原始惑星系円盤研究会 2013年8月19日 国立天文台 原始惑星系円盤における力学 過程と円盤直接撮像観測 武藤恭之 (工学院大学) 目次 • • • • 円盤・惑星相互作用とI型惑星移動 円盤・惑星相互作用とギャップ生成 直接撮像観測と円盤の力学過程 将来の直接撮像観測への展望 • • • • 円盤・惑星相互作用とI型惑星移動 円盤・惑星相互作用とギャップ生成 直接撮像観測と円盤の力学過程 将来の直接撮像観測への展望 惑星形成の 標準モデル • コア集積モデル – 京都モデル – ダスト(μm)が出発 微惑星(km) 原始惑星(1000km) – 「塵も積もれば山とな る」モデル Hayashi et al. 1985 原始惑星系円盤の基本的性質 • 成分は、ガスとその1/100程度のダスト – ダスト集積=惑星形成 • 円盤質量は、中心星の1/100程度 • 円盤の拡がりは、100 AUスケール • 面密度 (最小質量円盤モデル) • 円盤の厚み(スケールハイト) • 寿命 – 100万~1000万年程度 原始惑星系円盤における力学過程 乱流: 自己重力 Boley 2009 磁気回転不安定性 Flock et al. 2011 Heinemann and Papaloizou 2009 円盤・惑星相互作用: スパイラル形成・ギャップ形成 FARGO simulation 惑星による密度波の励起 惑星の励起する密度波の強さ • 惑星近傍での静水圧平衡 惑星の重力エネルギー ガスの熱エネル ギーの摂動 • 密度波の励起位置 d~H ±§ § » GM p c2 d » Mp M¤ ¡ R ¢3 H I型惑星移動 原始惑星により生成された円盤中の密度揺らぎ 円盤と惑星の重力相互作用に よる密度波の励起 Inner disk pulls forward the planet Cent. star 密度波の反作用で、惑星 に重力的なトルクがかかる planet Outer disk pulls back the planet Background figure is from F. Masset’s webpage http://www.maths.qmul.ac.uk/~masset/moviesmpegs.html I型惑星移動の時間スケール 惑星移動のレート: 典型的に、 10ME の惑星@5AUで105 年 円盤の寿命に比較して短い Tanaka et al. 2002 I型惑星移動の方向 摂動が弱いが 惑星に近い • 円盤の性質に 依存する「微妙 な」問題 密度波: 摂動が 大きいが惑星 から遠い 2次元輻射流体の結果 円盤進化+惑星移動 円盤内で、惑星移動率が遅くなる 場所の進化にあわせて、惑星移動 Lyra et al. 2010 3次元計算: 2次元で良い? 3次元MHD計算 2次元MHD計算 Guillet et al. 2013 • • • • 円盤・惑星相互作用とI型惑星移動 円盤・惑星相互作用とギャップ生成 直接撮像観測と円盤の力学過程 将来の直接撮像観測への展望 ギャップ生成 ギャップ生成質量の大まかな見積もり • スパイラルの振幅 = 惑星の作る摂動の大きさ ¡ ¢ GM p Mp R 3 ±§ » » 2 § c d M¤ H ±§ • ギャップとは: § Mp M¤ » 1 ³ ¡ 3 » 10 H =R 0:1 ´3 ギャップ生成のプロセス 惑星はギャップをあけようとする VS 円盤の粘性は、ギャップを埋めようとする 粘性が無ければ、惑星質量が小さくても、十 分に時間をかければギャップはあく 粘性の無い円盤でのギャップ生成 方位角平均した面密度の進化 円盤は定常状態に達しない Muto, Suzuki, Inutsuka 2010 ギャップ生成と円盤不安定性 • 動径方向に強い密度(圧力)勾配 • 円盤の回転プロファイルが変化 – 円盤安定性に関するRayleigh条件との兼ね合い レイリー条件: 角運動量が外向きに減少している円盤は力学 的に不安定 dj dr < 0 or r d- dr < ¡ 2 for instability レイリー条件は比較的破りやすい 動径方向の力のつり合い: - 2 = - 2 K h 1+ 2 H d log § r 2 d log r もしも、面密度が円盤のスケールハイトと同じ程度 のスケールで変化しているとすると: d§ dr » § H d2 § dr 2 角速度はそこまで影響 を受けない: - » - 角速度の微分は大きく 影響を受ける: r d- dr » § H2 K £ 1+ » ¡ 3 2 ¤ H r + O(1) i Rossby Wave Instability 面密度(圧力)に、急激 な変化がある場合の、 非軸対称の不安定性 Li et al. 2000 粘性なし円盤での長時間進化 Yu et al. 2010 ギャップのモデル • 惑星質量・粘性・円盤の厚みに関係 • 円盤と惑星との間の角運動量交換をきっちりと モデル化する必要がある • うまくやらないと、レイリー条件に引っ掛かる 金川さんのトーク(22日) Crida et al. 2006 • • • • 円盤・惑星相互作用とI型惑星移動 円盤・惑星相互作用とギャップ生成 直接撮像観測と円盤の力学過程 将来の直接撮像観測への展望 原始惑星系円盤の直接撮像 すばる ALMA 円盤観測で見えるもの 赤外ではoptically thick 電波ではoptically thin ~数AU以下 近赤外線熱放射 ~数10AU 中間赤外線熱放射 ~100AU 赤外線散乱光 ~100AU以遠 電波熱放射 円盤の力学過程の直接観測 • 空間分解能の現状: – 近赤外で0.1秒角、 サブミリで0.2-0.3秒角 – 原始惑星系円盤では10-20 AU程度の分解能 • 典型的な距離 ~ 140pc – 100 AUあたりでの円盤のスケールハイト程度 • ALMA でも、もうすぐ0.1秒角の分解能が達成 円盤の力学過程が、直接見えてくるはず 原始惑星系円盤のスパイラル構造 • SAO 206462, HD 142527, MWC 758 • いずれも、近赤外線で見えている • 原始惑星系円盤に多くみられる構造か? SAO 206462 (Muto et al. 2012) HD 142527 (Casassus et al. 2012) MWC 758 (Grady, Muto, Hashimoto et al.) スパイラル構造: 密度波理論によるモデル • スパイラルの「形」にのみ注目 • 円盤にたつ「音波」を測定 – 円盤の音速(温度)がわかる 円盤の回転則 円盤の温度分布 共回転半径での円盤の厚み フィット結果 (MWC 758) • 波の励起の位置は円 盤の外側にありそう – Rc=1.55” • 比較的「熱い(=厚い)」 円盤 – H/R~0.18 パラメータの縮退 パラメータ: 波の励起位置 円盤の音速分布 • 外側に励起源があるモデルが好まれる • H/Rは0.1以上、flatでもflaredでも良い ガスと固体の相互作用(摩擦) • 原始惑星系円盤は、回転する薄い円盤 • ガス・ダストそれぞれに力のつり合い 上から見た図 phi 中心星重力 r ダスト 遠心力 ガス 圧力 ガスの影響を受けたダストの運動 • ダストはガスから向かい風を受ける • 角運動量を抜かれ、中心星に向かって落下 一般に、ガスの圧力が高い場所にダストが集まる phi 回転速度 r ダスト ガス摩擦力 ダストの渦へのtrap • 円盤中のどこか に高圧領域 • そこに、ダストが 集まってくる Lyra and Lin (2013) RWI at Viscosity Transition Regaly et al. 2012 惑星+ガス+ダスト=ダストギャップ Muto and Inutsuka 2009 • • • • 円盤・惑星相互作用とI型惑星移動 円盤・惑星相互作用とギャップ生成 直接撮像観測と円盤の力学過程 将来の直接撮像観測への展望 将来の大型望遠鏡計画 • 鍵は「高空間分解能」 • Full ALMAや、TMTなどの将来の大型望遠鏡計 画で、どこまで行けるか? 原始惑星系円盤 @ 100AU • 面密度 (最小質量モデル) • 円盤の厚み (スケールハイト) • 円盤のアスペクト比 14 AU = 0.1” @ 140 pc Subaru 原始惑星系円盤 @ 10AU • 面密度 (最小質量モデル) • 円盤の厚み (スケールハイト) • 円盤のアスペクト比 1.4 AU = 0.01” @ 140 pc TMT, full ALMA 原始惑星系円盤 @ 1AU • 面密度 (最小質量モデル) • 円盤の厚み (スケールハイト) • 円盤のアスペクト比 0.1 AU = 0.001” @ 140 pc ??? 惑星の励起する円盤の構造 惑星@10AU 惑星@30AU 惑星@100AU すばる TMT TMTサイエンス検討会報告書 (2011) 原始惑星系円盤の表面雪線 • 雪線: そこより遠方では、H2Oが氷として存 在する境界線 • 円盤内の温度輻射輸送を考えると、表面付 近に雪線が存在する Oka et al. 2011 まとめ • 円盤・惑星相互作用 – 惑星移動・ギャップ生成 – 惑星移動 ある程度の結論はあるが、まとまっていな い – ギャップ生成 円盤と惑星の角運動量交換をしっかり と見直す必要 • 円盤不安定性 – RWI, 粘性過安定性, などなど • 直接撮像観測 – 円盤の詳細構造が見えてきている – 力学に基づくモデルを構築できるようになると期待 • 将来の大型望遠鏡計画 – 分解能を生かし、円盤のより内側を見る
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