焼結
ローラー式で比較的高温のものもできる。
2.推進式(図5.4)
高温用:WC硬質合金
アランダム管にMo線→気密の鉄ケース、保温材:アランダム
粒子
圧粉体を黒鉛ルツボ、H2は逆方向から
9.1.4真空焼結炉
1000˚C以下では構造的簡単である。
高温:複雑
方式:誘導式、直接抵抗式(表5.1)
1.真空炭素抵抗炉:安価
問題:炭素からガスの発生→高真空度は無理
2.真空焼結炉:誘導式
* 内容積が狭い
* 石英管で低温
3.真空焼結炉ベル型
コイル全体が水冷した鉄製ベルに納められた型式
高真空度、高温(工業的に造られている高真空炉の型式)
炉内の真空度制御:
回転式:低真空度0.1mm(Hg柱)程度
油拡散式:高真空度(急速なガス発生に対応できるもの)
水分の存在で油の劣化→真空度の低下
炉内雰囲気による必要性
 還元雰囲気(WC硬質合金):真空度上げると脱炭現象;
真
空度下げると浸炭現象。
 中性雰囲気:高真空度
油拡散ポンプの使用
加熱体:炭素の代わりにボード、支持台(加熱台)に
Mo を
使用する。
高真空度燒結の用途:耐熱合金、焼結マグネット
9.2焼結の雰囲気
炉の雰囲気の制御は焼結には重要な要素で焼結体の性能が
左右される。
焼結雰囲気の作用:
 酸化、浸炭および脱炭などの希望しない反応を阻止
する。
 粒子の表面酸化物の還元、吸着ガスの除去のため所
要の反応を起こさせる。
有害ガス:O2、H2O、SO2、H2S
歓迎されるもの:CO、H2など
9.2.1水素
電解水素(アルカリ水溶液電解)99.5%
小型炉:ガス消費が少ない、ガスの費用があまり製品の価格に
影響しないような作業
自家発生(量が必要)と市販のボンベ入
不純物:O2、H2O、N
O2:加熱した銅あみ(Paアスベスト)を通して水と
し
て除かれる。
H2O:冷凍器で凝縮、また、乾燥剤(CaCl2、NaOH、
P2O5、H2SO4)、活性アルミナ、活性シリカ
9.2.2分解アンモニア
分解アンモニア:75%H2、25%N2の混合ガス
H2より経済的→銅および銅合金の焼結に利用さ
れる。
分解アンモニア発生機(市販)
9.2.3燃焼炭化水素ガス
炭化水素ガス:天然ガス(コークスガス、メタンおよびプロ
パンガスを空気と混合したもの)
混合の割合によって一部燃焼ガスと完全燃焼ガスになる
(表5.2)
9.2.2分解アンモニア
分解アンモニア:75%H2、25%N2の混合ガス
H2より経済的→銅および銅合金の焼結に利用さ
れる。
分解アンモニア発生機(市販)
9.2.3燃焼炭化水素ガス
炭化水素ガス:天然ガス(コークスガス、メタンおよびプロ
パンガスを空気と混合したもの)
混合の割合によって一部燃焼ガスと完全燃焼ガスになる
(表5.2)
9.2.4雰囲気の選択
H2:W、Mo、WC系焼結合金、アルニコ系磁性材料の焼結
に最
適
アルニコ:水素の純化(脱水)
WC:黒鉛容器で、O2、H2O+C→CO、H2なので高純度は不要
脱水:-60˚C以下にする
炭化水素:
水分:黄銅材料の脱亜鉛→正確な制御必要
CO2:Cuは大丈夫が、Fe酸化される。
WC硬質合金:硬さ→Cの含有量→維持→O2、H2Oの制御
(脱炭作用)
脱炭防止:メタンなどの炭化水素の添加:ガスへ平衡を中性ある
いは浸炭性にする。
9.2.5真空
特殊の硬質合金に真空高周波炉の利用
ガス中のある成分と焼結体の成分との化学反応を防ぐため
吸着ガスを除去できる。
9.2.6炉内空気侵入防止策
出入り時の汚染を防止するため
フレームカーテン(flame curtain)
加圧された還元ガスを吹き込むことによって外気の侵入が阻止
される。
9.3燒結後の付帯処理
再圧による機械的な性質の向上