PowerPointで 作る“論理的企画書”講座 第一講 PowerPo

PowerPointで作る“論理的企画書”講座
第一講
PowerPointで作る企画書
Planning Factory PSYCHO
はじめに
PowerPointで作る“論理的企画書講座”。第一講は「PowerPointで作る企画書」と題して、
PowerPointで企画書を作る際の最も基本となる情報の理解を主眼とする。そもそも企画と
は何なのか、企画を行う上で理解しておかなければならないこと、企画書作成の基本ノウ
ハウ、これらに加えてPowerPointの基本操作を紹介する。これらを通じて、初めて
PowerPointにふれた人、あるいはPowerPointは使ったことがあるが企画は初めてな人、双
方がPowerPointを通じて企画書を書けるよう配慮している。
なお、各節の終わりには、節の理解を深める「理解度テスト」を設けている。節終了時に、
内容確認の意味でトライしていただきたい。
第一講・目次
第一節
第二節
第三節
第四節
企画書とPowerPoint
企画の大原則
PowerPoint操作の基礎
とにかく企画書を作ってみる
本書に記載されている会社名、商品名などは一般に各社の商標または登録商標です。
本書の全部または一部について著者から承諾を得ずに複製することはご容赦ください。
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第一節:企画書とPowerPoint
第一節:企画書とPowerPoint――目次
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1-5
1-6
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1-9
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1-11
1-12
1-13
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企画の基本的な意味
企画以前にあるもの
企画と計画の違い
企画書とは
書類作成のためのアプリケーション
企画書作成に適したアプリケーション
Microsoft Wordの特徴
Microsoft PowerPointの特徴
PowerPointのここがいい①
PowerPointのここがいい②
PowerPointのここがいい③
PowerPointのここがいい④
PowerPointの限界
理解度テスト
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日々よく使う言葉でも、改めて意味を問われると、その意味うまく表現できないことがよくある。「企画」という言葉もそう
だ。「企画とは企てて画すことである」などと 辞 書 的 に 定義するの は 問題だ。本来、生きた言葉の意味というものは、辞
書からの借用ではなく、経験に根ざすべきものである。そこで本講座では、「企画とは、特定のテーマについて考え、自
分なりの案を出すこと」である。企画についてまずこのように定義したい。
企画の基本的な意味
企画とは
考えるという行為
特定の
テーマ
――企画活動――
▼
Thinking
考えた結果
生み出された案
――企画案――
▼
Plan
特定のテーマについて考え、自分なりの案を出すこと
「企画」は用いられ場面によって、「企画活動(Thinking)」または「企画案(Plan)」どちらかに力点を置く場合が多い
企画活動として用いられる場合
企画案として用いられる場合
「次の日曜日だけど、ちゃんと企画を立てといて
よ。」
「今度の展示会、集客向けにいい企画はない?」
たぶん会議の進行役が発した言葉。どうやら展示会が
あって、その展示会にお客を動員する何かいい考えはな
いか、と言っている。ここで使われている企画は、考えると
いう行為よりもむしろ、その行為の結果生み出された企画
案に対して注目していることがわかる。
考える行為の結果生まれた企画案という意味での企画。
おそらく家族の会話だろう。次の日曜日に何をするのか考
えておいてと、ママがパパに注文を付けているような感じ
だ。この会話では、考えた結果の善し悪しはともかく、とに
かくまずは「考えるという行為」を実行するよう要請してい
る。企画活動としての企画の意味合いが強い。
他に「当社は企画型の人材を必要としている。」も同様。
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そもそも、企画活動を行い、その結果企画案を出力するためには、それに先だつものが必要になる。「特定のテーマ」
がそれだ。単に漫然ともの思いにふけるのならば、テーマは不必要かもしれない。しかしながら、企画の場合は、与えら
れた対象または自分で設定した対象について、考えるということを強いる作業である。したがって、まずテーマ、すなわ
ち企画に限定すると企画テーマがないことには、企画自体が成り立たない。
企画以前にあるもの
Start
Plan
特定のテーマ
▼
企画テーマ
企画活動
Do
テーマへの回答
▼
企画案
See
企画案の実行
▼
企画テーマの
実現
企画テーマとは、何について考えるのかを示したもの
企画テーマが
我々に考える
指針を与えてくれる
企画テーマが不在だと、
何を考えていいのか
わからない
企画以前にまず企画テーマが必要不可欠
【先の例で言うと】
①「次の日曜日だけど、ちゃんと企画を立てといてよ。」…企画テーマは「次の日曜日にすること」
②「今度の展示会、集客向けにいい企画はない?」…企画テーマは「展示会の集客」
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ある辞書では「企画」について、「計画を立てること。また、その計画。くわだて。もくろみ。企図」と定義している。この説
明に従うと、「企画とは計画を立てることである。」となり、すなわち「企画=計画」となってしまう。しかしながら、「我が社
では企画マンを求めている」とは言うが「我が社では計画マンを求めている」とはまず言わない。逆に、「計画的に行動し
よう」とは言うものの「企画的に行動しよう」と言うことはない。 以 上 から「企画」と「計画」には異なるニュアンスがあると
言ってよい。では、その違いはどこにあるのか。
企画と計画の違い
企画 = 『What to do』 を考える
企画テーマに対してそもそも何をするのかが決まっていない状態で、
「何をするのか――What to do」を考えるのが企画
何をするのか
決まっていない…
未来
何をするのか
考える
企画
計画 = 『How to do』 を考える
すでに何をすべきかが決まっていて、その「何か」を
「どうやって実現するのか――How to do」を考えるのが計画
何をするのか
もう決まっている
未来
どうするのか
考える
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計画
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企画とは、特定のテーマについて考え、自分なりの案を出すことである。ということは、企画書とは自分が考えた案(企
画内容)を要領よく表現した書類、ということになる。企画内容を表現する方法には様々なものがある。口頭の場合もあ
れば書類の場合もある。スライドやビデオも考えられるだろう。しかし、手軽で一般的、後に残る媒体と言えば書類の右
に出るものはないだろう。そして企画をこの書類に出力すると、それが企画書になるわけだ。
企画書とは
ビジネスによく利用する書類には2種類の表現形式がある
絵画的形式
巻物的形式
●1ページ単位が内容の区切りとなる(額に納まった
●文章の区切りが内容の区切りとなる(巻物のよう
1枚の絵画のようにひとつの内容を1ページで表
に文章が続く限り内容に区切り無し)。
現する)。
● 基本的には文章を中心として内容を表現する 場
●箇条書きや図解を多用した形式で内容を表現す
合が多い。
る場合が多い。
企画書
レポート・報告書
企画書とは、企画内容を要領よく表現した書類。
企画案の表現には絵画的表現形式が用いられる理由
●書き手側・・・企画内容を要領よく表現できる。
●読み手側・・・短時間で内容を理解することができる。
▼
特に意志決定者である読み手に配慮する結果、
絵画的表現形式が用いられる、というわけだ。
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前ページまでに企画や企画書についてふれてきたが、本講座の目的はPowerPointで企画書を作るがテーマである。
そこで次に、PowerPointに関する話題に移りたい。が、その前にパソコンで利用されるアプリケーション・ソフトにはどの
ようなものがあるのか簡単に確認しておく。その上で、PowerPointが様々なパソコンのソフトの中で、どのような位置を
占めるのかを明らかにしたい。
書類作成のための
アプリケーション
アプリケーション・ソフト
ワード
プロセッサー
データベース
ソフト
表計算ソフト
グラフィックス
ソフト
プレゼンテーション
ソフト
Webブラウザー
Webページ
作成ソフト
電子メール
ソフト
Etc...
主に書類作成に利用するアプリケーション
ワードプロセッサー
プレゼンテーション・ソフト
文書を作成するためのソフトの総称。文章を見栄え
よく整える様々な機能をもつのが特徴。その点で単
に文章を入力するためのテキスト・エディターとは区
別される。
【代表的なソフト】
Microsoft Word、ジャストシステムの一太郎
スライドを用いたプレゼンテーションをパソコン上で
実現するためのソフト。いわゆるDTPR(Desk Top P
Resentation)用のソフトで、本来は紙ベースの書類
作成を主としたソフトではない。
【代表的なソフト】
Microsoft PowerPoint
さて、企画書作成に便利なのはどっち?
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企画書作成に
適したアプリケーション
書類作成に利用するソフトには、ワードプロセッサーとプレゼンテーション・ソフトがある。では、この両者で企画書作成に適している
のはどちらのソフトだろうか。企画書作成を効率的に進めるには様々な条件がある。中でも、ひとつの内容を1ページで表現しやすい
構造になっていることが、企画書作成の適したソフトを選ぶ際の最重要条件となる。他にも様々な条件があるが、それらについては下
記に示した。これらの条件をクリアする数が多いほど、企画書作成に適したソフトということになる。
【企画書作成に適したアプリケーションの条件】
●ひとつの内容を1ページで表現しやすい構造になっていること
企画書では絵画的表現形式、すなわち「ひとつの内容を1ページで表現する」ということが大原則となる。
したがって、アプリケーション自体もあらかじめ絵画的表現形式を前提とした作りになっていることが望まれる。
●1ページを1単位としてページの入れ替えが自由であること
これは上記とも関連するが、ひとつの内容が1ページで表現しやすく、しかも1ページを1単位としてページを入れ替えられるようになってい
ることが望まれる。
●アウトライン機能を有していること
アウトラインについては本講第四節、および次回の第二講で詳しく述べるが、要するに企画内容を効率よく練るためのツールと考えればよ
い。この機能は企画書づくりのアプリケーションに必須と言っても良い。
●図解を容易に作成できること
企画書では文章よりも図解で内容を表現するケースが圧倒的に多い。したがって、図解を容易に作成できる機能、作成した図解を容易に
レイアウトできる機能が備わっている必要がある。
●マスターページを利用できること
マスターページとは、全ページ共通するレイアウトや飾りを指定する機能のことを言う。
例えば全ページに共通するページタイトルの位置や罫線の飾り、ノンブル(ページ番号)の位置、本文の位置など、このマスターページで指
定でき、修正も一括して行える。これも企画書向けアプリにはなくてはならない機能だ。
●多くの人が利用していること
これは機能上の問題ではないが、やはり多くの利用者をもつアプリケーションであることが便利だ。
というのも、作成した企画書をデジタル・データとして提出し、提出先で開くことが出来るから。これによりメールで企画書を送ることも可能に。
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書類作成で最も良く利用されているのがワードプロセッサーだ。中でも、Microsoft Wordは、その機能、普及率から
ワードプロセッサーの横綱と言っても差し支えないだろう。
ここでは、Wordの特徴を概観した上で、ワードプロセッサーであるWordが企画書作成にふさわしいかどうか、少々独
断も含めながら考えてみたい。
Microsoft Word
の特徴
【Wordの特徴】
●極めて多数の機能を搭載したワードプロセッサー
●ワードプロセッサーの中では最も利用者が多い
【メリット】
●機能を十分に活用できれば、見栄えの良い文書を短時間で作成できる
●利用者が多いため、Wordで作った文書は流通しやすい
【デメリット】
●不必要な機能が多すぎる(裏返すと機能はもっとシンプルでもいいということになる
Word
企画書作成との相性
●ひとつの内容を1ページで表現しやすい構造になっていること
×
●1ページを1単位としてページの入れ替えが自由であること
△
●アウトライン機能を有していること
◎
●図解を容易に作成できること
○
●マスターページを利用できること
△
●多くの人が利用していること
◎
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Microsoft PowerPoint
の特徴
元来はDTPR(Desk Top PResentation)用のソフトとして、パソコンでスライドを実施するために開発されたのが、プレ
ゼンテーション・ソフトである。
プレゼンテーション・ソフトの種類はあまり多くなく、Microsoft PowerPointがデファクト・スタンダード(事実上の標準)と
なっている。以下、PowerPointの特徴と企画書作成の際の相性である。
【PowerPointの特徴】
●スライドを用いたプレゼンテーションをパソコン上で実現するためのソフト
●元来はDTPR(Desk Top PResentation)用のソフトとして開発された
●ひとつの内容を1ページで表現しやすい構造になっている点がPowerPointの大きな特徴
【メリット】
●上記機能がベースとなっているため、絵画的形式の企画書を作りやすい環境にある
●アウトライン機能の他、マスターページ機能など、企画書づくりに不可欠な機能が揃っている
【デメリット】
●重要な機能の中でWordより見劣りする点が多数ある
●Wordに比べて利用者が少ない
PPT
企画書作成との相性
●ひとつの内容を1ページで表現しやすい構造になっていること
●1ページを1単位としてページの入れ替えが自由であること
●アウトライン機能を有していること
●図解を容易に作成できること
●マスターページを利用できること
●多くの人が利用していること
◎
◎
○
○
○
△
以上から、企画書作成を前提とした場合、WordよりもPowerPointの方がふさわしい
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PowerPointのここがいい①
さて、企画書作成にPowerPointが向くと書いたが、以下、その魅力をいくつか見たい。、PowerPointの最大の特徴は、
ひとつの内容を1ページで表現しやすい構造になっている と い う 点 だ 。合わせて、1ページを1単位としてページの入れ
替えが極めて容易である。すなわち、PowerPointは絵画的形式の文書作成に向いていると言える(一方、Wordは巻物
的形式に向いていると言えるだろう)。PowerPointがもつ1ページを1単位で扱える点は企画書作成に大変大きなアドバ
ンテージとなる。
1ページを1単位で扱えるから企画書作成にはうってつけ
●画面は1ページ単位で表示される
【PowerPoint】
1ページごと表示される→絵画的
【Word】
文書の一部が表示されるイメージ→巻物的
●ページの移動が非常に容易
スライド一覧表示を用いたページ移動
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PowerPointのここがいい②
企画書作成にアウトライン機能は欠かせない。PowerPointはアウトライン機能を搭載していることはもちろん、アウトラ
インで作成したテキストを一発で見栄えの良いスライドに変換することが可能。これにより、見た目のことはあまり意識
することなく、見栄えの良い書類をてきぱきと作ることができる。
アウトライン表示のテキストを一発でスライドに変換
●アウトラインで企画内容を作成
●一発でスライド変換
アウトラインで作成したテキストを
一発で見栄えの良いスライドに変換
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PowerPointのここがいい③
企画書では図解を多用する。そのため図形を作成するツールは必携と言える。PowerPointでは、Wordと同じ「図形描
画」ツールを利用することが可能。したがって、Wordは使ったことがあるが、PowerPointは使ったことがないという人でも、
こと図形作成については、Wordと同じ環境と思ってよい。他にもクリップアートの挿入やオブジェクトの挿入など、Wordと
同様の環境での利用が可能だ。
Wordと同じ環境の図形描画、オブジェクトの挿入
●「図形描画」ツール
使い勝手はWordと同様
●クリップアートの挿入
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PowerPointのここがいい④
PowerPointはDTPRを前提にして設計されたソフトである。そのため、プレゼンテーション用の機能を豊富に搭載して
いる。例えばアニメーション機能やスライド切り替え機能など、プレゼンテーションの演出効果を高める様々な機能があ
る。これらの機能は、企画書作成とは直接関係のない。しかしながら、作成した企画をDTPRしなければならない場合、
これらの機能tが大きな威力となる。
プレゼンテーションを支援する豊富な機能を搭載
●アニメーション効果の設定
スライドの内のオブジェクトの動きを
コントロールする。
クリック操作でオブジェクトを表示することが可能。
●画面切り替え
スライドが切り替わる際の演出を設定。
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PowerPointの限界
PowerPoint は 企 画 書 作 成 に 便 利 だ 。 しか しな が ら 、 そ れ は Word と比 較 した 場 合 、 とい う 条 件 付 き で だ 。 本 来
PowerPointはDTPR用の書類作成を前提としている。企画書作成を前提としているわけではない。そのため、企画書作
成の際にこんな機能があったら、ここが充実していたら、などと思う点がいくつかある。これらについては、今後のバー
ジョンアップによる機能強化に期待したい。
企画書作成に特化したソフトではないことに注意を!
●少々貧弱なアウトライン機能的
• Wordに比較するとアウトライン機能が貧弱
• Wordと同程度の機能が欲しい
●細かいテキスト演出が困難
• テキストボックス内でのテキスト演出がWordに比べて見劣りする
●テキストボックス同士の連結ができない
• Wordでは可能なテキストボックス同士の連結ができない
• そのため複雑なレイアウト作成にどうしても時間がかかってしまう
●アウトラインからチャートに変換する機能が欲しい
• アウトラインを一発でチャートに変換する機能が欲しい
• 組織図を用いる手もあるが時間がかかる
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理解度テスト
問1:企画とは?
企画とは、特定の「
」について考え、自分なりの「 」を出すことである。
問2:企画以前に求められるものとは?
「
」。これなくして企画は始まらない。
問3:企画と計画の違い
企画は「
計画は「
」を考える。
」を考える。
問4:ビジネスに利用する書類には2種類の形式がある。
・レポートや報告書→→→ 「
」的形式の書類
・企画書→→→→→→→→「
」的形式の書類
問5:企画書とは?
企画書とは「
」を要領よく表現した書類である。
問6:PowerPointが企画書作成に向く最大のポイントは?
「
」を「
」で扱えるところ。
【答え】
①「テーマ」「案」
②「企画テーマ」あるいは「特定のテーマ」。単に「テーマ」でも可
③「What to do ――何をするのか」「How to do ――どうするのか」
④「巻物」「絵画」
④「企画内容」
⑤「1ページ」「1単位」
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