緑化工におけるサイクルの現状と課題 岡山大学農学部 嶋 一徹 (生態系保全学講座・土壌生態管理学分野) E-mail : [email protected] 背景と今日的な課題 ① 廃棄物の発生量が高水準で推移 廃棄物発生量 → 一般廃棄物 約5千万トン 産業廃棄物 約4億トン ② リサイクルの一層の推進の要請 リサイクル率 → 一般廃棄物 約10% 産業廃棄物 約42% ③ 廃棄物処理施設の立地の困難性 最終処分場の残余年数 → 一般廃棄物で8.8年 産業廃棄物で3.1年 ④ 不法投棄の増大 不法投棄の件数 → 平成10年度 1,273件 (平成5年度の4.6倍) ● ● ● ● 原材料の効率的利用や長期使用による廃棄物発生の抑制(リデュース) 循環資源の再使用(リユース) 再利用できないのを再生利用(リサイクル) 最終的に資源化できないものを熱利用 循環型社会形成推進基本法と合わせた 「循環型社会関連法」の整備 ・廃棄物処理法(一部改正) ・再生資源利用促進法(一部改正) ・建設資材リサイクル法 ・食品リサイクル法 建設工事の受注者などに、建築物などの分別解体や 建設廃棄物のリサイクルなどを義務づけ。 食品の製造・販売事業者、レストランなどに、食品 残さの発生抑制やリサイクルなどを義務づけ。 ・グリーン購入法 ・家電リサイクル法 ・容器包装リサイクル法 「産業廃棄物の排出および処理状況調査(環境省) 」 ↓ 年間排出量は約4億60万トン ・年間排出量は平成8年以降、若干減少傾向にあるが、なお高水準を推移。 ●産業廃棄物は約4割が中間処理を経て、あるい は直接リサイクルされており、最終処分量は減少し ている。 ●しかし、最終処分場は残余年数3.9年(平成12 年度) 産業廃棄物の排出量を種類別に見ると、 汚泥の排出量が最も多く、全体の5割 近くにも達しています。これに次いで、 動物のふん尿、がれき類となっていま す。これらの上位3種類の排出量が総 排出量の8割を占めています 建設廃棄物は全体の約2割を占めているが、最 終処分量は平成7年度の4,100万tから平成12 年度には1,280万t、再資源化等率は平成7年 度の58%から平成12年度には85%となるなどリ サイクルが進んでいます ● 廃棄物の発生を抑制 ↓ ● 再使用 リサイクル ↓ ● 再生利用 処 分 ↓ ● 熱源として利用 ↓ ● 適切な処分 事業体名 リサイクル材料 品目・用途 概 要 A 伐採木、剪定枝等の粉砕チップ材 植生基盤材 公共下水汚泥と伐採木、剪定枝等の粉砕処理したチップを混合し発酵・熟 成させた堆肥。 B 粉砕チップ材を骨材としたアスファル ト 緑化基礎工+植生 工 現場発生材のチップを骨材としたアスファルト舗装。 C 伐採木、剪定枝等の粉砕チップ材 マルチング材 公共、民間の工事から出る枝葉を粉砕したマルチング材。 D 下水汚泥、伐採木、粉砕チップ材 植生基盤材 公共下水汚泥と伐採木、除根材、剪定枝等(木くず)を粉砕処理したチッ プ材を混合し、発酵・熟成。 E 中古木材及び雑草 防草パネル 除草雑草や中古木材をチップ化しのり材を混入して熱圧縮したパネル。 F 製材端材チップ、剪定チップ 植生保護資材 製材端材、緑化木剪定枝葉を破砕し、チップ化した緑化木保護資材 G 汚泥焼却灰 透水性ブロック 下水を処理したあとに残る汚泥焼却灰を材料にブロックを製造。 H 再生プラスチック 植生ネット 再生プラスチックを100%使用した植生ネット。 I 廃タイヤチューブ 防草シート 使用済タイヤチューブの再生品を用いた防草シート。 J 廃タイヤ 芝生・グラウンド 踏圧防止材 廃タイヤを再利用してできている。グラウンドの踏圧防止材。 K 堀削残土75% 舗装材 赤松樹皮チップと掘削残土を混合し、バインダーで固めた舗装材。 L 古紙 植生ネット 古紙を使用。ネットとしての強度を保持しながら植生による法面保護の 後は腐食。 M 無機汚泥 植栽用土 土壌改良材 建設・土木工事の汚泥、浄水場汚泥を原料として造粒・焼成した用土。 N 鶏糞、広葉樹のオガクズ 土壌改良剤 材木製材の広葉樹オガクズと鶏糞・土壌有効菌・真珠岩パーライトを発 酵させた土壌改良材。 O 下水汚泥、木質系繊維炭化物、植物廃 材粉砕物 法面緑化基盤材 土壌改良材 公共下水処理汚泥を主原料とした有機質人工土壌材。 P コンニャク芋の精粉残渣(とび粉) 侵食防止材 植生基材の粘着安定材(侵食防止材)。 Q ウールマークの中古衣料 防草マット 中古衣料のウール品をパンチングしてマット化した防草マット。 R ココヤシ 土壌改良材 ヤシの実からヤシ繊維を取る過程で発生する残渣で作る土壌改良資材。 Y 木材チップ 木片ポーラスコン クリート 製材工場残材をチップ化しコンクリートで固めた資材。 Z 木材チップ 土壌改良材 木酢液入り粉炭及び間伐材等を利用したチップ炭等 緑化工におけるサイクル 他の産業活動 他の緑化工・建設現場 ・下水汚泥ケーキ ・畜産廃棄物 ・廃タイヤ、廃プラスチック ・厨芥、豆腐カス・・・ ・現場発生残土 ・コンクリート塊 ・アスファルト塊 ・伐採樹木、剪定枝・・・ 緑化工・建設現場 現場発生廃棄物・副産物 のリサイクル ・現場発生残土 ・コンクリート塊 ・アスファルト塊 ・伐採樹木、剪定枝・・・ 建設副産物のリサイクル 建設副産物とは・・・・・ 建設副産物とは建設工事にともない副次的に得られる物品であり、再資源および廃棄物を含む 廃棄物 原材料として 利用できないもの ・有害物質 ・危険物 再生資源 原材料としての 利用の可能性 ・コンクリート塊 ・アスファルト塊 ・建設発生木材 ・建設汚泥 ・混合廃棄物 そのまま原材料 となるもの ・現場発生残土 ・金属クズ ・伐採樹木・伐根 ・剪定枝 4,000 平成 2年度 100 3 ,0 0 0 リサイクル率(%) 排出量( 万t ) 3 ,5 0 0 2,000 800 500 500 200 平成 7年度 平成12年度 75 50 25 0 0 設 設 設 ン ス 設 混 汚 発 ク フ 合 泥 生 リ ァ 廃 木 ー ル 棄 材 ト 物 塊 ラ 物 塊 ・コ 塊 プ 棄 ト ト ト 排 材 廃 ー ル 物 ( 生 合 泥 リ ァ 棄 他 発 混 汚 ク フ 廃 の 設 設 設 ン ス ス ) 塊 ど ト な ー ク リ ッ ク チ ン 出典:国土交通省 「平成12年度建設副産物実態調査結果」 建 建 建 コ ア 建 そ 建 建 建 コ ア 建設廃棄物の品目別リサイクル状況 ・有機性廃棄物 有機資材としてリサイクル ・緑化工の現場 (土壌改良材、植生基盤材・・・) (剪定枝、伐採木、表土・・・) ・他の産業活動 (製材カス、下水汚泥、豆腐カス・・・) ・無機廃棄物 無機資材としてリサイクル ・緑化工の現場 (コンクリート塊など) ・他の産業活動 (アスファルト塊、コンクリート塊、廃タイヤ・・・) (コンクリート骨材、路面基盤材・・・) 有機性廃棄物・副産物の緑化工分野におけるリサイクル 剪定枝葉 伐採木、伐根 表土・林床有機物 建設廃材 間伐材 林産残渣 (オガ屑、樹皮) 食品残渣 (豆腐カス、珈琲カス) 畜産廃棄物 (鶏糞、牛糞など) 下水汚泥ケーキ その他 発 酵 ・ コ ン ポ ス ト 化 土壌改良材・肥料 植生基盤材 マルチ用ネット、シート 未 成 熟 ・ 直 接 利 用 アルファルト等の骨材 ポーラスコンクリート 道路用資材 防護柵、ウッドブロック等 1. 有機性廃棄物を有機資材としてリサイクルする場合 ー未成熟木質系資材を用いる際の窒素飢餓の問題- 2. 有害物質と安全性の問題 - 有害重金属について- 有機性廃棄物を有機資材としてリサイクルする場合 ー未成熟木質系資材を用いる際の窒素飢餓の問題- 各種有機物のC/N比と分解の難易度 種類\成分 C(%) N(%) C/N 分解の難易 落葉 樹皮 イネ科植物 稲わら 麦桿類 れんげ マメ科植物 大豆かす もみがら オガクズ 牛ふん 鶏ふん 48 50 45 45 46 46 50 51 40 46 41 42 0.9 0.5 0.5 0.6 0.5 2.7 3.0 9.0 0.5 0.2 1.8 4.5 53 100 90 75 92 17 17 6 80 230 23 9 やや易 非常に難 難 難 難 易 易 易 難 非常に難 易 易 窒素飢餓状態(Nitrogen starvation) 炭水化物の比較的多い有機物(炭素率の大きいもの)を土壌に加えた場合、土壌微生物が盛 んに繁殖するため有機物は分解(炭酸ガス放出)されてもアンモニア態窒素や硝酸態窒素は 蓄積せず、土壌中の無機態窒素までも土壌微生物に吸収利用され、作物と微生物との間に 「窒素の奪い合い」が起こる。この状態を窒素飢餓状態(Nitrogen Starvation)という。 無機化 Vi 有機態窒素 無機態窒素 吸収 植物 有機化 Vm 広葉樹二次林表土における無機化・有機化速度(μgN・g-1・day-1) 無機化 (Vm) 有機化 (Vi) 見かけの無機化 (Vm-Vi) L-層(上部) 8.21 10.18 -1.93 L-層(下部) 34.56 50.60 -16.04 F-層 178.68 147.00 31.68 HA層 67.07 43.80 23.28 鉱質土壌 26.48 20.12 6.37 コンポスト化に用いられる主な副資材とその性質・・・・ ・有機質資材 ・無機質資材 農業活動・・もみ殻、稲わら 林業、林産・・・おが屑、バーク、ウッドチップ 食品加工・・・豆腐かす、コーヒーかす ゼオライト もみ殻 おが屑 バーク 稲わら 含水比 10-15 23-36 49-52 8-13 pH値 6.9-7.2 5.1-6.1 5.8-6.0 C/N 120-160 44-55 105-110 40-42 Total-C 28-40 48-50 40-42 35-38 Total-N 0.2-1.0 0.9-1.1 0.4 0.9 K 2O 0.28 0.08-0.15 0.2-0.4 1.2-1.5 P 2O5 1.4-1.5 0.04-0.05 0.15 2.60 特徴 初期含水比が低く、 難分解性である。 通気性がよく、 水分調整として用 安定供給が可能 改良効果あるが いられる。 炭素率が高い。 であるが窒素飢 珪酸質で分解が遅 餓に陥りやすい。 い。 初期含水比が低 く、水分調整と して用いられる。 年間を通じての 確保が難しい。 ・分解が遅いと窒素飢餓を生じないか? ・高度化成肥料が配合されるため、窒素飢餓 が生じないのか? 有害物質と安全性の問題 上信越自動車道の栗林地籍でブロック積擁壁の水抜きパイプから滲出した白濁水から環境基 準を超えるカドミウムが検出 (「北信ローカル」 H14.4.11掲載より) コンクリート積擁壁の内側部分に積め込まれた砕石の中に、「土壌の汚染に係る環境基準」のうちカドミウムの基準を超過する 風化砕石が局所的に混入していたため、浸透した雨水によりカドミウムなどが溶け出した。 肥料取締法に基づき実施した立入検査において、下水汚泥肥料から許容基準を超える水銀を 検出(平成15年5月20日農林水産省生産局生産資材課) 肥料取締法に基づき、独立行政法人肥飼料検査所が、4月16日に石川県の鹿西(ろくせい)町中部浄化センターに対して実施 した立入検査において、収去した下水汚泥肥料(肥料名称:グリーン・エース)から許容基準(2ppm)を超える水銀(87ppm)を本 日(5月20日)検出した。現在、鹿西(ろくせい)町中部浄化センターは、要請に従い、当該下水汚泥肥料の出荷停止を行っている。 また、既に、出荷された下水汚泥肥料は山林及び街路樹に施用されており、食用の農作物に施用されていないので直ちに人の 健康を害することは考えられない。 肥料取締法に基づき実施した立入検査において、し尿汚泥肥料から許容基準を超えるニッケル を検出 (平成15年7月28日農林水産省生産局生産資材課) 肥料取締法に基づき、独立行政法人肥飼料検査所が、7月9日に奈良県の山辺(やまべ)環境衛生組合山辺衛生センターに対し て実施した立入検査において、収集したし尿汚泥肥料(肥料名称:汚泥炭化肥料、検査対象数量:10kg袋入り60袋)のサンプルか ら許容基準(注)(300ppm)を超えるニッケル(448ppm)を検出した。 (注)許容基準とは、肥料取締法に基づき、農林水産大臣が肥料の種類ごとに定める含有を許される有害成分の最大量 ー 下水汚泥の有効利用 - ・約40%が埋め立て処分 ・緑農地利用=14% ・建設資材利用=44% 下水汚泥の有効利用・処分状況(1000トン・年-1) 最終安定化状態 液状汚泥 埋立 緑農地還元 建設資材 海洋投棄 その他 計 0 0 0 0 0 0 120 28 25 4 1 178 コンポスト 0 211 0 0 0 211 乾燥汚泥 17 22 0 0 15 54 炭化汚泥 0 2 1 0 0 2 601 8 731 0 2 1342 1 0 62 0 28 90 739 270 819 4 45 1877 脱水ケーキ 焼却灰 溶融スラグ 計 齋野・中島(2002)下水汚泥処理および有効利用の変遷と現状、再生と利用、25(94)より抜 下水汚泥(脱水ケーキ)およびそれを原材料とするコンポスト資材の成分 岡山県西部広域 浄化センター (汚泥ケーキ) 岡山県佐伯町浄化 センター (汚泥ケーキ) 和気・赤磐郡共同 コンポストセンター (汚泥コンポスト) ピートモス 全窒素(g/kg) 53.16 56.16 26.22 - 全炭素(g/kg) 307.79 298.63 184.72 - 5.8 5.3 7.0 - 23.27 - 12.22 - 可給態リン(g/kg) 5.60 - 0.91 - ナトリウム(g/kg) 1.53 1.54 3.78 - カリウム(g/kg) 0.09 0.10 1.54 - マグネシウム(g/kg) 8.19 7.62 47.86 - 11.58 8.10 20.02 - 1062.6 1067.3 597.0 12.1 C/N比 全リン(g/kg) カルシウム(g/kg) 亜鉛 (mg/kg) 銅 (mg/kg) 201.6 287.0 198.8 4.2 鉛 (mg/kg) 25.2 45.2 24.1 0.3 0.58 0.96 0.36 Tr. カドミウム(mg/kg) 脱水汚泥ケーキを用いたコマツナ栽培試験 客土は花崗岩風化土(切土法面の表土)、対照区には有機質肥料(鶏糞)を用いて 全窒素量を用いて施肥量を統一した。左上は無施肥区 脱水汚泥ケーキを用いたコマツナ栽培試験 客土は花崗岩風化土(切土法面の表土)、対照区には有機質肥料(鶏糞)を用いて 全窒素量を用いて施肥量を算出した。 下水汚泥を原材料とするコンポスト資材の成分 供試材料 Zn Mn Cu Pb Cd (mg/kg) (mg/kg) (mg/kg) (mg/kg) (mg/kg) 製品 含水比 炭素率 窒素 (%) 4.2 ~4.8 14 ~18 0.08 ~0.01 pH 花崗岩風化土 (岡山県玉野市) 26 ~85 430 ~450 0.5 ~35 0.1 ~0.5 Tr. ~0.01 松江市 (しんじ湖有機くん) 999.1 347.4 530.1 26.7 3.7 34.5 7.85 4.74 5.38 198.6 56.2 114.0 5.37 0.7 140.1 4.15 20.31 1.91 所沢市 (所沢コンポスト) 717.8 191.9 670.9 19.9 2.1 51.1 8.57 6.13 4.79 岡山県和気郡 (東備コンポスト) 473.7 111.1 293.4 8.8 0.9 39.1 7.55 12.55 1.79 鳥取県西伯郡 (汚泥コンポスト) 463.1 210.1 227.7 7.4 1.1 36.9 7.62 7.25 4.35 鳥取市 (いなばコンポスト) 776.9 85.1 477.3 8.6 2.7 16.9 7.09 5.55 5.57 岡山市 (スラッジ・コンポスト) ・重金属は硝酸-過塩素酸による湿式灰化の後、原子吸光(島津AA6800ファーネス法)で分析 ・全炭素・全窒素はCNコーダー(ヤナコMT700型)、pH値はガラス電極法で測定 汚泥コンポスト 5kg /㎡を施用 花崗岩風化土 Total-N:4.0% Zn:500mg/kg Cu:300mg/kg Pb:10mg/kg 容積重 120g/100cc Total-N:0.02% Zn :60mg/kg Cu :20mg/kg Pb :0.2mg/kg 1㎡×深さ10cm 窒素量(g/㎡) 亜鉛 銅 蓄積(mg/㎡) 含有率(mg/kg) 鉛 蓄積(mg/㎡) 含有率(mg/kg) 蓄積(mg/㎡) 含有率(mg/kg) 24 (0.2) 7200 (60) 2400 (20) 24 (0.2) 施肥による付加 200 2500 1500 50 施肥後 224 9700 (81) 3900 (33) 74 (0.6) 施肥前 品質、安全性に関する現行の基準等 肥料取締法 (平成11年7月28日に肥料取締帝法が改正、平成12年10月1日施行) ・汚泥肥料や汚泥たい肥等の届出制から登録制への移行 ・特殊肥料のうち、たい肥、家畜及ぴ家きんのふんについての品質表示制度の創設汚泥を原料として生産される 普通肥料その他のその原料の特性からみて銘柄ごとの主要な成分か著しく異なる普通肥料であって、有害成分を 含有するおそれか高いものとして省令で定めるものを、普通肥料の区分として新たに設け、当該音通肥料について は、含有を許される有害成分の最大量その他必要な事項についての規格を定める。。(第3条及ぴ第4条関係) 普通肥料:下水汚泥肥料、工業汚泥肥料、複合汚泥肥料、汚泥発酵肥料などに区分され、含有を許される有害 成分の最大量 をカドミウム0.0005%、水銀0.0002%、鉛0.01%などと規定 特殊肥料:乾物1キログラムにつき、ヒ素含有量50ミリグラム以下、カドミウム含有量5ミリグラム以下及び水銀含有 量2ミリグラム以下であり、かつ、金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令の別表第六の基準に 適合するもの 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律 (平成11年7月28日公布 法律第112号) 農林水産省令で家畜排せつ物の処理・保管施設の構造設備及び管理の基準を定め畜産業を営む物はこの「管 理基準」を遵守することが義務付けられました。(第三条) ●農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準 管理指標を亜鉛含有量として、限界値が120mg・kg-1 岡山市および周辺地域の農地表土の蓄積(嶋ら、1995)・・・・1.6~64mg・kg-1 ●「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」 銅の含有量が125mg・kg-1、ヒ素15が125mg・kg-1(水田、0.1N塩酸抽出法) 米中のカドミウムの濃度が1ppm以下 ●都市緑化における下水汚泥の施用指針 建設省では、都市緑化における下水汚泥の有効利用の推進と適正な施用を図るための技術的な指針を平成 7年に策定しており、本指針では、緑化事業における下水汚泥の具体的な施用方法(施用の手順、施用量の めやす、施肥基準、施工方法等)が定められている。 諸外国のコンポストの重金属基準 アメリカ、カナダ:地方レベルでの品質基準が設定。(カナダでは政府レベルの基準が複数存在し、 基準が厳しいため、埋立処分量が増加傾向にある。) ドイツ:連邦レベルでの基準を設定せず、州レベルで基準を設定。 ヨーロッパ:ほとんどの国では、ガイドラインや規則などの自主的な基準として重金属の基準があり、 ドイツ、オランダ、ベルギーが厳しく、逆にスペインが最も緩くなっている。 コンポスト中の主な重金属濃度の基準値 ひ素 Cd Cr Cu Pb Hg アメリカ カナダ 75 85 300 4300 840 57 13 2.6 210 128 83 0.83 オーストリア ベルギー - 4 150 400 500 4 - 5 150 100 600 5 ドイツ イタリア - 1 100 75 100 1 資料:Eliot Epistein,「The Science of Composting」,1998より引用 注:単位は乾物あたりの含有量(mg/kg) - 3 150 200 200 2 オランダ - 0.7 50 25 65 0.2 スペイン - 40 750 1750 1200 25 スイス - 3 150 150 150 2 デンマーク - 1.2 100 1000 80 1.2 カナダにおける汚泥コンポスト製品の基準 •3日間連続して55℃以上の温度に均一に維持すること •pHを5.0から8.0の間に維持すること •重金属は、次の量を超えないこと(mg/kg乾物重ベース) 砒素 13 水銀 0.83 カドミウム 2.6 モリブデン 7 クロム 210 ニッケル 32 コバルト 26 セレン 2.6 銅 128 亜鉛 315 銅 83 •30%以上有機物を含むこと •水分を50%以下に維持すること •ナトリウム吸収比が5以下であること •粒大が13mm以下であること •プラスチックが0.4%以下、直径2mm以上のガラス、ゴム、金属の破片は1%以下 であること •PCB濃度は、1.0ppm未満であること •電気伝導度が3ms/cm以下であること •分別収集された廃棄物から製造されること •コンポスト化の過程は好気的に保たれること •プラスチックの袋又は容器により流通させる場合には、鉛、カドミウム、水銀、6 価クロムを含むインク、染料、色素等を使用していないこと。 出典: Eliot Epistein,「The Science of Composting」,1998 ●諸外国でもコンポストの品質、安全性について科学的な根拠に基づく明 確な基準の設定に向けて現在も試行錯誤が続いている状況にある。 ●しかし、汚泥コンポストの生産と緑農地還元は、近年増加傾向にあり、 安全性、土壌の生産力、環境負荷等に問題が生じないために 1.重金属含有量等に関する安全性について規制とその根拠を明確にする。 中途半端なリサイクル資材の大量使用が後々問題化しないために・・・ 2. 基準値を厳しいものにするとリサイクル率は減る可能性もある。 厳しい基準をクリアしようとする技術革新が進むはず・・・ ・資材化・・・建設副資材 (溶融スラグ骨材、エコセメント) ・コンクリート二次製品(舗装平板、境界ブロック) ・道路側溝ブロック ・擁壁などのコンクリート ・溶融スラグ入りアスファルト舗装 ・景観舗装用 溶融スラグ・・・土工材料として骨材利用 焼却灰、石灰焼却灰・・・道路などの地盤造成 ・土質工学的性質の把握 (強度低下を防ぐため骨材の50%混合、含有金属による膨張) ・重金属の溶出など二次公害に対する安全性の確認 京都市下水道局施設部 ・建設資材化を前提とした汚泥処理プロセスの開発 厚生省が、平成10年3月26日付け、各都道府県知事・政令市市長あて通知した 「一般廃棄物の溶融固化物の再生利用の実施の促進について」 生衛発第508号平成10年3月26日 溶融固化とは、燃焼熱や電気から得られた熱エネルギー等により、焼却灰等の廃棄物を加熱し、超高温条 件下で有機物を燃焼、ガス化させるとともに、無機物を溶融した後に冷却してガラス質の固化物(以下「溶融 固化物」という。)とする技術であり、重金属の溶出防止及びダイオキシン類の分解・削減に極めて有効であ る。 溶融固化物については、その品質が確保されれば、路盤材やコンクリート用骨材等に利用することが可能で あり、その利用を適切に進めることは、最終処分場の延命化を図るうえでも極めて重要である。 しかしながら、焼却灰等は鉛等を含有することから、・・・・(中略)・・・一般廃棄物の溶融固化の実施に当た り遵守することが望ましい事項を定め、これに基づく溶融固化物の適正な再生利用の実施に資することを目 的とする。 (用 途) 溶融固化物の用途としては、以下のようなものが考えられる。 (1)路盤材(路床材、下層路盤材、上層路盤材等) (2)コンクリート用骨材、アスファルト混合物用骨材 (3)埋め戻し材 (4)コンクリート二次製品用材料(歩道用ブロック,空洞ブロック、透水性ブロック等)等 (目標基準) 溶融固化の実施に当たっては、・・・・、生活環境の保全の観点から満たすことが望まれる基準として、溶融 固化物に係る目標基準を定めるものとする。 一般廃棄物の溶融固化物に係る目標基準は、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、総水銀、セレン の6項目とし、これらの項目に係る溶出基準は下表のとおりとする。(以下、省略) 経済産業省は、7月20日付けで 1)都市ゴミを焼却した灰を主原料とした「エコセメ ント」のJIS(日本工業規格)を制定する。 2)一般廃棄物、下水汚泥等を溶融固化 した「溶融スラグ骨材」をTR(標準情報:準JISとし て位置付ける。 「エコセメント」 都市ごみや下水汚泥の焼却灰と、従来のセメント原料を混ぜて作ったセメント。 焼却灰等に含まれるダイオキシン等の有害物質は、1300℃以上の焼成過程で無害なものに分解させる とともに、鉛等の有害金属は塩化物として回収されるため、環境に対して安全なもの。 「溶融スラグ」 一般廃棄物等の焼却施設から発生する焼却灰等を溶融固化したもので、道路用溶融スラグ骨材、又はコ ンクリート用溶融スラグ細骨材として利用される。 <規定概要> ○ JIS R5214 エコセメント 都市部などで発生する廃棄物のうち主たる廃棄物である都市ごみを焼却した際に発生する灰を主とし、 必要に応じて下水汚泥などの廃棄物を従としてエコセメントクリンカ一の主原料に用いて製造される資源 リサイクル型のセメントの一種であるエコセメントについて、品質、原材料、製造方法、試験方法、検査、表 示、報告事項などを規定するもの。 ○ TR AOO16 一般廃棄物 下水汚泥等の溶融固化物を用いたコンクリート用細骨材(コンクリート用溶融スラグ細骨材) この標準情報(TR)は、一般廃棄物、下水汚泥等の溶融固化物を用いたコンクリート用細骨材について、 品質、試験方法、検査方法、表示及び報告、並びにコンクリートへの適用範囲などを規定するもの。 ○ TR AOO17 一般廃棄物 下水汚泥等の溶融固化物を用いた道路用骨材(道路用溶融スラグ骨材) この標準情報(TR)は、加熱アスファルト混合物用骨材及び路盤材として使用する溶融固化骨材について 規定するもので、種類、区分及び呼び方、品質、試験方法、検査、表示、報告事項などを規定するもの。 下水汚泥 一般廃棄物 焼却灰(重量比10~15%) ・屋外の過酷な条件で長期間使用 ・万一重金属が流出すると深刻な環境汚染 環境基準が厳しいオランダでは・・・ ①大半のスラグはアルカリ性=緩衝液でpH調整 ②溶液/スラグ比が100 日本の基準は重金属の溶出しにくい条件で試験 溶融スラグ(焼却灰の1/2~1/3) ・沸点の低い重金属の揮発 ・シリカの網目構造に包み込 まれ溶出しない 有害物質の溶出試験 有害物質があっても溶け出 なければよい! コンクリート骨材、路盤材 土壌の汚染に係る環境基準について (平成3年8月23日環境庁告示46号) (2) 試料の作成 採取した土壌を風乾し、中小礫、木片等を除き、土塊、団粒を粉砕 した後、非金属製の2㎜の目のふるいを通過させて得た土壌を十 分混合する。 (3) 試料液の調整 試料(単位g)と溶媒(純水に塩酸を加え、水素イオン濃度指数が 5.8以上6.3以下(①)となるようにしたもの)(単位mL)とを重量体積 比10%の割合(②)で混合し、かつ、その混合液が500mL以上とな るようにする。 (4) 溶 出 調整した試料液を常温(おおむね20℃)常圧(おおむね1気圧)で振 とう機(あらかじめ振とう回数を毎分約200回に、振とう幅を4㎝以 上5㎝以下に調整もの)を用いて、6時間連続して振とうする。 400 0.8 亜鉛(Zn) 銅(Cu) 鉛(Pb) カドミウム(Cd) 300 0.6 200 0.4 100 0.2 0 0.0 0 5 10 15 600 1.0 国道30号線 岡山市中央町付近の交差点 500 Zn、Cu濃度(m g・kg-1) 国道53号線 岡山市番町交差点 0.8 亜鉛(Zn) 銅(Cu) 鉛(Pb) カドミウム(Cd) 400 300 0.6 0.4 200 0.2 100 0 0.0 0 20 Pb,Cd濃度(m g・kg-1) 1.0 Pb、Cd濃度(m g・kg-1) Zn、Cu濃度(m g・kg-1) 500 5 10 15 20 深さ(cm) 深さ(cm) 植栽木:サザンカ バーク堆肥のマルチング 植栽木:シャリンバイ マルチングなし、 図:岡山市内主要国道の植樹帯の土壌重金属含有率(嶋ら、2001) 表 岡山市主要幹線道路の緑化樹木植栽帯(n=110)の土壌表層における 重金属含有率(mg・kg-1) (嶋ら、2002) 亜鉛 銅 394.38 95.41 459.51 53.03 0.59 231.34 109.53 93.64 138.58 0.40 最大値 1600.10 614.32 920.32 1240.25 2.35 最低値 89.12 8.90 311.01 3.14 0.08 平 均 標準偏差 マンガン 鉛 カドミウム おわりに ●中途半端なリサイクル資材の大量使用がのちに問題化しないために・・・ ●基準がないイコール「処分場」としないために・・・ ●使用に際しての安全基準が必須。 ●基準をクリアしようと「技術革新」がすすみ、リサイクルが促進される。 ●「法面保護工などの緑化工」=土木工事の一部として市場単価による積算 フォローアップがなく、努力しても評価されない?
© Copyright 2024 ExpyDoc