AO入試受験者に見る国際化 (第28回関東地区大学教育研究会 桜美林大学四谷キャンパス 2011/9/23) 出光 直樹 (横浜市立大学) [email protected] http://www.idemitsu.info 1 問題関心 AO入試の担当者として見えてきたこと。 2002年~2005年 O大学 2005年~ Y大学 高校在学中の短期~長期の留学、海外在住経験などが、 審査対象の経験としてアピールされる。 既存の「海外帰国生入試」や「留学生入試」では把握できてい なかった“国際化”の一面。特に印象的だった、ニューカマー 外国人受験生の存在。 2 Y大学におけるAO入試の概要 国際総合科学部(国際教養学系・経営科学系・理学系) 入学定員650名中、50名の募集人員。 1次書類審査 → 2次面接審査の2段階で選抜。 主に、(1)志願者の取り組んできたこと、 (2)入学後の目標・志望理由、の2つのプレゼンテーションを審査。 国籍、出身学校、年齢等の制限は無し。 但し一定の英語資格の提出が必要。 【海外帰国生選抜】 日本人(永住者外国人)で、 一定年数(2~3年)以上海外で中等教育を受けた者。 【外国人留学生選抜】 外国人(永住者除く)で、 外国の高校を修了した者。 3 “国際化”プロフィール集計 2011(平成23)年度志願者の出願書類の記載内容から、 留学等の経験や外国人としてのに関わる以下の項目を、集計。 「短期研修」: 中等教育段階での、 1ヶ月以内の語学研修等。 「数ヶ月留学」: 中等教育段階での、 2ヶ月~4ヶ月程度の留学。 「1年留学」: 中等教育段階での、1学年程度の留学。 「長期就学」: 外国での1学年を超える初等・中等教育の就学。 ただし、外国の高校卒業者を除く、 「外国高校卒」: 外国の高校卒業者。日本国内の外国人学校や インターナショナルスクールを含む。 「外国人性」: 外国籍を有する、少なくとも片親が外国人である など、外国につながりのある者。 複数項目への該当者あり。 4 志願者 合格者 合格率 短期研修 25 13.7% 8 16.0% 32.0% 数ヶ月留学 4 2.2% 2 4.0% 1年留学 37 20.2% 12 24.0% 32.4% 11 6.0% 外国高校卒 5 2.7% 外国人性 6 183 長期就学 (外国高校卒を除く) 総数 50.0% 0.0% 0.0% 4 8.0% 80.0% 3.3% 3 6.0% 50.0% 100% 50 100% 27.3% 5 短期研修 オーストラリア6、米国5、カナダ4、米国&カナダ1、NZ3、英国2、 インド1、フィリピン1、マレーシア1、中国1 数ヶ月留学 オーストラリア3、カナダ1 1年留学 米国15、オーストラリア9、NZ4、英国2、 エクアドル1、カナダ1、スウェーデン1、ドイツ1、フィンランド1、メキシコ1、韓国1 長期就学(外国高校卒除く) 米国4、中国2、オランダ&イタリア1、タイ1、ブラジル1、マレーシア1、香港1 外国高校卒 タイ3、NZ1、日本国内のインター校1 外国人性 ブラジル2、中国2、ベトナム1、在日韓国人3世1 6 過去4年間の外国につながりのある合格者 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 7/51 4/50 2/50 6/50 日系ボリビア人、 14歳で来日。 日系ブラジル人3世、 13歳で来日。 ナイジェリア人、 日本生まれ育ち。 中国人、 高1で来日し帰化。 モンゴル人、 10歳で来日。 ベトナム人、 15歳で来日。 在日朝鮮人3世。 母フィリピン人、 日本と行き来。 父パキスタン人、 日本生まれ。3歳~16歳 パキスタン&UAE。 中国人、 5歳で来日。 韓国人。 日本生まれ育ち。 米国人、 15歳で来日。 ベトナム人、 10歳で来日。 中国人、 日本生まれ、小5~中1 中国。 中国人、 中2で来日。 日系ブラジル人3世、 生後3ヶ月で来日。 日系ブラジル人3世、 中2で来日。 ベトナム人。 中学から来日。 在日韓国人3世。 7 外国につながる高校生のための大学見学 2011年7月28日 Y大学の学生有志が企画実施。 http://www.facebook.com/groups/tabudachi/ キャンパス見学、 授業見学、大学 生との交流の他 、2名のAO入学 者が、自身の生 い立ち、大学受 験、大学生活に ついてプレゼンテ ーション。 8 Y君 ボリビア生まれの日系人。 14歳で来日し、ボリビア国籍と 日本国籍を有する。 8人兄弟の下から2番目。 高校では良い大学に入る事を 目標に、勉強とともに、医療通 訳のボランティア活動などに積 極的に取り組む。 当初、一般入試(他の国公立大学より は教科数が少ない)でY大学を受験 するつもりだったが、AO入試を 受験し合格。 総合電器メーカーに就職予定。 Oさん ナイジェリア人。6人兄弟の長 女として日本で生まれ育ち、小 ・中・高と公立校で学ぶ。 経済的理由から、国公立大学 への進学をめざし、Y大学のA O入試を受験。 外国籍ゆえのいじめや差別、 コンプレックスを乗りこえ、祖国 ナイジェリアについて調べはじ め、ナイジェリア人であることを 前向きに受け止めるようになる 。 大学入学後、米国の短期研修 をへて、米国に1年間留学。あ らためて、日本語ができる事の 価値を発見。 9 考察 成長をもたらす契機としての異文化体験。 “アイデンティティ” “気づき” “誇り” 困難をメリットに転化してアピールする手段としての “AO入試” 深い体験と振り返り。 十分に乗りこえていないケースも。 受動的な体験や経験の未消化。 言語的ダブルリミテッド。 経年比較、他大学との比較、 etc 英語資格の提出を課す、Y大学の固有性? 10
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