1-1 組織としての企業 - 東北大学経済学部

2 雇用システム
2006年度「企業論」
川端 望
1
2-1 雇用ルール
2
企業を企業にする雇用契約
組織とは人の組織であり、企業を人の組織と
しているのは、複数労働者の雇用関係である
すべて1人で活動していたら企業ではない
では、雇用関係のどのような性質が、企業を
企業にするのか--二つの候補DO
協業を可能にすること
ある程度長期に契約が続くこと
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TCEからみた労働(力)取引の組織化の必
要性(例)
 探索コストの存在
仕事1回毎に新たな労働者・雇い主をさがすのはたいへん
なコストがかかる
 取引の不確実性と複雑性+限定合理性
仕事の内容とその変化の可能性、対応する対価について完
璧に雇用契約に明記できない
 情報の非対称性→監督・管理のコスト
雇い主は労働者の技能や仕事の成果を正確に知ることは
困難
労働者は労働条件について雇い主の持つ情報をすべて知
ることはできない
4
継続的な雇用契約の束としての企業
 企業特殊的技能(firm-specific skill)(←→一般技
能)の存在
特定の企業では役立つが、それ以外のところでは生産性が
低下するような技能
 企業特殊的技能への投資は埋没費用となる
他企業への転職では無価値になる
双方独占→事後の機会主義の危険→投資しない
労働者側の機会主義(仕事をしない)は困難とすると……
 企業には投資するインセンティブがある
 労働者は、継続的な雇用により、その技能が発揮されて報酬
がもらえる保証がない限りは、投資するインセンティブがない
5
TCEから見た正規雇用と非正規雇用
 正規雇用
組織的解決
取引特殊的技能必要な
場合
長期契約
機会主義をコントロール
する努力
 非正規雇用
市場的解決
取引特殊的投資不要な
場合
短期契約
労働内容・条件について
契約で明記
6
正規雇用の特徴
企業特殊的技能が必要であれば
事前に労働者は技能形成していないから雇用後に
形成
時間と費用がかかる上に、回収の見込みが必要
長期雇用がいったん必要になると
不完備契約
将来にわたって仕事内容や賃金を明示できない
雇用期間も明示しない(長期雇用の典型は、長期
に定められた雇用でなく、期間の定めのない雇用)
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正規雇用と機会主義(1)
 取引特殊的資産は、一般的には双方独占をもたら
す
 しかし、労使の交渉は使用者が優位に立ちやすい
解雇の脅迫vsはたらかないという脅迫
 個別交渉では圧倒的に雇用者が強い。
• 使用者:かわりの労働者を社内外で見出すコスト
• 労働者:転職先を見つけるコスト。生活水準低下のリスク
労働三権(団結権・団体交渉権・争議権)による労働組合活
動の正当化
 1対労働者集団で労働者の不利がやや補正される。
8
正規雇用と機会主義(2)
 企業の機会主義
解雇を脅しとした労働条件引き下げ
 労働者の機会主義
大小さまざまな怠業
労働者の役得
 雇われ経営者の機会主義
立場は企業側だが形式は労働者
役得
 縁戚への便宜供与、豪華な役員室、社用資産の個人利
用....
9
協業(チーム生産)を実現する契約の束とし
ての企業(1)DO
Archian and Demsetz[1972]による定式化
結合生産によるチーム生産の問題点
各要素所有者の限界生産性測定の困難
機会主義→怠業と生産性低迷を招く
解決
管理・監督者の設定
管理・監督者を純利益の独占で動機づける
メンバーの増減、変更権を与える
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協業(チーム生産)を実現する契約の束とし
ての企業(2)
古典的企業とは以下のような特徴を持つ契約
構造である
投入物の結合生産
複数の投入物所有者
以下のような一人の当事者(オーナー)を持つ
投入物結合のすべての契約に関わる
すべての投入物の契約について、他の投入物所有者と独
立に再交渉する権利を持つ
残余請求権を持つ
その地位を売却する権利を持つ
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雇用契約と管理
 雇用契約の特徴:雇用された従業員は、ある範囲に
おいて雇用者の権限に従う
これも形式上、対等・平等な契約である。
参考:マルクスの「労働力商品論」は「契約の束」論と似てい
る(思想の方向は正反対だが)
 労働者は「労働」でなく「労働力」を売り、対価として賃金を受け
取る
 買った資本家は、労働力を自由に消費する=資本家の指揮
の下で労働させる
権限による管理→階層的組織を通した管理・監督によって
労働者の機会主義を抑えるのが企業の特徴
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雇用契約から生み出される事後的機会主義
 雇用者の権限は厳密に定められない
 雇用者から見た「正当な権限の行使」が、労働者か
ら見た「権限の濫用」となることがありうる
効率性を追求したはずが非効率に陥ることがありうる
参考:マルクスの絶対的剰余価値論
 資本家:買った労働力を利益が出るまで使うのは当然だ
 労働者:賃金分だけ働くのが当然だ
 この問題は、市場によって自動的解決されることは
ないし、市場経済の見地から見てどちらが正しいと
一義的に正当化できない
 雇用ルールという組織的解決が必要
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雇用ルールの形成
どのようなルールをどのようにして定めるか
慣行、労働契約、労働協約、行政措置、法律….
個別労使交渉、団体交渉、ストライキ、選挙、法改
正….
明示的な契約や法律になっていない暗黙の
ルールも存在する
いわゆる「終身雇用」は、大企業男子正社員と雇用
者の間の暗黙のルールであり、またそれであるに
過ぎない
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雇用ルールの方向
使用者
権限強化の基本的手段は、労働者間で競争させる
ことである
労働者間競争が効率を生むとは限らないことに注意
紛争による非効率の回避
労働者
労働者間競争圧力の回避
少なくとも競争ルールの設定
賃金・昇進ルールの設定
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協力の組織化(1)
 権限とルールの一般的限界
同じルールでも、労使が協力して生産性を上げて成果を分
け合い、満足度が高まることも、その逆もありうる
どうすれば機会主義を押さえて協力を組織できるか?
 権限の恣意性とルールの硬直性による問題
例:1980年代前半までのアメリカ大企業のブルーカラー職
場
 細分化された職務(job)と先任権(seniority)に基づくシステム
• 経営側:計算可能性の高いシステム
• 労働組合側:各級管理者の恣意を排除
 実績・能力評価に基づく配置の困難
 職務の再編成の困難
 経営者の解雇権は強い
 生産組織の硬直化・非効率→一定限度を超えると大量レイオ
フ
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協力の組織化(2)
組織コミットメントの必要性
忠誠心、愛社精神もこれに含まれる
一方的コミットメントが通常は期待できないので、コ
ミットメントの交換である必要
期待と義務の交換。
• 「よくがんばれば会社はちゃんと報いてくれるはずだ」
• 「あつく処遇すれば、従業員はがんばってくれるはずだ」
問題点DO
企業特殊的技能と組織コミットメントは区別できる
か?
17
2-2 技能形成
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企業にとっての正規雇用と非正規雇用
 違いを分ける要因
企業特殊的技能の重要性
組織コミットメントの重要性
 正規雇用のコスト
相対的高賃金
 非正規との格差の大小によって異なる
社会保障関連コスト
長期雇用への期待に応える必要
 解雇が容易であるかどうかによって異なる
昇進・昇給への期待に応える必要
 慣行によって異なる
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TCEによる技能形成と雇用方式の関係把握
 企業特殊的技能
 企業内部での、雇用後の形
成
 OJTの重要性。それだけで
はないが
 学校での技能形成に依存し
ない
 採用時に潜在能力判断
 シグナルとしての学歴、学
校銘柄
 一般技能
 企業外部での、雇用前の形
成
 企業外に形成のしくみが必
要
 採用時に実績や、より顕在
的な能力判断
 労働者の移動可能性を高
める
 特定企業との長期雇用を促
進し、労働者の移動可能性
を高めない
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知的熟練論による説明(1)
 知的熟練論(小池[1989][1991])は、洗練された企
業特殊的技能論
職場には「ふだんの作業」と「ふだんとちがった作業」があり、
後者は「変化と異常」に対応する作業である。後者には、技
術者と共通する知識を伴った技能が必要であり、これを「知
的熟練」と呼ぶ
日本の製造業では生産労働者が知的熟練を持ち、「ふだん
とちがった作業」も担当する「統合方式」が広く普及したため
に、高い効率性が達成された。
知的熟練は企業特殊的であり、主としてOJTによって形
成される。したがって、その形成は長期雇用が前提であ
る。
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知的熟練論による説明(2)
知的熟練の幅と深さは、2枚一組の仕事表に
よって測定され、会社はこの深さを報酬に反映し
ている。
勤続とともに上昇する賃金は、知的熟練の蓄積
を反映しており、またその形成を促している。
長期雇用と企業特殊的熟練の形成により、従業
員の団結は企業別組合という形を取る。
かくして、終身雇用、年功賃金、企業別組合
は、知的熟練論(企業特殊的技能論)によっ
てすべて整合的に説明できる
22
訓練のコストと収益(図2.3)
 一般的技能の訓練コスト
一般的には個人が負担し、企業は負担しない
 離職したら企業は訓練コストを回収できない
個人は訓練コストを負担し、技能=賃金向上とともにこれを
回収する
 企業特殊的技能(とみなされるもの)の訓練コスト
一般的には企業が負担する
 雇用を失えば個人は訓練コストを回収できない
企業が訓練コストを負担して、当初生産性を上回る賃金を
払い、後に生産性を下回る賃金によって回収する
それでは労働者に技能形成のインセンティブがないので、
訓練コストの一部を労働者に負担させ、後に回収させる
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右肩上がり賃金カーブの理解
 誰もが右肩上がり(年齢または勤続とともに賃金が
上がる)なわけではない
男女の勤労者と建設職人の違い(図2-A)
男女別事業所規模別の違い(図2-B)
 労働者類型:右肩上がりは大企業男子正社員の話
民間大企業型労働者(男子中心)(右肩上がり)
公務員型労働者(右肩上がり)
低賃金型労働者(弱い右肩上がり)
パート型労働者(女子中心)
職能的労働者
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右肩上がり賃金カーブの説明(図2.4)
最初の二つの時期は企業特殊的技能仮説で
も説明できる
①初期の訓練期間 W>P
②それに続く時期 W<P
企業による訓練コスト回収
そこから先はできない
③ W<P
④ W>P → 定年退職
④があるから③にしなければならない。では、なぜ
定年前に賃金が生産性を上回るのか?
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技能とは別の右肩上がり賃金カーブ説明
 Cheatingを阻止するためという説明(ラジアー
[1998])
若年時におけるP>Wは企業への強制貸し付けであり、あ
る時期からP<Wとなることで回収する。
Cheatingを行えば解雇されて貸し付け分が回収できなくな
るリスクが高まる。
定年制が必要。
 ラジアーの恣意的仮定(野村[2006]を参考に)DO
Cheatingでいきなり解雇されないケース(日本)は説明でき
ない
労働者の効率を観察はできないがcheatingは発覚するとい
う仮定は無理。
結局サボるインセンティブはあるのか、ないのか?
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知的熟練論に対する実証的批判DO
 野村[1993][2001a][2001b]による批判
 「ふだんとちがった作業」の定義はあいまいである
 OJTで育成される直接労働者の技能は限られており、実際には
専門工と分業している
 専門工にとっては長期のOFF-JTが不可欠である
 2枚一組の仕事表は存在せず、そのもとになった調査報告でそん
ざいすると称されるものは小池の創作である
 仕事表は存在しないし、様々な技能確認表についても、それによ
る査定が行われて技能が報酬に反映するという関係はない。
 直接労働者と専門工の技能の違いは賃金に反映していない
 企業特殊的技能から日本企業の長期雇用や右肩上がり賃
金カーブを説明し、さらに日本企業の競争力の高さを説明す
ることには、実証的根拠がない
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企業特殊的技能論への理論的疑問DO
技能とは何か
定義:技芸をおこなううでまえ。技量(『広辞苑』)。
→機械装置でなく人間の側に属する
様々な次元での技能(金子[1997])
テクニカルな意味での技能:社会関係抜きに存在
する
資産としての技能:社会関係ゆえに存在する
何が技能であるかは社会的に決まる
• 組織コミットメントと技能は区別がつくか?
誰の資産になるかは社会的に決まる
• 労働者個人?集団?会社のもの?
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技能自体とその社会的評価は異なる
図2.2のBからCへの技能形成
技能はテクニカルには一般的性格を強める
長期雇用のシステムの中で、企業特殊的技能とし
て評価される
因果関係が逆転する
企業特殊的技能→内部昇進制と長期雇用(転職困難)
ではなく……
内部昇進制と長期雇用(転職困難)→技能の企業特殊
化
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技能形成と雇用方式の関係把握の別の可
能性DO
 組織コミットメントが必要な
場合
 企業内部での、雇用後の形
成
 OJTの重要性。それだけで
はないが
 学校での技能形成に依存し
ない
 採用時に潜在能力判断
 組織コミットメントが不要な
場合
 企業外で技能が形成されて
いればよい
 採用時に実績や、より顕在
的な能力判断
 労働者の移動可能性を高
める
 シグナルとしての学歴、学
校銘柄
 特定企業との長期雇用を促
進し、労働者の移動可能性
を高めない
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技能形成と雇用方式の関係把握の別の可
能性DO
 転職が不利な労働市場が
できてしまっている場合
 企業内部での、雇用後の形
成
 OJTの重要性。それだけで
はないが
 学校での技能形成に依存し
ない
 採用時に潜在能力判断
 転職に支障がない労働市
場の場合
 企業外で技能が形成されて
いればよい
 採用時に実績や、より顕在
的な能力判断
 能力や実績により労働者は
移動
 シグナルとしての学歴、学
校銘柄
 能力や実績があっても労働
者の移動に障害
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企業特殊的技能論への疑問のまとめ
 右肩上がり賃金カーブがあてはまる労働者の範囲は限られ
る
 TCEの立場に立っても説明できる範囲に限度がある
 実証的根拠がない
 企業特殊的技能以外の説明要因が存在する
 組織コミットメントとの区別が曖昧
 転職困難な労働市場が先にあって、一般的な技能も企業特殊的
と評価される可能性
 技能はテクニカルなものとして存在するだけでなく、社会的に
構成されていることが見落とされている
 資産としての技能の独自性が見落とされている。日本企業では、
技能は労働者の資産や、交渉力の基礎になっていない
 組織コミットメントや、転職困難な労働市場という社会関係の中
で、ある種の能力が「企業特殊的技能」とみなされる
32
日本企業に関するオルタナティブな説明
次章で行う
33
雇用保障
 長期雇用における労働者の貢献と企業からの支払
いのバランスは、雇用保障が前提である
日本では、それは法制度ではなく期待と慣行、判例により成
り立っている
 崩壊のパターン(日本)
中高年に対する雇用リストラは、雇用保障の期待を裏切る
それを見た若年労働者は、長期雇用とそれに対応した賃金
カーブの会社にコミットメントしなくなる
 例:W>Pのうちに転職する
 例:資格と専門職への志向
会社は初期訓練費用を負担したがらずに、「即戦力」を個人
や教育制度に求める
34
解雇ルール
企業は、期間の定めのない雇用における解
雇が機会主義でないことを示す必要がある
解雇自由論は機会主義の正当化とみなされる
ルールの類型
「解雇の自由」か「人選の自由」か
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日本の大企業の場合(1)
解雇に際しての日本の大企業の慣行
赤字にいたって雇用調整
まず配当や経営者報酬をカット
残業削減。新規採用停止。
配置転換。出向。
希望退職
以上について企業内組合との協議
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日本の大企業の場合(2)
日本における解雇権濫用の法理(整理解雇
の4条件)
解雇の必要性
解雇の回避義務
人選の妥当性
労働組合・労働者との協議義務
解雇自由の主張の意味
長期雇用の放棄?範囲の縮小?
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技能形成論からの論点
雇用保障の否定の意味
企業特殊的技能の重要性が低下した?
組織コミットメントの重要性が低下した?
転職市場が整備された?
単なる短期的視野での人件費削減?
機会主義の悪循環
労働者は初期の訓練機関(W>P)のうちに転職
企業は訓練費用の負担を拒否。
技能形成を個人と教育機関に求める?
38
2-3 雇用システムの多様性
39
賃金カーブのパターン
図2.5からみると、年功賃金カーブは一般的
現象ではない
日本、フランス以外ではブルーカラーの賃金カーブ
は寝ている
40
雇用と失業のパターン
相対的には、日本・ドイツ・フランスが長期雇
用の比率が高く、アメリカは短期雇用の比率
が高い
失業期間の短さからアメリカの雇用は流動的
である
相対的に、「短期雇用・短期失業」のシステム
と「長期雇用・長期失業」のシステムが存在す
る
41
内部労働市場をめぐる混乱と整理DO
 内部労働市場:「労働の価格づけと配分が一群の管理の
ルールと手続きによって支配されている管理上の単位」。
 企業内労働市場とクラフト内労働市場
 閉鎖的労働市場と開放的労働市場
 内部労働市場概念の意味
 労働市場は純粋なスポット市場ではなく、権限や協力の契機なし
には成り立たない
 内部労働市場は企業内労働市場に限られない
 権限や協力の契機を含む多くのものが内部労働市場に含まれる
 テキストが言う「内部労働市場」はほとんど内部昇進制のことであ
る
 外部労働市場とは転職のことではない
 「一群の管理のルールと手続きによって支配されていない」市場
のことである
42
図2.6の修正
非正規の労働市場
未組織労働市場
(理論的想定)
内部訓練
職業訓練
内部昇進
技能資格
内部昇進制
移動可能性
職業別労働市場
(日本の大企業男子
正社員)
43
未組織労働市場DO
価格メカニズムが作用する労働のスポット取
引のシステム
取引コストの市場的解決
短期雇用
技能形成への企業の不関与
雇用のルールは不要
理論的な想定。実際の短期雇用・非正規雇
用は、多かれ少なかれ組織化される
パート労働者の均等待遇(オランダモデル)
44
内部昇進制
 内部訓練と内部昇進により従業員のキャリアを一企
業内に整備
 長期雇用の保障
アメリカも日本も、企業は外部に技能のプールがないから内
部で育成してきた
コアとなる従業員の定着と福祉を図った
労使関係の影響:日米ブルーカラーの場合
 「えこひいき」排除を重視したアメリカの労働運動→職務と先
任権システム
 工職身分格差撤廃と大量解雇阻止を重視した日本の労働運
動→ブルーとホワイトの身分差別の撤廃
45
職業別労働市場
職業訓練と技能資格を制度化
企業横断的な技能形成と評価のシステム
技能は一般的技能とみなされる
ドイツの職業訓練制度(一般の職)では、経営者団
体を媒介に企業が集団として訓練コストをシェア
アメリカのビジネス・エリートの労働市場では、企業
は技能形成に関与しない
46
移動可能性
内部昇進制においては、移動可能性は狭ま
りやすい。その理由は……
技能が企業特殊的になるからか?
組織コミットメントが企業特殊的だからか?
企業横断的な技能評価ができなくなるからか
職業別労働市場では、同一職業内では移動
可能、職業を超えると困難
アメリカのビジネス・エリートのboundaryless
careerは、専門職としての教育資格、キャリアを共
有した者どおしの人間関係、地域が境界
47
第2章 主要参考文献(1)
 Armen Alchian and Harold Demsetz [1972],
“Production, Information Costs, and Economic
Organization,” American Economic Review, 62.
 エドワード・P・ラジアー(樋口美雄・清家篤訳)
[1998=1998]『人事と組織の経済学』日本経済新聞
社。
 金子勝[1997]『市場と制度の政治経済学』東京大学
出版会。
 小池和男[1989]「知的熟練と長期の競争」(今井健
一・小宮隆太郎編『日本の企業』東京大学出版会)。
 小池和男[1991]『仕事の経済学』東洋経済新報社。
48
第2章 主要参考文献(1)
 野村正實[1993]『熟練と分業』御茶の水書房。
 野村正實[2001a]『知的熟練論批判』ミネルヴァ書房。
 野村正實[2001b]「知的熟練論の問題点」(上井喜
彦・野村編著『日本企業 理論と現実』ミネルヴァ書
房)。
 野村正實[2006]「定年制の普及理由」
http://www.econ.tohoku.ac.jp/~nomura/LazearCri
tics.pdf
 守健二[2001]「社会的ディレンマと経済学批判」(柴
田信也編著『政治経済学の原理と展開』創風社)。
49