2007年3月22日 中原区糖尿病病診連携の会による勉強会 非専門医のために役立つ 糖尿病患者日常診療のコツ(1) -診断を中心として関東労災病院 腎臓代謝内科 (現 糖尿病内分泌内科) 杢保敦子 Kantou Rosai Hospital 糖尿病治療の目標 血糖、血圧、体重、血清脂質の良好なコントロール状態の維持 糖尿病細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)および 動脈硬化性疾患(虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症)の 発症・進展の阻止 健康人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、 健康人と変わらない寿命の確保 Kantou Rosai Hospital 糖尿病治療を難しくしている要因 治療の必要性が理解されにくい 自覚症状に乏しい 糖尿病にたいする誤った認識、悪いイメージ 食事療法、運動療法が治療の主体である 食事、飲酒、間食など “好きなものを制限される” 価値観との葛藤(仕事や人間関係など) 治療の継続が必要である “治る病気“ではない “頑張り“がすぐに”結果”に結びつくとは限らない Kantou Rosai Hospital 「糖尿病が強く疑われる人」における治療状況 ー糖尿病の検査の有無別ー 現在治療を 受けている (10.6%) 不明 (2.8%) 現在治療を 受けていない (42.3%) 現在治療を 受けている (54.9%) 現在治療を 受けていない (89.4%) 糖尿病の検査を受けたことがある人 (435名) 糖尿病の検査を受けたことがない人 (47名) Kantou Rosai Hospital 糖尿病診断、治療へのアプローチ 1.まず診断 正常? 境界型? 糖尿病? →境界型と糖尿病を逃さない 2.緊急性があるか 3.合併症は 4.治療方針の決定 Kantou Rosai Hospital 60歳以上では、3人に1人は 糖尿病か予備軍 糖尿病が強く疑われる人(HbA1C ≧6.1% ) 糖尿病の可能性が否定できない人(6.1>HbA1C ≧5.6% ) (%) 40 35 30 25 20 10.0 15 11.0 10 12.8 5 0 6.5 男 女 全体 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 20-29歳 30-39歳 40-49歳 50-59歳 60-69歳 70歳以上 Kantou Rosai Hospital 糖尿病診断には、まず血液検査を! 糖尿病のハイリスク群には積極的に検査を勧めてください ①境界型と言われたことがある ②尿糖陽性 ③肥満(BMI25以上) ④高血圧 ⑤感染症(膀胱炎、膿瘍、歯周病) ④糖尿病の家族歴がある ⑤運動不足 ⑥40歳以上 ⑦妊娠糖尿病、巨大児出産歴がある ⑧健診、ドック等を受けていない Kantou Rosai Hospital 糖尿病診断の手順 1.「糖尿病型」か否かまず判定 ①空腹時血糖値 ②75gOGTT2時間値 ③随時血糖値 ≧126mg/dl ≧200mg/dl ≧200mg/dl 別の日に検査して①~③の値のいずれかで「糖尿病型」が確認できれば 「糖尿病」。 2回目は1回目と異なる検査が望ましい。 2.「糖尿病型」で、次の一つを満たせば「糖尿病」と診断する ①糖尿病の典型的症状 ②HbA1C≧6.5% ③確実な糖尿病網膜症の存在 3.病歴で1.2の条件が確認できれば、糖尿病と診断するか、その疑いとして 対応する Kantou Rosai Hospital 糖尿病を見過ごさないためには 空腹時血糖を過信しない DECODE study (Europe) DECODA study (Asia) FPG≧126mg/dL&2hPG≧200mg/dL FPG≧126mg/dLのみ 2hPG≧200mg/dLのみ 31.1% (473/1,517) 40.4% (613/1,517) 18.1% 2時間値を測定 していなければ 見過ごされた 44.9% (220/1,215) (546/1,215) 37.0% 28.5% (449/1,215) (431/1,517) DECODE Study Group:BMJ,317,371,1998. Qiao Q.:Diabetologia,43,1470,2000.より作図 Kantou Rosai Hospital 食後血糖高値からはじまる糖尿病が多いことに注意 IFG:Impaired Fasting Glucose 空腹時血糖異常 IGT:Impaired Glucose Tolerance 耐糖能異常 (mg/dL) 20% 空 126 腹 時 血 糖 値 110 0 糖尿病型 単独IFG IFG/IGT 正常型 単独IGT 30% 50% 140 200 (mg/dL) OGTT2時間値 Kantou Rosai Hospital 糖尿病を見過ごさないためには 糖尿病発症のハイリスク患者について、 定期的スクリーニングをおこなう。 空腹時血糖、尿糖では見過ごされやすい。 食後尿糖、随時血糖でチェックする。 できれば75gOGTTを 糖尿病の診断にはHbA1Cは有用 か? Kantou Rosai Hospital 糖尿病を見過ごさないためには HbA1Cもあてにならない (mg/dL) 空 腹 時 血 糖 値 5.8% 7.0% 単独IFG 5.6% IFG/IGT 5.7% 6.0% 正常型 5.3% 単独IGT 5.4% 5.5% 糖尿病型 126 110 0 140 200 (mg/dL) OGTT2時間値 n=6,341 The DECODA Study. Diabetic Med : 2002より引用 Kantou Rosai Hospital 糖尿病の症状は? 血糖が高くなり尿に糖があふれる 尿の量が増える 体はうまくエネルギーを利用できない のどが渇く 水分を多く取る 体重が減る 主な自覚症状 のどが渇く 頻尿・多尿 疲れやすい 足がつる 急に体重が減る 水分を多くとる 傷が治りにくい 空腹感 200mg/dl以上の血糖が 続かないと、症状は でない 目のかすみ 足のしびれ Kantou Rosai Hospital 糖尿病診断の手順 空腹時血糖値 ≧126mg/dl 随時血糖値 ≧200mg/dl OGTT2時間値 ≧200mg/dl 糖尿病型 いずれかあり ①糖尿病症状(口渇、多飲、多尿、体重減少) ②HbA1C ≧6.5% ③糖尿病網膜症 空腹時血糖値 ≧126mg/dl いずれかあり 糖尿病 随時血糖値 ≧200mg/dl いずれもなし OGTT2時間値 ≧200mg/dl 再検査 いずれもなし 糖尿病型 糖尿病を疑い経過観察 Kantou Rosai Hospital 糖尿病診断時に注意すべきこと *空腹時血糖値、HbA1Cのみでは、見落としがある *食後血糖値140mg/dlを超えたら耐糖能障害を疑う できるだけ75gOGTTを行い、同時にインスリンも チェックする 診療所でのOGTTは難しい? *境界型であっても、metabolic syndromeの存在を評価し、 治療につなげていく 高血圧、高脂血症、肥満の存在は糖尿病と 動脈硬化性疾患の予備軍と考える 病 診 連 携 病院での治療は外来のcapacity的にも困難 繰り返し採血をおこない、フォローする事が大事! Kantou Rosai Hospital 糖尿病診断、治療へのアプローチ 1.まず診断 正常? 境界型? 糖尿病? →境界型と糖尿病を逃さない 2.緊急性があるか インスリン依存状態? 1型? 2型? それ以外? 3.合併症は 4.治療方針の決定 Kantou Rosai Hospital インスリン依存状態かどうか? #所見 ①著明な高血糖 ②尿ケトン体陽性 ③著明な高血糖症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在 ④脱水状態 #病因 ①1型糖尿病 ②2型糖尿病でインスリン依存状態になる病態 *重篤な感染症や外傷の合併による *SU剤二次無効による血糖管理不良によりケトアシドーシスに 陥った場合 *清涼飲料水ケトーシス(若年肥満男性) *非ケトン性高浸透圧性昏睡(高齢者の脱水) Kantou Rosai Hospital インスリン依存状態の治療 高血糖、高血糖症状(口渇、多飲、多尿) 体重減少、尿ケトン体陽性 → インスリン治療 原則として専門医に インスリン依存状態が疑われる 所見 治療と 対応 著しい高血糖 尿ケトン体陰性~軽度陽性 経口摂取可能、意識状態良好 所見 十分な水分補給とインスリン注射を開始 血糖、尿ケトン体の測定、できれば血算、血清 電解質なども 専門医と以後の処置と対応を協議 治療と 対応 著しい高血糖 尿ケトン体強陽性、脱水状態を認める 患者の反応が鈍いあるいは朦朧状態 専門医への紹介、迅速な搬送 搬送時間が長くなる場合、生理食塩水と イン スリンの静注を行う (小児の場合には、基本的に専門医注1)へ 経過観察 と対応 36時間(1日半)経過後、なお尿ケトン体が持続陽性のときは必要ならば専門医へ搬送 意識状態が悪化したときは迅速に集中治療ができる病院へ。他疾患の可能性にも留意す る。 基本的には強化インスリン療法(1日4回注射法 専門医による初期治療 病態に改善が得られたらインスリン療法、食事、 運動などの見直し、改善 小児の1型糖尿病の場合は定期的に診療し、 成 長過程にあわせた治療・生活指導を目指す かかりつけ医と継続的な連携を行う かかりつ など)の維持管理 専門医に け医の 本 人 、 家 族 な ど へ の 食 事 、 運 動 、 生 活 指 導 連 よる治療、 継続治療、 (低血糖への対応も含む)など。小児の場合は学 携 校生活にも配慮 管理 管理 専門医との継続的な連携を行う 日本糖尿病学会編集: 糖尿病治療ガイド2006-2007: 文光堂, 2006 Kantou Rosai Hospital その糖尿病は1型か2型か? 糖尿病と、それに関連する耐糖能低下の成因分類 I. 1型 β細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る A. 自己免疫性 B. 特発性 II. 2型 インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインス リンの相対的不足を伴うものなどがある III. その他の特定の機序、疾患によるもの A. 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの ① インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常 ② 膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常 B. 他の疾患、条件に伴うもの ① ② ③ ④ 膵外分泌疾患 内分泌疾患 肝疾患 薬剤や化学物質によるもの ⑤ 感染症 ⑥ 免疫機序によるまれな病態 ⑦ その他の遺伝的症候群で糖尿病を 伴うことの多いもの IV. 妊娠糖尿病 日本糖尿病学会編集: 糖尿病治療ガイド2006-2007: 文光堂, 2006 Kantou Rosai Hospital 糖尿病のタイプを見分けるコツ 1型糖尿病 抗GAD抗体陽性 インスリン分泌能低下 2型糖尿病 インスリン依存状態が多い 多くはインスリン非依存状態 急に高血糖症状が出現して発症 無症状なことが多い 痩せ型が多い(が、肥満でも) 肥満や肥満歴があることが多い 若年者に多い(が、高齢でもおこる) 中年以降に発症しやすい 発病・悪化の原因が明らかでない 体質+生活習慣 (過食、運動不足、飲酒) 家族歴はないことも多い 家族歴があることが多い SPIDDM、劇症1型糖尿病の存在 Kantou Rosai Hospital 緩徐進行型1型糖尿病 slowly progressive IDDM(SPIDDM) *経過とともに徐々に膵β細胞機能が低下し、数年後(平均3年)に インスリン依存状態に進行する1型糖尿病である *発症当初は食事療法や内服治療で血糖がコントロールできるこ ともある *痩せ型糖尿病や血糖コントロール不良例では、抗GAD抗体を 測定してみる →抗GAD抗体価>10では、1型糖尿病の可能性が高い Kantou Rosai Hospital 劇症1型糖尿病 1型糖尿病の中でも特に急激に発症・進行する激烈なタイプ *約70%の症例で先行感染症状(発熱、上気道炎、 消化器症状など)を認める *妊娠に関連して発症することがある スクリーニング基準 1. 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいは ケトアシドーシスに陥る (初診時尿ケトン陽性、血中ケトン体上昇のいずれか) 2. 初診時血糖≧288mg/dl Kantou Rosai Hospital 劇症1型糖尿病診断基準 1. 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいは ケトアシドーシスに陥る (初診時尿ケトン陽性、血中ケトン体上昇のいずれか) 2. 初診時血糖≧288mg/dl(16mmol/l)かつHbA1c<8.5% 3. 発症時の尿中Cペプチド<10mg/day または 空腹時血清Cペプチド<0.3ng/ml かつ グルカゴン 負荷後(または食後2時間後)血清Cペプチド<0.5ng/ml Kantou Rosai Hospital 劇症1型糖尿病を見逃さないためには 感冒症状(発熱、上気道炎、消化器症状など)で受診した 患者には、高血糖症状の有無を聴取し、糖尿病の既往が なくても採血と検尿をおこなう 尿糖と尿ケトンが強陽性なら直ちに専門医に Kantou Rosai Hospital 糖尿病における成因(発症機序)と病態(病期)の概念 病態 (病期) 成因 (機序) 正常血糖 高血糖 糖尿病領域 正常領域 境界領域 インスリン 非依存状態 インスリン 不要 高血糖是正に 必要 インスリン 依存状態 生存に必要 1型 2型 その他特定の型 妊娠糖尿病 図右への移動 は糖代謝異常の悪化(糖尿病の発症を含む)、図左への移動 は糖代謝異常の改善を 示す。オレンジ 、青 の部分は「糖尿病」と呼ぶ状態を示し、頻度が少ない病態(病期)は破線 で示している。 個々の症例の分類は、1型(インスリン依存状態)、2型(インスリン非依存状態)のように成因と病態の両面からとら えるとよい。その場合、1型(インスリン非依存状態)、2型(インスリン依存状態)などのようなケースもありうる。 日本糖尿病学会編集: 糖尿病治療ガイド2004-2005: 文光堂, 2004 Kantou Rosai Hospital インスリン非依存状態の治療 2型糖尿病が中心となる 随時血糖値250~300mg/dL程度またはそれ以下 治 療 の 継 続 急性代謝失調を認めない場合 尿ケトン体陰性 治療 食事療法、運動療法、生活習慣改善に向けて患者教育 血糖コントロール目標の達成 治 療 の 継 続 治療の開始(初診) 血糖コントロール目標の不達成 食事療法、運動療法、生活習慣改善に向けて患者教育 経口血糖降下薬療法(スルホニル尿素薬、ビグアナイド薬、α-グル 治療 コシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、速効型インスリン分泌促進薬) 症例によってはインスリン治療 血糖コントロール目標の達成 治 療 の 継 続 治療 血糖コントロール目標の不達成 食事療法、運動療法、生活習慣改善に向けて患者教育 経口血糖降下薬の増量 別の経口降下薬またはインスリンとの併用療法 症例によってはインスリン治療 血糖コントロール目標の達成 患者教育が重要 すぐに投薬の必要はない 治療 血糖コントロール目標の不達成 食事療法、運動療法、生活習慣改善に向けて患者教育 インスリン療法 1日1回から4回注射 日本糖尿病学会編集: 糖尿病治療ガイド2004-2005: 文光堂, 2004 Kantou Rosai Hospital 糖尿病診断、治療へのアプローチ 1.まず診断 正常? 境界型? 糖尿病? →境界型と糖尿病を逃さない 2.緊急性があるか インスリン依存状態? 1型? 2型? それ以外? 3.合併症は 高血圧症は? 高脂血症は? 網膜症は? 腎症は? 神経障害は? 動脈硬化は? 4.治療方針の決定 Kantou Rosai Hospital Kantou Rosai Hospital インスリン抵抗性状態と血管障害 遺伝的素因 内臓肥満 環境因子 アディポサイトカイン異常 インスリン抵抗性 血管におけるインスリン作用 高血圧 中性脂肪 処理障害 高脂血症 血管障害 耐糖能障害 メタボリックシンドローム Kantou Rosai Hospital 動脈硬化 動脈硬化の危険因子 糖尿病 高脂血症 喫煙 高血圧 肥満 ストレ ス 境界型から動脈硬化のリスクは増加する 動脈硬化は予防が大切 食事、運動、禁煙、減量で 危険因子のコントロールを! 高血圧、高脂血症も厳格にコントロールする 初診時には、心電図のチェックを! Kantou Rosai Hospital 急性発症1型糖尿病を除いて、糖尿病の罹病期間は わからない 糖尿病発見時に、すでに進んだ合併症がある場合も 少なくない 初診時、すべての患者で、合併症の評価が必要 合併症の状態、既往症によって、血糖管理の方針や 薬剤の選択が変わってくる可能性がある Kantou Rosai Hospital 糖尿病網膜症の管理 眼底検査 3~12ヵ月 正 常 3~6ヵ月 単 純 性 1~3ヵ月 前 増 殖 性 血糖コントロール 増 殖 性 光凝固療法 新生血管 緑内障 網膜剥離 硝子体手術 初診時には必ず眼科受診を Kantou Rosai Hospital 糖尿病腎症の管理 *まずは検尿で蛋白尿の有無をチェックする *微量アルブミン尿のチェックを行う 随時尿≧30mg/mg・Cr ⇒ 微量アルブミン尿 微量アルブミン尿は、冠動脈疾患の危険因子としても重要! *高血圧の厳格な治療 <130/80mmHgを目標 ACE阻害剤、アンギオテンシン受容体拮抗薬の使用 *塩分制限食、蛋白制限食の導入 Kantou Rosai Hospital 糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準 (糖尿病性神経障害を考える会:2002) 必須項目 1. 糖尿病が存在する 2. 糖尿病性以外の原因による末梢神経障害を否定できる 条件項目(以下3項目中2項目以上を満たす) 1. 糖尿病性神経障害に基づくと思われる自覚症状* 上肢のみ、片側のみの症状は、 ①両側性 整形外科的疾患の可能性を ②足趾先および足底の「しびれ」「疼痛」「異常感覚」のうち 考える いずれかの症状を訴える *上肢症状のみの場合および「冷感」のみの場合は含まれない 2. 両側アキレス腱反射の低下または消失 3. 両側内顆振動覚低下(128Hz音叉にて10秒以下) アキレス腱反射の誘発法 (膝立法) Kantou Rosai Hospital 糖尿病診断、治療へのアプローチ 1.まず診断 正常? 境界型? 糖尿病? →境界型と糖尿病を逃さない 2.緊急性があるか インスリン依存状態? 1型? 2型? それ以外? 3.合併症は 高血圧症は? 高脂血症は? 網膜症は? 腎症は? 神経障害は? 動脈硬化は? 4.治療方針の決定 食事療法、運動療法だけ? 薬物治療も? Kantou Rosai Hospital 糖尿病治療の原則 インスリン依存状態 1型糖尿病 2型糖尿病 インスリン治療 効果的なインスリン療法のために食事療法、運動療法 インスリン非依存状態 2型糖尿病 生活習慣の見直しと教育 まずは、食事療法、運動療法 Kantou Rosai Hospital 血糖コントロール指標と評価 コントロールの評価とその範囲 指標 優 良 HbA1C値(%) 5.8未満 5.8~6.5未満 空腹時血糖値 (mg/dL) 80~110未満 110~130未満 130~160未満 160以上 食後2時間血糖値 (mg/dL) 80~140未満 140~180未満 180~220未満 220以上 不十分 6.5~7.0未満 可 不良 7.0~8.0未満 不可 8.0以上 上図におけるHbA1C値、空腹時血糖値、食後2時間血糖値の間には、個人差、日内変動が複雑なこと から、定常的な相関性は望めない。 不可が続くときは、治療の見直し、もしくは専門医への紹介を 日本糖尿病学会編集: 糖尿病治療ガイド2004-2005: 文光堂, 2004 Kantou Rosai Hospital 食事療法の基本的概念 1. 目的 インスリン作用システムの改善 2. カロリーの設定 標準体重× 25 ~ 30 kcal/day 3. バランス ①3食のバランス・規則正しい食事 ②食品構成のバランス 4. 運動療法との関係 Kantou Rosai Hospital 栄養のバランスのよい食事 ✐献立の基本は、 主食:黄色 主菜:赤色 副菜:緑色 を、毎食組み合わせます。 副菜(野菜) 主菜 (魚、肉、卵、大 豆 及び加工食品) 肉入り野菜炒め 主食 (ご飯、パン、麺) 副菜(野菜) Kantou Rosai Hospital ❣肉の脂を控え、植物性の油や魚の脂に ☆コレステロールを増やす働き 肉の脂 動物性油脂 ☆コレステロールを減らす働き 魚 乳製品 飽和脂肪酸を多く含む食品 植物性油脂 不飽和脂肪酸を多く含む食品 ❣食物繊維を毎食摂りましょう ★食後の血糖が急激に上がるのを抑えます ★コレステロールの吸収を抑制します ※大皿で1皿 ※毎食小鉢で2皿 または Kantou Rosai Hospital 運動療法指導のコツ 1.運動療法の目的を説明する ①運動の急性効果としてブドウ糖、脂肪酸の利用が促進され血糖が 低下する。 ②運動の慢性効果として、インスリン抵抗性が改善する。 ③エネルギーの摂取量、消費量のバランスをよくし減量効果がある。 ④加齢や運動不足による筋萎縮を防ぎ筋力を保つ。 ⑤高血圧や高脂血症の改善に有効である。 2.具体的な運動内容と目標を設定する ①1日10000歩を目標に! ②1回20~30分の有酸素運動 ③全身を動かすどんな運動でもOK ④できるだけ毎日、無理なく続ける Kantou Rosai Hospital 2型糖尿病の薬物療法の考え方 *2型糖尿病患者の治療の基本は食事・運動療法であり安易に 薬物を開始することは避けなければならない。 *初診患者では、急性代謝障害がなければ、食事・運動療法を 指導し、場合によっては数ヶ月経過観察することも可能。 *患者の年齢や病態、合併症、併発疾患を考慮して薬剤の選択を する。 *経口血糖降下剤やインスリン製剤は少量より開始し、徐々に 増量する。 *糖毒性解除および膵β細胞機能温存を目的とした早期の インスリン治療の開始。 Kantou Rosai Hospital 経口糖尿病薬の位置づけ 腸管からの ブドウ糖吸収↓ αグルコシダーゼ阻害薬 ++ ビグアナイド薬 + インスリン 分泌刺激↑ チアゾリジン誘導体 スルフォニルウレア薬 +++ グリニド薬 ++ 肝の糖新生と 放出↓ インスリン 感受性↑ +++ ++ + +++ + α-グルコシダーゼ阻害薬 ビグアナイド 食事(糖質) 血糖 ビグアナイド チアゾリジン誘導体 SU薬(第3世代) チアゾリジン誘導体 ビグアナイド インスリン SU薬 SU薬(第3世代) グリニド薬 Kantou Rosai Hospital 2型糖尿病の原因 遺 伝 的 素 因 糖毒性 遺伝的素因 インスリン抵抗性 環境 インスリン分泌不全 インスリンの作用不足 糖毒性 肥満 過食 運動不足 飲酒 高血糖 2型糖尿病 病態を考えた薬剤の選択を Kantou Rosai Hospital 2型糖尿病における薬物療法の考え方 インスリン抵抗性 インスリン インスリン 抵抗性 抵抗性改善薬 ブドウ糖毒性の解除 BG薬、チアゾリジン誘導体 インスリン療法 グリニド系薬剤 インスリン インスリン 分泌 分泌促進薬 その他 SU薬 2次無効 インスリン分泌不全 αGI Kantou Rosai Hospital 経口血糖降下剤使用の注意 1.SU剤 食前や食事時間が遅れた時に低血糖が出現する可能性があり、少量から開始する。 肝・腎障害のある患者、高齢者は、遷延性低血糖をきたす危険がある。 服用により体重増加をきたしやすい。 2.ビグアナイド剤 乳酸アシドーシスはまれであるが、肝・腎・心・肺機能障害のある患者、循環障害を有する者、 大量飲酒者、高齢者には投与しない。 発熱時、下痢など脱水のおそれがあるときには休薬とする。 ヨード造影剤使用の際は2日前から投与を中止する。 強い倦怠感、吐き気、下痢、筋肉痛などの症状が起きたら主治医に知らせるよう指導する。 3.チアゾリジン誘導体 浮腫、貧血、LDH上昇、CPK上昇が認められる。 心不全患者、心不全の既往者、重篤な肝機能障害患者には投与しない。 服用により体重増加をきたしやすい。 4.速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬) 肝・腎障害のある患者では低血糖をおこすおそれがある。 透析患者では禁忌である。 必ず食直前に内服する SU剤との併用は認められていない。 5.αグルコシダーゼ阻害薬 副作用として、腹部膨満感、放屁の増加、下痢などが認められる。 高齢者や腹部手術歴のある患者では、腸閉塞をおこすことがある。 投与開始6ヶ月は、月に一度肝機能検査が必要である。 Kantou Rosai Hospital 2型糖尿病患者のインスリン療法の適応 経口剤により十分な血糖調整が得られないとき *SU剤最大量にてもHbA1C>8~9% 空腹時血糖>160~180mg/dL オイグルコン(ダオニール)5mg・アマリール3-6mg/日、 あるいはこれらと他剤との併用 *やせ型 *網膜症、腎症など糖尿病性合併症が存在する *抗GAD抗体陽性:コントロール不良例は抗GAD抗体を測定してみる (>10なら1型糖尿病・SPIDDMがかなり疑われるがわずかに陽性でも 可能性は否定できない) 糖毒性を解除する目的で使用 *インスリン抵抗性の増大+膵ベータ細胞の疲弊が起こっている *インスリン抵抗性の解除、膵ベータ細胞機能の回復により、インスリン 離脱も可能である Kantou Rosai Hospital および非専門医の先生方 患者さんのインスリン治療への抵抗 *インスリンは最後の手段である *インスリンをうつような状態は重症だ *インスリンをうち始めたらやめることはできない *インスリン注射は痛い *インスリンをうったら自分の膵臓はダメになる *インスリン注射は難しい *低血糖が心配だ Kantou Rosai Hospital 専門医での治療を考慮する場合 *食事療法、運動療法、生活習慣改善に向けての患者教育が必要な場合 *十分な血糖調整が得られないとき(HbA1C8%が続く) *急激な血糖の悪化を認めたとき →1型、膵臓癌などの精査が必要 *インスリン導入時 *網膜症、腎症など糖尿病性合併症が存在する場合 *糖尿病性合併症など全身評価が必要な場合 *妊娠を希望する場合、妊娠中 *他疾患の合併時 Kantou Rosai Hospital 関東労災病院でできること 1) 糖尿病学習入院(7泊8日、2泊3日) 2) 血糖コントロール、合併症治療の入院 3) 糖尿病外来教室 4) 栄養指導 5) 外来インスリン導入 Kantou Rosai Hospital 糖尿病地域医療の充実が不可欠 病院 かかりつけ医 増え続ける糖尿病患者すべてを診察する 十分な時間もマンパワーもないので、 かかりつけ医に紹介したいが、、、 病診連携はわかっているが、、、 Q.かかりつけ医の先生の専門や 治療レベルがわからない Q.紹介した患者が戻ってくるのか Q.誰に頼んだらいいか、わからない Q.どの時点で送ったらいいのか わからない Q.どこに、誰に送ったらいいのか わからない Q.かかりつけ医の先生との交流がなくて、、 Q.何をしてくれるのかわからない Q.もっと早く送ってくれれば、、、 Q.こんな患者さんを送られても、、、 Q.送った後の患者さんの状態が心配 患者 大きい病院は待ち時間ばかり長くて嫌だし、、、 地域の診療所に行くのは、何となく不安で、、、 Kantou Rosai Hospital 中原区糖尿病病診連携の会によって… 病院 かかりつけ医 安定している患者さんは、半年に一度程度 食事療法の確認や合併症精査、コントロールの 確認のために受診していただく 安定した患者さんの定期的な処方や 経過観察のために受診していただく ①半年に1度、採血、検尿で状態を確認 ①月に1度はHbA1C、血糖の確認 ②食事療法の状況を確認 ②血圧、体重のフォロー ③全身的な合併症のチェックとフォロー ③高脂血症、肝機能なども時々チェック ④何かあったら、いつでも紹介を ④何かあったら、専門医に紹介 患者 地域の診療所で定期的に、いつでも診てもらえる。 病院ともつながっているから、何かあっても安心。 Kantou Rosai Hospital
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