認定社会福祉士研修認定番号:20130002 スクールソーシャルワーク 第5講義: カウンセラー と ソーシャルワーカー ~その違い・役割と協働~ 中部学院大学人間福祉学部 准教授 宮嶋 淳(みやじま じゅん) JUN Miyajima 2014.1.25. 1 児童生徒の教育相談の充実について―生き生 きとした子どもを育てる相談体制づくり―(報告) • 平成19年7月 教育相談等に関する調査研究協力者会議 学校における教育相談の充実について • 児童生徒をめぐる状況 • 児童生徒の視点からの教育相談の在り方に ついて • 教育相談に関する校内体制の充実について • 早期からの教育相談について • 教育相談に関する教員の意識及び能力の向 上について 児童生徒をめぐる状況 • 現代社会の変容の中で、家庭の教育力や地 域の機能が低下するとともに、児童生徒の抱 える問題が多様化し、深刻化する傾向も見ら れる。 • こうした様々な問題に対して、学校が対応し なければならない状況になっている。 • また、社会の変化は、教員や児童生徒にもス トレスの増大を招いている。 児童生徒の視点からの 教育相談の在り方について • 様々な悩みを抱える児童生徒一人一人に対 して、きめ細かく対応するためには、学校とと もに、多様な専門家の支援による相談体制を つくっていくことが大切である。 教育相談に関する 校内体制の充実について • 教育相談は、学校における基盤的な機能で あり、教育相談を組織的に行うためには、学 校が一体となって対応することができる校内 体制を整備することが必要であるとともに、教 育相談に対する教員一人一人の意識を高め ることが必要である。 早期からの教育相談について • いじめや不登校への早期対応、児童虐待の 深刻化や少年非行・犯罪の低年齢化等に適 切に対応するため、小学校における教育相談 体制の充実を図っていくことが必要である。 教育相談に関する教員の 意識及び能力の向上について • 教育相談に当たる教員の児童生徒の抱える 課題や効果的な指導・対応に関する姿勢と意 識が大切であり、様々な校務分掌に教育相 談の機能を生かしていく発想や、教育相談に 関する教員研修の充実が必要である。 スクールカウンセラーについて • 経緯と現状 • スクールカウンセラーに関するアンケート結 果について • スクールカウンセラーの役割及び意義・成果 について • スクールカウンセラーに関する課題について • 今後の検討の方向 経緯と現状 • 平成7年度から調査研究を実施しているスク ールカウンセラーは、 • 平成18年度には全国で約1万校に配置・派遣 されるに至っているが、 • 都道府県市により活用の状況は様々である。 スクールカウンセラーに関する アンケート結果について • スクールカウンセラーに関するアンケートの 結果、 • スクールカウンセラーの配置及び時間数の拡 大を希望する意見や、 • スクールカウンセラーの効果を評価する意見 が多い。 スクールカウンセラーの 役割及び意義・成果について • スクールカウンセラーの業務は、 • 児童生徒に対する相談のほか、 • 保護者及び教職員に対する相談、教職員等 への研修、事件・事故等の緊急対応における 被害児童生徒の心のケアなど、 • ますます多岐にわたっており、学校の教育相 談体制に大きな役割を果たしている。 スクールカウンセラーに関する 課題について • スクールカウンセラーの配置の拡大に伴い、 • 資質や経験に違いが見られたり、 • 学校における活用の仕方に大きな差が見ら れるなどの課題も指摘されている。 今後の検討の方向 • スクールカウンセラーに期待されている役割 は大きく、今後、可能な限り中学校以外の学 校種における配置・活用や相談時間数の増 加等を検討することが必要である。 • また、スクールカウンセラーをスーパーバイズ する者の配置や、地域の実態に応じた一層 多様な人材の活用等について検討すること が必要である。 精神的な幸せとは 1. 生きる喜びがあり、基本的に安心感がある こと 2. もてる素質的力を相応に発揮し機能させ、 自分なりの立場にふさわしい役割をとること ができること 3. まわりの有意味な関係にある人びとから認 められ、受け容れられて、その存在が喜ば れていること 子どもが望むカウンセラー像 • 「やさしくしっかり聴いてくれる」「上手く表現で きない言外の意味を汲んでくれる」『いるだけ でほっと安心できる存在感がある人』 • 「僕のような変人でも、生きていていいんだっ て心のそこから思ってくれる人」 • 「直接教えることをしなくても、勉強や仕事に どのようにつくかなど、具体的な生きた役立 つ知恵をもっている人、表面的にただ親切な のは物足りない」 親援助の基本姿勢 • • • • • • • • • • • • どのような親でも、基本的に自然治癒力があり、その親独自の背景、歴史がある。 過去を責めるより、いま、ここからできることに着目していく。 親も一人の人間であることに留意する。 ときにほどよいあそびこころを持って親自身の課題、問題解決を手伝うことも必要。 どれほど親に反抗的、冷淡であっても、子どもは心の底で親との和解、親からの受 容を切望しているという理解は不可欠。 親と子どもをつなぐ心持ちを援助者は基底にもつ。 援助者は自分のおかれた状況、治療状況、できること・できないことを正直に伝え、 治療方針を率直に示し、親はどのようにしていきたいかを聞く。 「ほどよい母親」の概念の重要性を念頭に。強迫的に完璧に子どもを理解しよう、よ い親であろう、とおのれを束縛しないように。 症状や問題行動の意味を家族とともに考える、一方的な解釈や説得に陥らないよ うに。 親の対応、認識の変容に対して素直に敬意を表現する。父親、母親いずれにも原 則として公平に、一方に援助者の未解決の感情などを交えて加担することがないよ うに。 親の成長や変容を一方的に期待するのではなく、援助者も親との出会いから学ぶ 姿勢を。 親へのアプローチが全体の治療過程の中によく統合され、それ自体が際立たず、 浮き上がらないように。 子どもの面接の特徴 • 子どもは発達の途上 • 年齢の低い子どもは、ことばによる交流が十分にで きないこともある • ふつうの意味で、この子どもは話し合っていくことが できると思えても、その子どもが全く期待していなか った大人に会うわけだから、その言語表現が自分の 気持ちを十分に言い尽くしていないこともある • 子どもは交流手段が大人に比べて限定されている ので、子どもと通じ合うためには、援助者がこころの 窓を広く目いっぱい開いて、大人のほうが子どもの 土俵に上がっていくような用意をする 子どもの土俵に乗る • 子どもというのは大人が中心につくった社会の枠の 中に準拠していくことを求められているので、大人が 子どもの土俵に乗っていくことがとても新鮮に映る。 • 子どもが「おや?先生や親とはなんか違うぞ」と思っ てくれれば、心を開いてくれる。子どもの中で流行っ ている文化にも関心のあるほうがいい。 • 「自分の中にいつまでもいい意味での子どもを持っ ていることだ」 SSWとSCとの違い • 不登校事例 – カウンセラー:不登校の子どもの心の側面に関 心を向け、本人や保護者との面接で対応 – ソーシャルワーカー:不登校の背景に、貧困や 虐待等の問題があることを一応念頭におき、可 能性があれば教師だけでなく、市町村や児童相 談所との連携を考える。 • 両者の仕事は重なり合うことが多い。 両者の仕事は重なり合う • 保護者や教職員に対する相談(カウンセリン グ、コンサルテーション) – – – 校内会議等への参加 教職員や児童生徒への研修や講話 相談者への心理的な見立てや対応 – ストレスチェックやストレスマネジメントなどの 予防的対応 – 事件・事故等の緊急対応が必要となる場合に おける心のケア SSWとSCLの違い SSW SCL 資質 社会福祉に関する知識に加え、教 育分野に関する知識や経験を 有する者 児童・生徒の臨床心理に関する高 度の専門的知識・経験を有す る者 主な資格 社会福祉士 精神保健福祉士等 臨床心理士 精神科医等 支援方法 子どもと子どもを取り巻く環境に働 カウンセリングを通して、子どもた きかけ、家庭・学校・地域の橋渡 ちの悩みや問題の解決に向け しなどにより、悩みや問題の解 て支援する。 決に向けて支援する。 JUN Miyajima 2013. 8. 24-25. 22 利用者との距離・姿勢 • • • • • • • • • • 表情 :喜怒哀楽 視線 :強さ・弱さ、見下ろし、見下げ 動作 :身振り、手振り 姿勢 :腕組み、足組み 身体接触 :手を握る、体を触る 距離 :向かい合う、横に座る 声の調子 :トーン、大きさ 抑揚 :語尾の上げ下げ 間 :沈黙、言葉と言葉の間隔 速さ :話ののばし方、ちじめ方 出典:山田容(2003) 感情を伴う表情 • 怒り:眉の内側が下がる、下まぶたは鼻の方へ引かれる、口は固く結ばれるか 四角に開かれる • 悲しみ:眉の内側があがり寄せられる、頬がもちあげられる、唇の両端が下げ られる • 恐怖:眉が全体にあがり内側に寄せられる、上まぶたが上にもちあげられる、 唇は離され耳の方へ水平に広がる • 驚き:眉と上まぶたがもちあげられる、あごが真下に下がり口が開く • 嫌悪:上唇が持ち上げられる、下唇がわずかに突き出される、ほおが持ち上げ られる、鼻にしわが寄せられる • 軽蔑:口の端のほうが耳の方向に広げられ強く締められる、口角が締められた 側の鼻の穴が広げられる、顔がやや横向きになる • 喜び:唇の両端が耳のほうに水平に引かれる、ほおが持ち上げられる 出典:山田容(2003) 面接における言語反応 • • • • • • • • • • • 場面構成 受け止め、最小限の励まし、非指示的リード 明確化、焦点化、認知確認 相手の表現したことの繰り返し 言い換え 感情の反射、感情の明確化 要約 質問 支持、是認、勇気づけ、再保証 情報提供 提案、助言、解釈、説明 出典:渡部律子(1999) かかわり行動 出典:SW演習教材開発研究会(2008) 行動 促進 阻害 視線 ・相手を見る ・内容や状況に応じた自然な視線 ・視線が外れる ・キョロキョロする ・凝視する 表情 ・やわらかい自然な表情 ・自然な微笑み ・こわばった顔つき ・無表情 身ぶり ・リラックスしたポーズや動作 ・相手の方を向く ・わずかに状態を傾ける ・自然なうなずき ・固い姿勢 ・大げさなジェスチャー ・自己接触行動や反復行動 声の調子 ・温かみのあるやや低めの声 ・ゆったりとした話し方 ・状況にふさわしい言葉遣い ・ためらいがちな話し方 ・甲高いトーン ・事務的な口調 応答 ・相手の話に関心を向ける ・相手の反応に合わせた反応 ・早合点な応答 ・話をそらしたり誘導したりする ・沈黙に耐えかねる 援助的なコミュニケーション① • 発信者として – 適切な記号化された明確なメッセージ – 非言語行動による感情表現に留意する – メッセージが伝わっていることを確認する • 受信者として – – – – – 十分に傾聴する 話しやすい態度をとる 非言語から伝わるメッセージに敏感になる 感情に配慮し、焦点化し、受容的共感的態度 思い込みを避け、伝わったメッセージを確認する 出典:山田容(2003) 援助的なコミュニケーション② • 聞き手として – 相手の目を見ながらきく – 言葉が詰まっても、急かさず、じっくり – 一緒にコミュニケーションを作り上げていく – 絵や図を描きながら 援助的なコミュニケーション③ • 話し手として – 相手の目を見ながら – 相手が聴き取りやすい速さで話す – 短い文で – 話す内容の要点を絞り、わかりやすく – 話題を変えるときは、新しい話題に移ることを明確 に伝える – ジェスチャーを有効に使う – 難しい言葉や内容は、具体的な例、絵、写真、辞書、 パンフレット等を活用しながら説明する – 大切な情報をメモして渡す 基本的応答技法① • 内容の反射に関するもの – 単純な反射:利用者の言葉をそのまま返す – 言い換え:利用者の言葉を相談者の言葉に言い 換えて反射する –要 約:利用者が語ったことを要約して返す – 明確化:利用者が語ったことを明確にして示す 基本的応答技法② • 感情の反射に関するもの – 感情の反射 :利用者が語った感情をそのまま反 射する – 感情の受容 :利用者が語った感情を受け入れ 反射する – 感情の明確化:利用者の語った感情を明確にし て示す 基本的応答技法③ • 適切な質問 – 開いた質問 : 質問に答えることによって、 多くのことが語れるような質問 – 閉じた質問 : はい、いいえ、 あるいは 答えが一つであるような質問 – 状況に即した質問 : 面接の流れに合致した質問 – 避けるべき質問の認識 : 興味本位、 立ち入り過ぎ 出典:山辺朗子(2003) 基本的応答技法④ • 情緒的な支持 – 利用者を支えるようなメッセージ – 利用者の健康さや強さを認めるようなメッセージ • 直接的なメッセージ – I(アイ)メッセージ – 「私は」で始まる直接的主観的なメッセージ – メッセージを一般化するのではなく、一人の人間 としてのワーカーの思いを直接伝える 出典:山辺朗子(2003) 共感の公式 • 利用者の感情の理解の反射: 「あなたは今、~というおきもちなのですね」 • 利用者の経験等と感情を理解して反射: 「~ということがあったので、~というお気持ちなのですね」 • 利用者の表面的な感情、無意識、深層に共感: いわゆる「気づき」が増すようなかかわり • 自己覚知:自身の経験や感情を認識し、利用者の今ここで の状況と自分を重ねていないか吟味する マイクロ技法 の階層 出典:アレン・E, アイビイ /福原真知子(1985) 技法 の 統合 第四層 積極技法 指示・説明・自己開示 第三層 基本的傾聴の連鎖 質問・励まし・反映・要約 第二層 かかわり行動 受容的・共感的な基本的態度 第一層 心理臨床の働きがつくる 福祉との架け橋 • 心理と福祉は、学問上も実践面でも、それぞれの特 徴を生かしつつ連携・協働する必要性に迫られてい る。 • 福祉の現場にいる人々は、個人に適した心身のウ ェルビーイングを追究する新たな福祉の視点を必要 としはじめているし、 • 心理臨床家たちは、ラージャー・システムを視野に 入れた新たな心理臨床の視点の拡大が必要である ことも分かってきた。 • 心理臨床も福祉も協働のための知を探ることに積 極的になることで、深刻で複雑な現代の危機を乗り 越えることができるに違いない。 葛藤から協力への道程(DESC) 不適切な台詞 適切な台詞 D:あなた割り込まないで! ここは並んでいるんですよ E:まったく失礼で、嫌な人ね 次は私の番だと心持にしていたところなん です S:そこ、退いて 後ろに並んでくださいませんか? C:みんなの迷惑です! そうしてくださると、私も並んでいる人も 気持ちがいいです 家族カウンセリング • 関係(家族も含)の問題を解決しようとする心理療法 • 家族療法では、個人の症状や問題は、その個人や 個人を取り巻く環境のどちらかによって引き起こされ るのではなく、個人に関わるあらゆる部分の相互作 用、相互依存関係が表現されていると受け取る。 • 関係のところで起こっている問題を理解し、関係を 変えることで問題解決を図ることができる。 エコシステミックな視点による統合 • 個人療法が対象とした個人の内的、認知的、あるい は行動的影響・変化の問題と、家族療法が強調した 対人的、相互作用的あるいは世代間の影響・変化 の問題が、別々の治療法の問題としてとらえられる のではなく、エコシステミックな視点に立って再統合 され始めた。 • 個人療法における認知行動療法の発展と家族療法 におけるシステム理論の見直しによって大きく前進 することになった。 子どもの自信の源を探る心理学 • 「見留める」=存在や言動を受け止める。 • 「認める」=見て判断する、評価する、承認す る。 • 子どもは成長の過程でこれら2種類の「認め られる」経験を通じて自信を得ていく。 まとめ • SSWrは、児童・生徒だけではなく、教師と学校・教 育委員会が、教育の力を十分に発揮できるよう、支 援する役割がある。 (学校内環境の支援) • SSWrとして活動するためには、学校・教育・子ども に関する知識と、ソーシャルワークに関する知識・技 術が必要 • SSWの基本原則は、「子どもの利益の最優先」 – 子どもの「自己決定の尊重」「秘密の保持」は、SSWrの 当然の責務である。 2015/9/30 • SSWrは、ソーシャルワークの視点やアプロー チをもって、教師との協働を構築する。 • SSWrが、スクールカウンセラー等と協働して 対応すれば、それぞれの専門性をより純粋に 、効果的に発揮できる。 • SSWrは、情報を収集し、的確に判断し、適切 に管理しながら活用する。 2015/9/30 • SSWrは、学校の役割を理解し、自分の役割 を認識する。 • SSWrの専門性とは、「つながること」である。 • SSWrは、アセスメントを大切にする。 – アセスメントは、ミクロからマクロまで。 – アセスメントは、社会資源の準備状況(レディネス )にも及ぶ。 2015/9/30 • SSWrは、ケース会議についての正しい理解 ・技術をもつことが必要。 – ケース会議を通して、多くの情報を集め、家族の 状況の理解を深める。 – ケース会議を通して、教師等が先の見通しを持て るようにする。 2015/9/30 • ケース記録を正確・的確に記述し、関係者間 で、子どもの最善の利益のために情報を共有 する。 – 今後は、「司法証拠としての記録の開示」を意識 化する必要が高まってくる。 2015/9/30 • SSWrは、関係機関等との日頃からの「つな がり」を大切にし、支援ネットワークの形成、 スムーズな活用に努める。 • SSWrは、地域の社会資源を熟知・発掘し、 それらを有効に活用する。 • SSWrは、連携する関係機関や他職種の専 門性を理解し協働する。 2015/9/30
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