非常勤監査役の監査活動

非常勤監査役の監査活動
2007
監査役室
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目
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次
監査役の義務と権限
常勤監査役と非常勤監査役の差異
監査役監査の連携
まとめ
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1 監査役の義務と権限
(1)善管注意義務
会社法330条(民644)
→会社の規模、業種等からみて会社の監査
役として法令上の義務を遂行できる程度の
知識、経験、監査能力を有する人が払う注意
→自分の能力をもって注意しても、上記基準
に達していないときは善管注意義務を尽くし
たとはいえない
(東京弁護士会会社法部編「監査役・監査役会ガイドライン」より)
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(2)取締役会出席・意見陳述義務 法383条
→監査役は、取締役会に出席し、必要がある
と認めるときは意見を述べなければならない
→取締役会の質疑を聴取し、提出された議案・
書類が法令、定款に適合しているかを確認
(取締役会等で、意思決定プロセス、内容を
監視)
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→取締役会において
①取締役会の専決事項か 法362条4項
重要な財産の処分及び譲受、多額の借財
支配人その他の重要な使用人の選任解
任、支店その他の重要な組織の設置
内部統制システム整備等
②その他のポイント
・議長(社長交代時、利益相反取引など)
・決議方法、議事録の作成署名、議事録
備置、閲覧
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(3)取締役会への報告義務 法382条
→監査役は、取締役が不正の行為をし、若しく
は不正の行為をするおそれがあると認めると
き、又は法令もしくは定款に違反する事実若
しくは著しく不当な事実があると認めるとき
は遅滞なく、取締役会に報告する義務がある
→取締役の責任が問われるのは次の4つ
①具体的法令違反②経営判断の誤り
③監視義務違反④内部統制システム構築
義務違反
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●取締役に任務懈怠、
過失なしとされる条件
①具体的な法令違反がないこと
②忠実義務に違反していないこと
→会社のために働く義務、善管注意義務は
注意を尽くす義務
③著しく不合理な経営判断でないこと
④十分な情報に基づく判断であること
(中村直人著 「新会社法」より)
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(4)株主総会への報告義務 法384条
→監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする
議案、書類その他法務省令で定めるものを調査し
なければならない。この場合、法令若しくは定款に
違反し、又は著しく不当な事項があると認めるとき
は、その調査結果を株主総会に報告しなければな
らない。
→実務上「違法か否か、著しく不当か否か」は
監査役としては、弁護士、公認会計士等の専門家の
意見を求め、慎重に調査検討すべき。
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(5)監査役の説明義務
法314条
→取締役、監査役は、株主総会において株主から
の特定事項について説明を求められた場合、
当該事項について必要な説明をしなければなら
ない。
(6)取締役の職務執行の監査、
監査報告作成義務 法381条1項
→監査役は取締役の職務の執行を監査する。この
場合において、監査役は、法務省令で定めるとこ
ろにより監査報告を作成しなければならない。
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○監査報告
→取締役が作成した計算書類(貸借対照表、
損益計算書、株主資本等変動計算書、注記
表-計規91①) 、事業報告(施規118)及びこれら
の附属明細書について、それらが適法、相当
に作成されているかどうかを明らかにするた
め監査役が作成する書面又は電磁的記録
→連結計算書類(計規93)
→計算関係書類(計規2③3→成立の日における貸借
対照表、各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書、
臨時計算書、連結計算書)
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上記義務を遂行するための権限
○違法行為を発見するための権限
→事業報告請求権、業務財産調査権 法381②
→子会社調査権 法381③
→取締役会出席権、意見陳述権 法383
○違法行為を発見した場合の権限
→取締役会招集請求権、招集権、
→取締役の違法行為差止請求権 法385
○その他 →監査役任免関連意見陳述、監査費用請
求権、会計監査人任免関連意見陳述
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(7)監査役による取締役の行為の差止め
法385条
問題
監査役は、取締役が法令・定款に違反す
る行為をするおそれがあるときは、いつでも
当該取締役に対し、当該行為をやめることを
請求できる
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2 常勤監査役と非常勤監査役
(1)社外性は明確に法定
法2条 社外監査役の定義など
(2)常勤、非常勤は明確な定義なし
→常勤監査役は会社の営業時間中、常時
監査業務を遂行できる状態にあることをいう
→2社の常勤監査役の兼務は不可。子会社
関連会社の非常勤監査役の場合でも、せ
いぜい2、3社が限度
(森井英雄著 「新監査役の法律と実務」より)
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(3)常勤監査役と非常勤監査役との間で責任
上の差異はない
但し善管注意義務違反に問われた場合、免
責を立証する際、常勤、非常勤で業務分担が
明確であれば、立証の難易が生ずるか
(藤野信雄著 「監査役の法務・実務」より)
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●当社監査役の職務分担
常勤監査役
取締役会・常務会等の会議へ出席するほか、
監査方針に基づき計画的に監査を実施すると共に、
その結果等を監査役会に報告し、非常勤監査役と
情報を共有化し、監査意見の形成に努めることを基
本とする
非常勤監査役
取締役会等の会議に出席するほか、監査方針を踏
まえ随時監査を実施すると共に、監査役会にて常
勤監査役から監査結果等を報告聴取し、監査意見
の形成に努めることを基本とする。
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●当社監査役監査基準
第3条(分担)
常勤監査役は、常勤者として監査環境の
整備及び社内の情報の収集を行い、かつ内部統
制システムの構築及び運用の状況を日常的に監
視するとともに、その職務の遂行上知り得た情報
を、他の監査役と共有する。
2 非常勤監査役は、監査役会において常勤監査役
から監査結果の報告を聴取するほか、自らも積
極的に監査に必要な情報の入手に努める
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●非常勤監査役の役割に言及した判決
大和銀行事件大阪地裁判決 平12.9.20
・・・社外監査役は、たとえ非常勤監査役で
あったとしても、常に取締役からの報告、監
査役会における報告などに基づいて受動的
に監査するだけで足りるものとは言えず、常
勤監査役の監査が不十分である場合には、
自ら調査権を駆使するなどして、積極的に情
報収集を行い、能動的に監査を行うことが期
待されているものというべきである。
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問題
法335②
正しいのは次のうちどれか?
・監査役は、当該会社の取締役を兼務できる
・監査役は、子会社の取締役を兼務できる
・監査役は、当該会社の使用人を兼務できる
・監査役は、子会社の使用人を兼務できる
・監査役は、子会社の監査役を兼務できる
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●非常勤監査役の監査
会計監査役 非公開の中小会社は監査役の監
査範囲を定款で会計監査に限定する旨を定めるこ
とができる (法389①の主旨)
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定
する旨の定めを廃止する定款変更によって終任
→「法389条1項の定めをするか否かにより監査
役の権限が大きく異なることから、監査役の資質等
への要求も異なりうるので、終任事由としている」
(江頭憲治郎著 「株式会社法」より )
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3 監査役の連携について
(1)連携についての法令
・施規105②
監査役は、取締役の職務の執行を監査する職務を
適切に遂行するため、取締役、会計参与及び使用
人、子会社の取締役等と、意思疎通を図り、情報収
集及び監査の環境の整備に努めなければならない。
・施規105④
監査役は、その職務の遂行にあたって必要に応じ
て他の監査役、親会社及び子会社の監査役その他
これらに相当する者との意思疎通及び情報交換を
図るよう努めなければならない
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(2)基本
①監査役としてモニターしたい対象(分野・
テーマ)を選定
②優先順位づけ(重点監査事項、年間スケ
ジュール)
③効率性・有効性を配慮(各機関との連携)
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(3)内部監査部門
①会社経営の健全な維持発展が究極目的
→両者の緊密な連携・協力が効果的
→内部監査部門との定期的会合、内部監査
報告書の報告聴取・閲覧等の情報収集
(特に内部統制システムの運用状況の監視に
つき重要)
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●監査役監査の連携体制(イメージ)
監査役監査
公認会計士
による監査
内部監査部門
の監査
監査役は、会計監査人及び内部監査部署と情報
交換し、監査計画等の調整を図ることが必要。
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・監査役と内部監査部門の着眼点は異なる
→確認の方法が妥当か、内部監査部門の手
続きにより、どの程度効果的に確認されたか
・監査対象箇所の負担感軽減のための工夫
①内部監査部門の指摘が改善された時期を
見計らって監査役監査(監査部の年度計画
をもとに監査役監査計画の策定)
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・監査対象箇所の負担感軽減のための工夫
②内部監査部門の指摘点について、どう改善し
たかを5W1Hで具体的に確認し、重複を避
ける
→経費立案の起案者と承認決裁者が別に
なっているか(内部監査)、その分担は何時、
どこで、どのように決定されたか(監査役)
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(4)会計監査人(監査法人)との連携
大会社では、会計につき会計監査人が一時
的責任を負うものの、業務監査の充実、監査
の方法と結果を監査するためにも連携重要
①年度初に監査計画を会計監査人(監査法
人)からヒアリング、重点課題等につき検討
②期中監査の実施状況の報告聴取
③監査役が会計監査人の行う各部署の監査
に同席、事業場・子会社への往査に同行
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●当社監査役監査基準
第19条
2 監査役は、会計監査の適正性及び信頼
性を確保するため、会計監査人が独立の立
場を保持し、職業的専門家として適切な監査
を実施しているかを監視し検証する
3 監査役は、前2項に基づき、会計監査人の
監査の方法及び結果の相当性について監査
意見を形成する
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第20条 監査役は、会計監査人の職務執行が適正
に行われることを確保するため、次に掲げる事項に
ついて会計監査人から通知を受けるとともに、会計
監査を適正に行うために必要な品質管理の基準を
遵守しているかどうかについて会計監査人に対して
適宜説明を求め確認を行う
一 独立性に関する事項その他監査に関する法令
及び規程の遵守に関する事項
二 監査、監査に準ずる業務及びこれらに関する業
務の契約の受任及び継続の方針に関する事項
三 その他会計監査人の職務の遂行が適正に行わ
れることを確保するための体制に関する事項
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●わが国における開示情報と
内部統制との関係
非財務情報
財務諸表以外の
財務情報
財務諸表
財務報告に係る
内部統制
金融庁
(鳥羽至英著 「内部統制の理論と制度」より)
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問題
計規154
会社法に基づく会計監査人による監査に
ついては、大会社等の取締役又は取締役会
に対してその決議が義務づけられている。
いわゆる内部統制システムは、その対象と
されていない。
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●話題となった論点
財務諸表監査は、会社法上、監査役が会
計監査人の職務執行の相当性を監査。他方、
金商法上の内部統制システム監査において
は監査役の監査活動は「統制環境」のひとつ
として公認会計士等の評価の対象となってい
ること
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●監査役としての対応
1 財務報告に係る適正な内部統制が構築されてい
るか、いなければ構築についての助言、勧告を取締
役(会)に適宜実行すること
2 経営の意思決定について、日常の監査活動の一
環として自ら適正性、妥当性を監視検証すること
3 公認会計士と連携して財務報告に係る内部統制
の有効性に重大な影響を及ぼすおそれがあると認
められる事項を発見したとき、監査役は会計監査人
に報告するよう要請するとともに代表取締役等に監
査役として助言または勧告すべき
(「別冊 商事法務」NO307より)
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●監査役と金商法
①監査役は、財務報告とその内部統制に関し経営者
を適切に監督監視する責任を理解し
実行しているか
②監査役は、内部監査人及び監査人と適切な連携を
図っているか
③監査役及びその関係者の間で、情報が適切に伝
達・共有されているか
④内部統制に関する企業外部からの情報適切に利用
し監査役に適切に伝達する仕組みになっているか
⑤内部統制に係る重要な欠陥等に関する情報は監査
役に適切に伝達されているか
(金融庁「実施基準」より)
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4 まとめ
○会社発展のため関係機関との連携
・特に内部監査部門、公認会計士
・監査役監査の効率性と有効性の観点
・兼任監査スタッフの有効活用
○内部統制システム運用状況の確認と監視
○法令等の動きへの対応
・情報源について当室の活用
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参考文献
・中村直人「新会社法」 商事法務
・江頭憲治郎「株式会社法」 有斐閣
・森井英雄「新監査役の法律と実務」税経協会
・藤野信雄「監査役の法務&実務」税経協会
・鳥羽至英「内部統制の理論と制度」国元書房
・相澤哲他「千問の道標」商事法務
・重泉良徳「監査役監査のすすめ方」税経協会
・別冊 商事法務307
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