京都大学 情報通信産業論 講義資料 通信放送融合 2005年11月1日 (株)情報通信総合研究所 マーケティング・ソリューション研究グループ 櫻井 康雄 [email protected] 目次 はじめに 2.ビジネス面から見た通信放送融合 1.制度面から見た通信放送融合 1-1 通信・放送の定義 1-2 通信・放送の規制における違い <参考> 通信・放送の規制に関する法令 <参考> 通信・放送の規制に関する法令 ~具体的なサービス~ 2-1 通信放送連携型のサービス 2-2 通信、放送サービスのポジショニング 2-3 ブロードバンド放送 ①欧州における主なブロードバンド放送サービス ②FASTWEB ③日本におけるブロードバンド放送サービス 続 1-3 通信・放送の融合における4つの局面 1-4 通信と放送の区分(「不特定多数」の境界線) 1-5 ハード・ソフトの一致/分離をめぐる話題 1-6 情通審「第2次中間答申」でのIPによる再送信容認 ④ビー・ビー・ケーブル「BBTV」 ⑤KDDI「光プラスTV」 ⑥オンラインティーヴィ「4th MEDIAサービス」 ⑦アイキャスト「オンデマンドTV」 ⑧オプティキャスト「光パーフェクTV!」 2-4 VOD(ビデオ・オン・デマンド) <参考> 放送のデジタル化による影響 2-5 パワードコム等「ひかりdeDVD」 2-6 USEN「GyaO」 <参考> 広告費の推移 2-7 地上放送の特性と今後の変化 2-8 放送番組に連動する、双方向サービス 3.まとめに代えて 【1 】 はじめに〔通信と放送の違い〕 通信と放送は、制度上、あるいは事業者の事業ドメイン(得意分野)の上で、従来は峻別されてきた。しかし、両者の境界線が 曖昧になろうとしている現象が、通信放送の「融合」(「融合」ではなく「連携」と呼ばれる場合も) 両者の境界線の変化を見ることは、情報通信産業全体の変化を見るヒントになると考えられる ちなみに、「通信」と「放送」の境界線に関わるエピソードとして、次の話を挙げてみた 様々な切り口 エピソードⅠ ある日、電報の受付 で・・・ エピソードⅡ ラジオの始まり 通信とは・・・ 放送とは・・・ ・「会社が倒産しそうです」というお 客さんの電文を打つときも、受付の 社員は泣いてはいけない(「通信の 秘密」厳守のため) <他にも例えば> - 誘拐犯からの電話も(令状なしで は)逆探知できない ・放送人だったら、悲しみを共有する のに・・・ ・第一次世界大戦が終了し、多くの米国兵士が無線機を持って帰国した。元兵 士同士が無線機を使って、お互いに雑談していた。ある日、ある者がレコード を無線機で流し始め、聴いている皆に受けた。それが最初のラジオ局(RCA) の発端となった ・放送は、通信の一形態 エピソードⅢ ・ドイツ憲法は、放送については中央 政府ではなく、州政府へ権限を委ね ている(ナチスへの反省) 放送は言論、民主主義を 支えるもの 【2 】 1.制度面から見た通信放送融合 1-1 通信・放送の定義 従来、「通信は1対1」、「放送は1対N(不特定多数)」を基本としてきた しかし、そのような区分では律しきれない、中間領域的なサービスが多数提供されてきている 現行法下では、「通信」の場合の規制の受け方と、「放送」の場合の規制の受け方は大きく異なる。したがって、 通信と放送の区分が明確でなくなることは、大きな問題である 法律上の定義 中間領域的 サービスの出現 換言すると・・・ 通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符 号、音響又は影像を送り、伝え、又は受け ること(電気通信事業法第2条) 通信は、1対1 放送 公衆によって直接受信されることを目的と する無線通信の送信(放送法第2条) 放送は、1対N (N=不特定多数) ■公然性を有する通信 本来、通信は1対1であるが、 WWWのように1対N型の情報発信も登場 (例)ホームページによる情報発信 ■限定性を有する放送 本来、放送は公衆向けであるが、 視聴者が限定された放送も登場 (例)CS放送 <融合が進展した、通信・放送の関係> <通信と放送の関係> 公然性を有する通信 限定性を有する放送 放送 放送 通信 通信 【4 】 1-2 通信・放送の規制における違い 通信は、憲法によって「通信の秘密」が保障されており、コンテンツ規制が存在しない 放送は、電波の希少性、社会的影響力が大きいこと等から、多くのコンテンツ規制が課せられている(下表のとおり) 或るサービスにとって、通信とされる場合と、放送とされる場合とでは、配慮しなければならない点が大きく違う サービス提供事業者にとって、仮にサービスが放送と扱われる場合には、様々なコンテンツ規制を課せられてしまい、 サービス展開の自由度が著しく制限されることから、なるべく放送とは扱われたくないと考えるケースが多い <通信・放送に係る、主な参入規制・コンテンツ規制> 規制の項目 通信 放送(地上、衛星) ケーブルテレビ 有線役務利用放送 ・免許制〔電波法第 4,6,7条〕 ・委託放送は認定〔放 送法第52条の13〕 ・許可制〔有線テレ ビジョン放送法第 3条〕 - 引込端子数が 501以上→許可 - 51~500→届出 ・登録制〔電気通信 役務利用放送法第 3条〕 ・登録制及び届出制〔電 気通信事業法第9,16 条〕 ○ 〔放送法第3条の2 第1項〕 ○ 〔同法第17条により 準用〕 ○ 〔同法第15条により 準用〕 - (通信の秘密の確保、検 閲の禁止が求められる) 放送番組調和原則 (教養番組、教育番組、報道 番組、娯楽番組を設け番組間の 調和を保つ) ○ 〔同法第3条の2 第2項〕 - - 番組基準の設定 (放送番組の編集の基準を定 め公表) ○ 〔同法第3条の3〕 ○ 〔同法第17条により 準用〕 ○ 〔同法第15条により 準用〕 番組審議機関の設置 (放送番組機関を設置し番組 の適正を図る) ○ 〔同法第3条の4〕 同上 同上 参入規制 コンテン ツ規制 放送 放送番組編集準則 (公序良俗を害しないこと 等) 【5 】 <参考> 通信・放送の規制に関する法令 ■通信の秘密 <通信の秘密> 日本国憲法 第21条第2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならな い。 ○番組審議機関の設置 <放送番組審議機関> 放送法第3条の4 放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関(以下 「審議機関」という。)を置くものとする。 2 審議機関は、放送事業者の諮問に応じ、放送番組の適正を図るため 必要な事項を審議するほか、これに関し、放送事業者に対して意見を述 べることができる。 3 放送事業者は、番組基準及び放送番組の編集に関する基本計画を定 め、又はこれを変更しようとするときは、審議機関に諮問しなければな らない。 4 放送事業者は、審議機関が第2項の規定により諮問に応じて答申し、 又は意見を述べた事項があるときは、これを尊重して必要な措置をしな ければならない。 (以下、略) ■放送のコンテンツ規制 ○放送番組編集準則 <国内放送の放送番組の編集等> 放送法 第3条の2 第1項 放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の 定めるところによらなければならない。 1号 公安及び善良な風俗を害しないこと。 2号 政治的に公平であること。 3号 報道は事実をまげないですること。 4号 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から 論点を明らかにすること。 ○放送番組調和原則 放送法 第3条の2 第2項 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送の放送番組の編集に 当たつては、特別な事業計画によるものを除くほか、教養番組又は教育 番組並びに報道番組及び娯楽番組を設け、放送番組の相互の間の調和を 保つようにしなければならない。 ○番組基準の設定 <番組基準> 放送法 第3条の3 放送事業者は、放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて放送 番組の編集の基準(以下「番組基準」という。)を定め、これに従つて 放送番組の編集をしなければならない。 2 放送事業者は、国内放送について前項の規定により番組基準を定めた 場合には、総務省令で定めるところにより、これを公表しなければなら ない。これを変更した場合も、同様とする。 下線は情総研による 【6 】 <参考> 通信・放送の規制に関する法令 続 ■通信の定義 <電気通信の定義> 電気通信事業法第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定める ところによる。 1 電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は 影像を送り、伝え、又は受けることをいう。 (以下、略) ■放送の定義 <放送の定義> 放送法第2条 この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義 に従うものとする。 1 「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通 信の送信をいう。 (以下、略) <有線テレビジョン放送の定義> 有線テレビジョン放送法第2条 この法律において「有線テレビジョン放送」とは、有線放送(公衆によ つて直接受信されることを目的とする有線電気通信の送信をいう。以下 同じ。)であつて、有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律 (昭 和二十六年法律第百三十五号)第二条 に規定する有線ラジオ放送以外の ものをいう。 (以下、略) <電気通信役務利用放送の定義> 電気通信役務利用放送法第2条 この法律において「電気通信役務利用放送」とは、公衆によって直接受 信されることを目的とする電気通信の送信であって、その全部又は一部 を電気通信事業を営む者が提供する電気通信役務を利用して行うものを いう。 下線は情総研による (以下、略) 【7 】 1-3 通信・放送の融合における4つの局面 通信・放送の融合には4つの局面があると整理されている。技術の進展、ニーズの多様化等により、各局面で融合現 象が顕在化している ■融合の現象 概要 具体例 サービスの融合 通信と放送の双方の性質を併せ持つ中間領 域的サービスの利用が拡大 ●公然性を有する通信 ・電子掲示板(BBS) ・ホームページによる情報発信 ・インターネット放送 ●限定性を有する放送 ・CS放送 伝送路の融合 共通の伝送路を用いた通信サービスと放送 サービスの提供 ・ケーブルテレビネットワークを利用したインターネット接続サービス 端末の融合 1つの端末が通信サービスと放送サービス の双方に利用される ・テレビ放送を受信できるパソコン ・インターネットが利用できるテレビ 事業体の融合 通信事業と放送事業を兼業 ・ケーブルテレビ事業者がインターネット接続サービスを提供 ■制度的な現状 サービスの融合 ○ 「通信衛星を利用した通信・ 放送の中間領域的な新たなサー ビスに係る通信と放送の区分に 関するガイドライン」 伝送路の融合 端末の融合 ○法的制約はない ○受委託放送制度(放送法) ○電気通信役務利用放送法 (郵政省「通信・放送融合時代の情報通信政策の在り方に関する懇談会 【8 】 事業体の融合 ○NHK、NTTを除き特段の制限はな い 中間取りまとめ概要」(2000年12月14日)をもとに作成) 1-4 通信と放送の区分(「不特定多数」の境界線) 或るサービスが通信と扱われるか、放送と扱われるか、前もって明確に考えられないと提供事業者が混乱する可能性 がある。そのため、総務省は通信・放送の区分に関するガイドラインを設けた そのガイドラインによると、その区分は、受信者側が特定される者か、不特定多数なのかに拠る。ガイドラインでは、 5つの要素(紐帯関係、通信の事項、秘匿性、受信機、広告)に着目し総合判断するという考え方を示している 「通信衛星を利用した通信・放送の中間領域的な新たなサービスに係る通信と放送の区分に関するガイドライン」 1997年12月18日策定、 2001年12月26日類型追加 ■類型(事例) ■考え方 ・放送は、有限稀少な資源である電波を利用していること、 また、社会的影響力が大きいことから、通信とは区別して規 律されている ・医師会や弁護士会がその会員に対して行う会報等関連情報の配信 ・販売員宅への営業情報等の配信 ・通信と放送を区分する基準は、公衆に直接受信させること を送信者が意図していることが、送信者の主観だけでなく客 観的にも認められるかどうか ・予備校が、その予備校生に対して行う授業映像等の配信 ・相手方が「公衆」すなわち「不特定多数」であるかどうか が重要で、以下の5つの要素を総合的に判断 ・百貨店が、そのカード会員に対して行う会報等会員情報の配信 1) 送信者と受信者の間の紐帯関係の強さの程度、受信者における属性の強 さの程度 2) 通信の事項(通信の事項が送信者と受信者の紐帯関係や受信者の属性を 前提としているかどうか) 3) 情報伝達方式の秘匿性 ・レンタルビデオショップが、そのレンタルビデオ会員に対して行う会 報等会員情報の配信 ・クレジットカード会社が、そのカード会員に対して行う会報等会員情 報の配信 4) 受信機の管理 5) 広告の有無 総務省 通信衛星を利用した通信・放送の中間領域的な新たなサービスに係る通信と放送の区分に関するガイドラインより抜粋し作成 http://www.soumu.go.jp/s-news/2001/011226_1.html 【9 】 1-5 ハード・ソフトの一致/分離をめぐる話題 IT戦略会議において、 IT関連規制改革専門調査会が通信放送のハード・ソフト分離を提言した(第8回会合)が、 その直後には、「地上波放送局の分割は念頭にない」旨の資料が提出されている。提言が必ずしも好ましくないと いう見方もなされていることが窺える 放送業界は、現在の基幹放送の役割維持を非常に重要と考えている ■IT戦略本部 第9回会合資料より ■IT戦略本部 第8回会合資料より 資料10 2002年1月31日 IT戦略本部(第9回)議事次第 IT関連規制改革専門調査会の報告書について 宮内 義彦 1.報告書の趣旨 • 報告書の本質は、デジタルコミュニケーションの発展を実現して日本経済の再生に役立 てるべく、ユーザの視点に立った制度設計を行うべきということ。 • こうした問題意識から、通信・放送制度を、水平的な連携を可能とするデジタルの特質 を活した形に抜本的に転換して、コンテンツの充実やブロードバンドネットワークの効 率的な構築などを実現すべき、と提言。 • 制度の転換に当たっては、徹底した規制緩和と規制の簡素化により、経営サイドが自由 に事業展開できるようにすることが必要。 制度の転換により、コンテンツ同士、インフ ラ同士といったレイヤー毎の公正競争を促進しつつ、垂直統合的なビジネスであれ、水 平分離的なビジネスであれ、自由かつ柔軟にビジネス展開できるようにすることが必要。 2.地上波放送との関係 • 地上波放送の社会的重要性は十分に認識しており、今後もそうした役割を果たせるよう な形で制度改革を推進していくことが重要。 • 報告書は、水平的な概念を導入した制度に転換して通信・放送の融合を促進すべきと主 張しているのであり、地上波放送局の分割などは念頭になく、逆に地上波放送局のビジ ネス上の選択肢を増やす規制緩和となると認識。 • また、将来的に放送網が必ずIP網に統合されるべきとは言っていない(報告書の中で ネットワークの将来像を「IP網/デジタル網」と記述)。 • このように報告書は、地上波放送の役割・意義を認識した上で、デジタルコミュニケー ションが発展する中で、放送局がIP網も上手に活用してグローバルな舞台で自由に活 躍できるよう、通信・放送の制度改革を通じて環境整備を行っていくことが重要という 認識に基づいている。 IT戦略本部 IT関連規制改革専門調査会「IT分野の規制改革の方向 性」第8回会合(2001年12月6日)資料より http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai8/pdfs/8siryou1-1.pdf IT戦略本部 宮内議長資料 第9回会合(2002年1月31日)資料より http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai9/9siryou10.html 下線は情総研による 【10 】 1-6 情通審「第2次中間答申」でのIPによる再送信容認 地上放送事業者は、ケーブルテレビと有線役務利用放送事業者〔QAM方式〕に対して再送信同意を与えているが、有 線役務利用放送事業者〔IP方式〕に対しては再送信同意を与えていない 地上放送事業者がIP再送信に対し不同意である理由として、次の点があるとされる。番組の同一性保持、伝送品質 (ハイビジョン)、匿名受信性、区域外再送信、著作権の扱い(QAM方式とIP方式とで異なる)・・・ 広告モデルに対する影響、ハードソフト分離論も大きな要素であると考えられる 情報通信審議会(=情通審)「第二次中間答申」(2005.7.29)においては、地上デジタル放送をIP方式で再送信す ることを容認する内容が示されている ■「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割 ~2011年全面移行ミッションの確実な実現に向けて~〔平成16年諮問第8号 第2次中間答申〕(2005年7月29日情報通信審議会)から抜粋 ◎ハード・ソフトに係る記述 ・中継局整備その他の送信環境の整備について、当審議会としては次の ように考える。 ◎「IPマルチキャストによる地上波デジタル再送信」に係る部分の概要 (1) 現行の放送制度においては、技術・財政等の観点から一定の要件を 満たしているとされた者が、一定期間放送波を占有することが認められ ている。すなわち、放送番組(ソフト)の制作・編成を行う者と、放送 に必要な地上波中継局(ハード)の整備を行う者が一体である「ハー ド・ソフト一致」が前提であり、放送番組(ソフト)の制作・編集を行う 放送事業者が、自ら放送に必要な中継局等(ハード)の免許主体となって、 その責任においてハード整備を行うことが原則である。 ①「2008年中に、HD品質によって、全国で開始。」 「2008年までに再送信を実施するための仕組みを確立するため、 2006年から、都市難視聴解消上の効果の検証等を含め、SD品質 において開始。」 ②上記の時間軸を踏まえ、以下を実施。 ア 実証実験による技術・運用面の条件確認 <今年度内> イ IPマルチキャストによる放送の著作権法上の位置づけの明確化 これは、「地上放送」という国民に最も普及したメディアについて、全 国あまねく、安定かつ継続したサービス提供を確保するためには必要不 可欠であり、今後とも維持されるべき制度と考えられるが、こうした原 則の下では、デジタル親局及び中継局の全国整備は、基本的にはデジタ ル放送局の免許主体である放送事業者の責務である。 ウ 2006年開始の再送信の在り方について検討、結論を得る<今年 度内> 下線は情総研 http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050729_11.html 〔参考〕電気通信役務利用放送法第12条により、有線役務利用放送事業者が放送を再送信する場合には、その放送を提供している 放送事業者の同意が必要とされている(ケーブルテレビの場合も、有線テレビジョン放送法第13条で同意が必要とされている) 【11 】 2.ビジネス面から見た通信放送融合 ~具体的なサービス~ 2-1 通信放送連携型のサービス 通信放送連携型のサービスには様々なサービスがある。次ページ以降では、これらのサービスの一部を紹介する 例 *は、次ページ以降で紹介 伝送路を共用 * ブロードバンド放送(有線役務利用放 送) 1セグ放送 端末を共用 MediaFLO ・通信ネットワークを用いて放送を流す ・トリプルプレイの一部 ・通信用の端末で放送を受信する その他 ・Tナビ ・インターネット・テレビ ・パソコンによる放送受信 通信放送連携型の サービス 放送に近似した番組配信 パソコン向け無料ネット放送 GyaO * VOD(ビデオ・オン・デマン ・放送と同様な番組をリクエストにより配信 ド) ・番組を配信し、DVDへ焼き付ける ひかりdeDVD ・タイムシフトが特徴 * 放送内容に連動した 通信サービス利用 ・放送番組をストリーミング配信 ・地上放送に酷似した広告モデル * * 番組連動の双方向サービス ・・・ 【13 】 ・通信サービスにより放送番組に付加価値が付く 2-2 通信、放送サービスのポジショニング 図の左下(マス対象・受動的スタンス)のサービスは放送としての、図の右上(個人対象・能動的スタンス)は通信 としての性格が濃い ケーブルテレビやトリプルプレイは、これらのサービスをワンストップ(=セットで)提供するもの ← パ ー ソ ナ ル ←受動的=「見るテレ ビ」 通信サービス ・VOD ・ストリーミング 124度・128度 CS 110度 CS 「使うテレビ」=能動的→ BS 地上放送 対 象 と な る 視 聴 者 高機能? → マ ス 高精細? 視聴者が接するスタンス スカイパーフェクト・コミュニケーションズ資料などを参考に作成 【14 】 2-3 ブロードバンド放送 ①欧州における主なブロードバンド放送サービス 国 欧州では、比較的早い時期からオールIPのトリプルプレイが提供されてきた 欧州のトリプルプレイは、ほとんどの場合、地上放送再送信を提供している 事業者 サービス名 開始時期 サービス概要 (2005年10月現 在) サービス内容 トリプルプレイ 再送信 英国 イタリ ア Kingston Communicati ons 「KIT」 Video Networks 「HomeChoice」 FASTWEB 「FASTWEB Base」 (ファストウェブ バーセ) 衛星放送 VOD ○ ○ ○ × (固定電話は 別途提供) ○ ○ ○ ○ 1998年(実 験) 2001年 ・キャリアであるKingston 2000年9月 2004年5月本 格開始 ・Video Networks社が提供 するオールIPのトリプルプ 2003年8月放送 サービス開始 ・新興通信事業者FASTWEB (旧e.Biscom)が提供する オールIPのトリプルプレイ ・ADSL、FTTHで提供 ・Network based PVRも提供 ○ ○ ○ ○ (放送) 「TV di FASTWEB」 フラン ス (電話の バンドル) 地上放送 (無料) Communicationsが提供する 放送サービス レイ フランステレ コム 「Ma ligneTV」 (マリーニュ TV) 2003年12月 ・キャリアであるフランステ レコムがADSLで提供する放 送サービス ○ ○ ○ × フリー 「Free Box TV」 2003年12月 ・ISPであるフリーが提供す るオールIPのトリプルプレ イ ○ ○ × ○ ヌフ・テレコ ム 「neuf TV」 2004年3月 ・キャリアであるヌフ・テレ コムが提供するオールIPの トリプルプレイ ○ ○ × ○ (2006年第1四 半期開始予 定) ・ISPであるクラブ・アンテ ルネットが提供するオール IPのトリプルプレイ ○ ○ ○ ○ クラブ・アン テルネット 【15 】 【凡例】 ○:提供している 各種資料より作成 ②FASTWEB FASTWEBは、1999年に設立され、ブロードバンド(FTTH、ADSL)を積極展開。固定網トップのテレコムイタリアに次 ぐ事業者として注目されている。事業戦略としてトリプルプレイ提供を明確に掲げている <個人ユーザ向けサービス構成と料金(月額)> <FASTWEBの沿革> 1999年9月 2000年1月 2000年10月 2001年3月 2001年5月 2001年7月 2002年11月 2003年3月 2003年8月 2004年12月 2005年9月 設立 最初の企業ユーザ契約 個人ユーザ向けサービス開始 VODサービス開始 サービスエリアをイタリア全国へ向けて拡大 xDSLサービス開始 映像コミュニケーションサービス開始 ADSL上のVODサービス開始 ADSL上のTVサービス開始 e.BiccomはFASTWEBに社名変更 FASTWEB Light(シングルプレイ)提供開始 利用の程度 ←低い インターネット 昼間夜間オ プション (40 €) 市内無制限オプ ション(14 €) IP電話 ミラノ 夜間オプ ション (24 €) 週末オプ ション (15€) <FASTWEBの提供エリア> トリノ 10 時間 オ プション (10 €) 高い→ ボロー ニャ FASTWEB Base (ファス トウェブ バーゼ) 携帯電話オプション(5~15 €) 国内無制限オプシ ョン(20 €) (25 €) ジェノバ VOD (Ontv, Rai-Click) 映像 ローマ 無料地上・衛星放送 ナポリ スカイイタリアの番組 2005年6月現在 FASTWEB資料より 他のペイチャンネル FASTWEB資料より 【16 】 ②FASTWEB 続 FASTWEBのオールIPのトリプルプレイでは、インターネット、IP電話、そしてSTBを介してTVによって放送サービス を受けられる <FASTWEBのサービスの宅内構成> <FASTWEBのサービスの画面> 各メニューへのショートカット 地上放送の チャンネル 衛星放送のチャンネル (無料、ペイチャンネ ル、PPV) 番組案内 PVRへのボタン EPGの他情報画面へ FASTWEB資料より 推奨番組へのバナー FASTWEB資料より 【17 】 ③日本におけるブロードバンド放送サービス 日本のブロードバンド放送は、電気通信役務利用放送法の登録を受けたサービス 日本のブロードバンド放送は、QAM方式(ケーブルテレビと同様な伝送方式)とIP方式の2通りがある 日本のブロードバンド放送の場合にも、トリプルプレイの1つの要素となっている場合が多い (2005年10月現在) 説明 サービス名 開始時期 光プラスTV BBTV オンデマンドTV 2004年7月 2003年12月 2003年7月 (課金開始) 2005年6月 NTT東日本エリ ア17都道府県 東京都、2府11 県 「Yahoo! BB」の 提供エリア NTT西日本、NTT 東日本のIPv6 サービス提供エリ ア ・多チャンネル ・VOD ・多チャンネル ・VOD 主なエリア 東京都、大阪府、 大阪府、京都 広島県、神奈川 府、兵庫県、 県 滋賀県、和歌 山県 大阪府、奈良県 メニュー ・「スカイパー フェクTV!」 ・地上波、BS再 送信 加入数 2,316 (2005年9月末) 事業者名 株式会社オプ ティキャスト 株式会社ケイ・ キャット 近鉄ケーブル ネットワーク株 式会社 株式会社オン ラインティー ヴィ 出資者 スカイパーフェ クト・コミュニ ケーションズ 関西電力(66.78%)、 京阪電気鉄道 近畿日本鉄道 (10%)、 京セラ(13.50%)、 トヨタ自動車 (100%) ケイ・オプティコム (8.27%)等 志摩スペイン村 (20.2%)、 ソニー(2.0%)、 生駒市(1.2%) ジュピター・プロ グラミング(55%)、 セコム(15%)等 2004年2月25日 2003年11月18日 2005年9月26日 2004年6月30日 2003年10月3日 2002年7月24日 2005年5月26日 種類 ネット ワー ク 4th MEDIAサー ビス 2005年11月 (予定) 電気通信役 務利用放送 法上の登録 提供主体 アクセス回線 の伝送方式 2004年2月 eo光テレビ 2003年11月 サー ビス 有線 役務 放送 事業 者 光パーフェクTV! (ピカパー!) ・多チャンネル ・地上波、BS再送信 ・多チャンネル ・VOD 非公表 非公表 (76.6%)、 ・多チャンネル ・VOD 約21,000 (2005年6月末) 非公表 非公表 非公表 KDDI株式会社 ビー・ビ-・ケー ブル株式会社 株式会社アイ キャスト クラビット(100%) 伊藤忠商事 (100%) (11.72%) 等 FTTH FTTH FTTH(ADSL) FTTH ADSL、FTTH FTTH NTT東日本、N TT西日本、 ユーズコミュニ ケーションズ等 ケイ・オプティコム ぷららネット ワークス、NTT 東日本 KDDI (NTT東日本、 NTT西日本から 借用) ソフトバンクBB (NTT東日本、 NTT西日本から 借用) NTT西日本、NTT 東日本 QAM QAM IP IP IP IP QAM:Quadrature Amplitude Modulation 【18 】 各種資料より作成 ④ビー・ビー・ケーブル「BBTV」 「BBTV」は、IPマルチキャストにより、「Yahoo!BB」(FTTH、ADSL)のユーザへ番組を送信する放送サービス 全番組がNTT収容局へ送信されるものの、エンドユーザへは1番組のみ配信されている。(したがって、著作権法上 は自動公衆送信の扱いを受けている) <参考>ケーブルテレビ、QAM方式の場合は、著作権法上は有線放送の扱いを受けている <「BBTV」の概要> センター施設(有線役務利用放送事業 者) (BBケーブル㈱) 同一の内容を全加入者 に向けて「同時に送 信」 放送番組コンテンツ 1ch 2ch 3ch ソフトバンクBBが提供する 専用の中継回線を利用 1ch 2ch 3ch 1ch 2ch 3ch 1ch 2ch 3ch 水門を開けるイメージ NTT収容局 1ch 3ch STB TV 1ch 2ch 1ch A D S L ・ F T T H 総務省資料に加筆し作成 【19 】 ⑤KDDI「光プラスTV」 「KDDI光プラス」は、オールIPのトリプルプレイで、「光プラスTV」はその3つのサービスのうちの、ひとつである 通信事業者であるKDDI自らが、電気通信役務利用放送法の登録を受けており、通信事業者自らが放送サービスを提 供しようとする事例として注目される マンション インターネット マンション共有部分 KDDIのIP網 電話 光ファイバー 110番、119番も利用可能 放送 VDSL モデム マンション利用の場合の料金(他に、戸建ての場合がある) ホーム ゲートウェイ セットトップ ボックス サービス 月額利用料等 インターネット IP電話 0AB~J型 放送 セット料金 (例) 光プラスネット 光プラス電話 3,990円/月 1,974円/月 ※16戸以上の 見込まれる場合 <通話料> 全国一律3分8円 光プラスTV 光プラスネットまたは光プ ラス電話とのセットでのみ 提供 (光プラスおよび提携事業者のIP電話着は 無料) 4,672円/月(▲1,292円) - 7,192円/月 初期費用 17,850円 登録料 3,150円 (料金は消費税込 http://www.dion.ne.jp/service/hikari/index.html み) 各種資料を基に作成 【20 】 ⑥オンラインティーヴィ「4th MEDIAサービス」 「4th MEDIAサービス」は、オンラインティーヴィが、IP方式により会員に対し多チャンネル放送を提供するサービ ス 多チャンネル放送のサービス提供主体は、登録を受けたオンラインティーヴィであるが、プラットフォームの提供 は通信事業者である、ぷららネットワークスが行っている。また、通信サービスであるVODは、ぷららネットワーク スが提供している <「4th MEDIAサービス」の概要> 利用者宅 収容局 放送セン ター (有明) パソコン 「Bフレッツ」または「フレッ ツ・ADSL」 接続機器 4th MEDIAチュー ナー ぷららネットワークスが運営受託 テレビ ぷららネットワークスが「4th MEDIAプラットフォーム」を提供 各種資料を基に作成 【21 】 ⑦アイキャスト「オンデマンドTV」 「オンデマンドTV」は、(株)アイキャストが、IP方式により会員に対し多チャンネル放送を提供するサービス。 VODは、(株)オン・デマンド・ティービーが提供 多チャンネル放送(=放送サービス)の提供者と、VOD(通信サービス)の提供者が異なっている 利用者にとってのメニューには、多チャンネル放送に重点を置くプランとVODに重きを置くプランがある <「オンデマンドTV」の概要> <利用者にとってのメニュー> 多チャンネル放送 プラン名 (月額基本 料) <利用者宅の概要> VOD 「多ちゃんねるプラン」 (2,100円) 「みほうだいプラン」 (2,100円) ・ベーシックチャンネル (ディスカバリーチャン ネル等の専門チャンネ ル)12chが視聴できる ・見放題対象のビデオ作品を 視聴できる 「おてがるプラン」 (577円) ・見放題対象のビデオ作品を 毎月2作品まで視聴できる パソコン 「よくばりプラン」(3,150円) HUB テレビ セットトップ ボックス (STB) ONU (回線終端装 置) ・「多ちゃんねるプラン」 +「みほうだいプラン」 (センター側へ) STBの月額 レンタル料 初期費用 315円 5,250円 <多チャンネル放送のチャンネル名> サービス加入の際に、設置 シネフィル・イマジカ(洋画)、カミングスーンTV(映画) Music Japan TV(音楽)、MTV(音楽)、 スポーツ・アイ ESPN(スポーツ) FOX(ドラマ)、AXN(ドラマ)、スーパーチャンネル(ドラマ)、 カートゥーンネットワーク(アニメ)、 ディスカバリーチャンネル(ドキュメンタリー) NATIONAL GEOGRAPHIC CHANNEL(ドキュメンタリー) 各種資料を基に作成 【22 】 ⑧オプティキャスト「光パーフェクTV!」 「光パーフェクTV!(略称:ピカパー!)」は、CS放送「スカイパーフェクTV!」を直接受信できない集合住宅向け に、光ファイバーを用いて番組を配信するサービス 都市部では集合住宅が多く、スカパーの加入率が低いことがスカイパーフェクトコミュニケーションズにとっての 経営上の大きな問題であった。FTTHによる番組配信は、ベストソリューション <「光パーフェクTV!」の概要> 衛星 インター ネット 加入者宅(集合住 宅) ISP事業者 光ファイ バー インター ネット パソコン テレビ ONU 光パーフェクTV!用 多チャンネルチュー ナー ONU テレビ映 像 受信拠点 テレビ映 像 光ファイバー収容 局 各種資料を基に作成 【23 】 2-4 VOD(ビデオ・オン・デマンド) 電気通信役務利用放送法によるブロードバンド放送にセット化する形で(或いはセット化しない形で)、また、 IPマルチキャスト方式やQAM方式により、様々なVODサービスが提供されている 現状では、VODで1番組が150円~420円と、通常のレンタルビデオと同様な金額となっている VODの場合は、店舗へ足を運ぶ手間のぶん高額でも構わないという考え方も可能 レンタルビデオの場合は返却が大きな手間であると考えている利用者が多い ビデオレンタル料に占める延滞料は10%にのぼる (2005年8月現在) <IP放送に付随する形で提供されるVODサービスなど> IP方式 サービス名 BBTV 電子レンタルビデオ 光プラスTV ビデオ 提供事業者 ビー・ビー・ケーブル VOD番組数 QAM方式 4th MEDIAサービス ビデオ eoホームファイ バー VODプレサービス OCNシアター ウルトラバンドコース VODパック J:COM オン デマンド KDDI ぷららネットワークス ケイ・オプティ コム NTTコミュニケーションズ トーカイ・ブロードバン ド・コミュニケーションズ J:COM 約5,000 タイトル 約4,000 タイトル 約4,000 タイトル 数百 タイトル 約1,400 タイトル 約1,000 タイトル 約1,800 タイトル(*1) VOD料金 ・150円~/24時 間 ・2,079円/月で 1,000タイト ルを見放題 ・151円~/24時 間 ・105円~/24時 間 ・735円/月で100 タイトルを見 放題 ・105円~/48時 間 ・ケーブルイン ターネット料 金(5,229円) で100タイトル を見放題 ・0円~/24時間 ・1,260円で75タ イトルを見放 題 特徴 ・VODのみの選 択可能(多 チャンネル放 送を除くこと が可能) ・ケーブルイン ターネットに 付加される サービス ・米国のケーブ ルテレビのVOD に近似 ・105円~/24時 間 試行実施中 ・VODのみの選択 可能(多チャ ンネル放送を 除くことが可 能) ・放送サービス ではなく、FTTH サービスに付加 各種資料より作成 (*1)2005年6月時点 【24 】 2-4 VOD(ビデオ・オン・デマンド) 続 地上放送事業者は、放送コンテンツの二次利用あるいはオリジナルコンテンツによるVODに積極的に取り組みつつある 地上放送事業者によるインターネット上の収益拡大志向の背景には、地上放送デジタル化を控え、収益源の多様化を 図る考え方があるのではないかと推測される <地上放送事業者によるVOD等への取組> (2005年10月) 地上放送事業者 NHK VOD等に関する取組 ・VOD商用トライアルとして、NHKのドラマ、ドキュメンタリー等のコンテンツをJ:COM、ビー・ビー・ケーブルへ提供〔2004年 5月〕 ・ぷらら、NTTコム、BBTV、J:COM、KDDI、ネオ・インデックスに対し9タイトル65コンテンツを提供〔2005年7月〕 TBS ・1999年2月から自社Webサイトで動画ニュース番組を配信 ・ネオ・インデックスはVODのコンテンツ・アグリゲーターとして初めて地上放送事業者のTBSから番組供給を受ける〔2005年4 月19日発表〕 ・有料のVODサービス「TBS BooBo BOX」を11月1日より開始すると発表〔2005年10月12日発表〕 フジテレビジョン 日本テレビ ・有料オンデマンド動画配信サービス「フジテレビ On Demand」を7月から本格開始〔2005年7月12日発表〕 - ISP、コンテンツ配信事業者と提携 - CS放送「フジテレビ721・739」のコンテンツを中心 ・ストリーミング配信サービス「第2日本テレビ」〔2005年10月27日深夜〕 - 早期に100万会員獲得 テレビ朝日 ・一部コンテンツを試験的に自社Webサイトで有料配信〔2005年8月〕 テレビ東京 ・一部コンテンツをISP向けに提供 【25 】 <参考> 放送のデジタル化による影響 地上放送の民放の場合、環境の変化(広告収入の伸び悩み、デジタル化)により、広告収入を中心とした従来のビ ジネスモデルの変容が求められている。もっとも、今後も広告収入の比重は大きい部分を占めると考えられる ビジネスモデルの変容 環境変化 放送外収入の拡大 ・イベント収入等 経済成長の鈍化 広告収入(GNPの 1%)の伸び悩み 番組流通・販売 ・著作権収入 広告以外の収入源確 保が必要 放送のデジタル化 デジタル放送の可能性 ①多チャンネル化 ②高精細化 ③高機能化 デジタル放送固有の 収入源確保が必要 広告収入の確保(視聴率の確 保) ・高精彩度テレビジョン放送の 比率アップ 新規広告収入 ・携帯受信端末向け放送(1セ グ放送) デジタルの可能性 ・多チャンネル化 ・蓄積型放送 デジタル対応投資の負担大 (1社あたり40億円~50億 円) 凡例 事象 放送事業者のアクション 【26 】 2-5 パワードコム等「ひかりdeDVD」 「ひかりdeDVD」は、パワードコム、東芝、東京電力が、映画等のコンテンツをFTTHを通じて配信し、ユーザのDVDレ コーダー内のDVD-RAM(DVDの円盤)に書き込んで、ユーザがレンタル型(一定期間のみ視聴可)あるいはセル型(半永 久的に視聴可)で視聴できるサービス 特徴 タイムシフト(リアルタイムではなく、一旦蓄積されたコンテンツを後刻に視聴)の形をとる。VODは、ネット ワーク上にレンタル型の利用法を初めて採り入れた。「ひかりdeDVD」は、ネットワーク上にセル型の利用法を初 めて採り入れた なお、NTTソルマーレは、Bフレッツを経由して、映画等のコンテンツをシャープのホームサーバ「ガリレオ」のハード ディスクに一旦蓄積し、レンタル型で視聴できる「ネットdeビデオ」を提供(2004年3月開始、12月終了) <利用形態の違いから見た、映像コンテンツ流通サービスの比較> リアル(店 舗) 無線(放送) 有線(ネットワーク) ケーブルテレビ リアルタイム (配信された時1 回のみ視聴できる。 ここでは、録画は 除いて考えてい る) タイムシフト (リアルタイ ムではない) レンタル (一定期間内、繰 り返し視聴でき る) セル (永久に、繰り返 し視聴できる) × ○ (例:レン タルビデオ 店) ○ (例:ビデ オショッ プ) 〔凡例〕 ○は該当あり。×は該当無し。 ○ (例:地上 放送) ○ (例:地上放 送再送信) × △ (例:サー バ型放送の 計画) 【27 】 IP放送 ○ (例:多 チャンネル 放送の再送 信) × × × × VOD 「ひかりdeDVD」 × × ○ (例:映画 等のVOD) × ○ (レンタル方 式) ○ (セル方式) ネットワーク上にセル型を初めて 持ち込んだ 2-6 USEN「GyaO」 USENは、PC向け無料ネット放送である「GyaO」(ギャオ)を2005年4月25日より開始し、2005年10月には登録者数は 300万を超えた ■GyaOの概要 ■GyaOに関する注目点 (1)サービス名称 ①地上放送のような大規模な広告モデルが、ネット上に定着するか? ・GyaO(ギャオ)とは、アイスランド語で、地球上の全ての大地(プ レート)が生まれる地球の裂け目のことであり、世の中を変える新たな 潮流を生み出すサービスとしての期待を込めて命名された ②セグメント広告が、どの程度効果を発揮するか? ③メディアとして、放送とインターネットとの関係が今後変化する か? (2)サービス主体 ・(株)USEN (3)サービス形態 ・すべてのブロードバンドユーザーを対象にした完全無料のブロードバン ド放送 ・新聞、ラジオ、テレビに続く新たなメディアとしてブロードバンドユー ザー2000万世帯向けに完全無料放送を提供。1000万人の視聴者獲得を目 指す ・テレビとインターネットの中間的なメディアとしてインタラクティブ広 告、セグメント広告ができること、テレビでは、補足しにくい20歳~49 歳の男女層に対してセグメントにリーチできること、などの特徴を活か し、現在のテレビ媒体が取り込む広告市場の外側の販促市場を取り込む 事業モデルを構築する <GyaOの登録者数の推移(推計含む)> 300 (4)サービス開始時期 ・2005年4月25日本放送開始(4月6日より試験放送) (5)サービスの特長 ・USENの倫理規定に基づき、様々なカテゴリーのコンテンツをストリーミ ング形式で提供。コンテンツの内容により、アーカイブでの継続提供、 期間限定提供、地域限定提供、特定時間帯提供、特定視聴者のみ提供な ど、様々な提供枠を設定。将来的には、ダウンロード形式の提供も検討 50 (7)サービス料金 193(公表 値) 143(推計) 4月25日 本放送開始 93(推計) 53(推計) 23(推計) 0 (6)コンテンツの種類 ・映画(洋画、邦画、ショートムービー、 映画情報番組など) ・ドラマ(韓国ドラマ、海外ドラマ、サス ペンスドラマなど) ・音楽(ライブ、音楽情報番組など) ・アイドルグラビア ・バラエティー 254(公表 値) 250 登 200 録 者 数 150 ( 万 ) 100 10月20日 300万 2005年4月 ・アニメ ・ニュース ・ラジオ ・スポーツ ・ドキュメンタリー ・教育・学習 ・映像ブログ 5月 6月 7月 8月 9月 USEN公表資料等をもとに作成 ・無料(広告放送) 【28 】 <参考> 広告費の推移 媒体別広告費の推移を見ると、1975年に、テレビ広告費が新聞広告費を抜いてトップとなった 2004年に、インターネット広告費はラジオ広告費を抜いた インターネット広告費がテレビ広告費を凌駕する日はやってくるのだろうか? <媒体別広告費の推移>(1985年~2004 年) <媒体別広告費の推移>(1947年~86年) 2 5 ,0 0 0 1 2 ,0 0 0 広 告 費 ( 億 円 新聞 8 ,0 0 0 DM、屋 外 等 6 ,0 0 0 4 ,0 0 0 ) 0 1 4 4 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 7 7 7 7 7 7 7 7 7 7 8 8 8 8 8 8 8 9 8 年 9 年 0 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 0 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 0 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 0 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 4 年 ) 7 ( ( ( ( ( ( ( 年 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 ( ( ( ( ( ( ( ( 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 ( ( ( ( ( ( ( ( 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 ( ( ( ( ( ( ( ( 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 ( ( ( ( ( ( ( ( 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 昭 ( 2 昭 3 2 年 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 6 6 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 0 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 0 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 0 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 0 年 1 年 2 ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) SP広 告 ( 億 1 0 ,0 0 0 円 ) 雑誌 ラジ オ 輸出広告 2 ,0 0 0 テレビ 2 0 ,0 0 0 広 告 費 1 5 ,0 0 0 テレビ 1 0 ,0 0 0 新聞 雑誌 5 ,0 0 0 イン ター ネ ット ラジ オ 0 年 ) 電通「日本の広告費」(2005年2月)をもとに作成 【29 】 1 8 8 8 8 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 2 0 0 0 0 9 6 年 7 年 8 年 9 年 0 年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 0 8 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 ( 昭 ( 昭 ( 昭 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 ( 平 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 ( 年 0 平 年 ) 1 ( 平 1 ) ) ) ) ) ) 6 6 6 6 1 年 2 年 3 年 0 ) ) ( 昭 ) ) ) ) 1 0 年 ) 年 ) 0 1 2 1 1 1 1 3 年 4 年 5 年 6 年 ) ) ) ) 衛 星 メディア 同左 2-7 地上放送の特性と今後の変化 時代による変化やネットとの競合により、地上放送の番組の中には、ネットの影響を受けるものが生じてくると考 えられる しかし、一方、地上放送ならではのライブ性、くちコミ性を広告主は重視し、テレビは今後も広告モデルの主役の 地位を占め続けるとも考えられる テレビドラマやバラエティ番組は、職場や家庭で、感情や価値観を共有し合う媒体としての地位を保つのでは ないか 健康や生活に密着した情報番組は、くちコミ効果が大きく、スーパーマーケットの品揃えにすら影響を与える <地上放送(広告モデル)の特性と、今後考えられる変化> 地上放送の特性 即時性 これまで ・定時ニュースで情報取得 今後の変化 変化する点 ・定時ニュースを待つのではなく、ネットで最新情報を取得 →ニュースはテレビ経由よりもネット経由が主流へ 変化しない点 同時性(ライブ性) 同報性(口コミ、共感 性) ・スポーツ中継は人気を博す ・ドラマ、バラエティーは視聴者間 に、感情を共有できる楽しみ、流 行を追いかける楽しみを生起 変化する点 ・同時に視聴する需要、必要のないコンテンツは、テレビから別なメディアへ 移行(音楽番組) 変化しない点 ・スポーツ、イベント等、同時性が重視されるコンテンツはテレビ経由が主流 ・オリンピック、ワールドカップ等はテレビならではのコンテンツ 変化する点 変化しない点 他にも・・・ 変化する点 変化しない点 【30 】 ・同じコンテンツを多数の人が同時に見るメディアとしてテレビは主流 ・大衆的な娯楽の場としてテレビは健在 2-8 放送番組に連動する、双方向サービス 通信放送の融合で、(少なくとも双方向テレビにおいては)成功しているサービスは、ほとんどない 電話や携帯電話で投票するサービスが米国では流行している(欧州では、PRSというプレミアム課金を含めたサービスが 定着) ◆電話・携帯電話による投票(TV番組連動)は有望 ◆双方向テレビでは成功例はない ■iTV(インタラクティブTV)に関する市場分析 ■TV番組「アメリカン・アイドル」 ・米国初の双方向のリアリティー・ショー。全米各地で開かれた 予選会を通過したアイドル候補生が、歌唱力とアイドル性、パ フォーマンスでトップを目指す。優勝すれば、プロとしてデ ビューする。FOXが放映 ・全米人気番組のトップ10に入る ・番組ではコンテスト参加者が登場し、視聴者は気に入った参加 者に対して携帯電話や無料電話(800番)で投票を行う。視聴者 は複数回投票できる ・iTVは購入動機を増すと言われ続けたが、過去25年間の誘引にも拘 らず、持続的で長期にわたるビジネスモデルは未だ開発されてい ない ・iTVは放送、通信、インターネット技術に完全に組み込まれて初め て継続的できるビジネスとなると信じる。iTVがオープンなネット ワークインフラに基づくようになれば、販売事業者、広告事業者 はiTVを自身のインターネット、ブロードバンド、放送サービスに 付加することができる。 ■投票数の実績 ・iTVの主な問題は、技術ではなく、TV視聴者の受身の姿勢である。 TVは常に受身のメディアであり、大部分の視聴者は受身の娯楽の 中で選択をする。この行動を変えるのは多くの苦労が要る。 ・双方向TVは成功からほど遠い。最大の問題は最適のビジネスモデ ルを見つけることである。双方向TVは1970年代最後から試みられ てきたが、投資や努力を回収する成功的なアプリケーションはな い。 ・米フォックス・テレビの新人アイドル歌手発掘番組「アメリカ ン・アイドル」第4シーズンの第1回が、視聴者数と視聴率で 他の5大ネットワークの総計を抜いた。ニールセン・メディ ア・リサーチの速報によると、18日午後8時―10時に放送 された第1回の平均視聴者数は3345万人〔ロイター報〕 <TV番組「アメリカン・アイドル> DIGITAL AND INTERACTIVE TV INDUSTRY REPORT(Paul Budde Communication Pty Ltd.社 2004年3月)p43,44より抜粋 【31 】 (アメリカン・アイドルのホームページ http://www.idolonfox.com/contestants/ より) 3.まとめに代えて 3-1 まとめにかえて(私見) 1.通信放送「融合」から「連携」へ 4.インターネットがテレビを凌駕する日 ・従来は、通信放送融合の議論は、制度上の整合性をとらないと、両者に またがるサービスが登場した時に混乱を招くので、制度がサービスの登 場の妨げにならないよう配意すべきという論調 ・テレビの広告モデルとしての価値は、未だ非常に大きい ・感情の共有、くちコミは、ネットよりもテレビが優位ではないか? ・「電車男」「打ち水大作戦」はテレビ、活字媒体で紹介されたからこ そ、メジャーになれたのでは? ・実際には、制度が障害となってサービスが登場しなかった、というよう な事例は今までない ・サービスが「融合」するというよりも、通信サービスと放送サービスが 長所を活かし合って「連携」すると捉えるのが、サービス開発の現場で の考え方 2.通信放送連携サービスの多様化 ・QAM方式/IP方式 ・トリプルプレイのセットの中で、同一事業者が提供/異なった事業者が 提供 ・有料モデル/広告モデル ・タイムシフト、蓄積 3.通信と放送とのシナジーの追及 ・通信放送連携サービスの代表とも言える双方向サービスに成功例少ない ・ネット企業、通信事業者と地上放送事業者とでは、実質的にシナジー効 果を生むのは未だ難しい? 【33 】 株式会社情報通信総合研究所 www.icr.co.jp マーケティング・ソリューション研究グループ [email protected] 〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-14-10 アーバンネット日本橋ビル 電話03-3663-7554 FAX03-3663-7660 【34 】 櫻井 康雄
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