英国の小児医療提供体制から学ぶこと

英国の小児医療提供体制から学ぶこと
森 臨太郎
1
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
お話しすること
 なぜ英国か?
 英国医療の背景
 英国の小児医療供給体制
•
•
•
•
•
•
人的資源
勤務体制
提供サービス
地域の一例
プライマリーケアの担当
医療の質と安全の確保
 まとめ
22
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
なぜ英国か?
国民の満足度の費用対効果
Harvard-Harris-ITF, 1990
Proportion of people stated minor
changes needed
Ten Nation Survey
1
効率が高い
カナダ
満
足
0
度 0
オランダ
フランス、西ドイツ
オーストラリア
スウェーデン
英国
日本
イタリア
米国
500
1000
1500
2000
2500
expenditure (USD, per capita)
医療費Health
(USドル)
33
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
なぜ英国か?
周産期医療の効率 国際比較
Pediatrics. 2002;109:1036-43.
出生1万あたりの
NICUベッド数
出生1万あたりの
新生児科医数
1000g未満の新生児
死亡率(リスク比)
1000g-2499gの新生児
死亡率(リスク比)
44
米国
豪州
英国
カナダ
3.3
2.6
0.67
2.6
6.1
3.7
2.7
3.3
1
0.84
0.99
1.12
1
0.97
0.95
1.26
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
英国医療の背景
NHS(National Health Service)の歴史
 戦後創設された社会主義的制度
• 「ゆりかごから墓場まで」
• 財源は税金で患者の負担は原則無料
• 医師の公務員化や病院の国有化
 サッチャー保守党政権による医療改革
• 「新自由主義」
• 効率が悪化したため市場原理を導入
 ブレア労働党政権による医療改革
• 「第三の道」
• 格差が拡大したため、市場主義と同時に
診療ガバナンスによる医療の質と安全の向上
55
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
英国の小児医療供給体制
人的資源 日英比較
小児10万人あたりの
小児科医数
小児10万人あたりの小
児科勤務医数
小児科のある病院数
66
英国
日本
27.5人
79.9人
36.6人
204病院
3528病院
病院あたりの小児科医数 20.8人
1.8人
病院あたりの小児数
5000人
75000人
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
英国の小児医療供給体制
人的資源 日英比較
小児10万人あたりの
小児科医数
小児10万人あたりの
小児科勤務医数
小児科のある病院数
77
英国
日本
27.5人
79.9人
36.6人
204病院
3528病院
病院あたりの小児科医数 20.8人
1.8人
病院あたりの小児数
5000人
75000人
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
英国の小児医療供給体制
人的資源 日英比較
小児10万人あたりの
小児科医数
小児10万人あたりの
小児科勤務医数
小児科のある病院数
88
英国
日本
27.5人
79.9人
36.6人
204病院
3528病院
病院あたりの小児科医数 20.8人
1.8人
病院あたりの小児数
5000人
75000人
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
英国の小児医療供給体制
人的資源 日英比較
小児10万人あたりの
小児科医数
小児10万人あたりの
小児科勤務医数
小児科のある病院数
病院あたりの小児科医数
病院あたりの小児数
99
英国
日本
27.5人
79.9人
36.6人
204病院
3528病院
20.8人
1.8人
75000人
5000人
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
英国の小児医療供給体制
勤務体制と提供サービス
 パートタイム勤務(小児科医の49%は女性)
• 小児科医全体の42%
• 管理職女性医師の30%以上
• 中堅女性医師の50%以上
 2009年までに週48時間という現実目標
• EUの標準勤務時間に合わせるため
 小児科を持つ病院
•
•
•
•
10
10
67%が小児外科医による手術をしている
78%で小児科専門医が24時間常駐
各専門分野のほぼすべてをそろえる
92%の病院で両親のための宿泊施設
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
医師の給料体系
医師の給料は全国統一
House Officer
年収 526万円
年収 890万円
(研修医前半)
年収 560万円
年収 935万円
年収 594万円
年収 980万円
Senior House Officer
年収 668万円
年収 1025万円
(研修医後半)
年収 708万円
年収 1070万円
年収 745万円
年収 1115万円
年収 789万円
Consultant
年収 1796万円
年収 833万円
(顧問医・医長・部長)
年収 1852万円
年収 877万円
年収 1908万円
年収 921万円
年収 1964万円
Specialist Registrar
年収 734万円
年収 2020万円
(中級専門医)
年収 771万円
年収 2154万円
年収 808万円
年収 2287万円
年収 846万円
年収 2421万円
年収(1ポンド=250円) その他、ロンドン手当、臨床技量手当など
11
11
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
プライマリーケアの担当
平日は家庭医、夜間は救命救急
平日昼間
999(救急車)
夜間・休日
999(救急車)
家庭医(通常グループ開業) 家庭医の往診
救急救命外来
救急救命外来
NHS Walk-in Centre Ambulatory Care Unit
(公的診療所・看護師) (≒夜間診療所)
NHS Direct
NHS Direct
(全国電話医療相談) (全国医療電話相談)
独立型のAmbulatory Care Unitは経済効率からもうまくいっていない
12
12
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
地域の一例
イングランド サレー州
病院運営母体
小児を扱うのは4病院
面積:1,663km2 人口:107万人(小児24万人) 香川県とほぼ同じ
小児科医はすべて20-30人所属 医学校は無い(全国で25校のみ)
13
13
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
地域の一例
4病院で提供されているサービス
サレー州,小児を扱う病院
アッシュフォード病院
東サレー・クロウリー病院
フリムレー・パーク病院
王立サレー地域病院
14
14
小児
外科医
小児麻
酔科医
24時間
救急
家族滞
在施設
○
○
○
○
×
○
○
○
×
×
○
○
○
○
○
○
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
医療の質と安全の確保
診療ガバナンス
BMJ 1998;317:61-65
 システムとして、質・安全性を高めること
最適・最良の医療・診療を考慮し
約束事(診療ガイドライン)を作る
透明性
症例に応じて約束事を守ることを
教育・研修を通じて導入
臨床監査(綿密に計画)
アウトカムデータの収集・解析
15
15
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health
まとめ
 小児医療供給体制の地域化
• 社会主義制度の利点
• 小児科各専門性やサービスの充実
 医療資源の効率化
• 地域内のすべての病院の運営母体が共通
• 全国統一の給料体系
 診療ガバナンスによる質と安全の向上
• 根拠に基づく医療、質の高い臨床監査(≒研
究)
16
16
National Collaborating Centre for
Women’s and Children’s Health