若狭湾における海洋構築物の可能性について

若狭湾における海洋構築物の
可能性について
2006年3月31日
敦賀商工会議所
0.1.廃コンクリートの発生状況およ
び処理の課題
廃コンクリートの発生状況
福井県
廃コンクリート再利用の課題
循環型社会形成推進基本法(2000)
原子力発電所廃炉
現状の廃コンクリート発生量
年間 約50万t
廃コンクリートの再利用
建 築 廃 材
現状では廃コンクリートの98%が路盤材等の
陸上構築物に利用されている。
廃コンクリート大量発生
◆10年後の福井県内の廃コンクリート発生予測
・一般市場 高度成長期の建築物の解体
年間200~400万トン
・原子力発電所の廃炉 年間約10万トン
(発電所1基当り50万トン、ふげん35万トン)
将来、大量に廃コンクリートが
発生すると予測され陸上構築物
への利用は供給過剰になる。
一般建築物
の改修にも
影響を及ぼ
す可能性が
ある。
再利用方法の検討が必須
海洋構築物として再利用の可能性?
0.2.再生コンクリートの海洋構築物
適用に関する背景
• 循環型社会形成推進基本法(2000)の制定。
• 水産庁:沿岸漁業振興法(1963)の「生産性向上」から、水産基本法制
定(2001)の「持続的生産と国民への安定供給」。⇒つくり育てる漁業
へ転換。
• 国土交通省:港湾の技術開発行動計画(2005)全国海の再生プロジェク
ト⇒藻場・干潟等の造成。沿岸域自然エネルギー活用技術開発。
• 海洋生物資源の減少が危惧。
• 若狭湾はなだらかな海底地形であり、これを複雑化することで、水産資
源の安定、増産に寄与できる可能性がある。
• 他の未利用資源等と併せた高付加価値海洋構築物開発が課題である。
水産資源増産利用、その他の適用の可能性
0.3.再生コンクリートを含む未利用
資源を用いた海洋構造物開発の意義
• 循環型社会の構築、持続ある開発が21世紀社会において重要。
• 他の未利用資源と併せた、海洋構造物として高機能を有する資材開発
と、その持続的利用を考える必要がある。
(建設リサイクル法)
建築廃材(コンクリート廃材の大量発生)
廃炉関連コンクリート廃材の持続的発生
(国土の保全)
(食糧問題)
世界的な海洋生
物資源の減少
わが国漁獲量の
減少
タンパ
ク資源
の増産
つくり育
てる漁業
への転換
循環型社会構築の
ための技術開発
砂浜減少
砂流出減少
ダム建設
沿岸風力
発電可能性
自然エネルギー
増産
温暖化
(温暖化対策)
間伐材、農業系廃棄物、水産系廃棄物の利用
(バイオマスニッポン総合戦略)
若狭湾における海洋構築物の可能性
1.若狭湾での海洋構築物適用可能性
• 再生コンクリートの利用が想定される海洋構造物
沖合
種類
効果対象
内容
課題
漁業振興
ズワイガニ,ベニズワ
若狭湾の代表漁獲物であるズワイガ 底曳き網漁業の
イ,アカガレイ資源量増
ニ等幼稚仔を保護する魚礁に適用。 障害
産
(2)人工湧昇基盤
漁業振興
植物プランクトンの増
大。この結果としての魚
類増大。さらにブリ漁獲
量の増大を期待。
(3)魚礁
漁業振興
底曳き網、底刺
マダイ、ブリ、アマダイ 沖合いの平坦な海底形状の場に魚礁
し網漁業等の障
等
を設置し、漁獲量を増大させる。
害。
(4)藻礁
漁業振興
海藻類、貝類、魚類・ア 近年沿岸開発やアイゴ等の食害に
アワビ放流等と
オリイカ等の産卵場。稚 よって藻場が衰退しており、藻場造
の併用効果
魚育成場。
成基盤材として利用。
(5)沿岸環境保全
用資材
環境保全
三方五湖等の底質環境保 ヘドロ化した底泥域に基盤を投入
全
し、硫化水素等の発生を抑制。
(6)人工リーフ
環境保
全・国土
対策
砂浜の後退防止。津波対
砂浜の後退防止用人工リーフの資材 藻場造成等との
策用護岸。温暖化による
として適用。
併用
水位上昇対策用。
(7)沿岸風力発電
等の基盤材
エネル
ギー
漁港や港湾の防波堤に風力発電施設 漁業者との連
風力発電による再生エネ
を設置し、その基盤安定材として利 携、漁業者主体
ルギーの供給。
用。
の方策。
(1)保護礁
沿岸
分野
比較的なだらかな若狭湾に人工海底
底曳き網、底刺
山脈を築造し、底層の高栄養塩海水
し網漁業等の障
を湧昇させ、一次生産を増大させ
害。
る。人工山脈資材として利用。
安全性の確保
1.1.保護礁(ズワイガニ等)
(方式・目標)
• ズワイガニやアカガレイは若狭湾の水深200~300m層に生息している。
若狭湾沖合いは平坦な場となっており、保護礁等を設置することによ
り、産卵場や着底稚ガニの保護が可能となる。
ズワイガニ保護礁のイメージ
\
ズワイガニ保護
礁設置位置
形状:3.25×3.25m角型魚礁,
2m角型魚礁等。360個設置。約
12km2。
設置場所:若狭湾内外水深200
~300m層。
産卵場保護
保護水面の設置
保護礁の事例
期待効果:過去の調査結果に
基づくとズワイガニで2倍、ア
カガレイで1.5倍の資源量増加
が期待。
アカガレイ漁業でのズワイガ
ニ混獲防止に効果。
課題:漁業者の利害対立。
1.2.人工湧昇基盤
(方式・目標)
• 人工湧昇による底層水起源の高栄養塩の表層浮上による一次生産の増
大。これによるブリ等の若狭湾への滞留時間の増大を図り漁獲量の増大
を狙う。魚礁効果も期待。
人工湧昇基盤のイメージ
人工海山: 10m角型ブロック等を5000個使用。
120m×60mに二つの高さ7mの山より形成。
衝立式湧昇基盤:高さ10m×幅20mの衝立を10個
程度併設。
設置場所:若狭湾内。
期待効果:最大1.6倍の一次生産の増大。漁獲量の増
大。ブリの若狭湾内への滞留時間の増加。
課題:漁業者間の利害対立。
人工海山イメージ
60m
7m
120m
12m
空間容積:約24000m 3
衝立式湧昇基盤イメージ
1.3.魚礁
(方式・目標)
• 若狭湾の平坦海域に魚礁を設置し、魚類の滞留を促進して漁獲量の増大
を実現する。
魚礁イメージ
配置イメージ
単体設置
種々の魚礁事例
集中設置
小群設置
メバル・カサゴ・アイナメ・イシダ
メバル・カサゴ・アイナメ・
マダイ・ヒラメ・カレイ・ス
イ
イシダイ・クロソイ・マダラ
ズキ・ズワイガニ等
クロソイ・マダラ・ヒラメ・カレイ・ス
等
ズキ・イサキ・マアジ等
組合せ設置
マアジ・サバ・ブリ・カンパ
チ・イサキ・メバル・カサ
ゴ・アイナメ・イシダイ・ク
ロソイ・マダラ等
集中多段設置
メバル・カサゴ・アイナメ・
イシダイ・クロソイ・マダ
ラ・スズキ・イサキ・マア
ジ・サバ・ブリ・カンパチ等
1.4.藻
礁
(方式・目標)
• 近年の藻場衰退(沿岸開発やアイゴ等の捕食圧増大)への対応
• 沿岸域や漁港内に藻場育成用人工基盤を設置
• アワビ放流と併せ、人工藻場造成によるアワビ生産量の増大化
藻場生態系のイメージ
形状:多様。広さ多様。
設置場所:若狭湾沿岸域。漁港内等。
期待効果:沿岸生態系の維持。産卵場の維
持。稚仔魚等の保育場。アオリイカ、アワ
ビ、サザエ資源の維持増産等。
課題:造成藻場の維持。
沿岸藻場イメージ
海藻類着生用炭担体
藻場造成イメージ
1.5.沿岸環境保全用資材
• 三方五湖等の底層の貧酸素化に伴う硫化水素の発生や
アオコ発生を抑制する資材
• 大阪湾にある海砂採取跡地の青潮対策用資材への適用
(県外)
三方五湖等の汽水域で起こる底質環境の
悪化要因
アオコ,赤潮発生,魚
介類斃死
河川水流入
有機物堆積
海水流入
密度躍層形成
硫化水素発
生,リン溶出,
底層の溶存酸
重金属溶出
素低下
硫化水素発
生,リン溶出,
重金属溶出
対策
溶出抑制
1.6.人工リーフ
• 近年砂浜の後退が顕著となっており、砂浜沖寄りに人工リーフを設置し、砂
浜後退の防止が進められている。このリーフ材として用いる。
海藻類着生用炭担体
1.7.沿岸風力発電等の基盤材への適用
(方式・目標)
• 国土交通省が中心となり、港湾空間への風力発電施設の設置が進められている
が、導入量は少ない。
• 漁港等への設置も視野に入れれば、その適用範囲は広まると考えられる。また
漁業者にも利点がある。
沿岸風力のイメージ
風況マップ
形状:発電機の基盤として再
生コンクリートを用いる。
設置場所:若狭湾内の港湾、
漁港内に設置
基盤のイメージ
わが国の施工例
期待効果:陸上風力設置の騒
音等の制限を受けにくい。沿
岸域は内陸に比べて風が強く、
また安定している。
課題:沿岸風力によって、事
業性は生まれるか。
2.事例調査
• 再生コンクリートの利用が想定される海洋構造物の事例
種類
事業主体
設置位置
規模
効果対象
(1)保護礁
京都府
丹後半島沖
FP魚礁(コンクリート製、3.25m角)、角 ズワイガニ,ベニズワ
型魚礁(コンクリート製、2m角)により
イ,アカガレイ資源量
11.8km2の増殖場(保護区)を造成。
の増大
(2)藻礁
大阪府
関西国際空港
1期空港島護岸では護岸延長11.2km の約78%
藻場の造成、魚類の餌
を占める8.7kmの緩傾斜石積護岸において、
場、産卵場の形成
種苗の移植による藻場造成が行われた。
(3)人工湧昇基盤
長崎県
生月島沖
(4)沿岸風力発電
等の基盤材
瀬棚町
(北海道)
瀬棚港
底面の延長が120m、幅60mの山脈。
沈設されたブロックは約5000個。
風力発電機
定格出力:600kW×2基
年発電量:約4,200MWh
プランクトンの増大、
大型魚類(ヒラマサ
等)の蝟集
再生エネルギーの供給
2.1(1)
保護礁(ズワイガニ等)
• 福井県や京都府ではズワイガニ保護礁を設置することによるズワイ
ガニやアカガレイの持続的生産が可能なことを証明している。
• 一方で、保護礁の設置は、ズワイガニ漁業(主に籠網)とアカガレイ
漁業(底曳き網)で利害対立する可能性も有している。
【京都府事例】
●昭和57年度~62年度に増殖場(第1保護区)造成。
●平成15年度から丹後半島沖(経ヶ岬沖北北西約26km、
水深270m)に、ズワイガニの増殖場を造成。
●外周部にFP魚礁(コンクリート製、3.25m角)136個、
内部に角型魚礁(コンクリート製、2m角)360個を沈設し、
11.8km2の増殖場(保護区)を造成。
平成17年度は、FP魚礁46個と2m角型魚礁120個を沈設し、
4km2を造成。(昨年度と併せて合計6.4km2)
2.1(2) ズワイガニ保護礁が底魚資
源に及ぼすプラス効果
• 保護礁の設置場所付近の調査で、ズワ
イガニ(2倍)、アカガレイ(1.5倍)
の生息密度の増加を確認。
保護区と一般海域におけるズワイガニとアカガレイ
の生息密度(個/100m2)
試験区と対照区におけるアカガレイの生息
密度(個/100m2)
2.2.関西空港護岸の藻場造成
1期空港島護岸では護岸延長11.2km の約
78%を占める8.7kmの緩傾斜石積護岸にお
いて、種苗の移植による藻場造成が行わ
れた。
西側藻場では被度5%以上は511m/年
、50%以上は481m/年で藻場が拡大
南側藻場では被度5%以上は217m、50
%以上は65m/年で拡大
人工湧昇基盤のイメージ
2.3.人工湧昇基盤
●2000年に長崎県生月島沖に石炭灰コンクリート
製人工海底山脈を築造。
●形状は高さ12mの山を2つ持つ。2つの山の間
を高さ7mの稜で結ぶ。底面の延長が120m、幅60
mの山脈。山脈の法線が海流と潮汐流を考慮し最
も湧昇流量が多くなるよう設計。
●沈設されたブロックは約5000個。
設置場所
魚群探知機による魚類分布
(事前)
(事後)
湧昇流の形成が確認され、一次生
産と魚類の増加が確認された。
一次生産の変化
基盤の設置状況
2.4.沿岸風力発電
風力発電機設置状況
【北海道
瀬棚町事例】
愛称:風海鳥(かざみどり)
設置場所
設置者:瀬棚町
稼動年月:平成16年4月~
定格出力・基数:600kW×2基
年間発電量:420万kWh
タワーの高さ:40m
海中林、魚礁等設置状況
風車直径:47m
その他:基礎杭間に海中林、魚
礁、蓄養施設を設置。
3.リサイクル産業化の可能性
• 通常のコンクリートに比べて強度が低く利用が制限。この
ため、高機能性を付与し付加価値を高める必要がある。
• 水産系は国,自治体の補助金依存型。投入費用に比べて回
収金額が小さい。漁協が事業主体となれない。
• 国土系は国自治体事業であり毎年の発注は期待できない
(不安定)。
• エネルギーも自立的事業化は難しい(イニシャルコストが
大きい)。
• 補助金を当てにした継続的事業化しかない。福井県の水産
資源や海岸保全、再生エネルギーシステム構築に適合した
事業。
• 廃コンクリートと他の未利用資源との複合事業化を模索す
る。間伐材等未利用資源等との融合による利便性のアイデ
アが必要。
3.1.海洋構築物事業創出の可能性
県事業等への適合性:水産分野4事業,土木関連1事業,新エネルギー関連1事業。
創出される民間事業:4事業の創出(高付加価値海洋構造物製造事業,未利用バイオマス有効活用事
業,海洋土木事業,沿岸風力発電事業)。
既存事業への派生効果:セメント需要の増大,漁獲量の増大,間伐材高付加価値化,土木施工の増大。
(県事業への適合)
(林野関係補助事業)
間伐材の区付
加価値化
未利用バイ
オマス有効
活用事業
農業廃棄物
間伐材
間伐材加工
山林の荒廃防止
水産廃棄物
炭化・その他の加工法
(水産関係補助事業)
コンクリート
廃材
再生・加工
(複合利用による高付加価値化)
●保護礁基盤
●藻礁基盤
●人工湧昇基盤
●魚礁基盤
●人工リーフ用ブロック
●沿岸風力基盤材
高付加価値海
洋構造物製造
事業
(凡例)
派生して創出される民
間事業
既存事業の需要増大
(社会的意義)
●底魚資源増産事業
●藻場磯根資源回復事業
●回遊性魚類増産事業
●定棲性魚類増産事業
○その他
投入・設置
温暖化対策,
バイオマス・ニッポ
ン
水産資源の持続的生産
と国民への優良タンパ
ク供給
(土木関係補助事業)
海洋土木事業
●国土保全事業
土木施工事業
の増大
国土の保全
(新エネ関係補助事業)
●沿岸風力発電事業
漁獲量増産
再生エネルギー増産,
漁村の収入安定化
海水浴場保全
沿岸風力発電
事業
発電収益
天然骨材の使用削減
3.2.若狭湾海洋構築物設置位置イメージ
• 若狭湾内の海洋構築物設置可能場所
• 若狭湾内の港湾位置図
保護礁
湧昇堤
魚礁
図内数値は港湾位置
藻礁
流況データ(当社予測データ)
若狭湾内での海洋構築物設置可能位置概要
漁業権等との関係により、簡単には設置困難
港湾域内では藻礁の設置や、沿岸風力発電施
設の設置が可能かどうかの検討が必要。
福井県内で30箇所以上。
3.3(1).底魚資源増産事業
• 構造物:保護礁の広域設置
• 設置場所:若狭湾口水深200~300m層
• 効果対象:ズワイ,ベニズワイ,アカガレイ資源
の増産と漁獲量の安定的増加
• 方法:間伐材と再生コンクリート複合資材開発
• 波及効果:間伐材有効利用、深海への木材投入に
よる長期的CO2固定効果、将来の有用木材の回収に
よる新規産業化
• 課題:漁業者間の調整、木製魚礁の深海投入安定
性(CO2の長期固定能)、将来の木材回収と有効利
用の可能性
3.3(2).回遊性魚類増産事業
• 構造物:人工湧昇基盤
• 設置場所:若狭湾内の平坦地形域
• 効果対象:ブリ、ヒラマサ、アマダイ、マダイ等
の資源量の増加と漁獲量の増産
• 方法:再生コンクリート資材の大量投入、炭化物、
有機系加工添加資材混入等による栄養塩供給量の
増大
• 波及効果:炭化物混入資材による微生物の付着面
積の増大、これによる降下有機物の分解促進、炭
化物投入によるCO2長期的固定
• 課題:適正な設置場所、漁業者間の利害対立
3.3(3).定棲性魚類増産事業
• 構造物:魚礁
• 設置場所:沿岸域(水深50~100m)
• 効果対象:マダイ、アマダイ等の有用魚類の漁獲
量の増産
• 方法:間伐材と再生コンクリート複合資材開発
• 波及効果:間伐材有効利用、CO2固定効果
• 課題:適正な設置場所、漁業者間の利害対立
3.3(4).藻場・磯根資源回復事業
• 構造物:藻礁の造成
• 設置場所:沿岸域、漁港内設置
• 効果対象:藻場回復、アワビ、サザエ、ウニ等の
漁獲量の増産
• 方法:各種炭化物と再生コンクリート複合資材開
発、炭の多孔質性利用による海藻着生増大、栄養
塩等の溶出促進、炭化物による再生コンクリート
強度の確保
• 波及効果:有機系廃棄物の炭化によるCO2の長期的
固定
• 課題:共同漁業権区域内での利害対立、適正設置
場所、アワビ種苗生産等とのリンク、持続的藻場
形成に適正な場所の選定
3.3(5).国土保全事業
• 構造物:人工リーフ(藻場機能を有した人工リーフ)
• 設置場所:海岸侵食の大きい沿岸域
• 効果対象:砂浜の後退防止、藻礁との併設による海水
浴場としての観光的価値増大
• 方法:藻場機能を有した人工リーフを開発、有機系未
利用資源の利用による栄養塩供給技術
• 波及効果:藻場形成機能、これに伴うアワビ、ウニ、サ
ザエ等の増産
• 課題:漁業者との利害対立
3.3(6) 沿岸風力発電事業
• 構造物:港湾、漁港防波堤への沿岸風力発電設備
の設置と、これに必要な資材への再生コンクリー
トや廃棄コンクリート塊の適用
• 設置場所:港湾、漁港内
• 効果対象:沿岸風力発電施設建設費の低価格化、
自然エネルギーの増産、漁業者の収入安定化
• 方法:風力発電施設設置基盤として適用性、適用
条件、強度の確保、廃棄コンクリート塊を含めた
総合的活用法の確立
• 波及効果:温暖化対策、電力会社のRPS対応
• 課題:イニシャルコスト等の負担法、持続性、県
内全域展開のための政策
4.アクションプログラム
•
•
•
大量の廃コンクリートの再利用を可能とするには若狭湾総合利用計画等のグ
ランドデザインをベースとした継続的事業として成立させる必要がある。
海域・港湾の有効利用、廃棄物の有効利用を融合した循環型社会形成に貢献
できる計画を策定し、この中での廃コンクリートの活用をめざす。
県内の廃棄物を県内で有効利用可能な体制づくりの一環としての位置づけ。
事業主体
福井県
県内の建築物の解体により発生し
た廃棄物(廃コンクリート)を県内に
おいて有効利用
4.1.新規構造物適用の手順
•
水産基盤整備事業においては魚礁等の新規構造物の適用までの手順が定めら
れている。
● 水産基盤整備事業における新規構造物適用までの手順
①開発メーカーの自社調査による
有効性確認
新規構造物について検討すべき項目・内容
項目
②構造物の安全性等の確認
③効果調査(実証試験)
安全性
生物や環境に対する化学的、物理的悪影響がないこと。
また、製作・設置作業中人に対して労働・衛生上安全であること。
耐久性
構造的に30 年以上の耐久性を有すること。
機能性
水産動植物の増殖場の造成等に係る新規構造物にあっては、増殖機能を有する構造であること。魚礁
の設置に係る新規構造物にあっては、有用水産物が蝟集する構造であること。
経済性
新規構造物によって造成される面積(m2) または空m3当たりの製作費等が、従来から利用されている構
造物との比較において相応の額であること。
実行性
開発メーカー等が新規構造物の設計製作施工等の実施または技術の供与について専門技術者を有し、
これらの業務を円滑に行うことができること。
④効果調査結果の検討
⑤関係資料の提出
⑥検討会召集
⑦適格性承認
検討内容
4.2(1).嶺南地方における海洋構築物
技術開発、事業化検討
•
•
魚礁、水産動植物の増殖場等の水産系利用を目的とした海洋構築物を想定
嶺南地方において技術開発を行い実証試験を行う。→事業化検討
4.2(2).チーム編成
•
•
有効な技術開発を行うには、産官学の連携による共同研究が必須である。また、受
益者である漁業協同組合との連携が必要である。
嶺南地方には、福井県水産試験場、福井県立大学が近郊にあり、産官学連携の共
同研究を行いやすい。
漁業協同組合
役割分担
県のニーズ
ニーズ(対象種、設置場所)、効果調査等
連携
(水産物の持続的生産)
産 : 民間企業(セメント会社、環境コンサルタント会社)
再生コンクリート資材の開発(企業化検討)、構築物の設計・施工、適地調査、環境
影響調査、効果調査等
官 : 福井県、福井県水産試験場
対象種、設置場所等の計画、魚礁効果の評価等
学 : 福井県立大学 生物資源学部
材料の選定(未利用バイオマスとの組み合わせ等)、適正構造、設置場所の検討等
4.2(3).実用基礎研究
●材料の選定
再生コンクリートのみの利用、あるいは間伐材等の未利用バイオ
マスとの組合せを検討する。
●期待効果の評価
海洋構築物に期待される効果について、必要性(漁業者ニーズ)
等から評価する。
●安全性等の検討
材料の化学的、物理的安全性について検討する。また、波力、流れ等
に対する基礎的な強度について把握。
●適正構造検討
効果を発揮する構築物の構造の検討を行う(表面積大→餌量の増大
等)。
●環境影響検討
材料の化学的安全性の確認(有害物質等の溶出試験)を行う。また、
構築物設置後の地形、生態系等に与える環境影響について検討する
。
●適地選定(効果予測)
海象、底質等の情報を収集し設置場所を選別する。また、設置後の効
果について予測する。
実用化可能な技術の選定、有効性の検討
4.2(4).野外実証試験
●開発資材の特性
複数の材料から構成される構築物については、材料の特性を踏まえ
て設置後に必要な機能、安全性が確保されるように適切に設計する。
●対象種、対象効果、
対象海域検討
地元漁協のニーズに合った魚種を選定する。また、餌場、産卵場等の
対象とすべき効果および対象海域について検討する。
●環境影響検討
材料成分の溶出試験を実施し化学的安全性を確認する。また、漁場
への設置に際しては漁業への影響、地形、生態系への影響等に十分
留意する
●費用対効果
従来品と比較して相応の額であるか。
●試作品の設計・製作
実証試験用の試作品を作成する。
●安全性等の検討
化学的、物理的安全性の確認。構造的な耐久性について確認する。
●地元漁協との調整
構築物の設置場所、効果調査等について地元漁協の了解を得る。
●効果調査
視認調査(写真、ビデオ撮影等)、漁獲調査等を行い、水産動植物の
増殖殖効果、蝟集効果を確認する。
委員会において検討、承認後、事業化へ
4.3.該当する既存補助事業
• 水産関連該当事業名と内容、事業主体、計画事業費等を整理。
• その他電源立地交付金、電源特会等。
事業名
概要
事業主体
計画事業費
地域水産物供
給基盤事業
共同漁業権の区域内等地先の漁場と第1種
漁港等の一体的な整備を行う事業。中、 県、市町村
小規模の漁場と漁港の整備。
3億円以上
広域漁港整備
事業
第3種または第4種漁港等、生産、流通加
工の拠点となる漁港の整備。大規模な漁
港の整備、漁場整備も含める。
県
3億円以上
広域漁場整備
事業
共同漁業権の区域外の大規模な漁場の整
備。漁場整備単独の事業。
県
3億円以上
漁港漁場機能
高度化事業
既存の漁港、漁場の機能向上のための、
施設の改良等を行う事業。
県、市町村
3億円以下
漁場環境保全
創造事業
漁場の生産力の回復を図るためのヘドロ
等の除去、覆砂、藻場・干潟等造成事
業。一定期間禁漁等を行う資源保護礁の
整備等。
県、市町村
5千万円以上
市町村は5百万円以上
漁港水域環境
保全対策事業
漁港区域内におけるヘドロ等の除去、覆
砂、藻場造成等による漁港区域内の水質
保全等を行う事業。
県、市町村
記載なし。
4.4.事業化までのスケジュール
• 10年後の継続的事業化に向けてのスケジュール(案)
年
項目
グランドデザイン策定
実用基礎研究
野外実証試験
事業化検討
事業化
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
5.嶺南地方において技術開発・事業
化検討を行うメリット
●産官学の連携による技術開発が可能
→福井県立大学、福井県水産試験場が近郊
にあり、共同研究が可能である。
●優れた研究フィールド
→嶺北と比較して複雑な地形であり、様々な
環境条件での実証試験を行うことが可能
→様々な地理的条件の漁港、砂浜等が多数
存在し、風力発電設置場所等の選択肢が
多い。
→原子力発電所が複数あり、電力会社との
連携をとることも考えられる(温排水利用)。
嶺南地方は再生コンクリートを用いた海洋構築物の技術開発・事業化検討のた
めの環境条件が揃っている。