ポリグラフ計測のしくみ ーハ-ドウェア中心にー (株)デジテックス研究所 1 はじめに 生体現象の導出原理、電極の考え方、ポリグラフ 検査機器の基本構成、及び計測のポイントなどに ついてハ-ドウェア中心に解説します。 特に、最近の主流となっているデジタル式の機器 についてアナログ式と比較しながら留意点を説明 します。 2 目 次 1. 生体現象の導出原理 * 概念 * 接触インピ-ダンス * 分極電圧 * 差動増幅器 2. ポリグラフ機器の構成 *システムリファレンス *モンタ-ジュ処理 *ハ-ド時定数 3. 計測のポイント * アナログ式 *デジタル式 *疑似デジタル式 *各種方式の主な相違点 3 1. 生体現象の導出原理 4 1. 生体現象の導出原理 -概 念- ★生体現象の導出原理はアナログ、デジタル式に共通 5 1. 生体現象の導出原理 - 接触インピ-ダンス - 等価回路 接触インピ-ダンスは小さく揃えることが大切 (高く揃えるのは難しい) 6 1. 生体現象の導出原理 - 接触インピ-ダンス - インピ-ダンスチェック周波数 =10Hz 7 1. 生体現象の導出原理 - 分極電圧 - *分極電圧は、電極表面の+イオンと生体 のーイオンとの電位差 *金属電極には、必ず分極電圧が存在 *分極電圧=数100mV *分極電圧の軽減法 (塩化膜を作る) ・電極ペ-ストに浸ける ・飽和食塩水に浸ける ・食塩水中の電気分解法 分極電圧に起因する測定障害 ◆ 波形が基線レベルで平坦になる ◆ 基線変動を伴う雑音混入 8 1. 生体現象の導出原理 ー 分極電圧 ー 分極電圧起因のアーチファクト例 9 1. 生体現象の導出原理 ー 差動増幅器 ー 10 1. 生体現象の導出原理 - 差動増幅器 - 優れた差動増幅器の条件 ①同相分除去比(CMRR) = 差動入力増幅度 同相入力増幅度 ②低雑音 (dB) 同相入力分(外来雑音分)を除去 する比率を示します。(>86dB) この値が大きいほど外来雑音の 排除能力が高くなります。 増幅器自身の内部雑音 (<4μV p-p) ③最大直流入力電圧 この値が大きいほど分極電圧による 増幅器の飽和がなくなります。(>0.5V) 11 2.ポリグラフ検査機器の構成 最近のPSG検査機器や脳波計はアナログ式 からデジタル式に移行しています。 また、疑似デジタル式な構成を持つ機器も 海外製品に多く見かけられます。 これらの方式の相違は、使用方法に違いが でます。 ここでは、一般的な機器の構成方式を知って もらい、信頼性のあるデ-タ収集と検査効率 の向上に役立つことを期待します。 12 2.ポリグラフ検査機器の構成 < アナログ式 > 本 電極接続箱 バッファアンプ 体 ) ュ 差動増幅器 電 極 選 択 器 ( モ ン タ ー ジ TC (LFF) 主 増 幅 器 フ ィ ル タ ア ナ ロ グ 出 力 LFF HFF 13 2.ポリグラフ検査機器の構成 < デジタル式 > 本 体 電極接続箱 差動増幅器 デジタル信号処理 TC (LFF) A / D 変 換 器 モ ン タ ー ジ ュ 処 理 HFF 処理 LFF 処理 表 示 / 収 録 感 度 切 替 処 理 14 2.ポリグラフ検査機器の構成 <疑似デジタル式> 電極接続箱 本 バッファアンプ 体 差動 増幅器 電 極 選 択 器 デジタル信号処理 TC 主 増 幅 器 A フ / D ィ 変 ル 換 タ 器 H F F 処 理 L F F 処 理 感 度 切 替 処 理 表 示 / 収 録 15 2.ポリグラフ検査機器の構成 各方式の主な相違点 アナログ式 デジタル式 疑似デジタル式 チャネル単位 の信号取得 電極単位の 信号取得 チャネル単位 の信号取得 デ-タは検査 時設定に固定 モンタ-ジュ、 基本的にデ-タ 誘導、フィルタ は検査時設定に 等の変更可能 固定 16 2.ポリグラフ検査機器の構成 各種方式の主な相違点 アナログ式差動増幅器 チャネル単位 C3 A1 C4 A1 C3 + ― + ― デジタル式差動増幅器 電極単位 1ch (C3-A1) + ― C4 + ● 2ch (C4-A1) A1 O2 A1 + ― Nch (O2-A1) R C3電極(C3-R) ― + ● C4電極(C4-R) A1電極(A1-R) ― R:システムリファレンス 17 2.ポリグラフ検査機器の構成 システムリファレンス R 例:(C3+C4) 18 2.ポリグラフ検査機器の構成 システムリファレンス システムリファレンス(R)は、通常、頭皮上の雑音の 混入し難い部位に配置します。 デジタル式ではこのシステムリファレンスが外れると 記録できなくなるため、脳波計では2カ所の電極部位 C3、C4や、F3、F4の平均電位がシステムリファレンス としてよく使用されています。また、単独のシステム リファレンスとしている機種もあります。 いずれの機種もシステムリファレンスが装着されない と正しい測定が行えません。 19 2.ポリグラフ検査機器の構成 システムリファレンス 【システムリファレンス使用時の注意】 ◆ 機器のシステムリファレンスが、割り当てられている 電極を必ず装着します。 モンタージュに無関係で、(C3+C4)、(F3+F4)、R(単独) を割り当てている機器が一般的です。 ◆ システムリファレンスで測定した電極単位の信号波形 を確認するようにします。 (モンタージュの例:C3-R) 20 2.ポリグラフ検査機器の構成 モンタ-ジュ処理 デジタル式では信号波形を表示する際、モンタージュ 処理を単純な引き算処理で行います。 共通のシステムリファレンスを基準に増幅された電極 デ ータ 同士 を 引き算 する こ とに よ り 、 すべ て のモ ン タ ージュを作成できます。 耳朶のデータもシステムリファレンスを基準に増幅され ているため、耳朶基準の基準電極導出モンタージュも 双極導出モンタージュも同じように処理されます。 21 2.ポリグラフ検査機器の構成 モンタ-ジュ処理 例えば、システムリファレンス(R)で測定したC3、C4、 A1の電極単位の信号をそれぞれ C3 : C3-R C4 : C4-R A1 : A1-R とすると、 基準電極導出法 (C3-R)-(A1-R) = C3-A1 双極導出法 (C3-R) -(C4-R) = C3-C4 で計算されます。 22 2.ポリグラフ検査機器の構成 ハ-ド時定数 ハ-ド時定数の主目的は直流成分除去。 電極の分極電圧などの直流成分を含む信号は、大きく 増幅ができません。(主増幅器が飽和する) そのため、一旦時定数回路を介した後、主増幅します。 一般には、1秒または10秒の時定数が用いられます。 尚、基線レベルの平坦波形は、差動増幅器が飽和し、 この時定数により出現します。 23 3.計測のポイント 1. 分極電圧の影響 ①固有の分極電圧 ②異電極に起因 *基線レベルの平坦波形現象 *基線変動を伴う雑音混入現象 材質、大きさ、表面状態 2. 対 電 極 の 接 触 イ ン ピ -ダンス 外来雑音(ハム)等の混入防止 *接触インピ-ダンス大 →外来雑音の飛び込み増加 *接触インピ-ダンスのバラツキ →CMRR低下 24 3.計測のポイント 3. 対電極のリ-ド線を 束ねる。 4. デジタル式機器の場 合には、システムリファ レンスの確認と生体へ の装着を忘れずに。 外来雑音(ハム)等の混入防止 *同相入力をでるだけ同量混入 させて差し引きゼロにします。 *システムリファレンスが生体へ 装着されていない場合 *機器で設定されたシステム リファレンス電極と不一致な場合 差動増幅器は動作しません。 25 3.計測のポイント 5. 各種センサを使う 時の注意 (呼吸、いびき、体位 、SpO2等) *専用コネクタタイプ *汎用コネクタタイプ (G1G2) *汎用コネクタタイプの場合 ①汎用電極-システムリファレンス間 ②専用入力 の2タイプに注意! 参考: 2004日本臨床神経生理学会 技術者講習会テキスト 「終夜睡眠記録と導出のポイント」 虎ノ門病院 川名ふさえ 26 参 考 終夜睡眠ポリグラフィ-の診療点数 1 携帯用装置を使用した場合 720点 2 1以外の場合 3300点 検査項目 フルPSG(2の場合) ア イ ウ エ 脳波、眼球運動、オトガイ筋筋電図 鼻または口における気流の検知 胸壁、及び腹壁の換気運動記録 パルスオキシメ-タによる動脈血 酸素飽和度連続測定 27 ポリメイト AP1532 28
© Copyright 2024 ExpyDoc