フィールド情報学入門(9章) アウトリーチコミュニケーション -未来を伝え,共に選択するためのフィールドを構築する- 菱山 玲子 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 1/44 目次 • アプローチ フィールドにみるアウトリーチの対象問題 フレーミング • アウトリーチコミュニケーションの背景,特徴,形式 • デザイン方法論 – 事例1:遺伝子組換え作物問題 – 事例2:炭素循環と地球環境問題 • 未来選択としてのアウトリーチの可能性と課題 • 私見:フィールドと向き合う Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 2/44 フィールドから → フィールドと共に フィールドの定義 (片井,2009) 「分析的,工学的アプローチが困難で,統制できず,多様な ものが共存並列し,予測できない偶発的な出来事が生起し, 常に関与することが求められる場」 観察,予測,記述 Field Informatics Intensive Lecture Series 伝達,共有 Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 3/44 フィールドに生じる深刻な課題 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 4/44 フィールドの問題とは? :狂牛病(BSE)の事例 • 1987年に英国で初めて見つかった牛の病気. 2-8年の潜伏期間,行動異常などの症状 発病より2週間から6カ月で死に至る. • 原因は十分に解明されていない. たんぱく質の一種プリオンが変化した 「異常プリオン」? • 感染牛の脳や脊髄などをエサとして 与えることで口から感染. 食肉を取った後の骨や内臓を加工した 「肉骨粉」を交ぜた飼料が感染ルート? • 狂牛病が人にうつるという直接的な証拠は まだない. クロイツフェルト・ヤコブ病との関連あり? Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 5/44 フィールドの問題とは? :狂牛病(BSE)の事例 危険部位以外なら安全と,政府は言い切る. 検査ではすべての牛が検査対象(全頭検査). 肉骨粉は 全面使用禁止 内閣府の食品安全委員会は 「生後20か月以下の牛の感染を、検査 で見つけるのは困難,BSE検査の対象 月齢を21ヶ月齢以上とした場合であって もリスクは変わらない」 検査困難 Field Informatics Intensive Lecture Series とする報告書をまとめた. →厚労省と農水省は20か月齢以下の牛 を検査から除外 Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 6/44 フィールドの問題とは? :狂牛病(BSE)の事例 厚労省・農水省 ①20ヶ月齢以下の牛の検査に対する国庫補助の 期限を平成20年7月末までとする ②各自治体で20ヶ月齢以下の牛を対象とした検 査を一斉に終了することが重要である 「病原体の異常プリオンの 蓄積量が少なく、 検査をしても感染リスクに ほとんど違いはないという 科学的評価」 バイオハザード予防市民センター Field Informatics Intensive Lecture Series 科学の不確実性・リスクを巡る 見解の違い ①生命の尊重と予防原則を最優先する立場からBSE 検査の緩和に反対,全頭検査の継続を支持 ②今回の全頭検査の見直しにつながる拙速な結論に は何ら科学的根拠はない 米国政権の政策的要請に従う日本政府の政治的 姿勢が反映された結果であり許容できない Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 7/44 フィールドに生じる競争や共存の問題 -実験- Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 8/44 実験の進め方 • 新車購入交渉実験(Thompson実験(1990)より作成) Aさん:新車の自動車ディーラー Bさん:新車を購入したい顧客 • 自動車ローン金利,税金(法定費用), 保証期間,納期, の4つの項目について交渉できる. • 目標は,自分のポイントの最大化. Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 9/44 -交渉の実施- Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 10/44 新車の販売交渉タスク:ポイント利得表(Aさん:売り手側) ローン金利 10%(4000) 8%(3000) 6%(2000) 4%(1000) 2%(0) 税金(法定費用) Level A(0) Level B(-600) Level C(-1200) Level D(-1800) Level E(-2400) 保証 6ヶ月(1600) 12ヶ月(1200) 18ヶ月(800) 24ヶ月(400) 30ヶ月(0) 納期 5週間(2400) 4週間(1800) 3週間(1200) 2週間(600) 1週間(0) 新車の販売交渉タスク:ポイント利得表(Bさん:買い手側) ローン金利 10%(0) 8%(400) 6%(800) 4%(1200) 2%(1600) Field Informatics Intensive Lecture Series 税金(法定費用) Level A(-2400) Level B(-1800) Level C(-1200) Level D(-600) Level E(0) 保証 6ヶ月(0) 12ヶ月(1000) 18ヶ月(2000) 24ヶ月(3000) 30ヶ月(4000) 納期 5週間(0) 4週間(600) 3週間(1200) 2週間(1800) 1週間(2400) Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 11/44 新車の販売交渉タスク:利得表(Aさん:売り手側) ローン金利 10%(4000) 8%(3000) 6%(2000) 4%(1000) 2%(0) 税金(法定費用) Level A(0) Level B(-600) Level C(-1200) Level D(-1800) Level E(-2400) 保証 6ヶ月(1600) 12ヶ月(1200) 18ヶ月(800) 24ヶ月(400) 30ヶ月(0) 納期 5週間(2400) 4週間(1800) 3週間(1200) 2週間(600) 1週間(0) 新車の販売交渉タスク:利得表(Bさん:買い手側) ローン金利 10%(0) 8%(400) 6%(800) 4%(1200) 2%(1600) Field Informatics Intensive Lecture Series 税金(法定費用) Level A(-2400) Level B(-1800) Level C(-1200) Level D(-600) Level E(0) 保証 6ヶ月(0) 12ヶ月(1000) 18ヶ月(2000) 24ヶ月(3000) 30ヶ月(4000) 納期 5週間(0) 4週間(600) 3週間(1200) 2週間(1800) 1週間(2400) Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 12/44 フレーミング 問題を切り取る視点,知識を組織化するあり方,問題の語り方, 状況の定義のこと(Goffman, 1994) ある現実を見るとき,その現実に対するモノの見方は人により異なるかもしれ ない. 価値観,フレーミングの違いから,問題が解決されないことがある. Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 13/44 フレーミング 「同じ問題に対する正しい答え方に関する不一致は,そもそも何 が正しい問題の立て方(フレーミング)なのかに関する,より深い 不一致を反映している」 「同じ問題に対する異なる答えは,実は同じ問題に対する問い 方の違いによって生じる」(Jasanoff, 1996) Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 14/44 フィールドとフレーミングの関係 実験室 フィールド 疑似的なフィールド (体験空間)を再現 ・フレーミング ・リスク評価,倫理の問題 ・不確実性下の責任の所在 ・妥当性境界を引くことの難しさ ・多様なローカルナレッジ ・状況依存性 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 15/44 フィールドと実験室で得られる知見との関係 実験室 フィールド 疑似的なフィールド (体験空間)を再現 ・専門知の提供 ・クライテリア(判断基準)の提示 ・結果回避可能性の検討 ・科学的予測の社会化 (妥当性境界の獲得) ・ローカルナレッジの把握 ・研究の方向性の獲得 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 16/44 アウトリーチコミュニケーションとは Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 17/44 アウトリーチコミュニケーションとは • アウトリーチは従来,社会福祉分野において,福祉活動従事者が地域に 出向いて援助を必要とする人々の潜在的ニーズを把握し,問題解決を 図る手法として用いられてきた. • この手法を学術分野に応用したアウトリーチコミュニケーションは,諸分 野の専門家や研究者が自ら社会の中に入り,市民に情報提供の機会を 提供しながら双方向のコミュニケーションを実現し,社会との接点に存在 する専門的で複雑な問題を共有するための活動である. • この活動はまた,市民が持つ多様な視点とローカルナレッジを専門家の 知識と結びつけ,次の研究を促す役割を果たす. • 情報学を用いてコミュニケーション活動を媒介するためのツールを開発し 適用することで,その活動の質と量を改善し,専門家と市民との距離を 縮小し,両者の円滑な橋渡しを支援することができる. Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 18/44 アウトリーチ事例 (右)Hubble Space Telescope Website (下)サイエンスアゴラ2007 (2007/11/22-24,東京お台場, 3日間で165出展,463登壇,約 3,000人来場) Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 19/44 アウトリーチ事例 参加型のコミュニケーション手法の活用 ローカル&ボランタリー 市民社会の中に造られるフラットな対話環境 アウトリーチ事例 (上)ドイツの環境教育ツール 「KeepCool」の導入試行 (左)サイエンスカフェ (漬物店内カフェを利用) Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 20/44 アウトリーチのモチベーション 「専門家だけでは解決できない課題」,「フレーム対立」をどう扱うか 現代の困難な課題は, 本当に科学技術の発展だけで解決で きるのだろうか? 専門家に任せることなく,市民全体で, 何をどこまで利用し,何を研究するか, どのように判断するのかを考える 必要があるのではないか? 国産牛なら安全なのか? どのような検査を受けたのか? 妥当な基準に基づく検査なのか? 本当に安全なのだろうか? Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 21/44 科学と社会の関係 • • • • • • 科学技術がもつ固有のリスク 科学技術に依存する社会 多様な利害関係者 意思決定の政治問題化 科学技術と社会の乖離 アカウンタビリティ(説明責任) Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 22/44 アウトリーチの特徴 • 専門家と非専門家のための対話的コミュニケーション手法 – – – – 一方的な伝達活動・啓蒙・助言活動をさすものではない (科学技術分野が中心であるが)科学技術分野とは限らない 専門家による技術的説明が目的ではない 専門家と,非専門家とのフラットなコミュニケーション • 形式タイプ – 広報型アウトリーチ • 専門的知識についての話題を平易に提供 • 将来の社会へ向けての共通理解を創出 – 合意形成型アウトリーチ • 倫理やリスクなどの課題にフォーカス • 科学技術のあり方,方向性に対する認識や協力関係の構築 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 23/44 アウトリーチのデザイン方法論 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 24/44 研究としてのアウトリーチの実現: 疑似的なコミュニケーション環境の枠組み 伝達モデル インタラクティブな 対話モデル 伝達空間 伝達のための空間 協調 競合 伝達対象 コンテンツの 投入 問題の全体構造とその相互 作用を的確に伝達 複数の仮説としてのシナリオ を検討 インタラクションの誘発 課題や論点の提供・代替案や情報の提示支援 Field Informatics Intensive Lecture Series 複数の参加者が対象を相互 参照・共有し同時に対話でき る空間 総合的視点のもとで新たな 知識の産出を可能とするコ ミュニケーションの仕組み Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 25/44 研究としてのアウトリーチの実現: コミュニケーションデザインの方法論 現実社会 伝達のための空間 協調 概念モデル メッセージの 切り出し 競合 再構築 ツール・デザイン シナリオ記述 計算モデル作成 ファシリテータ インタラクションの誘発 課題や論点の提供・代替案や情報の提示支援 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 26/44 取り扱う問題の持つ特徴 • 時間的・空間的スケール – 集中から広域分散へ (越境性) – 短期から長期へ (長期的蓄積性) – 直接から間接へ (複合的性質に注目) – 不可逆性・非選択性 • 専門家がフォーカスしてきた単一の評価軸 – 多様なエンドポイントの現出 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 27/44 事例1: 遺伝子組換え作物問題 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 28/44 事例1:遺伝子組換え作物(GM作物)問題 遺伝子組換え作物問題の主な論点 1) 生態系・環境への影響 2) 生物多様性,資源管理の問題 3) 農作物貿易を中心とする経済問題 4) 生命倫理上の問題 5) 食品安全性(人体への影響) 6) 食品表示の適切性 7) 種子支配,知的財産権の問題 8) GM作物問題を利用した反米活動 などの煽動的キャンペーン問題 論点の所在を メッセージとして伝達・共有 問題の概念モデル・役割モデルを記述 (計算モデルへ転換) ツール・シナリオを構成 メリット リスク コミュニケーション空間へ適用 複数の選択肢 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 29/44 GM作物問題の役割モデル 問題に利害関係を有する役割モデルを疑似体験 問題の全体像と情報を共有し,コミュニケーションを促す 安全性を重視 有機栽培農家 環境NGO GM技術に否定的 消費者 バイオ研究者 研究資金提供 交雑 選択の 自由確保 食品表示 安全性により 判断 GM作物 栽培農家 行政 種子支配 市場 多国籍 バイオ企業 管理 Field Informatics Intensive Lecture Series 食品会社 GM技術を活用 貿易 問題 Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 30/44 イベントとしての文脈の呈示 想定しうるシナリオ 起因事象の発生頻 度のコントロール -サイコロ -カード -計算モデル 有機栽培農家 交雑 提訴 種子支配 多国籍 バイオ企業 GM作物 栽培農家 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 31/44 GM作物問題を巡るコミュニケーション活動からの知見 • GM技術の研究開発が社会に受入れられるための方策に焦点 – ターミネータ遺伝子技術による交雑防止 – 安全性基準作りのための研究開発 • 市民の選択の権利を保証するための情報確保に焦点 – – – – 安全に関わる研究と情報公開 人体への安全リスクに対する研究促進 「選ぶ権利」の確保のための表示の確立 収量・コスト・安全性に関する検証データの公表 ・ 参加前後で,考え方に変化が生じる人,生じない人 ・ 参加前前後で,立場が曖昧になる人,鮮明になる人 ・ 個人の「立ち位置」を微妙に反映 (理系院生・文系学部生) Field Informatics Intensive Lecture Series 新たな知識や 選択肢の模索への 足がかり Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 32/44 事例2: 炭素循環と地球環境問題 (CBSC: Computer Based Science Communication) Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 33/44 事例2:炭素循環と地球環境問題 「エコ・エクスペリメント-温暖化から地球を守ろう」 • • • ネットワーク環境下で行うアウトリーチ事例 参加型ゲーミングとサイエンスカフェを融合する形態 本来高度な温暖化問題の前提知識を平易に提供 シナリオによる 前提知識の共有化 時 間 の 経 過 専門家による解説 (サイエンスカフェ) 参加型ゲーミング 専 門 地球温暖化防止国際会議 家 に 参加型ゲーミング よ る 解 地球温暖化防止国際会議 説 参加型ゲーミング 最低限の前提知識の提供 体験の共有,話題提供, 参加者間,参加者と専門 家間のコミュニケーション 機会の提供 参加者・専門家間の討議 参加者交流 クールダウン (参加者間討議や交流) 従来型サイエンスカフェの コミュニケーションプロセス Field Informatics Intensive Lecture Series 討議・交流機会の提供 参加型ゲーミングの 融合型コミュニケーションプロセス Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 34/44 参加型ゲーミングの進行サイクル オリエンテーション (前提知識の共有化) 事前シナリオの 配布 不明点の確認 サイエンスカフェ ディブリーフィング (専門家・教員による 解説) 専門家のアドバイス ゲームの実施 (オンライン) 対話型会議 (オフライン) Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 35/44 切り出されたメッセージとコミュニケーションデザイン 伝達を意図したメッセージ 問題構造の性質 -局地的な問題がグローバルで大局的問題へと発展するという構造的性質 -環境問題をミクロ,マクロの経済政策と絡めて分析することの必要性 問題の科学的理解 -地球上のエネルギーは,化石燃料・天然ガス(メタン)・バイオマスの3つであること -メタンの温室効果は二酸化炭素の20倍以上であること -畜産業の振興や森林資源の利用などの経済活動が,炭素循環に影響を与えること 地球全体の温室効果ガスの状況 二酸化炭素,メタンガス R1→R2→R3・・・ A国 Field Informatics Intensive Lecture Series B国 C国 Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 36/44 ゲーム結果としての温暖化推移(2007.9実施ケース) 国家間の相互作用・擬似的な地球環境への影響 温室効果ガス変化 二酸化炭素変化 メタン変化 地球環境全体の変化推移 150 経済目標の達成に考慮した 削減目標を宣言 100 (左)マクロな環境推移グラ フ,話合いの効果に注目 (下)参加者により作成され た「四面エコサイコロ」 現実社会での具体的な行 動への関連付けツール 50 Index 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 -50 -100 各国が削減目標を提示し,合意 した結果,温室効果ガスは低減 -150 第1回会議 第2回会議 -200 Round Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 37/44 アウトリーチ 可能性と課題 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 38/44 アウトリーチの可能性と課題 • 発展的なアウトリーチ手法の確立 – 複合的問題の全体構造や相互作用の仕組 みの伝達 – 自分自身を取り巻く問題に,容易に接触す るための機会・手段を提供 • コミュニケーション・ツールの開発導入 – 専門家・非専門家の双方から,対象問題に 対する相互参照をシンプルに実現 – 新たな知識を産出し,イノベーションを促す ための「触媒」 専門家と非専門家の「協働」を軸とした, 双方向アウトリーチ空間の実現 未来を語るフィールドとしての仮想空間と 現実空間の効果的融合 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 39/44 最後に: フィールドと向き合う Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 40/44 フィールド情報学の進め方のかたち • 関わり方のパターン – フィールドに行き,そこに没入する – 設定した疑似的な空間をフィールドとし,そこに フィールドの本質を呼び込む • 取組み方のパターン – 主観的にフィールドに入り込み知見を得る – 客観的にフィールドを観察して評価する Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 41/44 フィールドと向き合うためのノウハウ • フィールドのことはフィールドに聞け(フィールドに行くことが重要) • フィールドと一体化する • フィールドを知るには時間がかかるので,早急な結果を求めない • • • • • • • • • フィールドの人とは,とことん付き合う フィールドと苦楽を共にする覚悟が必要 フィールドと四季を共にする覚悟が必要 フィールドの中の誰を味方にし,誰を敵にするかを見定める (一緒にやりたい人と「同志」の関係となることが重要) 信頼・信用が重要(約束を守る) フィールドを構成している人の名前を,「フルネーム」で覚える必要が ある フィールドの人々の価値観を共有,共感する For field: フィールドのために研究者の知恵と時間を提供すること を惜しまない フィールドの人々に気付きを与える(win-winの関係) Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 42/44 「フィールド度」チェック (例えば,企業組織の場合) □ □ □ □ 部署のレイアウト変更や引越しの手伝いを頼まれる. 部署の飲み会,忘年会,新年会に誘われる. 部署の慰安旅行・社員旅行に誘われる. 名札やロッカー,靴箱,作業着やヘルメットなど,社 員と同等のものが割り当てられる. □ 友達や後輩を連れてきて,と言われる. □ 自宅に招かれる.自宅に伺う. □ (フィールドの人間関係の一部として,フィールドに いる)他の社員に話せないフィールドの「相談事」を 持ちこまれるようになる. フィールドと共に歩み,喜び・悩み・闘う覚悟を・・・ Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 43/44 フィールド情報学入門(9章) アウトリーチ・コミュニケーション -未来を伝え,共に選択するためのフィールドを構築する- 菱山 玲子 Field Informatics Intensive Lecture Series Copyright(C) 2009 Field Informatics Research Group, Kyoto University. All rights reserved. 44/44
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