「女性の就業機会拡大に関する調査」 報告書 女性の就業機会拡大プロジェクトチーム (調査・監修)大阪産業経済リサーチセンター 目 次 2 調査結果(要旨)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 §1 女性を取り巻く就業環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 §1-1 女性を取り巻く就業環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 §1-2 女性就業における「M字カーブ」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 §2 全国から見た大阪の女性就業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 §3 大阪の働いていない女性・働く女性等の意識と行動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 §3-1 働いていない女性の意識と行動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 §3-2 働く女性の意識と行動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 §3-3 男性や親世代の意識と行動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 §4 M字カーブの要因分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 §4-1 第1のギャップの要因分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69 §4-2 第2のギャップの要因分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72 §4-3 第3のギャップの要因分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 アンケート調査概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 調査結果(要旨) 3 調査結果(要旨) この調査は平成25年度に実施したものであり、 本調査で明らかになった課題などを中心に、 平成26年度に深掘調査を行う予定である。 調査結果(要旨) §1 4 検討の背景 §1-1 女性を取り巻く就業環境 国際的に見ると、日本の大卒女性の就業率は、OECD加盟32か国中28位。 失業率も高水準にあり、国際競争力の観点からも改善が課題となっている。 国内的に見ると、賃金体系や社会保障制度のベースとなってきた働く夫と専業 主婦、子どもという「標準世帯」の割合が近年、低下していている。 人口推計では、2010年に比べて2030年には、30-40歳代世代で「標準世 帯」の減少、50-60歳代世代での単身世帯の増加を惹き起こすと予想されて いる。 全ての世代で女性・非正規雇用の割合が男性正規雇用の割合より高いが、「標 準世帯」を前提とした扶養関係諸制度(手当、福利厚生、税制等)など、男性正 規雇用が優遇される就業環境のもとで、男女間、正規雇用者と非正規雇用者間 の格差が賃金格差が拡大している。 職場環境を見ると、20代の正規就業女性の6割は、結婚、子育てなどの理由で 定年まで勤められないと感じている。 家庭環境を見ると、家庭での家事や子育ての負担は、就業の有無にかかわら ず女性に集中している。 調査結果(要旨) 5 §1-2 女性就業における「M字カーブ」 こうした就業環境のもとで、日本では、新卒時には男女の就業率に大きな差が ないにもかかわらず、その後20代後半までに女性は男性ほど就業率が上がら ず男女の就業率の差が拡大する(第1のギャップ)。 30代に入ると結婚・出産・育児等を契機として女性の就業率のみが低下し(第 2のギャップ)、子育て等が一段落する40代以降でも、女性就業率は十分に回 復しない(第3のギャップ)。そのため、年齢別に見た女性就業率は、男性就業 率に比べ3つのギャップを持つ「M字カーブ」が見られる。 日本の女性就業率にM字カーブが見られる要因としては、女性は男性に比べて 非正規雇用の割合が高く、結婚等、ライフイベントを重ねるごとにさらに離職、あ るいは非正規という働きかたを選択する女性が増加し、第2のギャップへつな がっていることなどがあげられている。 大阪の女性は全国に比べて、M字の谷(第2のギャップ)が深く、その後の回復 も鈍い。 調査結果(要旨) 6 §2 全国から見た大阪の女性就業の特色 全国的に見ると、大阪府の女性就業率(20-59歳)は、45位(下位から3番 目)と低い水準にある。 その要因として考えられるのは、まず、大阪府では全国に比べて、女性の離職 理由に「結婚」をあげる割合が高く(全国4位)、「出産・育児」を理由とする離職 についても全国平均より高いことが要因としてあげられる。結婚・出産・育児と いった節目での離職理由の高さが、大阪府の既婚女性の就業率の低さに寄与 していると考えられる。 次に、勤務形態が考えられる。20-59歳女性の就業率と女性有業者のうち 「仕事が従な者」の割合には負の相関関係があり、「仕事が従な者」の比率が高 い大阪府では女性就業率が低くなっている。 さらに、家族構成が考えられる。女性就業率と6歳未満の世帯員のいる3世代 世帯の割合には正の相関関係があり、北陸、山陰、東北など3世代世帯比率の 高い県では女性就業率が高く、大都市府県では女性就業率が低くなる傾向が あることである。このことは既婚女性の就業率の低さ(全国45位)に現れている が、大阪府は東京都などの他の大都市都県と比べても低くなっている。 以上をまず年齢別に見ると、25-34歳の世代で見ると、20-59歳世代に比 べて大都市都県の女性終業率の順位は改善されるが、大阪府以外の大都市都 県に比べて(東京都34位→11位、愛知県33位→24位、神奈川県44位→32 位) 、大阪府の順位の改善効果は大きくない(45位→39位) 。 調査結果(要旨) 7 また、35-44歳世代では、無業者にしめる就業希望者の割合が大阪府では 他の大都市都県(神奈川県、東京都、愛知県)に比べて低く、こうした女性の就 業意識も大阪府の女性就業率の低さに影響していると考えられる。 次に、これを主要な属性別に見ると、まず、「子育てをしている女性就業者」では、 育児休業の利用率は、大阪府では、20代、30代ともに東京都・神奈川県に比 べて利用率が低いという特色が見られる。 また、「育児をしていない20代・30代女性」では、大阪府は東京都や全国に比 べて無業者の比率が高くなるという特色が見られる。 最後に、「20代の大卒以上女性」では、大阪府は無業者比率が4と府県では愛 知県についで高く、無業者に締める日就業希望者比率も4都府県中3位で東京 都に比べて高いという特色が見られる。 §3 大阪の働いていない女性・働く女性等の意識と行動 §3-1 働いていない女性の意識と行動 働いていない女性の退職理由を見ると、77%が結婚・子育て・介護等の理由で あり、そのうち「やむなく辞めた」は40.5%、「望んで辞めた」は36.5%である。 「やむなく辞める」は正規社員より非正規社員に多く見られる。 調査結果(要旨) 8 退職後の就業意識を見ると、「就職を希望していないが条件が整えば就職を希望 する」割合が最も高い。 これを前職の勤務形態別に見ると、正規社員から退職した者は「就職を希望して おらず今後も希望しない」割合が他に比べて高く、常勤非正規社員から退職した 者は「ハローワークに登録して求職している」割合が他に比べて高い。 また世帯、年収別に見ると、400万円未満では具体的な求職活動をしている者 の割合が他に比べて高く、400万円以上800万円未満では「就職を希望してい ないが条件が整えば就職を希望する」割合が他に比べて高く、800万円以上で は「就職を希望しておらず今後も希望しない」割合が他に比べて高い。 求職活動について、ハローワークに登録せずに求職活動をしている者は、求人 雑誌や事業所の直接求人などの利用が多い。就職を希望しているが求職活動を していない理由としては、「子育てや家事への不安」、「勤務時間や職種等で望む 条件の仕事がない」などの理由をあげる者が多い。 「就職を希望していないが条件が整えば就職を希望する者」が仕事に復帰する条 件を見ると、「子育てが一段落すること」が最も多く、「自分が持っている資格や技 能が活かせる機会があること」がこれに次いでいる。条件が整えば就職を希望す る勤務形態としては、非常勤の非正規社員を希望する割合が4分の3を占める。 働いていない女性が就業のために一番必要だと考えるものは、「保育所や学童 保育などの施設整備」が最も高く、 次いで「短時間勤務や在宅ワークなど多様な 勤務形態の普及」 の割合が高い。 調査結果(要旨) 9 §3-2 働く女性の意識と行動 正規社員女性の7割は定年までの勤務が可能と考えているが、約6割が定年まで 勤務を希望している。「定年まで勤めたいし、定年まで勤められる」と思う正規社員 女性は約4割である。 求職活動で重視する項目は、「転職者」では、「勤務場所」、「勤務時間」、「職種や 勤務形態」を重視している。「再就職者」は、「勤務時間」を重視する割合が高い。 「新卒者」は、「職種や勤務形態」を重視する割合が高い。 転職者が重視した項目を見ると、「勤務場所」、「勤務時間」、「職種や勤務形態」な どが多い。これを転職前後の勤務形態別に見ると、 「正規から非正規・自営」への 転職者が、「勤務時間」 や「資格や能力を活かせること」を重視していること、「非正 規・自営から正規」への転職者が「給与」を重視していることなどが特徴的である。 就職前の仕事や予想に比べて現職をどう評価しているかを見ると、「給料」と「職場 での立場・責任が重くなる」以外は、肯定的な評価が否定的な評価を上回る。 中学入学前の子供をもつ働く女性は、他の働く女性に比べると「勤務時間」をより重 視しているが、「職種や勤務形態」はあまり重視されていない。 働き続けるために一番必要だと考える項目を見ると、「保育所や学童保育などの施 設整備」が最も多い。女性正規社員が非正規社員や男性と比べて高いのは、「男女 を問わず全ての人にワークライフバランスの意識の浸透」 や「経営者の意識改革」 で、女性非正規社員が他と比べて高いのは「短時間勤務や在宅ワークなど多様な 勤務形態の普及」である。 調査結果(要旨) 10 §3-3 男性や親世代の意識と行動 常勤(正規社員・常勤非常勤・自営)の女性では、男性配偶者の家事協力は、無職 や非常勤非正規の女性より高く、約3分の1(34.4%)の男性配偶者が、主として 自分で、または半分ずつ家事に協力している。 男性の家事協力は、中学校に上がる前の子どもがいる家庭では顕著になり、常勤 就業女性の配偶者の半数以上(55.0%)が家事に協力している。これを女性の就 業別・男性の年齢別に見ると、常勤で就業する女性の30代、40代の男性配偶者 による家事協力が最も高くなっている。 独身男性が将来の配偶者が働くことへの意識は、男性が育った家庭に影響されて おり、母親が常勤・自営で働いていた家庭の男性は、他の家庭に比べて配偶者の 定年までの就業に対して最も肯定的である。 育児に関して、働く子世代女性(女性の子(娘)、男性の子の配偶者(嫁))を日常的 に助けている親世代(同居・近居に限る)の割合は、子世代が正規社員のときは3 分の1を超える。また、家事に関して、働く子世代の女性を日常的に助けている親 世代(同居・近居に限る)の割合は、子世代が正規社員のときは約4分の1である。 調査結果(要旨) §4 11 M字カーブの要因分析 §4-1 第1のギャップの要因分析 学歴別に大阪の20代非就労女性の最終学校終了時の就職状況を見ると、半数 近くが学校終了時に就職できておらず(卒業時の壁)、約4分の1は学校終了以 来、就業していない(卒後就職の壁)。 大卒の20代非就労女性は約4割が採集学校終了時に就職できておらず、20% が学校終了以来、就労していない。 「学校を終えてから就職していない者」は、「現在も将来も働くことを考えていな い」、「働きたいと思っているが、具体的な仕事探しはしていない」の割合が高く、 就職・求職に対して消極的となる傾向がうかがわれる。 働いていない20代女性の6割弱は就職を希望せず(条件付の非就業希望を含 む)、大卒正規就業女性の45%は転職希望と回答している。就職希望、転職希 望は未婚の大卒者で高くなっている。 20代女性が求職活動で自信がない項目を無職や非正規就労を経験したことの ある20代弾性と比較すると、非就労女性は、仕事の専門知識、ビジネススキル、 社会人基礎力のいずれについても、男性より「自信がない」とする割合が高い。2 0代の非就労女性が、就職活動で自信がない項目は、学歴によって差が大きい。 未婚者は既婚者に比べ社会人基礎力に関して自信をもっていない割合が高い。 既婚者は、仕事による生活変化への対応力に自信をもっていない。 調査結果(要旨) 12 転職希望の20代女性は、「職場の雰囲気」、「福利厚生(プライベートとの両立)」、 「勤務時間」、「職種」などへのこだわりがみられる。 既婚の20代非就労女性では、家庭との両立支援へのニーズが高く、未婚では 社会の意識啓発に関するニーズが高い。 §4-2 第2のギャップの要因分析 有配偶の女性の労働力率が未婚に比べ低く、出産前有職者のうち第1子出産後 の就業継続率は4割弱である。約30年間でこの割合は全く上がっていない。近 年のM字カーブの底上げの背景には未婚層の増加が考えられる。 家事・育児時間をみると、有業・無業にかかわらず家事・子育ての負担は女性に 集中している状況で、待機児童数は減少しているものの解消には至っていない。 20代の正規就労男女では、「定年まで勤められると思う」のは女性で4割、男性 で6割である。女性は「定年まで勤めたい」が男性を大きく下回るが、「定年まで勤 めたいが、事情があれば辞めてもよい」という、条件つきの継続就労希望を含め ると男女とも4割となる。 調査結果(要旨) 13 20代非就労女性の退職理由は、結婚や子育てなどの「私的理由でやむなく辞め た」が最も多く、「私的理由で望んで辞めた」と「仕事上の理由で辞めた」がそれに 次いでいる。大卒では、「劣悪な職場環境や人間関係」、「結婚、子育てとの両立 困難」などでやむなく辞める割合が多い。 30代非就労女性の退職理由は、「結婚して主婦業に専念したかった」、「子育て をすべて自分自身でしたかった」などの「私的理由で望んで辞めた」が最も多く、 「私的理由でやむなく辞めた」を逆転している。 就業を希望していない女性が、「もう働かないと考えるようになった時期」は、20 代では「出産を理由に仕事を辞めたとき」、30代では「結婚を理由に仕事を辞め たとき」が最も多い。20代の就業を希望していない女性では、「学校を終える前 から」働かないことを考える女性の割合も高い。 §4-3 第3のギャップの要因分析 大阪府の30代の非就労女性は、他府県と比べて、現在は就業を希望していなく ても、「将来、条件が整えば働きたいと思っている」という、いわゆる「就業予備 層」の割合が高い。また、仕事のポテンシャルの高い女性ほど、求職者層の割合 や「就業予備層」の割合が高い。 離職期間が長いほど、能力の低下を感じる人が増加し、正規社員での就業者が 少なくなる。専門性の高い能力やスキルほど離職により低下したと感じる割合が 高い。スキルアップをしている人は、就業希望女性でも2割以下だが、95%以上 がその必要性を感じている。 調査結果(要旨) 14 ポテンシャルの高い(仕事の専門性に自信のある)女性が働こうと思うための条件は、 「子育てへの支障」以外に、「能力や技能に不安」を解消し、「資格や能力を活かせる 仕事」、「望んでいる職種で働ける仕事」、「望んでいる業種で働ける仕事」など専門 能力を活かせる仕事が見つかることである。 既婚の非就労女性のニーズを20代と30代で比較すると、20代では保育所、30代 では学童保育へのニーズが、他の世代と比べて高くなっている。未婚の非就労女性 のニーズを20代と30代で比較すると、30代では、「家庭の事情に合わせて働ける 勤務形態」や、「働く女性を能力や成果で評価する仕組み」、「同一労働同一賃金」な どの企業の意識啓発に関するニーズが高い。 介護の担い手は女性が圧倒的に多く、介護・看護を理由として離職する女性も多い。 「自営業を始めたいと考えたことがある」女性は35%、男性は45%あり、自営業を始 めることを考えたことのない女性でも、16%が将来の夢として自営業を考えたいと答 えている。それをためらわせる要因では、女性では、「開業に必要な各種の手続きの 面倒さ」への不安や「家事や子育てとの両立」への不安などが、男性と比べて高く なっている。 §1 女性を取り巻く就業環境 §1 検討の社会的背景 15 §1-1 女性を取り巻く就業環境 国際的に見ると、日本の大卒女性の就業率は、OECD加盟32か国中28位。 失業率も高水準にあり、国際競争力の観点からも改善が課題となっている。 16 §1-1 女性を取り巻く就業環境 17 働く夫と専業主婦、子からなる「標準世帯」は、年功型給与体系、年金制度、税制 等の基礎となってきたが、近年、「夫婦と子」 という世帯類型の割合が低下している。 年 0% 10% 20% 30% 40% 2000 27.6 2005 29 2010 30.3 20.8 31.7 21 2015 50% 18.9 60% 70% 31.9 20.1 80% 90% 100% 7.6 14 8.3 12.7 28.3 8.8 11.9 26.8 9.2 11.4 29.9 標準世帯 (夫婦と子世帯) 単独世帯 夫婦のみ 夫婦と子 ひとり親と子 その他 2020 33.1 2025 34.6 20.9 20.7 25.4 9.4 11.1 24.2 9.7 10.9 出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(2003年10月推計)」より作成 §1-1 女性を取り巻く就業環境 18 人口推計では、2010年に比べて2030年には、30-40歳代世代で「標準世帯」 の減少、50-60歳代世代での単身世帯の増加を惹き起こすと予想されている。 出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)」(2009年12月推計)より作成 §1-1 女性を取り巻く就業環境 19 全ての世代で女性・非正規雇用の割合が男性正規雇用の割合より高いが、「標準世 帯」を前提とした扶養関係諸制度(手当、福利厚生、税制等)など、男性正規雇用が 優遇される就業環境のもとで、男女間、正規雇用者と非正規雇用者間の格差が賃金 格差が拡大している。 出典:「賃金構造基本統計調査」より作成 出典:「平成24年就業構造基本調査」より作成 §1-1 女性を取り巻く就業環境 20 職場環境を見ると、20代の正規就業女性の6割は、結婚、子育てなどの理由で定 年まで勤められないと感じている。 §1-1 女性を取り巻く就業環境 21 家庭環境を見ると、家庭での家事や子育ての負担は、就業の有無にかかわらず女性 に集中している。 §1-2 女性就業における「M字カーブ」 22 女性就業をめぐる環境をもとで、日本の女性の就業では、M字カーブが見られる。 全国・男性 第1のギャップ 働く女性の割合は、男性より低い M字の谷 (子育て世代の 女性の離職) 全国・女性 大阪府・女性 新卒時点では、男女の 就業率は遜色ない 年齢 第1のギャップ 新卒時点で男女変わらなかった労働力率が、25~29歳時点で 女性が男性を16.9%下回り、その差が回復しない 第2のギャップ 子育て世代の女性の労働力率が低下する 第3のギャップ 子育て終了後の女性の労働力率が回復しない 出典:総務省統計局「国勢調査」(平成22年) 労働力率 = 労働力人口/年齢階級別人口 ※分子・分母とも「不詳」は含まない ※労働力人口には完全失業者を含む §1-2 女性就業における「M字カーブ」 23 新卒で働き始めた女性(男性に比べ非正規雇用が多い)が、早期に離職している。 結婚等、ライフイベントを重ねるごとにさらに離職、あるいは非正規という働きかたを選 択する女性が増加し、第2のギャップへつながっている。 (%) 大学卒業者の就職率の推移 (%) 100.0 100 95.0 80 90.0 60 大学卒業者の 就職率は男女と もほぼ同じ 85.0 80.0 男子 女子 40 年齢階級別労働力率の勤務形態別内訳 男性 20 0 出典:文科省・厚労省平成24年度調べ (%) 年齢階級別入職率・離職率 100 80.0 60.0 40.0 入職率・離職率 ともに女性の方 が高い 離職率 男 離職率 女 入職率 男 入職率 女 完全失業者 家族従業者 80 自営業主 60 非正規雇用 正規雇用 40 20.0 20 0.0 0 出典:厚生労働省「雇用動向調査」(平成23年) 20歳台での正規雇用 の伸びが小さく、非正規 雇用が多い 女性 出典:男女共同参画白書 平成25年版より抜粋(総務省「労働力調査」より作成) §1-2 女性就業における「M字カーブ」 24 大阪の女性は全国に比べて、M字の谷(第2のギャップ)が深く、その後の回復も鈍い。 95.0% 92.7% 就業率 90.0% 91.2% 75.7% 91.0% 88.2% (大阪府・女性) 第1 の ギャ ッ プ 第3 の ギャ ッ プ 第2 の ギャ ッ プ 74.6% 75.0% 75.3% 70.0% (全国・女性) 66.6% 73.2% 70.7% 68.2% 67.1% 65.0% 全国・女性 69.8% 68.8% 65.0% 66.1% 64.0% 64.0% 64.1% 60.0% 55.0% 大阪府・男性 86.7% 85.0% 80.0% 90.6% 93.2% 大阪府・女性 56.0% 57.7% 年齢 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 出典:平成24年就業構造基本調査。なお、就業率=有業者数÷総数で算出。 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 25 §2 全国から見た大阪の女性就業の特色 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 26 全国的に見ると、大阪府の20-59歳女性の就業率は、45位と低い水準にある。 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 27 大阪府では、女性の離職者のうち、離職理由として「結婚」を理由とする割合が全国 に比べて高い。また、「出産・育児」を理由とする離職も大阪府は全国平均より高い。 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 28 20-59歳女性の就業率と女性有業者のうち「仕事が従な者」の割合は負の相関 関係があり、「仕事が従な者」の比率が高い大阪府や奈良県、兵庫県では女性就 業率が低い。 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 29 女性就業率と6歳未満の世帯員のいる3世代世帯の割合は正の相関関係があ り、北陸、山陰、東北など3世代世帯率の高い県では女性就業率が高い。 大都市府県では女性就業率が低くなる傾向があるが、大阪府では配偶者がいる女 性の就業率は全国45位(下位から3番目)と、大都市の中でも低くなっている。 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 30 25-34歳の世代で見ると、20-59歳世代に比べて大都市都県の女性就業率の順 位は改善されるが、大阪府以外の大都市都県に比べて(東京都34位→11位、 愛知県33位→24位、神奈川県44位→32位) 、大阪府の順位の改善効果は大 きくない(45位→39位) 。 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 31 35-44歳世代では、無業者に占める就業希望者の割合が大阪府では他の大都市 都県(神奈川県、東京都、愛知県)に比べて低く、就業意欲が高まっていない。 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 32 育児をしていない20代・30代女性に占める無業者の比率は、大阪府は東京都や全 国に比べて高くなっている。 育児をしていない20代・30代女性に占める無業者の割合 25.0% 24.0% 24.0% 23.5% 23.0% 22.5% 22.0% 21.5% 21.0% 20.7% 20.0% 19.0% 大阪府 東京都 神奈川県 愛知県 全国 §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 33 20代の大卒以上女性に占める無業者比率は、大阪府は4都府県では愛知県に 次いで高く、無業者に占める非就業希望者比率は4都府県中3位。ともに東京 都に比べて高い。 ・20代大卒以上とは、平成15年(2003年)以降の大学・大学院卒業者 出典:就業構造基本調査(平成24年) §2 全国から見た大阪府の女性就業の特色 34 子育てをしている女性有業者の育児休業の利用率は、20代、30代ともに東 京都・神奈川県などで利用がすすんでいる。 大阪府では育児休業の利用率が低く、20代では、全国平均より下回る程度に しか利用されていない。 55.0% 53.0% 49.2% 50.0% 50.2% 子育てをしている女性有業者に 占める育児休業利用者の割合 44.0% 45.0% 20代女性 30代女性 40.0% 37.8% 35.5% 35.0% 33.3% 32.3% 33.0% 33.0% 30.0% 大阪府 東京都 神奈川県 愛知県 全国 §3 大阪の働いていない女性・働く女性等の意識と行動 35 §3 大阪の働いていない女性・ 働く女性等の意識と行動 §3-1 働いていない女性の意識と行動 36 本章では、アンケート調査によって、回答者を「働く」という観点から以下のA層~ F層の6つの層(グループ)に分類し、前章での就業構造基本調査等の分析を 詳細化して、大阪における「潜在的就業希望者」の就業意識と行動を検証する。 *通常文字は「国勢調 査」、「労働力調査」、斜 字は「就業構造基本調 査」 図のA~F層の幅はイメージ §3-1 働いていない女性の意識と行動 37 現在働いていない女性が前職を辞めた理由を見ると、結婚、子育て、介護などを 理由に77%が離職している。その内訳を見ると、 • 結婚や子育て・介護を機に、自分から「望んで辞めた」は36.5%である。 • 一方、「やむなく辞めた」女性のうち、結婚や子育て・介護と仕事の両立困難を 理由とするものが、40.5%である。 §3-1 働いていない女性の意識と行動 38 仕事を辞めた理由を、前職の勤務形態から見ると、 • 結婚に関しては、正規社員は非正規社員より、「望んで辞める」割合が多い。 一方、派遣などの常勤非正規社員では、「やむなく辞める」割合が多い。 • 子育て・介護に関しては、非正規社員か正規社員かで「望んで辞める」割合に 違いはあまり見られないが、「やむなく辞める」割合については、常勤非正規社 員で高くなっている。 §3-1 働いていない女性の意識と行動 39 B層~F層の分布を、仕事を辞める前の勤務形態から見ると、 • 前職が正規社員の場合は、最も多いのはE層だが、前職がそれ以外のケース に比べるとF層の割合が高くなっている。 • 前職が派遣など(常勤非正規)の場合は、B層の割合が高くなっている。 §3-1 働いていない女性の意識と行動 40 求職活動をしている層(B・C層)は、400万円未満の世帯層で多くなっている。 就職を希望していないが条件が整えば希望する層(E層)は、400万円以上800 万円未満の世帯層で多くなっている。 仕事から引退した層(F層)は、800万円以上の世帯層で多くなっている。 §3-1 働いていない女性の意識と行動 41 ハローワークに登録せずに仕事を探している女性(C層)は、登録しない理由とし て、4割が「登録しなくても良い仕事が見つかる」と答えている。 ハローワークに登録せずに仕事探しをしている女性(C層)が利用する求職手段 は、「求人雑誌」、「事業所の直接求人」が多くなっている。 利 用 し て い る 割 合 「その他」 ・ハローワークが遠いから ・自分の条件にあう仕事がみつからないから ・妊娠中・出産後等自分の側の条件が整わないから 等 有 効 だ と 思 う 割 合 §3-1 働いていない女性の意識と行動 42 就職を希望しているが求職活動は行っていない層(D層)が仕事探しをしない理 由は、生活面では「子育てや家事への支障」、仕事面では「勤務時間や職種等で 望む条件の仕事がない」をあげる女性が多くみられる 一方、能力面や情報面で不安や困難を感じている女性はあまり多くない §3-1 働いていない女性の意識と行動 43 いまは就職を希望していないが条件が整えば就職を希望する女性(E層)が、仕 事に復帰する条件としては、「子育てが一段落すること」が最も多くなっている。 「自分が持っている資格や技能を活かせる機会があること」という、自己実現的な条 件が、その次に多くなっている。 また、「家族の理解・協力」、「保育所等の施設」といった外部の支援環境が整うこと も、同様に多く見られる。 §3-1 働いていない女性の意識と行動 44 いまは就職を希望していないが条件が整えば就職を希望する女性(E層)の4分 の3(74.0%)は、条件が整えば働きたい勤務形態として、パートやアルバイトなど の非常勤非正規社員と答えており、フルタイムでの就業希望は少ない。 §3-1 働いていない女性の意識と行動 45 働いていない女性が、就業のために一番必要だと考えるものは、「保育所や学童保 育などの施設整備」が最も高く、 次いで「短時間勤務や在宅ワークなど多様な勤 務形態の普及」 の割合が高い。 §3-2 働く女性の意識と行動 46 継続就業可能性について、正規社員で働く女性は70%が「定年まで勤められる と思う」と答えている。 継続就業希望について、正規社員で働く女性は「定年まで勤めたい」が44.5% で、条件付きで「定年まで勤めたい」との答えもあわせると55.5%である。 §3-2 働く女性の意識と行動 47 正規社員で働く女性の継続就業可能性(「定年まで勤められる」)と継続就業希 望(「定年まで勤めたい」)の組み合せを見ると、「定年まで勤めたいし、定年まで 勤められると思う」という正規社員の女性は42%である。 §3-2 働く女性の意識と行動 48 求職で重視する項目を見ると、「転職者」では、「勤務場所」、「勤務時間」、「職 種や勤務形態」を重視する割合が高い。 「再就職者」では、「勤務時間」を重視する割合が高い。 「新卒者」は、「職種や勤務形態」を重視する割合が高い。 §3-2 働く女性の意識と行動 49 転職者が重視した項目を見ると、「勤務場所」、「勤務時間」、「職種や勤務形態」 などが多い。 転職前後の勤務形態別に見ると、 「正規から非正規・自営」への転職者が、「勤務 時間」 や「資格や能力を活かせること」を重視していること、「非正規・自営から正規」 への転職者が「給与」を重視していることなどが特徴的である。 §3-2 働く女性の意識と行動 50 現在の仕事に就く前の状況別に、就職前の仕事や予想に比べて現職をどう評価し ているかをみると、「給料」と「職場での立場・責任が重くなる」以外は、肯定的な評 価が否定的な評価を上回っている。 ※ただし、「職場での立場・責任が重くなる」は、重くなることを肯定的評価として集 計しているが、重くなることを否定的評価として逆に解釈することも可能 最も肯定的評価を受けた項目は再就職者での「勤務場所」(以前より近くなった) 最も否定的評価を受けた項目は新卒者での「給与」(想定していたより多くない) 回答者類型ごとの以下の比較評価で、 (好ましい変化数-好ましくない変化数)÷ 回答数 で指標化 新卒者は入職前の想定と現職を比較 再就職者・転職者は、前職と現職を比較 好ましい変化とは、次のような変化をいう。 • 給料が多くなる • 勤務時間が短くなる • 勤務場所が近くなる • 職種・勤務形態が希望通りになる • 能力が活用できるようになる • 職場での立場・責任が重くなる • 「新卒」:入職前の状態が学生である者 「再就職」:入職前の状態が 非就業である者 「転職者」:入職前の状態が就業者である者 §3-2 働く女性の意識と行動 51 中学入学前の子供をもつ働く女性は、他の働く女性に比べると「勤務時間」をより重 視しているが、「職種や勤務形態」はあまり重視されていない。 全体の状況(有効回答数に対する上位 3 位までの回答数の割合) 48.5 45.2 給料 勤務時間 75.2 60.7 74.3 71.8 勤務場所 私生活との両立 27.7 18.3 35.6 職種や勤務形態 16.8 資格・能力活用 2.0 定年まで勤め続けられる 54.0 23.4 6.0 11.9 11.1 職場の雰囲気 0.0 10.0 20.0 全体 中学入学前の子供あり(N:101) 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 全体 中学入学前の子供なし(N:252) 80.0 (%) §3-2 働く女性の意識と行動 52 働き続けるために一番必要だと考える項目を見ると、「保育所や学童保育などの施 設整備」が最も多い。 女性正規社員が非正規社員や男性と比べて高いのは、「男女を問わず全ての人に ワークライフバランスの意識の浸透」 や「経営者の意識改革」で、女性非正規社員が 他と比べて高いのは「短時間勤務や在宅ワークなど多様な勤務形態の普及」であ る。 §3-3 男性や親世代の意識と行動 53 常勤(正規社員・常勤非常勤・自営)の女性では、男性配偶者の家事協力 は、無職や非常勤非正規の女性より高く、約3分の1(34.4%)の男性配偶者 が、主として自分で、または半分ずつ家事に協力している。 非常勤非正規の女性では、無職の女性より男性配偶者の家事協力が得られてい るが、その違いは常勤就業女性に比べて大きくない。 §3-3 男性や親世代の意識と行動 54 中学校に上がる前の子どもがいる家庭の男性の家事協力を見ると、常勤就業女性 の配偶者の半数以上(55.0%)が家事に協力している。 §3-3 男性や親世代の意識と行動 55 男性の家事への協力を女性の就業別・男性の年齢別に見ると、常勤で就業する女 性の30代、40代の男性配偶者による家事協力が最も高くなっている。 この層が最も協力的 §3-3 男性や親世代の意識と行動 56 将来の配偶者が働くことへの独身男性の意識は、男性が育った家庭に影響されてお り、母親が常勤・自営で働いていた家庭の男性は、他の家庭に比べて配偶者の定年 までの就業に対して最も肯定的である。 §3-3 男性や親世代の意識と行動 57 育児に関して、働く子世代女性(女性の子(娘)、男性の子の配偶者(嫁)) を日常的に助けている親世代(同居・近居に限る)の割合は、子世代が正規社 員のときは3分の1を超える。 家事に関して、働く子世代の女性を日常的に助けている親世代(同居・近居に限 る)の割合は、子世代が正規社員のときは約4分の1である。 親世代の育児協力 親世代の家事協力 §4 M字カーブの要因分析 §4 M字カーブの要因分析 58 §4-1 第1のギャップの要因分析 59 学歴別に大阪の20代非就労女性の最終学校終了時の就職状況をみると、半数 近くが学校終了時に就職できておらず(卒業時の壁)、約4分の1は学校終了 以来、就業していない(卒後就職の壁)。 大卒の20代非就労女性は、約4割が最終学校終了時に就職できておらず、 20%が、学校終了以来、就労していない。 卒後就職の壁 ※ 全体のサンプル数が卒業者の 合計と一致しないのは、中卒、各学 校種中退、大学院以上の者(計84 サンプル)を含んでいることによる。 §4-1 第1のギャップの要因分析 60 20代無職女性の就業意識と卒業後の就業経験の関係を見ると、「学校を終え てから就職していない者」は、「現在も将来も働くことを考えていない」、「働きたいと 思っているが、具体的な仕事探しはしていない」の割合が高く、就職・求職に対して 消極的となる傾向がうかがわれる。 §4-1 第1のギャップの要因分析 61 働いていない20代女性の6割弱は就職を希望せず(条件付の非就業希望を 含む)、大卒正規就業女性の45%は転職希望と回答している。 §4-1 第1のギャップの要因分析 62 学歴別に20代非就労女性の就労活動・就労意識を見ると、大卒は他の学歴に 比べて、ハローワークに登録して求職活動をする割合が高く、より能動的に求職活 動に取り組んでいることがうかがわれる。 働きたいと思っている 求職中 働くことを考えていない §4-1 第1のギャップの要因分析 63 未既婚別に大卒の20代非就労女性について就労活動・就労意識を見ると、未婚 では3分の1、既婚では3分の2が働くことを考えていない。 未婚非就労者は、3分の1がハローワークに登録して求職活動を行うなど、既婚に 比べ、より能動的に求職活動に取り組んでいることがうかがわれる。 働きたいと思っている 求職中 働くことを考えていない §4-1 第1のギャップの要因分析 64 20代就労女性の転職活動・転職意識を学歴別に見ると、4割強が転職を希望 しており、約1割が具体的な求職活動を行っている。 大卒は他の学歴に比べて、転職を希望する割合が高くなっている。 転職したいと思っている 転職を考えていない 求職中 ※ 全体のサンプル数が卒業者の合計と一致 しないのは、中卒、各学校種中退、大学院以上 の者(計64サンプル)を含んでいることによる。 出典:大阪府委託インターネットアンケート調査(平成25年10月実施) §4-1 第1のギャップの要因分析 65 未既婚別に大卒の20代就労女性について転職活動・転職意識を見ると、未婚者 の方が既婚者より、転職を希望する割合が高い。 大卒でも、ほぼ同様の傾向がみられる。 転職したいと思っている 転職を考えていない 求職中 出典:大阪府委託インターネットアンケート調査(平成25年10月実施) §4-1 第1のギャップの要因分析 66 就労形態別に20代就労女性の転職希望・転職活動をみると、全体では、ともに4 割強が転職を希望して1割強が具体的な仕事探しをしており、就労形態による差 はあまりみられない。 非正規の大卒は、正規の大卒と比べて、転職希望の割合は少ないが、ハローワーク 以外で求職活動をしている割合は高いという特徴がみられる。 転職したいと思っている 転職を考えていない 求職中 出典:大阪府委託インターネットアンケート調査(平成25年10月実施) §4-1 第1のギャップの要因分析 67 20代女性が求職活動で自信がない項目を無職や非正規就労を経験したことのあ る20代男性(*)と比較すると、非就労女性は、仕事の専門知識、ビジネススキル、 社会人基礎力のいずれについても、男性より「自信がない」とする割合が高い。 仕事の専門知識:仕事に関連する専門知識、仕事に役立つ専門資格 ビジネススキル:語学やパソコンなどのスキル、一般的な事務処理能力 社会人基礎力:コミュニケーション能力、勤勉さやまじめさ、リーダーシップ、職場での良好な人間 関係づくり *何らかの就職上の困難を経験した男性と比較する趣旨で、「学卒直後に正規 社員として就職し、正規社員としての就労を継続している男性」を含めていない 自信がない項目 (「まったく自信がない」、「あ まり自信がない」の合計) 出典:大阪府委託インターネットアンケート 調査(平成25年10月実施) §4-1 第1のギャップの要因分析 68 20代の非就労女性が、就職活動で自信がない項目は、学歴によって差が大きい。 大卒非就労女性では、「仕事に関連する専門知識」や「仕事に役立つ専門資格」 など、ビジネスの即戦力につながる項目が上位にあがっている。 ※ 横軸は、大卒を基準にして「自信 がない項目」の順に並べている 出典:大阪府委託インターネットアンケート 調査(平成25年10月実施) §4-1 第1のギャップの要因分析 69 大卒の20代非就労女性について、未既婚別に就職活動で自信のない項目をみ ると、未婚は既婚に比べ、「コミュニケーション能力」、「職場での良好な人間関係づ くり」、「一般的な事務処理能力」といった社会人基礎力に関して自信をもっていな い割合が高い。 既婚は、 「勤務時間への柔軟や対応」、「勤務場所への柔軟な対応」といった仕事 による生活変化への対応力に自信をもっていない。 大卒20代非就労女性 「自信がない」項目 (未婚・既婚別) 出典:大阪府委託インターネットアンケート 調査(平成25年10月実施) §4-1 第1のギャップの要因分析 70 転職希望の20代女性が「仕事選びで妥協したくない条件」を、転職希望の20 代男性や転職を考えていない女性と比較すると、「職場の雰囲気」、「福利厚生 (プライベートとの両立)」、「勤務時間」、「職種」などへのこだわりがみられる。 出典:大阪府委託インターネットアン ケート調査(平成25年10月実施) §4-1 第1のギャップの要因分析 71 既婚の20代非就労女性が女性就業機会拡大のために必要と考えるものは、「就 学前の子どもを預かる施設の整備」や「家庭の事情に合わせて働ける勤務形態」な ど、家庭との両立支援へのニーズが高い。 未婚の20代非就労女性が女性就業機会拡大のために必要と考えるものは、「男 性を含めた家庭の理解と協力」、「経営者の意識改革」、「同一労働同一賃金」な ど社会の意識啓発に関するニーズが高い。 既婚 未婚 ※ 横軸は、非就労既婚女性を基準にし て、ニーズの多い順に並べている ※ 横軸は、非就労未婚女性を基準にし て、ニーズの多い順に並べている 出典:大阪府委託イン ターネットアンケート調査 (平成25年10月実施) §4-2 第2のギャップの要因分析 72 有配偶の女性の労働力率は未婚に比べ低く、出産前有職者のうち第1子出産 後の就業継続率は4割弱。約30年間でこの割合は全く上がっていない。 近年のM字カーブの底上げの背景には未婚層の増加が考えられる。 出産前有職 61.4(100) % §4-2 第2のギャップの要因分析 73 家事・育児時間をみると、有業・無業にかかわらず家事・子育ての負担は女性に集 中している状況で、待機児童数は減少しているものの解消には至っていない。 §4-2 第2のギャップの要因分析 74 20代の正規就労男女では、「定年まで勤められると思う」のは女性で4割、男性で6 割である。 女性は「定年まで勤めたい」が男性を大きく下回るが、「定年まで勤めたいが、事情が あれば辞めてもよい」という、条件つきの継続就労希望を含めると男女とも4割とな る。 出典:大阪府委託インターネットアンケート調査(平成25年10月実施) §4-2 第2のギャップの要因分析 75 20代非就労女性の退職理由は、結婚や子育てなどの「私的理由でやむなく辞め た」が最も多く、「私的理由で望んで辞めた」と「仕事上の理由で辞めた」がそれに次 いでいる。 n=350 出典:大阪府委託イン ターネットアンケート調査 (平成25年10月実施) §4-2 第2のギャップの要因分析 76 大卒の20代非就労女性の退職理由は、「劣悪な職場環境や人間関係」、「結 婚、子育てとの両立困難」などでやむなく辞める割合が多い。 ※ 横軸は、大卒を基準にして、 退職理由として1番目から3番 目までの理由となったものの合 計数を、多い順に並べている 出典:大阪府委託インターネット アンケート調査 (平成25年10月実施) §4-2 第2のギャップの要因分析 77 30代非就労女性の退職理由は、「結婚して主婦業に専念したかった」、「子育てを すべて自分自身でしたかった」などの「私的理由で望んで辞めた」が最も多く、「私的理 由でやむなく辞めた」を逆転している。 (n=300) 出典:おおさかQネット調査 (平成25年8月実施) §4-2 第2のギャップの要因分析 78 就業を希望していない女性が、「もう働かないと考えるようになった時期」は、20代 では「出産を理由に仕事を辞めたとき」、30代では「結婚を理由に仕事を辞めたと き」が最も多い。 20代の就業を希望していない女性では、「学校を終える前から」働かないことを考 える女性の割合も高くなっている。 ※ 横軸は、20代を基準にし て、多い順に並べている 出典:大阪府委託インターネットアン ケート調査(平成25年10月実施) §4-3 第3のギャップの要因分析 79 大阪府の30代の非就労女性は、他府県と比べて、現在は就業を希望していなく ても、「将来、条件が整えば働きたいと思っている」という、いわゆる「就業予備層」の 割合が高い。 *女性就労率上位県:新潟、富山、石川、福井、鳥取、島根、高知、佐賀の8県 働きたいと思っている 働くことを考えていない §4-3 第3のギャップの要因分析 80 30代の非就労女性のうち、仕事に役立つ専門知識や専門資格に自信をもってい る「仕事のポテンシャルの高い女性」ほど、求職者層の割合や「条件が整えば働く」 という「就業予備層」の割合が高い。 §4-3 第3のギャップの要因分析 81 現在就業を希望していないポテンシャルの高い(仕事の専門性に自信のある)女性 が働こうと思うための条件は、「子育てへの支障」以外に、「能力や技能に不安」を解 消し、「資格や能力を活かせる仕事」、「望んでいる職種で働ける仕事」、「望んでいる 業種で働ける仕事」など専門能力を活かせる仕事が見つかることである。 §4-3 第3のギャップの要因分析 82 既婚の非就労女性のニーズを20代と30代で比較すると、20代では保育所、 30代では学童保育へのニーズが、他の世代と比べて高くなっている。 未婚の非就労女性のニーズを20代と30代で比較すると、30代では、「家庭の 事情に合わせて働ける勤務形態」や、「働く女性を能力や成果で評価する仕組 み」、「同一労働同一賃金」などの企業の意識啓発に関するニーズが高い。 既婚 未婚 ※ 横軸は、30代女性を基準にし て、ニーズの多い順に並べている ※ 横軸は、30代女性を基準にし て、ニーズの多い順に並べている §4-3 第3のギャップの要因分析 83 離職期間が長いほど、能力の低下を感じる人が増加し、正規社員での就業者が少 なくなっていく。 §4-3 第3のギャップの要因分析 84 専門性の高い能力やスキルほど離職により低下したと感じる割合が高い。 「仕事の専門性」や「ビジネススキル」は、3年以上離職すると、離職者の6割以 上が低下したと感じている。 仕事に関連する能力やスキルが低下したと感じる割 合は、離職後2年程度で急速に拡大する。 §4-3 第3のギャップの要因分析 85 スキルアップをしている人は、就業希望女性でも2割以下である。 「スキルアップの必要性は感じるが、費用がかかるのでできそうにない」と回答した割合 は、女性が求職活動を具体的に考えるほど高くなっている。 出典:おおさかQネット調査 (平成25年11月実施) §4-3 第3のギャップの要因分析 86 介護の担い手は女性が圧倒的に多く、介護・看護を理由として離職する女性も 多く、第3のギャップの要因になっている。 介護のため前職を離職した数(大阪府) 男 現在有業者 (うち非正規) 現在無業者 (うち非正規) 女 6,200(34.4%) 700 11,800(65.6%) 2,500 14,900(19.5%) 7,100 61,700(80.5%) 35,800 §4-3 第3のギャップの要因分析 87 「自営業を始めたいと考えたことがある」女性は35%、男性は45%あり、自営 業を始めることを考えたことのない女性でも、16%が将来の夢として自営業を考え たいと答えている。 女性と男性を比べると、男性では「勤めていたときの経験や人脈を活かして自営業 を始めたいと考えたことがある」割合が多い。 起業を考えたことがある女性で最も多いのは、「趣味や特技、資格を活かした自営 業」である。 出典:おおさかQネット調査(平成25年11月実施) §4-3 第3のギャップの要因分析 88 「自営業を始めたいと考えたことがある」との回答者が、それをためらわせる要因に なったものとしてあげたものをみると、女性では、「開業に必要な各種の手続きの面倒 さ」への不安や「家事や子育てとの両立」への不安などが、男性と比べて高くなってい る。 出典:おおさかQネット調査 (平成25年11月実施) アンケート調査概要 89 アンケート調査概要 アンケート調査概要 90 §3の分析に用いた調査(第1回おおさかQネット調査) (1) 調査日時 平成25年8月13日~8月19日(7日間) (2) 調査対象 「おおさかQネット」登録府民モニター 2628名 (3) 調査方法 インターネットアンケート (4) 回答数 1914名 (回収率 72.8%) (男性 812名、女性 1102名) (5) 回答者属性 年齢は、10代から80歳代まで分布 §4の分析に用いた調査(1)(大阪府委託インターネットアンケート調査) (1) 調査日時 平成25年10月4日~10月18日(15日間) (2) 調査対象 「楽天リサーチ」登録モニター (3) 調査方法 インターネットアンケート (4) 回答数 2350名 (5) 回答者属性 大阪府在住 18-29歳の非就労女性 350名、就労女性 500名 18-29歳の男性(卒後正規で継続就労を除く) 300名 大阪府、東京都、横浜市、女性就労率上位県在住30代女性 各300名 §4の分析に用いた調査(2)(第2回おおさかQネット調査) (1) 調査日時 (2) 調査対象 平成25年11月20日~11月26日(7日間) 「おおさかQネット」登録府民モニター 2620名 (3) 調査方法 (4) 回答数 インターネットアンケート 1801名 (回収率 68.7%) (男性 751名、女性 1050名) (5) 回答者属性 年齢は、10代から80歳代まで分布
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