演習課題11 時間反転対称性の破れの探索 ~ フェルミオン電気双極子能率~ 目次 1. 2. 3. 4. 5. 一般論(清水) 実験原理(吉岡) コイル設計、電場設計(三島) ロックインアンプ、Xe偏極の原理(有本) 誤差論、解析(猪野) 磁気(双極子)モーメント • 磁石の強さを表す量 : μ = qd • 電流が作る磁気モーメント μ = IA --- ① = (πr2)(eω/2π) = (mr2ω)(e/2π) = (e/2m)L (L = 0, 1, 2, … : 軌道角運動量) • μ A e, m スピン角運動量による磁気モーメント μ = g(e/2m)s ↑ g因子 : 古典的に考えると1。 相対論的量子力学を使うと2。 電子 : 2(からちょっとずれる) 実験値 : (1159652400 +- 40)e-12 理論値 : (1159652193 +- 80)e-12 中性子 : -3.91 スピンを持つ粒子は磁石のような性質を持つ。 磁気モーメントの磁場中での運動1 • 運動方程式:角運動量の時間 変化は(磁場中で磁気モーメント に働く)トルクに等しい。 dJ/dt = μ×H dμ/dt = γ(μ×H) --- ② γ : 磁気回転比。原子核によって違う。 H μ • これを解くと、μはHの回りに角速度ω0で回転する。 ラーモアの歳差運動。ω0 = -γH : ラーモア周波数。 磁石(原子)を磁場中に置くとコマのように回る。 磁気モーメントの磁場中での運動2 • 静磁場 : H0 = (0,0,H0) 回転磁場 : H1 = H1(excosωt + eysinωt) H = H0 + H1 として、回転座標系での運動方程式: (dμ/dt)r = γμ×(H + ω/γ) --- ③ = γμ×[H1ex + (H0 + ω/γ) ez] = γμ×Heff Heffの回り角速度γHeffで歳差運動する。 • ω = -γH0の時、回転座標系ではexの回りを歳差運動し、 実験室系では図のような軌道を描く。 NMR : 核磁気共鳴。 注)実際の実験では回転磁場の代わりに振動磁場を 用いる。H0>>H1のときには回転磁場と近似できる。 ブロッホ方程式1 • これまでは単独の磁気モーメントが外部磁場とのみ相互作用する系を 扱ってきた。実際には多数の磁気モーメントからなる巨視的な磁化を扱う。 このような系では磁気モーメントと外部との相互作用や磁気モーメント同 士の相互作用により熱平衡状態へ緩和していく。 • 緩和を考慮した経験的な式(ブロッホ方程式) dMx/dt = γ(M×H)x – Mx/T2 横緩和時間 dMy/dt = γ(M×H)y – My/T2 横緩和時間 dMz/dt = γ(M×H) z – (M0 – Mz )/T1 縦緩和時間 巨視的磁化:M = ∑μi :巨視的磁化 • 静磁場のみの場合 dMx/dt = γMyH0 – Mx/T2 dMy/dt = – γMxH0 – My/T2 dMz/dt = – (M0 – Mz )/T1 ブロッホ方程式2 • これを解くと、 - Mr(t)=Mr(0) exp(–iγH0t) exp(– t/T2) --- ④ - Mz(t)=M0 + {Mz(0) – M0} exp(–t/T1) y M0 x t • π/2回転させた所で振動磁場を切り、回転する磁化が誘起する誘 導起電力を観測すると緩和が見える。 Free Induction Decay (FID) 演習(時間があれば) 1. 円電流が作る磁気モーメントが①式のようにIA となることを示せ。 2. ②式を解いて磁気モーメントが静磁場中で歳差 運動をすることを示せ。またラーモア周波数を 求めよ。ただしH = (0,0,H0)とする。 3. ③式を示せ。 4. ブロッホ方程式を解いて④式を導け。 電気双極子モーメント(EDM) +E -E • 標準模型では、d = 0 ないしは ひじょうに小さい 新しい物理のプローブ スピン偏極した希ガス原子のEDM探索 スピン偏極した希ガス原子のEDM探索 スピン偏極した希ガス原子のEDM探索 1.振動磁場の周波数をラーモア周波数に合わせる。磁気モーメントがπ/2倒れる だけ振動磁場を入力する。 2.磁気モーメントは静磁場を軸にして回転しているので、誘導磁場をpick-up コイルで 検出できる。振幅は緩和の影響により減衰していく。 3.電場の向きを反転させて1,2を繰り返す。2.で得た結果と合わせて、EDMの値を求める。 まずはコイル作り から始めよう! スピン偏極した希ガス原子のEDM探索 1.振動磁場の周波数をラーモア周波数に合わせる。磁気モーメントがπ/2倒れる だけ振動磁場を入力する。 2.磁気モーメントは静磁場を軸にして回転しているので、誘導磁場をpick-up コイルで 検出できる。振幅は緩和の影響により減衰していく。 3.電場の向きを反転させて1,2を繰り返す。2.で得た結果と合わせて、EDMの値を求める。 どのくらい入力 すれば良いかな? 磁場H 電場E 振動磁場 スピン偏極した希ガス原子のEDM探索 1.振動磁場の周波数をラーモア周波数に合わせる。磁気モーメントがπ/2倒れる だけ振動磁場を入力する。 2.磁気モーメントは静磁場を軸にして回転しているので、誘導磁場をpick-up コイルで 検出できる。振幅は緩和の影響により減衰していく。 3.電場の向きを反転させて1,2を繰り返す。2.で得た結果と合わせて、EDMの値を求める。 うまくいくとこんな 信号が見えます。 磁場H 電場E 振動磁場 スピン偏極した希ガス原子のEDM探索 1.振動磁場の周波数をラーモア周波数に合わせる。磁気モーメントがπ/2倒れる だけ振動磁場を入力する。 2.磁気モーメントは静磁場を軸にして回転しているので、誘導磁場をpick-up コイルで 検出できる。振幅は緩和の影響により減衰していく。 3.電場の向きを反転させて1,2を繰り返す。2.で得た結果と合わせて、EDMの値を求める。 あとはデータ 解析と発表だ! 磁場H 電場E 振動磁場 スピン偏極した希ガス原子のEDM探索 E = 100 V/cm Dn < 0.1 Hz d < 10-18 e cm ? まとめ • 素粒子や原子はスピン角運動量という量子力学的な内 部自由度を持つ。 • スピン角運動量を持つ粒子は磁気モーメント(磁石として の性質)を持つ。 • スピン角運動量を持つ粒子を静磁場中に置くと歳差運 動をする。 • 静磁場と振動磁場をかけると磁気モーメントが倒れてい く。 • π/2回転させたところで振動磁場を切り、Free Induction Decayの信号を観測する。電場を反転させた時と合わせ てEDM の上限値を求めることができる。
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