府立工科高等学校における ものづくり教育の充実に関する提言 <概要> ものづくり教育コンソーシアム大阪 1 協議の経緯 【第1回から第4回まで】・・これまでの取組内容と現状を踏まえながら、工科高校の取組課題を整理 ●日本のものづくりの基盤が弱くなってきており、ものづくり人材の育成が急務。特に、生産製造ラインを支える技術や実践的な技能を身につけた人材(テク ニシャン)の素地を養成するのが工科高校。 ●工科高校において、教育内容の質の保証を行うことが必要。特に、設備の更新、教員の技術力、授業力の向上、継続した企業連携がカギ。 ●大学等進学をめざす系や専科を新たに設置するなど、工科高校からの進学をより可能にする仕組みづくりが必要。 ●教育活動の充実には、9校それぞれの強みを生かすなど、学校ごとに焦点化して取り組むことが必要。 【第5回から第7回まで】・・第4回までの意見の中から、施設設備の整備と大学等進学への対応について重点的に協議 ●職業教育の充実と最先端の施設設備の整備はセット。施設設備の充実なくして職業教育の充実はありえない。 ●施設設備の改善・充実は設置者の責務。技術の進展に対応した施設設備の整備と老朽化への対応の両面から整備は急務。 ●工業の基礎を学びつつ、大学等進学に向けて数学、理科、英語等をじっくり学ぶことができる新たな「系・専科」の設置が必要。入学者選抜についても、現 行の総合募集とは別枠で行うべき。 ●進学対応のカリキュラムは、高校から大学までの7年間の工業教育として構想すべき。 ●ガイダンス機能の充実、工科高校推薦入試制度の拡充や、私立大学における授業料の減免を含む特待生制度の獲得にも同時に取り組む必要あり。 【第8回】・・それまでの協議を総括し、コンソーシアムから「工科高校への提言」という形で取りまとめる。 【まとめのポイント】 ●工科高校の近未来を考えるとき、「高大の接続と連携」、「高度技能の養成」、「地域産業との連携」がキーワードになる。 2 ●工科高校9校がそれぞれの強みを生かし取組を進めることが必要。そのためには、3つのキーワードについて、各校が取組を重点化し、個性化を図ること で、より効果的に人材育成の取組を進めることができる。 <提言1>工科高校が育成すべき人材像 ○我が国のものづくり産業は、経済社会の維持発展にとって重要な役割を将来にわたって担うもの。特に大阪は、 ものづくりを基盤として発展し、多くのオンリーワン企業が立地 ○しかし、グローバル化の進展とともに、産業の空洞化が懸念される中、ものづくりの技術力のさらなる向上が 不可欠であり、ものづくりの現場を担い発展させる人材を育成することが急務 ○生産現場では、ますます高品質で高精度なものづくりの力が求められ、ものづくりの発案や改善提案などを積極的、 能動的に行う資質の育成が重要となっている。工科高校では、産業基盤を支える技術と技能を持つ、能動的な人材 を育成する必要がある。 ★「ものづくりマインドを持った将来の高度技術者」 工科高校でものづくりの基礎や態度を身につけ、さらに大学等で高度な知識、技術を学び、 実技と理論を併せ持ったエンジニアの育成 ★「高い付加価値を生み出す技術・技能力を持つ人材」 高精度、高品質など高い付加価値を生み出すことができる、職業資格等に裏付けられた確か な技術、技能力を身につけた人材の育成 ★「ものづくり現場を支えて指導・管理・改善を推進する現場のリーダーに なれる人材」 生産現場を監督し、合理化等改善提案ができる実践的技能と知識を持った人材の育成 3 人材育成をより確かなものにするためには、教育内容の質をしっか りと担保していくことが不可欠 ⇒ 提言2へ <提言2>教育内容の質の保証~工科高校がいま取り組むべきこと~ ○工科高校は、中学生や産業界や大学等に対して、教育内容の質を保証して、信頼感を勝ち得るこ とが非常に重要 ○工科高校における人材育成をより確かなものにするために、いま、工科高校が取り組むべきこと を3点に整理 ★工学系大学等進学に向けた学力向上と連携大学の確保 ・ものづくりマインドの醸成と大学教育に接続する教育課程の改善を図る ・高大連携を推進し、大学講座や研究活動参加体験させる機会を設定 ・国公立大学や私立大学(工学)への進学ルートの開拓 ★生徒が身につける知識、技術及び技能の質の保証 ・生徒に習得させる技術・技能レベルを明確にした指導とカリキュラム編成 ・教員の資質向上のための技術研修 ★工科高校の職業教育拠点としての機能充実 ・時代の変化に即した施設設備の整備 ・企業と共同した商品開発や実習体験など企業との連携の推進 4 産業基盤を支える人材の育成は工科高校全体のミッションだが、すべて の取組をすべての学校に横並びで担わせるのでは、十分な効果が期待で きない。では、これからの方向性は? ⇒ 提言3へ <提言3>工科高校の近未来像~人材育成の重点化と学校の個性化の観点から~ ○平成17年に工科高校改編して8年が経過し、9校はすでに「横並び」ではなく、進学者が多い学 校、資格取得に力を入れている学校、地域との連携に力を入れている学校など、学校により、指導 の力点に違いが表れてきている。 ○工科高校9校それぞれがすでに持っている個性や強みを活かし、地域性にも対応しつつ、人材育成 の取組を重点化し、学校の個性化を図ることで、工科高校全体として、より特色ある人材育成機能 を発揮していただきたい。 ★高大連携重点型の高校 「ものづくりマインドを持った将来の高度技術者」の育成を目標に、工業技術の理論を学ぶ工学系大学進 学を視野に入れた系・専科を設置し、高大連携を推進するなどエンジニアの育成をめざす教育に重点を置 く。(系・専科を平成26年度に設置を計画) ★実践的技能養成重点型の高校 「高い付加価値を生み出す技術・技能力を持つ人材」の育成を目標に、国家技能検定など習得させる技 術・技能レベルを明確にし、職業資格取得を重視し、資格を活かすことができる技術者を育成する教育に重 点を置く。 ★地域産業連携重点型の高校 「ものづくり現場を支えて指導・管理・改善を推進する現場のリーダーになれる人材の育成を目標に、企業 との実習、授業での連携を重視し、企業実習等の経験から身につけた技術・技能を活かす技術者を育成す る教育に重点を置く。 5 ~人材育成の取組の重点化・個性化により期待できる効果~ <効果1>学校の人材育成の到達目標を焦点化することができ、それに応じた教育課程を精選することでより高 い教育効果が期待できる! <効果2>大学、企業、地域産業など、連携の対象を絞ることにより、より密接な連携関係が構築でき、 結果として、連携の効果が高まることが期待できる! <効果3>専門教育の学習内容が「見える化」され、ものづくり分野への就職、進学など、将来の進路に ついて目的意識を持った生徒の入学が期待できる! それぞれの学校が特色ある人材育成に取り組み、ものづくりの実践を学ぶ場 として、生徒の進路保証がしっかりできる魅力的な学校へ 高大連携 重点型 工学系大学への進学か らエンジニア育成をめ ざす工科高校 6 実践的技能 養成重点型 職業資格取得で実 践的技能を持つ人 材育成をめざす工 科高校 地域産業連携 重点型 現場実践を積む中で、も のづくり現場を支える リーダーとなる人材育成 をめざす工科高校 研究開発から製造現場までの技術水準を保ち、 産業基盤を支えることができる人材の育成 補足資料 【基本的考え 方】 も のづく り マイ ン ド を 持っ た技術者( スペシ ャ リ スト ) を 育成する ために、 工業の基礎を 学びつつ、 大学進学に必要な数学、 理科、 英語を じ っ く り 学ぶこ と が でき る 「 系・ 専科」 の設置がのぞま し い。 工学系大学進学を 明確にし た入学者選抜の実施 入学者選抜 進学系単独の特色選抜 1 年次から 大学等への 進学を めざ し て取り 組む ために 教育内容 1 年次から 大学等への進学を めざ す教育内容で取り 組むこ と が必要。 そのため総合選抜と は別の枠組みで、 新たな 独自選抜を 行う こ と が望まれる 。 大学進学に対応し た教育課程の充実 理数系教科と 英語の充実 大学進学を 視野に 入れたカ リ キュ ラ ム ↓ 高大を 通じ た 7 年間の工業教育の ために 進学先の保障 さ ら に学ぶ機会を 保障 する ために 工業の専門教科・ 科目と の調整を 図り 、 数学、 理科、 英語を 充実さ せる こ と が望ま れる 。 探究型授業の充実 創造力、 課題解決力を 育成する ため、 課題研究など 、 工夫・ 改善さ せる こ と が望ま れる 。 進学系での「専科」のあり方 ~専門科目の学び方~ <例1 >自分の専門を 持っ て深く 学ぶ 電気専科、 機械専科、 工業化学専科など 、 各専門 分野の専科を 置き 、 各専門分野の基礎を 学ぶ。 <例2 >工業の基礎を 複合的・ 横断的に学ぶ 新たなカ リ キュ ラ ムを 開発し 、幅広く 工業の基礎を 学ぶ専科と する 。 大学教育の体験 大学における 連携講座の参加や研究室訪問、出前授 業など 、 研究や工学への関心や、 モチベーシ ョ ン を 高める こ と が必要。 大学教育と の接続 高校教員によ る 進学者へのサポート 体制の充実や、 理工学系で必要と さ れる 理数の内容の研究が必要。 進学指導体制の見直し 大学へ検討を 要請 ガイ ダン ス によ る キャ リ ア デザイ ン 支援 大学入試における 指定校推薦枠の拡充 生徒が大学教育への接続を 含めたキャ リ ア デザイ ン を 進めら れ る よ う 、 1 年次から 計画的にガイ ダン スを 行う こ と が必要。 進路相談機能の充実 既存の工科高校指定校推薦枠の活用を 含めて、 き め細やかな進 路相談で、 生徒の希望進路の実現を 図る 。 7 大学と の授業等での連携 ○ 2 つの考え方がある 。 大阪市立大学や他の国公立大学で実施さ れている 、「 セン タ ー試験を 課さ ない・ 工 科高校」 推薦枠を 開拓すべき 。 私立大学における 特待生枠の獲得 私立の理工系大学における 授業料の減免を 含む特待生枠を 獲得すべき 。 ものづくり教育コンソーシアム大阪 提言の概要 本コンソーシアムでは、府におけるものづくり教育の活性化に向け、工科高校が育成すべき人材像を明らかにした上で、いま、工科高校が取り組む べきこと、及び、今後の工科高校の取組の方向性について提言としてとりまとめた。 ➢背景となる状況 ●我が国のものづくり産業は、社会・経済の維持発展にとって重要な役割を将来に亘って担うもの。特に大阪は、ものづくりを基盤とし て発展し、多くのオンリーワン企業が立地。 ●しかし、グローバル化の進展とともに、産業の空洞化が懸念される中、生産現場では、高品質で高精度なものづくりの力が以前にも増 して求められており、ものづくりの現場を担う人材の育成が急務。 ●工科高校では、産業基盤を支える技術と技能を持ち、発案や改善提案などを積極的、能動的にできる人材の育成が求められている。 提言1 【工科高校が育成すべき人材像】 提言2【教育内容の質の保証】 ~工科高校がいま取り組むべきこと~ ○ものづくりマインドを持った 将来の高度技術者 工科高校でものづくりの基礎 を、大学等で高度な知識、技術 を学んで、実技と理論を併せ 持ったエンジニアの育成 ○工学系大学等進学に向けた学力向上と 連携大学の確保 ・ものづくりマインドの醸成と大学等高等 教育機関に接続する教育課程の改善を通 して生徒の学力向上を図る。 ・高大連携を推進し、大学講座や研究活動 に参加体験させる機会を設定。 ・指定校推薦入試を含めた大学への進学 ルートの開拓 ○高い付加価値を生み出す技術・ 技能力を持つ人材 高精度、高品質など高い付加 価値を生み出せる、職業資格等 に裏付けられた技術、技能力を 身につけた人材の育成 ○ものづくり現場を支えて指導・ 管理・改善を推進する現場の リーダーになれる人材 生産現場を監督し、合理化等改善 提案ができる実践的技能 と 知識を 持った人材の育成 ○生徒が身につける知識、技術及び技能の 質の保証 ・生徒に習得させる技術・技能レベルを明 確にした指導とカリキュラム編成 ・教員の資質向上のための技術研修 ○工科高校の職業教育拠点としての機能 充実 ・時代の変化に即した施設設備の整備 ・企業と共同して取組む商品開発、企業で の実習など企業との連携の推進 提言3【工科高校の近未来像】 ~人材育成の重点化と学校の個性化を図る~ (1)高大連携重点型の工科高校 「ものづくりマインドを持った高度技術 者」の育成を目標に、工学系大学等への進学 を視野に入れた系・専科を設置(平成26年度 に設置を計画)し、高大連携を推進するなどエンジ ニアの育成をめざす教育に重点を置く。 (2)実践的技能養成重点型の工科高校 「高い付加価値を生み出す技術・技能力を 持つ人材」の育成を目標に、国家技能検定な ど習得させる技術・技能レベルを明確にする とともに、取得した資格を活かすことができる技術 者を育成する教育に重点を置く。 (3)地域産業連携重点型の工科高校 「ものづくり現場を支えて指導・管理・改 善を推進する現場のリーダーになれる人材」の育 成を目標に、企業との実習、授業での連携を重 視し、それらの経験から身につけた技 術・技能を活かす技術者を育成する教育に重 点を置く。
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