多様性の生物学 第1回 はじめに 和田 勝 東京医科歯科大学教養部 この科目について この科目の目標は、地球上に生存 する多様な生物について学び、なぜ このような多様性が生じたのかを理 解することである。 必要に応じて課題を与えるので、受 講する学生はただ講義を聴くだけで はなく、積極的かつ能動的に参加して 欲しい。 なぜ生物学を学ぶのか ヒトも生物の一員 この地球上によりよく暮らしていくた め、また人間を理解するために、生 物学が教養として必要。 生物学は医学・歯学の基礎 生物学の知識の上に、医学・歯学 が成り立っている ヒトも生物の一員 ヒトはもちろん生物だが、地球上で単 独で暮らしているのではない。 多くの生物と密接な関係を持ちながら 暮らしているのだが、普段はあまり意 識することはないだろう。 この講義では、歴史的な視点も加えて 生物多様性を考えていこう。 生物学の基本的な枠組み 1.生物多様性 この地球上には、およそ150万種 の生物が生息している。 多様な生物を分類して 整理する方法が一応、 確立している。ただし完 成しているわけではな い。 生物学の基本的な枠組み 2.細胞説 すべての生物は細胞からできてい る。 細胞には核があり、その 中の染色体上に遺伝子 がある。 生物学の基本的な枠組み 3.遺伝の法則 染色体上の遺伝子が生殖細胞を 経て代々伝えらていく。 粒子的な遺伝子が染色 体にあって、決して混じ りあうことはない。 生物学の基本的な枠組み 4.遺伝子の実体 遺伝子の実体はDNAであった。 DNAの構造(二重ラセ ン)が解明され、遺伝情 報の受け渡しが説明で きた。 生物学の基本的な枠組み 5.進化 DNAは不変ではなく、変化しうる。 自然選択によってこの 変化が固定され、生物 は進化した。その結果、 多様な生物が出現した。 生物の多様性 こうして、多様な生物が進化の結果、 地球上に生じた。 現在という時間は、その長い歴史の中 の一段面である。この多様性を次の世 代に伝えられるかどうかは、我々の努 力にかかっている。 講義の進め方 講義には必ず出席すること。 ● 講義はパワーポイントを使って行う。 ● 教科書は下記のものを指定する。た だし教科書に沿って授業を進めるわけ ではないので、該当する部分を読んで おいてほしい。 ● 『大学生のための基礎シリーズ2 生物学入門』 石川 統編 東京化学同人 平成13年 講義の進め方 講義の内容は医科歯科大学のウエッ ブ上に公開する。 ●講義ノートは上記からダウンロードで きるようにする。 ● 教科書と講義ノートを事前に予習して、 講義に臨むことを要求する。 ● 講義の内容をもう一度見たい人のた めに、講義で使ったパワーポイントはウ エッブサイトにアップロードする。 ● Webの利用 予習・復習をしたり、その他の情報 を得られるように、「多様性の生物学」 ページを設けてある。 ● このページにアクセスすると、章ごと にpdfファイルあるいはWordファイル をダウンロードできる。カラープリンタ ーで印刷すれば、副読本となる。 ● ●http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/biodiversity.htm 発展的学習 上記Web上の「多様性の生物学」 の各ページのリンクをたどって自分 で学習することができる。 ● そのほか、岩波新書や講談社ブル ーバックスなどの生物関連のものを 積極的に読んで欲しい。 ● 課題 課題を出し、期限までの提出を要求 する。 ●早速、第1回の課題です。 ある1日(あるいは2,3日)を選んで、 その日の間に出会った動物、食べた 動物をすべて書き出し、どのように グループ分けできるか考えて分類し てみよ。分類学の知識を無理して使 わなくてもよい。 ● 評価 課題に対する提出物と定期試験期 間内におこなう試験によっておこなう。 ● 講義の最後に、学生による授業評 価を受ける。 ● 担当教官 教官研究室は4階第1研究室 ホームアドレスは http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/wada /wada-j.htm メールアドレスは [email protected] 今後の予定 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 10/04 はじめに 10/18 10/25 11/01 11/08 11/15 休講 第6回 11/22 第7回 11/29 第8回 12/06 第9回 12/13 第10回 12/20 第11回 01/17 第12回 01/24 第13回 01/31 第14回 02/07 Intermission 多様性の整理 多様性の整理の仕方は、リンネに よって確立された。 リンネは、種は不連続で、独立した 単位だと考え、 ● これをまとめて、下位のカテゴリーと し、さらに階層的に積み上げる方式を 確立した。 ● 多様性の整理 界(Kingdom) 門(Phylum) 綱(Class) 目(Order) 科(Family) 属(Genus) 種(Species) 多様性の整理 種の名前は、ラテン語で記した属 名と種小名を連記してあらわす。 ● たとえば、ヒトはHomo sapiensで、 イヌはCanis familiaris、イエネコは Felis catusである。 ● 参考になるサイト: http://user.shikoku.ne.jp/yokogawa/shell_museu m/scientific_name.htm#Concept_of_Species 多様性の整理 動物の場合、自然の体系(Systema Naturae)第10版の出版年を1758年1 月1日とし、これ以降のものを正式名 とした。 ● 現在では、国際命名規約に従って 種名をつけて登録する。 ● 一番上位の分類階級 リンネは動物と植物に大きく分け、こ れに界(kingdom)の分類階級を当て たが、現在では界の数は増えている。 生物五界説: モネラ界(Monera)、原生生物界( Protista)、菌界(Fungi)、植物界( Plant)、動物界(Animal) 一番上位の分類階級 一番上位の分類階級 モネラ界:すべての原核生物を含む生物のグ ループ 原生生物界:真核生物だが、菌でも植物でも 動物でもない生物を含むグループ 菌界 :自分で栄養を作ることができず(従 属栄養)、細胞壁をもつ生物のグループ 植物界 :葉緑体を持ち光合成によって自分 で栄養を作り出し(独立栄養)、細胞壁を 持つ生物のグループ 動物界 :従属栄養で細胞壁を持たず、少な くとも生活史のどこかで動き回ることがで きる生物のグループ 一番上位の分類階級 一番上位の分類階級 リボソームRNAの塩基配列の比較 から、モネラ界はもっと多様な生物を 含むと言う考えから、次の3つのドメイ ンに分ける考え方がある。 1)真正細菌(Bacteria) 2)古細菌(Archaea) 3)真核生物(Eucarya) 一番上位の分類階級 動物界 この講義 では時間 の関係か ら動物界 について 眺めてい こう 動物界 界の下の分類階級は門(phylum)であ るが、動物界を構成するすべての門に ついて触れることはできないので、主 な門について概観していこう。 海綿動物、刺胞動物、有櫛動物、扁形動 物、紐形動物、輪形動物、線形動物、軟体 動物、環形動物、節足動物、腕足動物、毛 顎動物、棘皮動物、半索動物、脊索動物 海綿動物門(Porifera) ダイダイイソカイメン http://www.kahaku.go.jp/vm/ex/sea/thums_main.html 最も目に触れる機会の多い海綿は、 上に示したイソカイメンであろう。 海綿動物門(Porifera) 海綿は英語でspongeというが、これは ギリシャ語のspongiaからきている。日 本語でも、スポンジという言葉は定着 している。Spongiaはモクヨクカイメンの 属名である。 襟細胞 カイメンには、分化した組織や器官は 見られず、他の動物群にはない独特 な溝系が発達している。 この溝系の内側を、襟細胞と呼ぶ鞭毛 をもった細胞が覆っている。 襟細胞 襟細胞 この襟細胞の鞭毛の働きによって、 体表の 小孔 溝系 胃腔 大孔 という水の流れができ、一緒に流れ込 むプランクトンを捕捉する。 溝系による分け方 海綿動物の綱 主として骨片の化学組成や形態から、 さらに次の4綱に分類される。 石灰海綿綱(Calcarea) 六放海綿綱(Hexactinellida) (ガラス海綿とも) 普通海綿綱(Demospongea ) (尋常海綿綱とも) 硬骨海綿綱(Sclerospongiae) いろいろな海綿動物 http://www.absolutedivers.com/Fan%20&%20Sponge.jpg http://www.bibr.com/images/Underwater/O'Leary%20Basket% 20Sponge.jpg http://www.wgn.net/~fabio/gallery/bonaire-purple-tube-sponge.htm カイロウドウケツ 漢字では 偕老同穴 と書く http://www4.plala.or.jp/doublemoon/photo/cr1.html
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