会計学入門

会計学基礎
5月11日
企業の設立と資金調達
アウトライン
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企業の諸形態
出資者の責任
企業の資金調達
株主資本・純資産
負債の範囲と区分
企業の資金調達
引当金・偶発債務
企業におけるキャッシュ(カネ)の流れ
土地・建物・工場
原材料
証券投資
仕掛品
現金
完成品
銀行借入
株主
売上債権
営業活動
投資活動(資金投下)
財務活動(資本調達)
企業の諸形態
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2005年6月に「会社法」が成立し、2006年5月
から施行された
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従来、会社についての法律は商法、有限会社法、商
法特例法などに分散されていたが、それらをまとめて
新しく「会社法」が制定された
その結果、従来と比べて会社の種類や特徴が
かなり異なるものになった
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古いテキストには要注意
企業の諸形態
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会社法では、企業の種類に以下のものがある
株式会社
持分会社
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合名会社・合資会社・合同会社の総称
(有限会社)
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旧有限会社法の下で存在した有限会社のみ・新規設
立は認められない
出資者の責任
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有限責任
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会社が倒産した場合に、出資者は自分が会社に出資
した金銭を放棄するだけで足りる
出資者の負う危険は小さい
無限責任
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会社が倒産した場合に、出資者は個人財産を処分し
てまで会社の債務を返済する義務を負う
出資者の負う危険は大きい
出資者の責任
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株式会社(出資者は株主)
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合名会社(出資者は社員)
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社員の責任は無限責任
合資会社(出資者は社員)
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株主の責任は有限責任
無限責任の社員と有限責任の社員が混在
合同会社(出資者は社員)
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社員の責任は有限責任
会社に対する法律規制
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株式会社
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会社法により、様々な規制が課されている
持分会社
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会社法による規制は最小限にとどめられ、会社内部
については主として会社による自己規制に任されて
いる
株式会社に関連する変更
(主なもの)
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有限会社との区別がなくなった
最低資本金規制が撤廃された
取締役会などの会社の意思決定機関について、
会社がいろいろな形態から選べるようになった
配当などの会社財産の(株主への)払い戻し(剰
余金の分配)について、横断的な規制が導入さ
れた
株式会社の設立
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おおまかな流れは以下の通り
1.出資者が集まって定款を作成する
2.出資者が実際にお金(または現物)を会社に
提供し、見返りに株式を発行する
3.事業を開始する
企業の資金調達
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企業はその活動のためにお金(資金)を必要と
する
資金の調達元は大きく分けて以下の二つ
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出資者(株式会社の場合は株主)
出資者以外の第三者
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金融機関・社債権者・取引先など
出資者による資金(自己資本)は返済の必要が
ないが、第三者による資金(他人資本)はいずれ
返済する必要がある
企業の資金調達
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(注意)「資本」という用語は様々な意味で用いら
れる
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負債(他人資本)に対する自己資本のことを単に「資
本」とよぶことも多い
株主資本を構成する要素は二つに分かれる
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株主が拠出したもの
事業の結果(果実)のうち、株主に分配されずに企業
内に留保されたもの
企業の資金調達
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企業はその活動に必要な資金を
(1)株主と
(2)株主以外
から調達する
企業の資金調達
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株主以外から調達した資金を他人資本とよび、
貸借対照表の「負債の部」に計上する
株主から調達した資金を株主(自己)資本とよび、
貸借対照表の「純資産の部」に計上する
負債
資産
純資産
純資産の部の表示
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平成17年度より会計基準が変わり、従来「資本
の部」とよばれていたものが「純資産の部」とよ
ばれることになった
「純資産の部」を以下の通り区分する(連結の場
合)
負債
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株主資本
その他包括利益累計額
新株予約権
非支配株主持分
資産
株主資本
そ
の
他
純資産の構成
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純資産は「株主資本」と「その他の要素」に分か
れる
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「その他」の中身については財務会計論で学ぶ
株主資本を構成する要素は二つに分かれる
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株主が拠出したもの=払込資本
事業の成果のうち、株主に分配されずに企業内に留
保されたもの=留保利益
株主資本の構成
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株式会社の資本
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株式会社の株主は有限責任しか負わない
債権者の権利は会社の資産によってのみ保証される
資本のうち企業内に維持すべき部分と配当などで社
外に流出しても良い部分を明確に分ける必要がある
財務会計の利害調整機能のあらわれ
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剰余金の分配可能額を規制する(会社法)ことにより、
債権者を保護する
株主資本の構成
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資本の源泉による分類
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払込資本
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稼得資本
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企業活動の成果
(受贈資本)
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株主による拠出
会社が株主以外から(資本の充実を目的として)拠出を受
けた額
(評価替資本)
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資産の評価替えによる評価益
株主資本の構成
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資本金(元手)と剰余金(もうけ)
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資本金
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資本剰余金
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払込資本のうち、商法/会社法の規定により一部を資本
金とする
払込資本から資本金を除いたもの
利益剰余金
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損益取引(企業活動)から生じたもの
払込資本
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会社の設立時の株式の払込価額のうち、2分の
1またはそれ以上を資本金(法定資本)とし、残
額を資本準備金とする
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株式会社の資本金は1000万円以上でなければなら
なかったが、新会社法でこの制限は撤廃された
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形式上、1円あれば株式会社を設立できる
払込資本
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増資と減資
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法定資本を増加(減少)させる取引を増資(減資)とい
う
実質的増資(減資)と形式的増資(減資)がある
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会社の純資産額の増加(減少)を伴うもの:実質的増
資(減資)
会社の純資産額が変化しないもの:形式的増資(減
資)
払込資本
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実質的増資の種類
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通常の新株発行
新株予約権の権利行使
株式交付による他企業の吸収合併
株式交換による他企業の子会社化
実質的減資
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事業縮小とともに会社資産(現金など)を株主に返還
する
稼得資本(留保利益)
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稼得資本(留保利益)
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企業が獲得した利益のうち、配当などの形で出資者
に分配されずに企業内に留保された部分
未処分利益または処分済利益(利益準備金、任意積
立金)として資本の部に計上
剰余金の配当
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旧商法では配当・中間配当・減資・自己株式の
買受け・準備金の減少などについて、それぞれ
法により回数や上限額についての制約があった
会社法ではこれらを一括して「剰余金の分配」と
よび、原則として株主総会の決議により、共通の
制約の下でいつでも行うことが出来るようになっ
た
剰余金の配当
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会社法による剰余金の配当への制約
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社外流失を伴う剰余金の配当に対して会社法は上限
額(分配可能額)を設定している
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債権者の利益を保護するため
剰余金の分配可能額
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剰余金に法が定める調整を行った金額
ただし、純資産が300万円に満たない企業は剰余金
を分配することは認められない。
負債の範囲と区分
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負債とは
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将来の期間において企業の資産を減少させるような
経済的負担
主として法律上の債務である
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企業が財貨やサービスを第三者からすでに取得したが、
その返済や代価の支払いが完了していないもの
法律上の債務でない負債(会計的負債)もある
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企業活動を継続する上で、将来避けられない経済的負担
負債の範囲と区分
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負債の区分
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資産減少の発生時期の観点から
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営業循環基準および1年基準にあてはまる:流動負債
それ以外の長期にわたる:固定負債
負債の法律上の状態の観点から
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期日・相手方・金額などがすでに確定しているもの:確定
債務
期日・相手方・金額などがまだ確定していないもの:条件
付債務
法律上の債務でないもの:会計的負債
企業の資金調達
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銀行などからの借入
金融市場からの調達(社債)
取引先からの調達(買掛金・支払手形)
借入金
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証書借入
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借用証書を銀行等に渡す
手形借入
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手形を銀行等に渡す
(普通)社債
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購入者に対して所定の利子を支払、満期日に額
面金額を償還する約束
借入金と類似している
新株予約権付社債
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普通社債の機能に加え、一定の条件の下に保
有者が現金を払い込んで株式を受け取る権利
が付与された社債
社債権者は株式が値上がりした場合に利益を
得ることができる
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その分、社債の金利を低めに設定できる
また、自己資本の増加にもつながる
転換社債
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社債を株式に転換できる権利が付与された社債
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転換に際して、社債は消滅し、事前に決められた転
換価格によって計算された数の株式が交付される
次回への準備
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次回は仕入・生産活動について学ぶ
予習はテキスト4章