リーンスタートアップ 法を適用したプロジェクト立案

リーンスタートアップ法を適用した
プロジェクト立案・計画方法
静岡大学大学院 情報学研究科
湯浦研究室
7033-0003 石田 諭史
2015/9/28
静岡大学大学院
情報学研究科
湯浦研究室
1
目 次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
静岡大学におけるプロジェクトマネジメント
研究の目的
リーンスタートアップ法の概要
プロジェクトマネジメント教育用リーンキャンバ
スの提案
プロジェクトの分類
リーンスタートアップを適用した講義手順と
充実度評価方法
評価結果
考察と今後の課題
2015/9/28
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情報学研究科
湯浦研究室
2
静岡大学情報学部における
プロジェクトマネジメント
• 「プロジェクトマネジメント」開講
– 学生独自のプロジェクトを用いた演習形式
導入
背景
目的
自主開発
立案
インター
フェース改善
某HPの利用
方法が不明
発表
計画
マニュアル
作成
発表
成果提出
2015/9/28
達成方針
静岡大学大学院
外注
学生
紙媒体
ロジックツリー
情報学研究科
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3
学生が立案するプロジェクト例
• 【業務系】大学などの業務について,利便性の向上や,効率化を目
的としたITシステムや業務改善モデルを提案するプロジェクト
• 【イベント系】市場,大学,地域の活性化を目的としたプロジェクト
• 【ビジネス系】新しいビジネスモデルを提案し,顧客に新しいサー
ビスや既存のサービスに付加価値を付けて提供するプロジェクト
学生限定格安バスサービス
移動式洋服販売
ビジネス
24%
学祭用HPの開設
静岡大学合同ライブ
イベント
30%
業務
46%
学生食堂の食券システム
空き教室検索システム
(2012~2013年度の受講生の成果物より)
2015/9/2
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4
プロジェクトマネジメントの概要
監視プロセス
立ち上げ
プロセス
実行プロセス
計画プロセス
終結プロセス
7 種類の管理対象
作業項目
リスク
タイム
立 案
品 質
コスト
体 制
2015/9/28
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–
–
–
–
–
–
–
【立案】要件,サービス
【作業項目】WBS
【タイム】工数,日程
【コスト】費用
【体制】人材管理
【品質】性能
【リスク】リスク
湯浦研究室
5
計画プロセスにおける学生の問題
①計画の詳細化
②リスクの特定 を困難と感じている
③正確な見積もり
計画書の詳細化
リスクの特定
正確な見積もり
発表方法
作業分担
24%
20%
16%
9%
7%
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
(2012~2013年度の受講生の講義レポートより)
2015/9/28
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立案プロセスにおける学生の問題
背景・目的の分析を困難と感じている
48%
背景,目的の分析
立案項目が不明
14%
コミュニケーション
14%
他者の意見が欲しい
12%
業務知識がほしい
2%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
(2012~2013年度の受講生の講義レポートより)
2015/9/28
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関連研究
ゼロベース思考法を用いたプロジェクト演習の実施
文教大学の那須は,プロジェクト自体を目的化しないように,学生には独自の経
験を基にしたプロジェクトを提案させている.その一つの思考法として先入観や
実施方法の枠組みを取り払うゼロベース思考法を導入している.
出典 那須一貴:プロジェクト・マネジメントの学部教育的意義
シナリオベースのオンライングループワーク環境を構築
東京工科大学の中村らは,プロジェクトマネジメント教育用のオンライン演習環境を構
築し,仮想プロジェクトの問題を学習者に提示するロールプレイ演習形式の講義を行っ
た.プロジェクトは独自の提案ではなくシナリオを使用し,学習者は計画プロセスと実
行プロセスを疑似体験することができる
出典 中村太一,丸山広,立川結貴:大学のプロジェクトマネジメント教育
2015/9/28
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目的
1. 学生が詳細なプロジェクト計画を作成すること
2. 学生が顧客や他者の知見得て,背景や目的の分
析を行ってプロジェクトを立案すること
2015/9/28
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リーンスタートアップ法の概要
2015/9/2
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リーンスタートアップ法
アイ
ディア
学習
構築
データ
製品
• エリック・リースが考案した
ビジネスを立ち上げるための
マネジメント手法
• 短期間に【構築-計測-学習】
を繰り返し,顧客主導で製品を
開発する.
計測
出典 アッシュ・マウリャ:Running Lean 実践リーンス
タートアップ,オイラリー・ジャパン,p13,(2012)
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リーンキャンバス
• 簡潔性・携帯性に優れたビジネス企画の検証ツー
ル.
• 俯瞰したビジネス企画文書を高速で作成.
• 重要度が高い順に記述
課題
ソリューション
独自の価値提案 圧倒的な優位性 顧客セグメント
①
④
主要指標
③
⑧
⑨
チャネル
⑤
コスト構造
収益の流れ
⑦
⑥
製品
市場
②
出典 アッシュ・マウリャ:Running Lean 実践リーンスタートアップ,オイラリー・ジャパン,p27,(2012)
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リーンスタートアップ法の導入理由
• 静岡大学の学生が立案するプロジェクトは,工数や規模
が小さいスマートフォン向けサービス開発プロジェクト
が増えている傾向がある.
Ex.家計簿記録サービス(2013),空き施設検索システム(2013),etc
ユーザー主導のアプリケーション開発手法が必要.
リーンスタートアップ法の導入
ウォーターフォール型開発
• 取り組む課題や解決方法が定まっている
• 市場の変化が緩い
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リーンスタートアップ法の導入の狙い
•
リーンスタートアップ法を用いることで顧客のニーズ
への到達度合いが上がる
顧
客
の
要
求
へ
の
到
達
度
合
い
リーンスタートアップ法
顧客ヒアリングで
早期撤退or仕様変更
Ver.1作成
従来の立案
Ver.2
顧客ニーズを捕えた
プロジェクトの立案
が可能
Ver.1作成
時間やリソースをす
でに消費し,撤退や
仕様変更が困難
時間経過
計画プロセス
立ち上げプロセス
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プロジェクトマネジメント教育用
リーンキャンバスの提案
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リーンキャンバスの拡張①
• 従来リーンキャンバスは「リスク」に対応していない
プロジェクトマネジメント
の管理対象
立案
リーンキャンバス
顧客・課題・
価値提案・解決策
作業項目
チャネル
スケジュール
コスト構造
コスト
収益の流れ
体制
主要指標
品質
リスク
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圧倒的な優位性
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リーンキャンバスの拡張②
• 未開拓市場や既存のサービスに対応する
記述項目を追加する.
パートナー
主要活動
価値提案
顧客との関係
顧客セグメント
⑧
⑦
②
④
①
リソース
チャネル
⑥
③
コスト構造
収益の流れ
⑨
⑤
出典 アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール:ビジネスモデル・ジェネレーション
ビジネスモデル企画書 初版,翔泳社,p14,(2012)
2015/9/28
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リーンキャンバスの拡張③
• 管理対象をすべて網羅
• 既存の製品・サービスがないプロジェクトに対応
課題
ソリューション
独自の価値提案
顧客との関係 顧客セグメント
主要指標
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チャネル
コスト構造
収益の流れ
内部リスク
外部リスク
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プロジェクトの分類
2015/9/2
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プロジェクトの分類
• 特徴に応じたプロジェクト計画を作成する
• プロジェクトを内容別に6つに分類
分類方法
分類型
プロジェクトの内容
チャネル型
顧客の集客や宣伝を課題としたプロジェクト
主要指標型
基準となる品質を顧客に提供するためのプロジェクト
コスト型
収益型
直接の利益がなく,支出が大きいプロジェクト
利益を出すことを目的にしたプロジェクト
顧客との関係型 顧客との関係を獲得・維持・拡大を目指したプロジェクト
リスク型
2015/9/28
利便性の裏に潜む危険因子を考慮すべきプロジェクト
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リーンスタートアップを適用した
講義手順と充実度評価方法
2015/9/2
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リーンスタートアップ法を適応した講義手順
立ち上げ(立案)プロセス
構
築
計
測
学
習
ロジック
ツリー,
LC作成
分類決定
発表前
回収 レビュー
ロジック
ツリー,
LC返却
構
築
計
測
計画プロセス
LC作成
中間発表
構
築
プロジェクト
計画
最終発表
学
習
LC:リーンキャンバス
2015/9/28
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評価対象
• 中間・最終成果物から,講義手順の効果を評価
構
築
計
測
学
習
ロジック
ツリー,
LC作成
分類決定
発表前
回収 レビュー
ロジック
ツリー,
LC返却
構
築
計
測
LC作成
中間発表
プロジェクト
計画
構
築
学
習
評価対象
中間成果物
LC:リーンキャンバス
2015/9/28
最終発表
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最終成果物
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中間成果物の充実度評価方法
独自の価値提案 顧客との関係 顧客セグメント
リーンキャンバスの評価
1入口の増設と出
1A大学の学
口の移設
生食堂利用
2待機場所整理
者
チャネル
3おひとり様向け
1掲示
座席の新設
2テープ誘導
各記述項目の記述された個数
を要素数として計測.
背景
某HPの利用
方法が不明
目的
インター
フェース改善
マニュアル
作成
2015/9/28
左図では,独自の価値提案が
3,チャネルが2.
達成方針
ロジックツリーの評価
自主開発
ノードの数を要素数とし,リー
ンキャンバスの記述項目に照
合して計測.
左図では,課題が1,ソリュー
ションが2
外注
学生
紙媒体
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24
最終成果物の充実度評価方法
プロジェクト
1 PR
1.1
ポスター
1.1.1
ポスター準備
1.1.2
ポスター貼り付け
目標指数
目標値
学生からの改良要求頻
度
1回 / 年
システム使用時の誤差
1回 / 年
平均故障回数
3回 / 年
平均回復時間
1日
稼働率
(362 / 365) * 100 =
99%
2015/9/28
静岡大学大学院
チャネル型の評価
宣伝・PRに関するWBSの階層
と末端の要素を計測.
左上図では,
階層は3層 要素は2個
主要指標型の評価
品質計画の目標値や具体的
な数値の要素を計測.
左下図では,要素数は5個
情報学研究科
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25
最終成果物の充実度評価方法
収益型
収入・支出の個数を要素数として計測
コスト型
支出の個数を要素数として計測
収入
支出(コスト)
商品
(・単価2,000×84着
・単価3000×72
着)
168,000 商品
(・仕入れ値1000×100着
・仕入れ値1500×10着)
215,000
デザイン商品
(単価2,000×24着)
216,000 デザイン商品
(・単価2,500×10着)
25,000
NPOからの奨学金
50,000
ガソリン代
70,000
PRのための費用
4,000
車両のリース支払
50,000
諸経費
35,000
駐車場代
20,000
2015/9/28
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情報学研究科
湯浦研究室
26
最終成果物の充実度評価方法
リスク項目
リスク型
メンバの多忙による
進捗遅れ
リスク表から特定されたリスクの
個数を要素数として計測.
左図では,要素数は4
メンバの病気による
欠員
利用者が増えない
Webページが続かない
顧客との関係型
顧客の獲得・維持・拡大に基づ
く要求仕様の目的の有無と関
係を結ぶためのコストを見積も
りに含まれているかを計測.
2015/9/28
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27
評価結果
2015/9/2
静岡大学大学院
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28
中間成果物の充実度評価結果
全ての項目が過去2年間より充実度が向上
特にコスト,収益,リスクが充実
3.50
3.10
3.00
2.50
2.00
1.50
2014
20122013
1.62
1.67 1.62
1.64
1.28
1.00
1.81
1.24
1.15
1.001.00 1.11
1.71
1.17
0.90
0.69
0.86
0.50
0.00 0.00
0.00
2015/9/28
静岡大学大学院
情報学研究科
湯浦研究室
0.00
29
中間成果物の分類型別の充実度評価結果
• 全ての分類型が過去2年間より充実度が向上
• チャネル型,コスト型,収益型,リスク型が向上
7.00
6.00
6.00
2014
5.00
4.00
2.71
3.00
2.00
1.00
1.60
1.00
1.50
1.33 1.25
0.70
0.00
0.00
2015/9/28
20122013
3.00
静岡大学大学院
情報学研究科
0.00
0.00
湯浦研究室
30
最終成果物の分類型別の充実度評価結果
• チャネル型,収益型の充実度は向上
• 主要指標型,コスト型,顧客との関係型には効果が薄い
7.00
6.50 6.33
6.00
5.57
5.00
5.00
4.00
2014
3.90
3.00
3.00
4.67 4.50
20122013
4.14
3.00
2.90
2.60
2.00
1.50
1.30
1.00
0.00
2015/9/28
静岡大学大学院
情報学研究科
湯浦研究室
31
リスク型の再評価結果
3.50
3.00
3.33
3.00
3.00
2014
2012~
2013
2.50
2.00
1.50
1.50
1.50
1.00
• リスク型の要素を以下の3つ
に分類して再度分析した.
– 【製品リスク】
– 【市場リスク】
– 【顧客リスク】
• 2014年度は3タイプのリスクをす
べて特定できていた.
0.50
0.00
2015/9/28
0.00
静岡大学大学院
情報学研究科
湯浦研究室
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考察と今後の課題
2015/9/2
静岡大学大学院
情報学研究科
湯浦研究室
33
考察
1. チャネル型と収益型の充実化された
2. リスク型は全てのタイプのリスクを特定
3. 主要指標型,コスト型,顧客との関係型
プロジェクトに対する改良の検討
2015/9/28
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情報学研究科
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今後の課題
• 計画プロセスにおいてレビューをさらに重ねて実施する.
• 導入手順の見直し
• 受講生が教員やプロジェクト経験者などの第三者の知見を
得て品質計画,コスト見積もり,リスク特定の議論する手
順を設けることで充実化を図る
2015/9/28
静岡大学大学院
情報学研究科
湯浦研究室
35
以上で発表を終わります
• ご意見,ご指導等がございましたら,
お時間が許す限りお願い致します.
2015/9/28
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情報学研究科
湯浦研究室
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